Chapter: 第六十三話 備える女共 第十二週一日目夜――。 アフターを終えた玲奈は、五州隷嬢の寮の自室に到着した。 その表情は妖艶で、満足したものだ。 時折、手をミニスカート越しに股へ近づけながら、今日のセックスの余韻に浸っていた。「んんッ――。今日の彼氏は大きかったから……まだ、痛いわね。それも気持ちがいいわ」 髪を撫でながら、お酒とセックスで火照った身体が心地よい。 まだ、膣内は愛液と精液のカクテルを楽しんでいるだろう。 だが、玲奈は寂しさも同時に感じていた。 アフターの時は脳内物質が大量に分泌して、楽しかった。 アルコールも脳を一時的に麻痺させて、強い快感を得ていた。 それが切れれば、相手が欲しくなる、もっと一緒に居たいと願ってしまう。 それは薬物にも似た依存である、と分かっていても抗えない。――誰でもいいから、わたしと一緒に寝て……、までは行ってないけど。 その境地に達する確率はゼロではない。 玲奈はそれを認識しながら、堕ちていくことを理解しているのだから。 自室に入り靴を脱いで、玖段を棚に置く。<Yes。RENA-09。トクガワ=ルリがそろそろ到着するようです>「? 躾? ……ってああ、隷嬢強化薬の投薬ね」 そのタイミングで、トクガワ=ルリが訪れた。 トクガワ=ルリはいつものように金髪をポニーテールにして、スクラブスーツと白衣を着こんでいた。 夜勤なのだろうか? IDカードを首からぶら下げ、メイクはナチュラル……患者に不快感を持たせないためか。 玲奈がベッドに仰向けになると、すぐ腕の血管を触られる。 視線が交差する。 ルリは面白そうなものを見る顔で、玲奈に話しかけてきた。 これも隷嬢としての管理の一面だ。「貴女はずいぶんと羽目を外しているようね。ああ、嵌めているのかしら?」「はい……。遊び
Last Updated: 2026-11-06
Chapter: 第六十二話 買うモノ共 第十二週一日目、快楽市場閉場直後。 亡都に響き渡る五回の鐘の音を聞くと、アニムスは無表情のままホテルの部屋から出ていく。 隷嬢である玲奈は|Pエネルギー生産《セックス》の余韻も何もなく、ただ火照った身体をベッドの上で鎮めるだけだ。 フィニッシュは|後背位《バック》だったため、今の体勢は四つん這いで尻を突き上げたものだ。 ゴポッと膣から愛液と精液、ほんのわずか破瓜の血が混じり合い、太腿を伝ってベッドに零れる。「はぁ――……ッ! はぁ――……ッ!」 呼吸は荒く、胸を上下させる。 耳はキーンとして、視界は時折チカチカとする。 処女を捧げた秘部は、名残惜しそうに熱く疼いている。 それが快楽に堕ちた証明だというように、身体が痙攣したようにぴくぴくと動く。 玲奈が動けるようになるまで、少しの時間が必要だった。 ゆっくりと玲奈はシャワーを浴びて、身体についた精液と愛液を排水溝へと流していく。 汚れた身体を清めたい、汚された証を消したくないという二つの感情が入り混じる。「……隷嬢の存在確率もあるから、ね」 人間として、隷嬢としてセックスで金を稼ぐ。 快楽に堕ちて、復讐を果たすため。 この世界の処女を奪い、不吉を孕ますため。 水滴をタオルに含ませるように。 心から漏れる感情が、空間に発散する。 ショーツに足を通し、ゆっくりと引き上げる。 胸を寄せ上げながら、ストラップレスブラジャーのホックを留めた。 玲奈がいつものゴシックロリータ風のコルセットドレスを身に纏えば、異世界にある亡国の姫の様に見えるだろう。 あるいは、上気した頬、白い肌に赤い跡が残るところから、娼婦に堕とされた淫靡な姫かもしれない。 玖段を佩きながら、ほうッとした表情となる。 今日の感想を、思わず漏らす。「……巨根ね。慣れるまで痛かったけど、慣れたら慣れたで気持ちいい
Last Updated: 2026-11-04
Chapter: 第六十一話 ヤミを解するモノ共 第十二週目、一日目の朝――。 カーテンから漏れる朝日を感じると、玲奈は自然と瞼を開いた。 上半身を起こして、布団を胸と腕で挟みながら、髪を顔から払いのけた。 涎を垂らしていたようで、髪が口元に貼り付く。 首がかくんと動く。 指が布団カバーの縫い目を触り、その数を数える。 それも、無意識だ。 ナイトブラジャーを着けた胸が上下し、呼吸の音だけが部屋に響く。 唇から涎が一筋糸を引いて、布団へと落下する――それに合わせて、玲奈の昨夜の記憶が蘇り始めた。 十一週は|Pエネルギー生産《セックス》でお金を稼ぎ、アフターで癒され、瞬く間に日々は過ぎ去っていった。 頑張ったご褒美というわけではないが、昨日は溜まったうっ憤を晴らすようにアフターでお金を使った。 毎日アフターに行っていたが、やはり週末のアフターは別格だ。 美味しい酒と料理。 アニムスとの|疑似恋愛《トーク》。 お姫様のように扱われ、ちやほやされる。 それが玲奈の気持ちに火を着けた。――もっと、もっと気持ちよくさせて。――|Pエネルギー生産《シゴト》じゃない、|疑似恋愛《アフター》のセックスをして……。 自らドレスを脱ぎ、アニムスの肉棒を愛液が満ちる秘部へ貫き繋がった。 玲奈は喘ぎ声をあげ、下腹部に滾る欲望のまま腰を振った。――もっと、もっと気持ちよくして。――お金を払うから。――わたしを愛して。 玲奈の脳がアフターを思い出すと、下腹部が自然と愛液を分泌し、ショーツを濡らす。 そして――玲奈の瞳に力が宿った。<Yes。RENA-09。ご機嫌はどうでしょう?>「……まあまあ、ね」 同時に玖段の挨拶に反応する。「時間を忘れるくらい楽しんだから、悪くないわ」 玲奈は髪を梳き、一房指でくるくると弄り始めた。 何かを考えたり、思い出したりするときのくせになりつつある。 だ
Last Updated: 2026-11-01
Chapter: 第六十話 堕ちる女 第十週六日目朝――。 「んん……」 カーテンから漏れる朝日が、玲奈に一筋の光を与えた。 それに刺激されて、瞼が動く。 だが、脳がまだ反抗するように、ベッドの端まで転がる。 その反抗は身体に関係ない。 いつもの時間になって、身体が自動的に上半身を起こすのだが――。 瞼が半分だけ持ち上がり、視線は虚ろを彷徨う。 乾いた唇を無意識に舌先でなぞった。 胸が上下し、呼吸の音だけ部屋に響く。 しばらくすると、玲奈が昨夜の記憶を思い出しなぞる。――過去と未来の自分の境界を失い、現実の自分を再構成した。――店長のイッシキからもらったバレッタ。人間の証。――それを奪った女。そして、アニマとの戦い。 脳が心と身体を繋ぐ。 自分は隷嬢でもあり、人間だ。 人間として、この世界に復讐する。 隷嬢として、この世界で金を稼ぐ。 体の中で、二つの存在確率が変動するだけ。 それを思い出すと、玲奈の瞳に光が宿った。――不確かなことは、不確かであると数字で認識することが大事。――この世界を破壊することも、市場で金を得ることも。 グッと力が宿ると、玖段がいつものように挨拶をしてきた。<RENA-09。ご機嫌いかがですか?>「そうね。悪くないわ。アフターに行けなかったのは残念だけど」 玲奈は艶のある黒髪を撫でる。 天使の輪と呼ばれる、室内灯を反射するほどのキューティクルは玲奈の自慢だ。 だが、昨日はそれがかすむほど激闘をしたため、疲れが出たようだ。 Cランクアニマ『バタフライ』――。 強敵であり、玲奈は苦戦を強いられた。 だが、そのおかげか? トラウマを植え付けられたアニムスにレイプされてから、ほとんど寝れなかった玲奈だったが、今日は休息が取れたようだ。 あるいはイッシキが、玲奈の心を癒したのかもしれない。 脳の処理が昨日よりも少しだけ軽い。
Last Updated: 2026-10-30
Chapter: 第五十九話 怒れるモノ共 第十週五日目夕方――。 逢魔が時。 昼と夜が混じり合うその時、人は魔と出逢う。 そしてここは、魔が棲むエネルギープラントの路地裏だ。 そこはバロック調のホテルとパイプが繋がり、人工の迷宮を思わせる。 玲奈はそこで、自身のバレッタを奪った女を追い鬼と化す。――|バレッタ《ソレ》は隷嬢と人間のわたしの存在を認めるモノ……。――奪った奴は殺す。 玲奈は絶対零度の冷気を纏い、暗い瞳となる。 黒地に銀のゴシックロリータ風のコルセットドレスが玲奈に異世界の姫を思わせる。 だが、今の玲奈を他人が見ればひれ伏すだろう。 恐怖におびえるほどの憤怒。 艶のある黒髪、スカートの裾が風圧で流れても、それを気にしない。 ただ、殺意だけが走る時間と共に増していく。「――隷嬢のわたしが追い付けないッ!」<Yes。隷嬢は人間を傷つけることはできません。手加減を本能でしているような状況です> 目の前の女はショートボブで、勢いよく角を曲がる。 頭の中にあるナビに従うように。「だからと言って、はいそうですか、なんていうわけないでしょうッ」 玲奈は今、国を滅ぼされた光景を見た、怒れる姫のようだった。――傷つけるわけじゃない、バレッタを取り返すだけ……。 必死で憤怒を抑えつつ、玲奈は建前を貫く。 筋肉に力が入り、地面と靴の衝撃が強くなり、さらに前へと加速する。<Yes。――ッ?> 迷宮を走る先の女を玲奈はもう少しで捉える瞬間だった。 玲奈の意識の空隙を通るように、女は真横へバレッタを投げた。――なッ……! 玲奈が急ブレーキをかけて、スピードを殺す。 靴が地面を削る音が響き、髪が宙を舞う。 視界を確保するため手でそれを弾くと、バレッタは別の通りに居た女が受け取っていた。 リレーのバトンのように、それを受け取った女は走り出す。
Last Updated: 2026-10-26
Chapter: 第五十八話 踏み越える女共 第十週五日目夕方――。 カランッ――。 イッシキの言葉を背後に聞いて、玲奈は店を出た。 亡都に吹く風は少し冷たい。 コルセットドレスのミニスカートがふわりと波打つ。 そして、イッシキからもらったバレッタのリボンも同じように。 それが嬉しくなる。――人間として認められているようで……ね。 玲奈がそっとバレッタに触れると、人間としての存在になるようで、女子高校生らしい顔となる。 表情は完全に暗さがなくなったわけではない。 ただ、玲奈の身体に宿る心に出る存在の確率が異なるだけだ。 過去である|禁断の箱《パンドラボックス》、現在である数字の牝、未来である憎悪と快楽を統合した結果、人間と隷嬢の二つが同時に存在する。――人間の存在価値は市場で測れないのよ。 仕事に対する対価としての金はあっても、人間と人間の繋がりは確率で存在する。 その確率はもしかしたら、金で変化するかもしれない。 だが、それだけだ。 繋がり、思いやる。それが新たに何かを生む。生まれる。 玲奈はそう考えると、心が少しだけ柔らかくなった。<RENA-09。エネルギープラントに向かうのですか?>「……ううん。風にあたりたいだけ」 玖段の問いに、玲奈はそう答えた。 バレッタは、玲奈のゴシックロリータ風のドレスによく似合っていた。「イッシキさんのセンスはいいわね」<RENA-09。惚れるには年齢差がありすぎます> 玲奈は玖段の言葉に思わず、くすくすと笑う。 その雰囲気は女子高生同士の他愛もない会話、というものだ。 玲奈は髪に手櫛を入れて、一房くるくると指で弄る。「人間的には好きだけど、恋愛感情はまた別よ」<Yes> 玲奈はゆっくりと手を天に向けて、伸びをすればぽきぽきと背中から音が鳴った。 形のいい乳房と尻が強調されたようで、道行く男たちの視線を集める。 だが、
Last Updated: 2026-10-25