Chapter: 第4話:もう一人の部員中間試験も終わり、6月に入ると、暦の上で夏となり衣替えで制服も夏服へと変わっていく。「ううう……やっぱりチクチクする」圭太はそうぼやきながら腕をさする。それというのも……「せっかく夏服になったんだし、身だしなみを整えないと」という名目で、圭太は股間だけでなく首から下の毛をすべてツルツルに処理することを沙由美に厳命されたからである。無論、圭太にはそんな趣味などなく嫌々であったが、沙由美に逆らえばどうなるかわからないため、泣く泣く従ったのだ。(でも文句言ったらそれこそ沙由美先生のことだ、本気で永久脱毛でもしろとか言いかねないし……)そんなことを考えながら部室に向かうとすでに沙由美がいた。そして沙由美の隣には葵もいる。二人とも白衣を羽織り、胸元を大きく開けているのだが、そこから見える谷間だけでも圭太にとっては目の毒だった。圭太が部室に入ってきたことに気づくと沙由美が声をかけた。「圭太君、来てもらったばかりで悪いんだけど、今日はあなたにお使いを頼みたいわ」「お使い?」「私たちの衣装をすべて作っている人のところに、新しい衣装を取りに行ってほしいの」と葵が続ける。「2年E組の|松山翠《まつやまみどり》さんのお家にね。」「2年の松山……翠さん?」圭太には聞き覚えのない名前だった。「あの、もしかして、その人も部員なんですか?」「えぇ、ちょっと事情があって学校にはあまり来ないけどいい子よ。あとちょっと気難しい子だからよろしくね」葵が珍しく笑顔でそう言った。「あれ、俺一人で行くんですか?」「そうよ、地図渡すからお願いするわ」そういうと沙由美は地図と住所の書かれたメモを渡す。(そんな人なら会った事もない俺よりも先生たちの方がいいと思うけど)圭太は話を聞きながら疑問を覚える。「あと、これもね」と何かが入っている紙袋も渡された。「後で役に立つものよ。じゃあよろしくね」なんとなくキツネにつままれた面持ちで圭太は部室を後にした。そして部室では「沙由美先生、圭太君には本当に何も伝えなくていいんですか?」葵だ心配そうに沙由美に聞く。「まあでも、その方が面白そうじゃない?」「……ふふ、そうかもしれませんね」二人はちょっとほくそ笑んでいた。***圭太はまず学校を出ると駅前まで行き、そこでタクシーを捕まえて目的地へ
Last Updated: 2026-06-20
Chapter: 第3話:葵の過去と秘密の話圭太は昼休みの保健室相談に来ていた。「んで、昨日はお楽しみだった?」「うぐっ……!」のっけからニヤニヤしながら言う沙由美。「あーんなことやこーんなことしちゃったわけだ~?くぅ~うらやまけしからん!このこのぉ!」「やめて下さいよ……」事実なので言い返せない圭太。恥ずかしそうに下を向くも、話題を変えようとする。「大体この前は途中からどこへ行ってたんです?!」「だから、あれは職員会議があったって言ったでしょ」(絶対嘘だ……)と思いつつも、それ以上追及したところで無駄だとわかっているのでもう何も言わないことにして、本題を切り出す。「あの……葵さんの事なんですけど……」と圭太はあの朝の出来事を話し始める。「えっとですね……実は……」圭太の話を聞き終えると、沙由美は腕組みして考え込んだ。そして少ししてから口を開いた。「葵ちゃんねぇ……あの子の家族かなり事情が厄介なのよね。」「ええ?良家のお嬢様って聞いてますけど。」確か父親は有名な資産家だとかなんとか聞いたような気がする。それに葵自身も成績優秀で容姿端麗ときているのだから、そんな家庭環境ならむしろ自慢したくなるものだと思うのだが……。しかし沙由美の顔を見るとどうも違うようだ。「うーん……話すべきかしらね。しかもどこから説明したらいいのかわからないし……それでも聞きたい?」「はい……お願いします。」沙由美はしばらく黙り込んでいたがやがて意を決すると話し始めた。***資産家の令嬢として生まれた彼女は。孤独であった。なぜなら親の期待は跡取りである兄にすべて向けられていたからである。幼い頃から英才教育を受けさせられ、 学校では優秀な成績を収め、常にトップクラスの成績をキープしていた兄。それが当たり前であり、将来も約束されている。そんな兄を尊敬し、自分もそうなろうと、彼女は頑張った。だが、家族は彼女に期待などしていなかった。彼女の求めるものはすべて兄のものだったのだ。彼女がいくら努力しようと、結果を出そうと褒められたことなどなかった。彼女にとって家族とはいつも自分の上にいる存在。自分を見下ろしている存在。自分は必要のない人間。いてもいなくても同じ。そんな風に感じていた。そんな彼女に課せられた「使命」は、家に恥じぬ優秀な教養を身につけ、良妻賢母として他家に嫁
Last Updated: 2026-06-13
Chapter: 第2話:生徒会長との秘密の時間(あれから2週間ほど経ちましたが・・・)沙由美に服飾文化研究会に強引に入部させられて早2週間、圭太は部室の簡易ベッドでお相手をしょっちゅうさせられていた……。しかも「君には女装の才能がある」と決まって女装コスプレをさせられて……。そのたびに沙由美に体を触られ、キスもされまくってしまい、圭太は恥ずかしくて死にそうになっていた。そんなある日、教室でクラスメイトで中学からの友人、神崎雄一に声を掛けられる。「お前、赤崎先生が顧問の部活に入ったんだって?」「うん、まあね」「いやぁ、あんな美人先生と一緒にいられるとは羨ましい限りだぜ」「え? いや、別にそんなことは……」「ま、俺はサッカー部入って今練習楽しいからいいけど」そう言って雄一はにかっと笑う。「へぇー、そうなんだ」(うん、それが普通の高校生活なんだよな……きっと)沙由美は美人で頼れる保険医として、男子からの人気が高い。(でも実際はあんなとんでもない人だったなんて……)彼女の本性を知る者として、圭太の口からは乾いた笑いが出た。「それより聞いたか? うちの生徒会長の話」 「ああ、確か3年生の女の人だったよね?この前の全校集会でスピーチしてた。」「そうそう、すげえ美人だったよな」「うん、まぁね」圭太は気の無い返事を返す。(確かにきれいな人ではあったけど……ちょっと冷たそうな人だったな)雄一の話を聞きながら圭太は先日の集会での様子を思い浮かべた。「何でもすごい頭が良くて成績は常に学年トップ。おまけに良家のお嬢様と来てるらしいぜ」「へぇーそれはすごい。」「……だけどさ、美人なんだけど無愛想というかそっけない人らしくて。男子に言い寄られても、悉く袖にしてるって噂だ」「ふぅん、」そんな住む世界の違う人なら、自分たちがかかわる事はないかな…‥と恵畑そんな事を考えながら次の授業の準備に移った。***放課後。圭太は部室のある第二校舎へと向かう。すると途中にある生徒会室に、例の美麗な女生徒の姿があった。(あ、あの人かな? 雄一の話していた生徒会長さんは……)どうやら生徒会室で一人仕事をしているようだった。書類をチェックしたり書き込んだりして忙しそうにしている。(やっぱりちょっと厳しそうなタイプだよな)圭太はそう思いながら通り過ぎていく。だがその時、書類を見て
Last Updated: 2026-06-13
Chapter: 第1話:僕が入部した(させられた)理由ある春の日、それは突然に起きた。今年高校に入ったばかりの白石圭太はまだ新しい制服を着て初々しい雰囲気を出していた。最初は戸惑うばかりだった学校生活にも次第に慣れ、友人もでき始めた。「さて、そろそろ部活も決めないとなぁ……」などと考えながら保健室へと歩く。これは別に体の調子が悪いからではなく、そこにいる保険医の赤崎沙由美に会うためだった。物腰柔らかなその保険医はケガや病気の手当だけでなく、生徒の悩み相談にも乗ってくれている。まだ若く美人ということで憧れを抱く男子生徒も少なくない。当然圭太もその一人であり、相談を口実に会いにやってきた次第だった。(まあ、会えるかどうかは運しだいだけどね)そんなことを考えつつ歩いていると目的の場所にたどり着く。ノックをして扉を開けるとそこには一人の女性がいた。綺麗に切りそろえられた髪に白衣がとてもよく似合うその女性は彼のあこがれの人、赤崎沙由美本人であった。(やっぱり美人だよなぁ……)圭太は年頃の少年らしい反応を見せる。「あら、いらっしゃい。今日は何の御用?」「その、先生に悩みを聞いてほしいというか……」「あら、悩み相談?」赤面する圭太に沙由美は朗らかな笑顔で答える。「いや……その僕もそろそろ部活に……入ろうかなどとですね。」その雰囲気に圧倒されながらもしどろもどろに答える。(「僕」なんて沙由美先生の前でしか使わないよなぁ)そんなことを思いつつも緊張で体がうまく動かない。しかし彼女は特に気にする様子もなく話を続ける。「そういえば君とは前に一度会ったことがあったわよね?確か入学式の日だったかしら?」「えっ!?そうでしたっけ?」確かに言われてみるとあった覚えがあるような気もするがどうしても思い出せない。すると彼女は少し残念そうな顔をして言った。「やっぱり忘れちゃったかな?ほら、入学式での教員紹介の時。」「あっ!思い出しました!」彼女の言葉でようやく思い出すことができた。「ふふ、君はクラス列の一番前だったもの」「一番前……ですか、ハハハ……」何気ない会話だが圭太にとってちょっと刺さるものがあった。なぜなら圭太にとって身長のことはちょっとしたコンプレックスだったからだ。集会のクラス列で一番前、それは即ちクラスの男子の中で一番背が低いという何よりの証明だった。
Last Updated: 2026-06-13