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鍵宮ファング
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Novels by 鍵宮ファング

無価値スキル【価格表示】が覚醒したら、ガラクタで最強になった。

無価値スキル【価格表示】が覚醒したら、ガラクタで最強になった。

 商会で雑用係として働く気弱な少年クラドは、物の“値段”が見える特殊な力を持っていた。  だが戦闘にも商売にも役立たないその力は周囲から馬鹿にされ、彼自身も自分を「無価値」だと思い込んでいた。  そんなある日、木箱の底から異常な価格が表示された指輪を発見。  さらに奴隷市場で、誰よりも高額な値段を持つ少女ミリスと出会ったことで、クラドの運命が変わる。  商会を襲った強盗からミリスを守ろうとした瞬間、クラドのスキルは【価格操作】へと覚醒。  やがて二人の前に現れたのは、謎多き天才行商人ヴェルカ。 「キミたち二人、私が買おう」  無価値と蔑まれた少年と、値段を付けられた少女。  これは二人が“本当の価値”を見つける物語。
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Chapter: 特別短編 殺戮の着せ替え人形
 クラドたちがミナスガルドを旅立って、三日後の真夜中。「くそ……アルベリオの役立たずめ……!」 ミザールは脇腹を押さえ、人気のない路地を急いでいた。 息を吸うたびに喉がひりつき、慣れない石畳に何度も足を取られる。 こんな惨めな思いをするのも、全てはあの男がしくじったせいだ。 角を曲がったところで足を止め、背後を窺う。 追ってくる足音はない。 それでもしばらく耳を澄ませてから、ようやく詰めていた息を吐いた。 街さえ出れば、どうにでもなる。 金を握らせれば動く連中など、いくらでもいるのだ。 乱れた襟元を直し、歩みを再開する。その時だった。「あら。こんな夜更けに大急ぎで、どこへ行くのかしら?」 鈴を転がすような声が、ミザールの足を止めた。 声の方を見やると、その先に少女が立っていた。 街灯の下、全身を包む黒い装束に、細い金の線が浮かんでいる。 |白磁《はくじ》のヴェネチアンマスクで素顔は窺えない。 だが少女の手に握られた短剣が、猫の目のように|爛々《らんらん》と輝いていた。「悪いなお嬢さん、ボクは見ての通り急いでいるんだ。そこを退いてもらおうか」「残念だけれど、それは無理な相談ですわ。ミザール様」 少女はマスク越しにミザールへ笑いかけ、一枚のカードを投げ放つ。 カードは足元の石畳を滑り、靴先に当たって止まる。「……なんの真似だ」 しかし少女は答えない。 ミザールは彼女を警戒しながら腰を屈め、カードを拾い上げた。 自分の名に続く細かな文字に目を走らせた途端、眉がぴくりと跳ねる。「まずはたしか、人身売買だったかしら」 指先が強張った。 少女はカードを見るまでもなく、そこに記された罪状をすらすらと読み上げていく。 海賊との取引も、口封じを命じた相手も、ミザールが金を使って揉み消してきたはずのことばかり――。「そして、商船襲撃の手引き……救いようもない悪党ね、あなた」「あの異国人共の船はアルベリオが勝手にやったことだ! ボクは何も――」「あら? まだどこの船とも申し上げておりませんけれど?」 少女の|指摘《してき》に、ミザールは口を|噤《つぐ》んだ。 仮面の奥から向けられる眼差しに耐えかね、手の中のカードを握り潰す。 ――この女は知っている。 どこまで調べたのかは分からないが、生かして帰すわけにはいかなかった
Last Updated: 2026-09-29
Chapter: 第37話 ヴェルカの目的、ソレゾレの目標
 その日の夜、宿屋で俺たちを待っていたのは、目を疑う光景だった。「おう、遅かったじゃねえか」 目の前にはヴェルカ。しかしその隣に、酒瓶がない。 床に転がっていた空瓶もなく、酒の臭いすらしない。「ヴェルカ、だよね?」「まさか入る部屋を間違えたのでは」「合ってるわ。こんな時に飲んでられるかよ」 ヴェルカは顎でベッドを示し、座るよう|促《うなが》してきた。 三人でベッドの縁に腰を下ろす。向かいの椅子に座るヴェルカを見て、俺は口を開いた。「それで、話ってなんだ?」 ヴェルカはすぐには答えなかった。 秒針の音がやけに大きく聞こえる。「ヴェルカ殿?」「クラド、ミリス。それと、カグヤ。……すまなかった」 深々と頭を下げられ、俺は思わず息を呑んだ。「ヴェルカ? どうしたんだよ、急に」「お前ら、アルベリオが競売会場で言ったこと、覚えてるか?」 真っ先に口を開いたのはカグヤだった。「利用されている、たしかそう言っていたような」「それだ。そのことで、お前らに謝らなきゃなんねえ」 顔を上げたヴェルカは、俺たちを見据えた。「アイツの言ってたことは間違っちゃいねえ。私は確かに、お前らを利用していた」「……利用?」 ミリスが目を丸くして、俺とヴェルカの顔を交互に見ている。 隣ではカグヤも眉を寄せていた。「それは……どういう意味ですか?」「言葉通りだ。私には私の目的があって、そのためにお前らに目を付けた」 俺たちに教えてくれたことも、ここまで一緒に旅をしてきたことも、その目的のためだったのか。 けれど、思い浮かんだのは、あのベリアルを前にした時の姿だった。 ヴェルカは自分の命を削ってまで、俺たちを立たせてくれた。 あれも全部、自分のためだったとは思えない。「……何のために?」 ヴェルカが少しだけ目を見開く。「怒らねえのか?」「理由も聞かずに怒れるかよ。アンタには、命だって助けてもらってるんだ」「……ったく」 ヴェルカは困ったように笑い、椅子の背にもたれた。「じゃあ、少し昔話に付き合ってくれ」 俺たちが黙って待っていると、やがてヴェルカは話し始めた。「八年前、私は《|夜明けの牙《デイブレイク》》ってギルドにいた。当時はそこそこ名の知れたギルドでな。私にも、仲間って呼べる奴らがいた」 仲間、と口にした時だけ、声が少し和ら
Last Updated: 2026-09-29
Chapter: 第36話 コレにて一件落着……?
「……ド!」 声がする。「……ラド!」 誰かが俺を呼んでいる。 そういえば、あれから俺はどうなったんだ? ベリアルを斬って、奴の身体が崩れて、それから――。「クラド!」「クラド殿! 起きてください!」 |瞼《まぶた》を持ち上げた途端、全身が一斉に痛みを訴えた。 肩も腰も頭も痛い。むしろ、痛くない場所を探した方が早そうだ。「|痛《ツ》ァッ!」 反射的に起き上がろうとした俺の|額《ひたい》を、ヴェルカが掴んで地面へ押し戻した。「バカ、そんなすぐ起きたら傷が開くだろうが」「だったらもう少し優しく戻せ!」「いっけね」 舌を出すヴェルカへ文句を言う間もなく、今度はミリスが胸へ飛び込んできた。「クラド! よかった、生きてた……!」「ミ、ミリス……|肋《あばら》、|肋《あばら》が……」 聞こえていない。 ベリアルを倒した直後に仲間の|抱擁《ほうよう》で死ぬのだけは、さすがに勘弁してほしい。「こらこらミリス殿。その辺にしておかないと」「だって、だって……」「このままじゃクラドが死ぬぞ?」 ヴェルカが笑う。 つい数秒前、自分が俺の頭を地面へ押し戻したことは忘れたらしい。 ……いや、ちょっと待て。「俺って確か、落ちてなかったか?」 そこまで思い出したところで、カグヤがミリスを引き剥がしながら振り返った。「あの後、ヴェルカ殿が受け止めてくれたんですよ」「ったく、最後まで世話の焼ける弟子だよ、お前は」 そう言うくせに、ヴェルカの口元は少しだけ緩んでいた。「……ヴェルカ」「あ?」「ありがとう」「き、気持ち悪ぃこと言うなよ。鳥肌立つだろ」「おい! 人が素直に礼言ってんだから受け取れよ!」「いらねえよ。現金で|寄越《よこ》せ」「結局金かよ!」 まったく。「それよりクラド殿、身体は本当に大丈夫ですか?」「全然大丈夫じゃない。たぶん骨、何本かいってる」「……治療していただきましょう」 そこでようやく、俺も大きく息を吐いた。 改めて周囲を見る。 夜市だった場所は見る影もない。 石畳は|抉《えぐ》れ、建物は崩れ、《|価格暴落《フォール・アウト》》に呑まれた一帯には瓦礫すら残っていなかった。 灰だけが、夜風に舞っている。 そして――ベリアルはいない。「……本当に、倒したんだよな」「ええ。気配は完全に消えてい
Last Updated: 2026-09-29
Chapter: 第35話 コレがオレたちの価値だ!
「俺たちの価値は、俺たちが決めるッ!」 叫び声が、灰色の街に響き渡った。 その声が消えてからも、しばらく誰も動かなかった。 |瓦礫《がれき》の山。崩れ落ちた家々。価値を奪われ、砂と灰だけになった|石畳《いしだたみ》。 その中心に立つベリアルは、まるで巨大な|城壁《じょうへき》のように俺たちを見下ろしている。『ほぉ。ならば見せてみよ、貴様らが決めた価値とやらを』 対して俺たちは……正直、限界に近かった。 それを|見透《みす》かしたように、ベリアルの口角が|僅《わず》かに上がる。 だが、その口が開くより早く――。「だが今の貴様らのような雑魚羽虫にできることなど、たかが知れている」 ヴェルカが芝居がかった声で、その続きを先回りした。「……なんて、いつまでも言われっぱなしは|癪《シャク》だからよォ! だから見せてやる!」 驚き振り返る暇もなく、ヴェルカは強引にミリスとカグヤのうなじを掴んだ。 二人が目を丸くするのも構わず、その手に力を込める。「この能力、後がキツいから嫌いなんだが……。贅沢は言ってられねえ!」 ヴェルカの手が、二人のうなじを掴んだまま強く光る。「ちょ、ちょっとヴェルカさん⁉」「ヴェルカ、何をするつもり?」「こっから先は、未来の私に“ツケ”てやる。ただそれだけだ」 その言葉と同時に、光が二人の身体を包み込んだ。「……え?」 ミリスが自分の手を見つめる。 さっきまで|震《ふる》えていた指には力が戻り、カグヤの傷口から流れていた血も止まっていた。「これ……」「体力と魔力をまとめて前借りした」 ヴェルカは二人から手を離すと、肩をぐるりと回した。「未来の私からなァ」「未来から……?」 カグヤが不思議そうな顔で問う。「未来から。だから後払いだ」 ヴェルカは笑った。「当然利子付き。最悪だろ?」 軽口とは裏腹に、その|額《ひたい》にはじっとりと汗が浮かんでいる。 俺は思わずヴェルカを振り返る。「おい、それって……」「なに心配すんな」 ヴェルカがニヤリと笑った。「師匠ってのは、弟子より先にぶっ倒れるくらいで丁度いいんだよ」「そんな理屈、聞いたことないぞ」「今私が作った」 そう言って、ヴェルカは俺の胸を軽く叩いた。「クラド。テメェもだ」「……俺も?」「当たり前だろ。まさか二人だけ元気にして、
Last Updated: 2026-09-02
Chapter: 第34話 オレたちの価値は、オレたちが決める!
 巨体が大きく揺れ、そのまま石畳へ崩れ落ちた。 ゆっくりと土煙が晴れる。 |焦《こ》げた胸板。 焼き潰れた右目。 額にはヴェルカの蹴り跡が深々と刻まれていた。 それでも、ベリアルは起き上がろうとはせず、ただ自分の|掌《てのひら》を見ていた。『ぐ……。何故、だ……』 低く唸るような声が響く。『何故、我に攻撃が届いた』 その問いは俺たちではなく、自分自身に向けられているようだった。『我に奪えぬ価値はない。我の前では全てが無価値となるはず』 大きな|掌《てのひら》――その中央に空いた風穴を見つめ、ゆっくりと握る。 触れたものの価値を奪う|掌《てのひら》に、初めて付けられた傷なのだろう。 その姿を見て、ヴェルカが鼻で笑った。「どうやら神様ってのも、案外頭は固ェみたいだな」 神を名乗るには、随分と間抜けな顔だ――そう言わんばかりに肩を|竦《すく》める。 ミリスが俺とベリアルを見比べる。「結局、どうして攻撃が当たったの?」「私にも、全く見当が付きません」 屋根から降り立ったカグヤが静かに首を振った。「私の符術は、触れられた瞬間に崩壊しました。それなのに、クラド殿の攻撃だけが通った理由は……」「そこなんだ」 俺は二人へ視線を向けながら言った。「考え方が、逆だったんだよ」「逆?」 ミリスが瞬きを繰り返す。「じゃあ逆に聞くが、お前ら、音を殴ったことはあるか?」 その横から、ヴェルカが割って入ってきた。「……え?」「光でもいい。掴んだことは?」 あまりに突飛な問いに、二人は揃って黙り込む。「そんなのできるわけ――」 言いかけたミリスの横で、カグヤが眉を寄せた。「というより、それと今回の戦いに何の関係が……」「ああ、普通なら関係ねえ」 ヴェルカはニヤリと笑う。「けど今回は、その"普通"が答えなんだよ」 俺も頷いた。「俺の能力も、ベリアルの能力も、本質は同じだ」 |掌《てのひら》を見つめながら続ける。「触れたものの価値を扱う能力。ただ、俺は価値を変えられて、あいつは奪う。それだけの違いだ」「つまり……同じ条件でしか発動しない?」 カグヤが静かに口にする。「そういうこと」 するとミリスが、まだ納得できない様子で首を傾げた。「でもカグヤの攻撃だって、光みたいなものだったよ?」「いえ……厳密には違います
Last Updated: 2026-08-17
Chapter: 第33話 コレがオマエたちの価値
 急ぎ足で競売会会場――オペラ座を出ると、|露店《ろてん》の連なった|夜市《バザール》が広がっていた。 ほんの数分前まで笑い声で満ちていたはずの夜市は、もうそこにはない。 果物を抱えた商人は荷車を放り出し、家族連れは悲鳴を上げる子供の手を引いて逃げる。 行き交う人々が我先にと押し合い、倒れた誰かを踏み越えて逃げて行く。 その中心に、夜空を背負うように立つのは、三メートルを超える怪物。 ベリアルは逃げ惑う群衆など眼中にない様子で、一軒の露店を掴み上げた。 次の瞬間、その屋台は砂のように崩れ始めた。 木材も、布も、並べられていた雑貨も。 触れられた全てが色を失い、灰となって夜風へ溶けていく。『|脆《もろ》い』 ベリアルは|掌《てのひら》に残った灰を見つめ、退屈そうに呟いた。『価値無き器は、触れるだけで崩れる』 言葉と同時に近くの露店を蹴散らす。 その風圧一つで、周囲のテントが舞い上がり、小さな|瓦礫《がれき》が飛び|荒《すさ》む。「皆さん、下がって!」 《|硬《コウ》》 カグヤが間髪入れずに札を切り、|障壁《しょうへき》を展開した。 それでも勢いがついた|瓦礫《がれき》は、その障壁すら突き破って襲いかかってくる。『|先刻《せんこく》の人の子か。何をしに|此処《ここ》へ来た』「そんなの決まってるだろ! オマエを止めに来たんだ!」「街を壊すなんて、そんなの許さない!」『|戯言《ざれごと》を。貴様らのような無価値なデク人形に、我は倒せぬ』 ベリアルは俺たちを見下しながら、一歩踏み出す。 地面が大きく揺れ、思わず転びそうになる。『だがこの我に立ち向かう勇気、賞賛に値する。価値なき勇気だがな』「図体だけじゃなく、態度もデカいとはなァ。ハッキリ言って、私はアンタが嫌いだぜ」 ヴェルカは鼻で笑い、スカートの|裾《すそ》を|豪快《ごうかい》に引き裂いた。 そして先程のお返しと言わんばかりに右脚を踏み出し、ベリアルの顔を|睨《にら》み上げた。「テメェにも教えてやるよ。人間サマの本気がどれくらい恐ろしいモノかをよォ!」『|雑兵《ぞうひょう》ほどよく吠えるものよ。まずは貴様から血祭りに上げてくれる』 巨大な拳が、ゆっくりと持ち上がる。「来るぞ!」 俺が叫ぶより早く、ベリアルの拳が大地に叩き付けられた。 轟音。 |石畳《いし
Last Updated: 2026-08-04
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