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鍵宮ファング
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Novels by 鍵宮ファング

無価値スキル【価格表示】が覚醒したら、ガラクタで最強になった。

無価値スキル【価格表示】が覚醒したら、ガラクタで最強になった。

 商会で雑用係として働く気弱な少年クラドは、物の“値段”が見える特殊な力を持っていた。  だが戦闘にも商売にも役立たないその力は周囲から馬鹿にされ、彼自身も自分を「無価値」だと思い込んでいた。  そんなある日、木箱の底から異常な価格が表示された指輪を発見。  さらに奴隷市場で、誰よりも高額な値段を持つ少女ミリスと出会ったことで、クラドの運命が変わる。  商会を襲った強盗からミリスを守ろうとした瞬間、クラドのスキルは【価格操作】へと覚醒。  やがて二人の前に現れたのは、謎多き天才行商人ヴェルカ。 「キミたち二人、私が買おう」  無価値と蔑まれた少年と、値段を付けられた少女。  これは二人が“本当の価値”を見つける物語。
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Chapter: 第28話 コレがワタシの恩返し
「クラド、カグヤ。ここは任せて、先に行って」 ミリスの言葉を聞いた瞬間、二人は何を言われたのか理解できず、ただ|呆然《ぼうぜん》と彼女の顔を見返した。 ここへ残るということは、三人がかりでも勝てなかったゼロを相手に、たった一人で時間を稼ぐという意味に他ならない。「それはダメだ!」 真っ先に声を荒げたクラドは痛みも忘れたように身を乗り出し、今にも倒れそうなミリスの肩を掴もうと手を伸ばした。「そんなの絶対ダメだ! お前一人残ったら――」「クラド」 だがミリスが静かに名前を呼ぶと、それだけで続きの言葉は喉の奥へ引っ込んでしまう。「時間がないの」 ミリスは裏口へ視線を向けた。 遠くで鳴り続ける鐘の|余韻《よいん》が、まだ地下倉庫の空気を震わせている。 |夜天競売会《ノクスアウクティオ》は、既に始まっている。「でも!」「それに、今下手に動くのも|悪手《あくしゅ》です」 今度はカグヤが口を開いた。 普段通り落ち着いた声だったが、その指先は小さく震えている。「この空間には奴の能力がまだあります。下手に移動すれば、会場へ向かうより先に切り刻まれます!」 カグヤの言葉に反論できる者はいなかった。 実際、こんな地雷原の中を駆けるのは、無茶というより自殺行為に等しい。 それでもミリスだけは首を横へ振った。「だからミリスが残る」「いけません」 即座にカグヤが否定する。 その反応は、いつもよりずっと強かった。「ミリス殿が残る必要なんてありません」 カグヤは|俯《うつむ》き、唇を強く噛み締める。 そして、そっとミリスの肩に手を触れた。「貨物なんて、もうどうだっていいんです。私の目的なんかより、ミリス殿の命の方がずっと大事です!」 その場に沈黙が落ちた。 ミリスは目を見開く。「だから、お願いです」 カグヤはゆっくりと顔を上げた。 いつも冷静な紫の瞳が、今だけは少し潤んでいる。「一緒に、乗り切りましょう」 その言葉に、ミリスは小さく目を伏せた。 少しだけ。 本当に少しだけ、迷うように。 けれど次の瞬間には、もう答えを決めていた。「やっぱり、二人とも優しいね」 そう呟いた瞬間、クラドたちの身体がふわりと宙を舞った。「おいミリス! やめろ!」「ダメです! 降ろしてください!」 クラドが必死に腕を伸ばす。 カグヤも空
Last Updated: 2026-07-02
Chapter: 第27話 惨劇の華はソコに咲く
 ――パチ。パチ。パチ。 その音が、いつまでも|鼓膜《こまく》にこびりついて|離《はな》れなかった。 ゼロと名乗った男は、ナイフを軽く|弾《はず》ませながらラグナへ歩み寄る。「さて。裏切り者には、相応の罰が必要だよね」「やめ――」 ラグナが声を上げるより前に、ゼロの指が動いた。 何も|握《にぎ》っていない。何も振っていない。 それなのに、ラグナの右腕が突然、真横に裂けた。「ぁああああッ‼」 |悲鳴《ひめい》が|響《ひび》く。 血が壁に飛び散る。 ラグナは腕を押さえて転がりながら、それでも声だけは|抑《おさ》えようとしていた。「面白いね、その|我慢《がまん》」 ゼロは|無感情《むかんじょう》に笑う。 まるで虫の足をもぐように、何の|感慨《かんがい》もなく。「でももう少し、苦しむ顔が見たいな」 次の瞬間、今度はラグナの足が裂けた。「あ――っ‼」 その光景に、頭の奥で何かが弾けた。 ガキン、と音がするくらい強く、歯を噛み|締《し》める。 考えるより先に、足が動いていた。「――やめろ!!」 拳を握って、思い切り叩き込む。 ゴッ――。 手応えがあった。確かに、殴ったはずだ。 だがゼロは、表情一つ変えなかった。「……今、ぼくのこと殴った?」 殴られた頬を指先でなぞりながら、ゼロは首を傾げた。 本当に不思議そうだった。 怒りも敵意もない。 道端で犬に吠えられた人間の方が、まだ感情を動かす。 そう思うくらいに、表情には感情の色がなかった。「ミリス、カグヤ……今だ!」 叫ぶと同時に、二人が動く。 ミリスの周囲で、|瓦礫《がれき》が一斉に浮き上がる。「――飛べッ!」 砲弾のように加速した|瓦礫《がれき》が、ゼロへ殺到する。 同時に、カグヤの札が舞った。 《|斬《ざん》》 紫の斬撃が空気を裂き、ゼロの足元から這い上がる。 完璧な|挟撃《きょうげき》――そのはずだった。 しかしゼロは、軽く跳んだだけだった。 まるで散歩でもしているように、|瓦礫《がれき》の隙間を抜け、斬撃の上を踏み越える。 今の連撃を、紙一重で、しかも片手すら使わずに避けた。「ねえ、どうして?」 ゼロは本当に不思議そうな顔をしていた。 怒っているわけでもない。 挑発しているわけでもない。 まるで子供が当たり前の疑問を口にするみ
Last Updated: 2026-07-02
Chapter: 第26話 ソノ名、ゼロ
 ラグナはしばらく、|呆然《ぼうぜん》と|掌《てのひら》を見つめていた。 まるで、そこにあるはずの何かを探すように。 その視界の先で、倒れていた客たちが次々と目を覚ましていく。 失われていた価値が戻っていく。 《貴族令嬢:0G → 30,000,000G》 《魔道商会長:0G → 2,620,000G》 《王国騎士団員:0G → 1,980,000G》 価値は俺にしか見えないが、ラグナは|悟《さと》ったのだろう。 肩から力が抜け、彼女の口から|自嘲《じちょう》するような笑いが漏れた。「……負けたわ」 ラグナは深く息を吐く。 その息には、負けた悔しさが|滲《にじ》んでいた。 それでも、彼女の顔はどこか晴れやかだった。「……約束は約束よ。何でも言うことを聞いてあげる」 言って、ラグナは床へ背を預けた。 手足を大の字に開いて、ゆっくりと目を|瞑《つむ》る。「煮るなり焼くなり、ペットにするなり好きにしなさい」 それはそれで、潔すぎてちょっと不気味だった。 けれど俺は、持っていたキューを|棄《す》てて、その場にしゃがみ込んだ。 まだ膝がビリビリする。 痛みを押し殺して、ゆっくりと口を開く。「|夜天競売会《ノクスアウクティオ》の会場、その裏口の鍵をくれ」 俺の言葉に、ラグナは目を見開いた。「それと、裏口まで案内してほしい」「……アナタ、本気で言ってるの? 私はアナタたちの敵なのよ?」「何でも言うこと聞くって約束だろ?」 当然のように答えると、ラグナは呆れたように額を押さえた。「普通お金とかじゃないの? そもそも、そんなこと言われて|易々《やすやす》渡す奴が――」 その時、後ろから|慌《あわ》ただしい足音が聞こえてきた。「クラドー!」 振り返ると、ミリスがルーレットの盤上を走ってこちらに駆け寄ってくる。 続いてカグヤも、スカートの裾を押さえながら盤上に降りてきた。「無事で良かった」「いや、結構痛い。膝が……」「それは自業自得です。クラド殿はもう少し、計画的に無茶をしてください」「なんか冷たくない⁉」「作戦とはいえ、私たちを冷や冷やさせた|罰《ペナルティ》です」 早速覚えた言葉で刺された。ちょっと傷付く。 ミリスは子供をあやすように俺の膝を撫で、クスクスと笑っている。「あのー、痛いからやめて」 そんな
Last Updated: 2026-07-02
Chapter: 第25話 運がないなら、オレは実力を掴む!
 この後の話は、後でミリスとカグヤから聞いた話だ。 俺がルーレットの|卓《たく》から飛び出したせいで、所持枚数は残り十枚。「クラド殿は、必ず帰ってきます」「この状況でも信頼できるの? どう見たって、二人を身代わりに逃げたとしか思えないわ」 ラグナは目を細め、クスクスと声を殺しながら|嘲笑《ちょうしょう》する。 皮肉だが、そう取られても仕方がなかった。 きっと周りで倒れていた客たちも、同じ状況で絶望して逃げた結果、こうなったのだろう。 それでも、ミリスとカグヤは希望を捨てなかった。「クラドは、そんな人じゃない」「ミリスちゃんまで。あんな意気地なしな男、やめた方がいいわよ?」 話もそこそこに、ラグナはすぐさまチップの山を卓に|載《の》せる。「二番に百枚」 またしても迷いなく予想する。 しかしこれまでとは違って、カグヤたちは即決することなどできなかった。 理由は|至極単純《しごくたんじゅん》だ。 今までは、彼女が賭けた数字に便乗して、それに合わせた色か|偶奇《ぐうき》に賭けていた。 けれど、ラグナが途中で予想を変えて来た以上、同じ手はもう使えない。 かといって、賭けなければ負けを認めることになる。「……|八方塞《はっぽうふさ》がり、ですね」 どれだけ考えても突破口が見つからない。 カグヤでさえ、勝ち筋を|描《えが》けなかった。「でも、やるしかない」 ミリスは震える指でチップを押し出した。 置いた先の数字が何だったのか、彼女自身も覚えていなかった。「ミリス殿?」「せめて、クラドが帰って来るまで持ち|堪《こた》えなきゃ」 ラグナの予想は絶対。負け確実の捨て戦。「あらあら、ここで大逆転を狙わなくて本当にいいの?」「生憎、身を滅ぼす賭けに出るほど早計じゃありませんから」「ふぅん、可愛くないの」 |徐《おもむろ》に足を組み直し、ラグナは深いため息を吐く。 果たして結果は、言わずもがなだった。「結果は二番。ラグナ様、八百枚の獲得です」 追い打ちをかけるように、ディーラーが告げる。 こうして残りは五枚。最初の状況に逆戻りしてしまった。 もう後がない。 たとえ一枚ずつ賭けたところで、結果は同じこと。「もう終わり? 子供のわりに、結構頑張ったんじゃないかしら?」「…………っ」 カグヤの額から冷や汗が垂れる。 
Last Updated: 2026-07-02
Chapter: 第24話 アナタが欲しいの
 ――他人の幸運を奪う。 ラグナは確かにそう言った。 けれど、運なんてそんな|曖昧《あいまい》な説明だけで納得などできなかった。「運が良くなるってことか?」「いいえ、もっと単純よ」 ラグナは笑い、不気味に口を開く。 まるで恋人へ話しかけるような優しい口調で。「アナタたちが不幸になるの」 言いながら|鉄扇《てっせん》を開く。 同時に俺は床を蹴り、|槍《やり》の要領でキューを放った。 |先端《せんたん》は確かにラグナの|鳩尾《みぞおち》を|捉《とら》えていた。 あと数センチ――そのはずだった。 足裏に硬い感触が走る。 カチリ。 いつの間にか転がっていたチップを踏み抜き、身体が|僅《わず》かに傾いた。「ッ⁉」「あら、危ないわねえ」 ラグナは|鉄扇《てっせん》で|口許《くちもと》を隠した。 驚いたような声音だったが、その紫色の瞳には欠片ほどの焦りも浮かんでいない。 まるで最初から結果を知っていた観客みたいに。 俺が外すことも。 この攻撃が届かないことも、全部。「そんな長いものを振り回していたら、怪我をするじゃない」 |恍惚《こうこつ》とした表情を浮かべ、ラグナは|鉄扇《てっせん》を振り下ろす。 |銀閃《ぎんせん》。瞬きする暇もなく、キューはバラバラに切り刻まれていた。「それじゃあ――次はどこを壊そうかしら」 |鉄扇《てっせん》の先が、俺の首筋をなぞる。 恋人に触れるみたいに優しく。 なのに背筋には冷たいものが走った。「手足からがいい? それとも、その生意気な目から?」「どっちも、嫌だッ!」 俺はその場から逃げ出すように床を蹴る。 そしてダーツに|興《きょう》じていた|淑女《しゅくじょ》から矢を|拝借《はいしゃく》した。「すみません、借ります!」 《競技用ダーツ:500G → |魔鋼穿孔針《まこうせんこうばり》:8,000G》 三本同時に投げ放つ。 顔、|喉《のど》、胸。 三方向から放たれた鋼の針は、獲物を追う|猛禽《もうきん》のような速度でラグナへ迫った。  避けられるはずがない。 なのに。 ――ガシャン。 頭上で甲高い音が響く。 シャンデリアを支えていた鎖が突然外れ、垂れ下がった装飾が針に絡み付いた。「なっ――」 三本の軌道が同時に逸れる。 誰一人傷付けないまま。 まるで最初から
Last Updated: 2026-07-02
Chapter: 第23話 運はワタシに味方する
 ラグナは指先でチップを|弄《もてあそ》びながら、巨大ルーレットを振り返った。「それじゃあ、早速始めましょ?」「その前に、一つだけ聞かせてくれ」「なんでもどうぞ?」「このゲーム、本当にただのルーレットなのか?」 俺が|睨《にら》むと、ラグナは楽しそうに肩を震わせた。「|疑《うたぐ》り深い男の子は嫌われるわよ?」 余計なお世話だ。「仮にもここはアンタの|領域《テリトリー》。事前に何かイカサマを仕組んでいたっておかしくないだろ」「まあ、不安に思われても仕方ないわよね」 クスクスと笑ってから、ラグナは軽く二回、手を叩く。 すると突然、仮面を被った屈強なスーツ男が現れた。「私がこのゲームの|進行役《ディーラー》を担当いたします」 撫で付けたオールバックの頭を深々と下げ、男はゆっくりと口を開く。「ルールは簡単。先に全てのチップを失った方が敗北。原則相手と同じマスへ|賭《か》けることはできません」「……それだけなのですか?」 カグヤが|訝《いぶか》しむと、男は「ええ」と頷いた。 いかにもラグナと裏で組んでいそうだが、彼女は男に見向きもしない。「|但《ただ》し、いくつか|罰《ペナルティ》がございます」「ぺなるてぃ?」「禁止事項ってことだよ」 首を傾げるミリスにそう説明しつつ、男の言葉を待つ。「まず、この卓から半径二メートル――目安としてビリヤード、ダーツ、カードゲームエリアから出た際、|罰《ペナルティ》としてチップ十枚没収いたします」「随分と軽いんだな」「途中で|怖《お》じ|気《け》付いて逃げる子が多いもの」 ラグナは笑う。その微笑が妙に気に障った。「次に、|賭《か》けた後のマスの変更をした場合、|罰《ペナルティ》として三十枚没収いたします」 |抑揚《よくよう》のない声で男が告げる。 一度決めたら移動はできない、ということだろうか。 だがラグナは、ワイングラスを揺らしながら|企《たくら》みの|微笑《びしょう》を浮かべている。「そして最後。あちらのルーレットでございますが――」 と、男は奥の巨大なルーレットを見やり、「物理的な|干渉《かんしょう》を行った場合、|罰《ペナルティ》として百枚没収いたします」「ひゃ、百枚⁉」「ゲームの進行を|妨《さまた》げる行為、|故《ゆえ》に最も重い|罰《ペナルティ》を|課《か》させ
Last Updated: 2026-07-02
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