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赤井ちひろ
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Novels by 赤井ちひろ

嫌われ公爵に転生したら初恋の人にそっくりな執事の愛が重すぎました

嫌われ公爵に転生したら初恋の人にそっくりな執事の愛が重すぎました

幼い頃から想い続けた幼馴染・夏樹へ、一世一代の告白をしようとしたその日。僕は事故で命を落とし、家族から嫌われ虐げられている公爵・リヒトへ転生した。 そこで出会った専属執事は、初恋の夏樹にそっくりな男・クロード。けれど彼は夏樹とは正反対だった。傷ついた僕を誰より案じ、甘やかし、守り、過剰なほどの愛を注いでくる。 前世では叶わなかった恋が、今世では重すぎるほどの溺愛に変わる――。 転生×主従×執着愛。甘く切ないハッピーエンドBL。
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Chapter: 夏樹の顔をした執事
「ここはどこ」  男は僕の問いには答えず、傍らの机から白い布を取り上げると、迷いなく僕の腕へ手を伸ばした。 「触らないで」  想像以上にか細い声が部屋に響いた。  反射的に腕を引こうにも、痛みで全く動かない。  傷口が裂け、新しい血が床へ滴り落ちた。  男は困ったように眉を下げる。 「そのままでは傷が悪化いたします」 「大丈夫…………」  拒絶と映ったのだろうか、夏樹の顔をした知らない男が、辛そうな表情をして、僕はそれに心がざわついた。  こんな知らない場所で、知らない男に触れられる理由なんてない。  ……いや。  知らない男じゃない。  その顔を見れば見るほど、心臓が苦しくなる。  同じだった。  高校の頃より少し大人びてはいるけれど、伏せた睫毛も、少し癖のある黒髪も、静かな眼差しも。なんなら、その声も。  全部。  全部、夏樹だった。  夏樹が、僕を心配している。僕に優しそうに触っている。  ここはいったいどこなのだろうか。 (なんで……)  喉が詰まる。 「なんで、ここにいるんだよ……」 男は一瞬だけ目を細めた。「リヒト様? 何をおっしゃっておられるのですか」  穏やかな声だった。  それなのに。  僕は、その一言だけで背筋が凍る。 「……違う」 「?」 「僕はリヒトなんて名前じゃない!」  男は何も言わない。  静かに僕を見つめ、わずかに困っている様に見えた。  その沈黙が、かえって怖かった。 「ここはどこなんだ!」 「エヴァーハルト公爵家別邸でございます。意識を失って帰ってこられたので、動揺されているのでしょう。お水を持ってまいります」   「……どこってきいてるんだけど?」   「…………? リヒト様のお部屋ですよ」  何を言っているんだ、この人は。  公爵?  別邸?  意味が分からない。 「ふざけないでよ」 「ふざけてはおりませんが、どうされましたか。誰かお医者様をお呼びして」   「ドッキリなら、もう十分だから」   「……どっきり? どっきりとは何でしょうか。そんな事よりお医者様が来る前に、いつもの処置をいたしますから、うつぶせになって下さい」 「待って、何言ってるかわからないんだけど」   初めて男の表情が揺れた。  本当に困っている?
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-09-02
Chapter: 死んだはずなのに
  そのとき、夏樹のスマートフォンが鳴った。 やべっ 小さな声が夏樹から漏れる。 「もしもし。あ、ごめん。え? いや、虫が煩くてさ、ゴキブリ退治してたらちょっと遅くなっただけだよ。今から向かうよ。そんな怒るなよ、なんでも買ってやるから」  僕の言葉を遮るように、夏樹は画面へ目を落とした。 その顔はまるで破顔一笑。 こんな嬉しそうな彼を、僕は見たことがなかった。   彼は傘を肩で支えながら、その場で話し出し、もう僕の事なんか、いないも同然だった。 あと少しだった。 ほんの数秒あれば、言えたはずだった。  僕は雨に濡れた袖を握りしめ、乱れた呼吸を整えようと深く深呼吸をする。 空唾を嚥下し、そのうち口内に唾が溜まり出すのを感じていた。 口の中に溜まるその異様な感覚に呼応するように、喉から熱が込み上げ、目じりから熱い何かが零れてくる。 泣くな。 電話が終わったら、今度こそ言う。 そう決めたはずなのに、通話を終えた夏樹の表情は、先ほどまでとは違っていた。「悪い。行かないと」「え?」「りかちゃんがもう駅にいるんだよ」「でも、僕の話は」「そんなの今度でいいだろ。どうせ、大した話じゃないんだし」 ————なんで決めつけるの。「夏樹」「また連絡する」 それだけ言うと、彼は駅とは反対の方向へ歩き出した。 赤信号になりそうなギリギリを、夏樹は一気に走り出す。  僕は咄嗟にその背中を追った。「待って」 聞こえなかったのか、夏樹は振り返らない。「夏樹、待ってよ!」 強く踏み出した足が雨に拐われ、濡れた縁石で滑った。 身体が車道側へ傾き、手から離れた傘が、雨風に煽られて宙を舞う。 顔を上げた瞬間、白い光が視界いっぱいに迫っていた。「え」 甲高いブレーキ音と、誰かの叫び声が重なる。 逃げなければと思ったのに、身体は凍りついたように動かなかった。  最後に見えたのは、こちらへ駆け戻ってくる夏樹の顔。 「最後くらい、僕だけを見てくれたね」 小さな独り言は、僕の本心だったのだろう。  彼が何かを叫んでいた。 けれど、その声が僕の名前だったのかさえ分からないまま、鈍い衝撃が全身を貫いた。 結局、僕は何ひとつ伝えられなかった。 たった「好き」の二文字さえ。 ————————————————————
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-09-02
Chapter: 最後の告白
  真っ白なシーツに、赤い血が散っていた。 (なんだよ、これ)  ぽたり。 ぽたり、と。  真っ白なシーツは一面の銀世界のようで、その上に咲いた血は曼珠沙華を思わせた。 その赤が自分の身体から落ちているのだと気づくまで、少し時間がかかった。僕は震える掌を見つめ、指先から手首へ伝う生温かな感触に、遅れて息を呑んだ。 (……僕、死んだはずじゃ)  身体を起こそうと腕へ力を込めた瞬間、皮膚を引き裂くような痛みが走る。(痛っ……) 両腕には、何かに強く縛られていたような傷が残っていた。擦り切れた皮膚の間から鮮血が滲み、腕を動かすたび、新しい赤い血が白い寝具へ落ちていく。 痛みがある。(痛覚があるということは、もしかして生きているのか?)  肌へ張りつくシーツの感触も、荒く上下する胸の苦しさも、夢だと片づけるにはあまりに生々しかった。  僕は息を整えながら、見覚えのない部屋を見回した。  天井はやけに高く、淡い金色の装飾が複雑な蔓草模様を描いている。窓を覆う深紅のカーテンは、僕の部屋にある安物とは比べものにならないほど重厚で、壁際には天井へ届きそうな書棚が並んでいた。 病院ではない。 もちろん、僕の部屋でもない。 「ここ、どこだよ……」 呟いた途端、さっきまでぼんやりと見えていた景色が、いっきに鮮明に映る。  ――数分前、僕――|妹尾晶《せのおあきら》は、車にはねられて死んだ、はずなのだ。 ————————————————————————————  二十二歳。 四月からは県外の会社へ就職することが決まり、生まれてから一度も離れたことのない町とも、今日でしばらくお別れになる。  だから、今日だけは、どうしても伝えたかった。  物心がついた頃からずっと隣にいた、幼馴染の|夏樹《なつき》に。 ――好きだって。  返事なんて勿論期待していない。 付き合ってほしいなんて、最初から望んでいない。 そんなことあるわけがない。  ただ、一度だけ。 たった一度だけでいいから。 この胸の奥へ押し込め続けた想いを、自分の言葉で伝えたかった。 玉砕覚悟。 幼馴染以上の何物でもない。 とっかえひっかえ変える、セフレにすらなれない。  だから、今日を逃せば、きっと僕は一生言えない。 ――弱虫で、
ปรับปรุงล่าสุด: 2026-09-02
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