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鎧塚 玲
鎧塚 玲
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Novel-novel oleh 鎧塚 玲

縁切り令嬢の私ですが、ドS王子に執着されて逃げられません。

縁切り令嬢の私ですが、ドS王子に執着されて逃げられません。

【愛こそ正義——そんな国で、私は“愛の破壊者”と呼ばれている。】 「運命の番」が絶対とされる国で、 元・離婚弁護士の転生者シーラは、“縁切り令嬢”として忌み嫌われていた。 彼女が断ち切るのは、美しい愛の裏に潜む、呪いのような執着と依存。 ——のはずだった。 現れたのは、愛至上主義の第一王子ゼクス。 だがその“愛”は、やがて逃げ場を塞ぐほどの執着へと変わっていく。 すべての縁を断ち切れるはずのシーラ。 けれどなぜか——王子との縁だけは、切れない。 縁を断つ令嬢と、縁を強制的に結び続ける王子。 絶対に噛み合わない二人の、危険すぎる追走劇が始まる。
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Chapter: 第8話  血の味と、消えない境界線
翌朝。王宮では、昨夜捕らえられた暗殺者の取り調べが始まっていた。王宮の最深部、石造りの尋問室には、鉄錆と血の匂いが充満していた。 「……もう一度だけ問う。ポイズナー侯爵の命で、シーラ様を狙った。相違ないな?」 ネストが冷徹な声で追い詰めるが、拘束された暗殺者と、隣で顔を青くしている侯爵本人は、まだ往生際悪く黙秘を続けている。……ふふ、法廷なら沈黙は権利だけど、ここではそうもいかないわよ。 「あーあ、隊長様は真面目すぎるよ。言葉なんて不確かなエビデンス、信じるだけ無駄だって。ねえ?」 陽気な声と共に、シュッ――という風を切る音が響く。 「ぎ、ぎゃあああああああ!!!」 ライトが、まるでダンスでも踊るような軽やかな足取りで、容赦なく鞭を振るった。彼の口元には笑みが浮かんでいるが、その瞳は一切笑っていない。 「ほらほら、今の音、いい響きだったよね? 次はどこを叩こうかな。爪の間? それとも耳の裏? 吐くなら今のうちだよ。俺、手が滑りやすい方なんだ」 「……ま、待て! 言う! 全部言うから!!」 ライトの「拷問」という名の残酷な遊戯に、ついに二人の精神が崩壊した。 暗殺の依頼、偽装工作の全容……すべてが白日の下に晒された瞬間だった。 数時間後、緊急会議が開かれ、ポイズナー侯爵の爵位剥奪と財産没収が決定した。……まさに、私のハサミが国家の癌を切り取った記念すべき「勝訴」の瞬間。 けれど、尋問室に残された二人の間に流れる空気は、勝利とは程遠いものだった。 ネストは激しく咳き込みながら、震える手で懐から薬を取り出す。それを見ていたライトが、壁に寄りかかりながら、いつものチャラい調子で口を開いた。 「……終わったねー。でもさ、相棒。お前、本当に仕事熱心すぎない?もっと適当に手を抜きなよ。そんな薬飲まなきゃ過労で倒れるような生活、見てるこっちが疲れちゃうわ」 その一言が、限界まで張り詰めていたネストの何かに触れた。 「……黙れ」 「え?」 「……才能だけで、何の苦労もなくのし上がってきたお前にはわからない! 俺は……俺はローレンヌ子爵家の、一族全員の期待を背負ってここに立っているんだ! 掃き溜めのような孤児院から実力だけで這い上がってきた……お前のような孤児とは違うんだ!!」 「…………」 静寂が、部屋を不法占拠した。 ネストはハッと目
Terakhir Diperbarui: 2026-07-08
Chapter: 第7話  闇夜の処刑人と、不真面目な守護者
暗闇の中で、銀色の刃が月光を弾いた。 新居となる子爵邸への帰り道。人気の途絶えた裏路地で、私の喉元に鋭い殺意が突きつけられる。 刺客の瞳には、一切の躊躇がない。……ふふ、これほど純粋な殺意を向けられるのは、弁護士時代に勝訴を勝ち取った相手から逆恨みされて以来かしら。 「……死ね、縁切り師」 男が踏み込もうとした、その瞬間。 「――はい、そこまで。その行為は、王国の刑法第12条『王室関係者への加害』に該当する重大な規約違反だわ。……ですよね、ネスト?」 私が動じずに問いかけると、背後の影から鋼の音が響いた。 ガキィィィィィン!! 「……お怪我はありませんか、シーラ様」 いつの間に潜んでいたのか、漆黒の外套を翻したネストが、その重厚な剣で暗殺者の刃を完璧に受け止めていた。 きゃぁぁぁぁぁ!!! かっこいいわ!ネスト!!! このまま私を連れ去って!!! 「ネスト! 殿下の命令通り、ちゃんと見張っていたのね」 私は平静を装う。 「当然です。……それと、ライト! いつまで遊んでいる。さっさと拘束しろ」 ネストが忌々しげに叫ぶと、街灯の上にしゃがみ込んでいたもう一人の男が、ひらりと舞い降りた。 黒髪に、ピシッと制服を着たネストとは対照的で、明るい茶髪に、着崩した近衛兵の制服。彼は着地と同時に暗殺者の腕を捻り上げ、軽々と地面に組み伏せた。 「いやあ、相棒が真面目すぎるからさ。俺が出る幕ないかなーって思って。……それにしても、君が噂のシーラちゃん? 近くで見るとマジで綺麗。俺、一目惚れしちゃいそうなんだけど。今夜、このまま二人で『縁』結んじゃわない?」 「……ライト、拘束に集中なさい。あと、私のハサミでそのチャラい前髪を部分ハゲにしてあげようかしら 」 「うわっ、冷たい! でもそこがいい!」 彼はケラケラと笑いながらも、その手つきは極めて正確だ。 ライト――第一隊副隊長。ネストを凌ぐ天賦の才を持ちながら、その不真面目な性格ゆえに、実力で劣る(と言っても二番手だが)堅物のネストが隊長に据えられたという、近衛兵随一の問題児にして天才。 「ライト、口を動かすな。連行しろ。……シーラ様、殿下はポイズナー侯爵の動きを予見しておりました。奴にとって、貴女は生かしておけない毒なのです」 ネストの瞳に、深い懸念が宿る。 ポイズナー侯爵。この国の宰
Terakhir Diperbarui: 2026-07-07
Chapter: 第6話 社交界のゴミ出し日は、私が決めさせていただきます
「……皆様、お久しぶりですわね。デストーロ『子爵』令嬢、シーラですわ」 王宮の夜会会場。扉が開いた瞬間、会場の空気が凍り付いた。 一週間前、この場所で「不名誉な男爵」として追い出されたはずの私が、一段階上の爵位を引っ提げて戻ってきたのだ。 かつての粗末な教師服ではない。 新調した、夜の帳を織り込んだような深い紺色のドレス。手には、論理の刃よりも鋭い扇子。 「あ、あらシーラ様……。その、お戻りになられたのですね」 一人の伯爵夫人が、引きつった笑みで近づいてくる。 「ええ。国が私なしでは『ゴミの分別』もできないと泣きついてきましたので。……あら、夫人。その耳に光るエメラルド、素敵ですわね。確か、旦那様からの結婚記念日の贈り物だと、先ほど自慢されていましたかしら?」 「え、ええ。そうなのよ」 「おかしいですわね。私の記録によれば、その石の購入代金は、お隣に立つ侯爵令息の『裏帳簿』から支払われていますわ。ついでに言うと、お二人が密会に使っている別荘の契約解除届、私が代わりに預かっておきましょうか? ……不法占拠は、私の美学に反しますの」 「なっ……!?」 夫人の顔がみるみる土気色に変わる。 周囲の貴族たちがざわめき立ち、扇子で口元を隠してヒソヒソと話し始めた。 「……シーラ、君、戻って早々飛ばしすぎじゃないかな!?」 そこへ、ようやくズボンを履き替えたゼクス王子が駆け寄ってきた。 傍らには、近衛兵の、ネストが氷のような表情で控えている。 そこが好きなのよね。 無口でありつつも、行動から滲み出る優しさとたまに見せる落ち着いた笑顔。 もう……好き!!! とは言っても、私もポーカーフェイスを崩さないように、こう言った。 「あら殿下。私はただ、社交界という名の不法投棄現場を清掃しているだけですわ。……あちらの公爵閣下も、愛人に産ませた隠し子の養育費を国庫から捻出するのはおやめなさい。明日、国税局から差し押さえに伺わせますから。」 「ぎゃあああ!?」 悲鳴が上がるたびに、社交界の仮面が剥がれ落ちていく。 衝撃のあまり口をパクパクさせているゼクス王子に、ネストが淡々と告げた。 「殿下。他人の不倫に衝撃を受けている暇があるのなら、ご自身の『不始末』について釈明を。……シーラ様」 「はい、ネスト。記録は取ってありますわ」 ネストは手帳
Terakhir Diperbarui: 2026-07-05
Chapter: 第5話 王子様は、壊れた椅子の修理法もご存じないのかしら?
私は、ふっと口角を上げた。 「素晴らしいわ。では、本日この瞬間をもちまして、デストーロ家はすべての『縁切り業務』を無期限で停止いたします。これは実質的なストライキ、いえ、自己防衛的措置ですわ」 私は扇子を閉じ、冷徹な瞳で周囲を見渡した。 「皆さん、ご存じないのかしら? 私たちがこれまで、どれほどの『ドブ板仕事』を引き受けてきたかを。 愛の国を汚さないために、皆さんの不潔な不倫、愛憎、金銭トラブル……それらをハサミで切り、地下水路で処理してきたのは我が家です。 明日から、その蓋が外れますわ。縁を切れなくなった愛人があなたの寝室に居座り、認知を免れたはずの隠し子が屋敷の門を叩き、泥沼の遺産争いが王都中に溢れ出す。……掃除屋がいなくなった後の部屋が、どれほどゴミ溜めになるか、身を持って味わうといいわ」 一瞬、会場が凍り付いた。 バカルス伯爵の顔が、見る間に土気色へと変わっていく。 「そ、そんなことは……」 「お好きなように会議を続けなさい。ですが、次に私の事務所の敷居を跨ぐ際は、今の発言を撤回するだけでなく、法外な特急料金と、地べたを這い蹲るほどの謝罪をセットでご用意いただくことになりますわよ。」 「シーラ! どこへ行っていたんだ、寂しかったじゃないか!」 そこへ、キンキラした重そうな服を揺らしながらゼクス王子が割り込んできた。 空気の読めない殿下の登場に、私は本日何度目かのため息を吐く。 「殿下、パートナーとしての義務は先ほどのお花摘みで『強制終了』いたしました。あとは、このゴミ溜め……失礼、華やかな舞踏会を、お一人で堪能なさいませ」 「えっ、シーラ!? 待ってくれ、僕が君の爵位を――」 「殿下、あなたの重すぎる愛で私のハサミを鈍らせないでいただけます? 今の私には、次の訴状を練るという重要な公務がありますの」 呆然とする王子と、青ざめた貴族たちを残し、私は最高に優雅なステップで会場を後にした。 デストーロ家がいなくなるとどうなるか? 明日、この国は「愛」という名のゴミに溺れることになるでしょうね。 せいぜい、結論の出ない会議でも、舞踏会でも、泥沼の中で踊り続けるといいわ。 もう私は民間人だもの! 「はい、今日の授業はここまで。皆さんも、将来は自分の腕一本で生きていけるよう、計算だけは完璧にしておくのよ」 私が教鞭を置くと、
Terakhir Diperbarui: 2026-07-03
Chapter: 第4話 不当な爵位剥奪会議と、泥を投げる淑女たちの舞踏会
「……っ、この、脳漿まで筋肉で構築された単細胞の不法占拠野郎がっ!!」デストーロ男爵家の私室に、淑女にあるまじき罵声が響き渡った。私の手にあるのは、贅沢に金粉がまぶされた舞踏会の招待状。そして、心底胸糞が悪くなるほど流麗な筆致で書かれたゼクス王子からの直筆手紙。『僕の隣に君がいない夜は、判決を待つ被告人のように孤独だ。どうか僕のパートナーとして、その美しい毒を振りまいてくれないか?』「……孤独ならそのまま独房にでも入っていろ。公用文書を私物化して愛を囁くなんて、職権乱用も甚だしいわ。即刻、最高裁に叩き込んでやりたい……っ!」私はその手紙をシュレッダーにかけたい衝動を抑え、深呼吸した。舞踏会。それは表向きは優雅な親睦の場だが、私――縁切り師シーラにとっては、絶好の「商売時」だ。愛の国アーモレにおいて、不純な関係を断ち切りたい貴族は数多い。シャンパングラスを傾けながら耳元で囁かれる「あの男と縁を切りたい」「愛人の戸籍を抹消したい」という切実な悲鳴。それは私にとって、不当な契約を破棄するやりがいに満ちた「救済の種」なのだ。だが、今回ばかりは勝手が違った。舞踏会当日。会場に足を踏み入れた瞬間、不自然なほどの沈黙と、その後に続く粘りつくような視線が私を襲った。「待っていたよ。愛しい、僕のレディ」目の前に現れたのは、眩いばかりのいかにも王子様のような(王子だけれども)キラキラした服に身を包んだゼクス王子。服重そう。彼は私の手を取り、指先にねっとりとした……法的に言えば『同意なき接触』に等しいキスを落とした。「……殿下。お会いできて光栄です。ですが、少々お腹の調子が『緊急事態」を告げておりますので、失礼いたしますわ」「えっ、シーラ? まだ一言しか――」「お花摘みに行ってまいりますわ。おほほほ。」私は王子の甘い声を物理的に遮断し、速攻でその場を離脱した。あんな猛毒を至近距離で浴び続けたら、こちらの精神衛生上の過失致死が成立してしまう。だが、逃げ込んだ先もまた「地獄」だった。「あら、見て。あのみすぼらしいアリのような『男爵縁切り師』が、第一王子のパートナーですって」「不吉だわ。あの女が歩くだけで、幸福な愛が腐っていく気がする。まるで汚物溜まりに咲いた猛毒草ね」「デストーロ家なんて、国から抹消されるべきだわ。あんな忌々しい商売、不潔すぎ
Terakhir Diperbarui: 2026-07-01
Chapter: 第3話 不法占拠の強制執行と、想定外の守護者
「……ク、クレイジーカード? 何だそれは。新しい魔道具の類か?」 混乱の極みに達したゼクス殿下の顔は、今や王族の威厳など微塵もない。当然ですわね。現代社会の信用システムの崩壊を宣告されたのですから。私は扇をパサリと閉じ、冷徹な判決を下すように告げた。 「殿下、理解力まで破産してしまいましたの? 簡単に言えば、あなたには私に近づく『資格』も、私を所有する『与信枠』も残っていないということですわ。至急、この場から退去してください。さもなければ――」 私が「衛兵を呼びます」と口にしようとした、その時だった。 「失礼いたします。何か問題でも?」 回廊の角から現れたのは、銀の甲冑を纏った一人の青年だった。近衛兵、ネスト。 彼はゼクス殿下の『壁ドン』体勢を視認すると、表情一つ変えずに歩み寄り、殿下と私の間にごく自然に(そして物理的に)割り込んだ。 「ネストか。……貴様、空気を読め。今、私は彼女のフローズンハートを解かして――」 「殿下。現在、王宮内での『令嬢の進路妨害』および『私的領域への過度な接近』は、近衛兵の指導対象となっております。……それとも、殿下。もしや、この石壁の強度を測定しておられたのですか?」 ネストは至極真面目な顔で、殿下がついていた壁をコンコンと叩いた。 「なるほど、先日修復工事が終わったばかりですからね。殿下の細やかな安全点検、敬服いたします」 「……なっ! 違う、私は……!」 王子の情熱的なアプローチが、一瞬で「ただの土木点検」へと格下げされた。可笑しくて吹き出しそうになったが、私は必死で「すんっ」とした表情を維持する。 「ネスト殿。見ての通り、点検は済んだようですわ。殿下をしかるべき執務室へ強制送還していただけますか?」 「承知いたしました、シーラさん」 ネストはゼクス殿下を(礼儀正しく、かつ抗えない力で)促すと、最後に私の方を振り返った。 「大丈夫ですか、シーラさん。少し、顔が赤いようですが……。体調が優れないのであれば、医務室まで同伴しますが」 彼は、ゼクス殿下のように私の胸元や扇をいやらしく見ることはない。濁りのない瞳で、真っ直ぐに私の『目』だけを見て、本気で心配している。 「……っ!」 やめて。そんな、公正な判決を待つ裁判官のような、一点の曇りもない目で私を見ないで。
Terakhir Diperbarui: 2026-06-26
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