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字捨美衣
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Novels by 字捨美衣

わたしは金融商品『隷嬢』です。―銘柄RENA-09―

わたしは金融商品『隷嬢』です。―銘柄RENA-09―

玖段玲奈(くだん れな)は、“隷嬢”として上市された。 隷嬢である少女の快楽は数値化され、 身体は市場で売買される。 快楽指数。 Pエネルギー。 隷価。 それらはすべて、玲奈の価値だった。 アニムスに抱かれ、 快楽に堕ち、 アニマと戦い、 生き残る。 勝てば価格は暴騰し、 負ければ壊れる。 そして地下では、 少女の失神、妊娠、死すら賭けの対象になっていた。 「もっと壊れて。もっと価値を上げて」 これは、 快楽を“市場”に変えられた少女が、 破滅と欲望の中で抗う物語――。 ――わたしの生と性を賭けて、この世界に復讐する――。
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Chapter: 第六話 数字の重さ
 玲奈が快楽市場に上場して第一週、二日目の夜――。 五州隷嬢の寮、玲奈の個室――。  玲奈はベッドの上で仰向けになったまま、しばらく動けなかった。 天井は白い。 ――この部屋にカメラがないのは、温情のつもりかしら? 汗はすでに冷え、シーツが肌に張り付いていた。 下腹部には鈍い違和感が残り、脚の奥は重く、思うように閉じられない。 眼を腕で隠し、頭を空っぽにしようとする。 耳を澄ませば夜風が吹き抜ける音が聞こえた。 ――逃げられそうにないし、向かうしかないわね。 そう考えて、玲奈はベッドから起き上がり机に向かった。<RENA-09。本日の詳細レポートを表示します> 玖段の声と同時に、壁面にディスプレイが浮かぶ。 こういうところは異世界感を思わせず、どちらかというとSF感が漂う。 そんな玲奈の想いとは別に、レポートが描かれるた。 『|P《快楽》エネルギー生産量推移』、『快楽指数グラフ』、『アニムス射精回数』、『快楽市場取引履歴』が並ぶ。 玲奈はそれをぼんやりと見つめる。  それは――玲奈とアニムスの|Pエネルギー生産《セックス》記録だ。 ――受け入れる気はないけど、本当に隷嬢はモノ扱いね。 玲奈は髪の毛に手櫛を入れて、ため息を一つ吐くのだった。◇◇◇ 玖段が淡々と説明を開始する。<RENA-09。本日の隷価乱高下の主因を説明します> 玲奈は自分が|エネルギー資源《モノ》扱いになっている、と思った。 Pエネルギーを産みだしている女性、ではなくPエネルギーを産みだす原材料、というところか。――最悪ッ……。 心の中で悪態をつき、この異世界に憎悪した。 視線の温度は下がるが、それを表情に見せず、玲奈は玖段の言葉を待つ。 玖段はグラフィカルに表示を拡大、縮小を開始する。 まず、Pエネルギー生産時間と量の推移だ。<RENA-09。Pエネルギー生産量は3.2|org《オルガ》です。新人隷嬢とはいえ少ないです。通常属性が処女であっても、二日目は5から10orgを目指せます> 次に、Pエネルギー生産時間と快楽指数の推移に変わる。 グラフは折れ線が乱れている。<RENA-09。快楽指数は0.4から1.2です。通常隷嬢の快楽指数は非処女で0.7から1.3で上下します。処女でプラス0.2程です。アニムスのランクにも影響
Last Updated: 2026-08-02
Chapter: 第五話 自覚するモノ
 玲奈が上場して第一週二日目の朝――。 <RENA-09。起床時間です> 知らない声。 それに囁かれて、玲奈は瞼を開ける。 目覚めと共に、部屋の明かりがついた。――わたしの部屋、こんなだったっけ? 頭が再起動するまでぼうっとする。 白い天井。 無機質な壁。 机の上にはモニターがあった。 時折教科書やノートが散乱して、慌てて鞄に入れるのだが――。 それもない。  細いカーテンの隙間から、薄い光が差し込んでいる。――どこ、ここ……。 次いで、身体の重さが思考を追い越した。 腰が鈍く、股が痛い。 喉が渇いている。――|隷嬢《レイジョウ》、|P《快楽》エネルギーの産出……、アニムスとのセックス。 脳が一昨日からの行為を刻み込んでいた。 頭から布団をかぶり、恐怖におびえる。 身体がカタカタと震え、思い出したくないモノを呼び起こす。 恐怖から、親指を口に咥え舐めた。 だがそれすらも、アニムスとの行為を思い出させる。――壊れる……。 自分が壊れていく音を聞いて、徐々に身体が冷えていく。 恐怖も、悪意も、憎悪も。 ――全て止めてしまえば、いい。 うるさいほど軋むベッド。 自分の喘ぎ声。 記憶が出ないように、全てを凍てつかせる。 ――トクガワ=ルリ。五州隷嬢……。隷嬢に落とした奴らへ復讐する……。 玲奈の瞳に絶対零度が宿る。 冷めた心が告げる。 ――復讐するために、まずこの世界を知ることが大切だ。 そうして、玲奈はようやく動き出す。<RENA-09。隷嬢としてのお仕事です>「……わたしが嫌だといったら?」<No。残念なことですが、拒否権はありません。時間になったら、RENA-09の身体が自動で移動するだけです>「……最悪……。それで自動でセックスするってことね」 玲奈がこの世界に関わり始めてから、自由が存在しない。 だが、ふと思う。 ――自由になんてならなくていい。――すべてのエネルギーを奪って、何もかも動かなくなればいい。◇◇◇ 玲奈は隷嬢の服を着る。 黒を基調とした銀の刺繍が入った、コルセットドレス、ニーハイソックスを着用する。 ストラップやベルトが多用されていて、趣はゴシックロリータ風だ。 「ベルト、コルセットでわたしを縛り付けているみたいね。さしずめ、罪人の制服かしら
Last Updated: 2026-08-02
Chapter: 第四話 初値
 玲奈がベッドの上で、胸を上下させる。 自分は何時間、乱暴されたのだろうか。 裸のまま仰向けになって、涙をぬぐうこともなかった。 ゴポッと、精液と愛液、ほんの少し血液が混ざったミックスジュースが膣から垂れた。 それが太腿を伝いシーツに染みとなる。――すべての穴の処女を喪失した。――全て、掻き出したい。 だが、玲奈の身体は言うことを聞かない。 玲奈の耳にはルリのキーボード、クリック音が届く。 その音すら聞きたくないから、鼓膜を破りたいのに。◇◇◇ 涙を流す玲奈の隣で、ルリは端末を見る。 時折、キーボードで打ち込みつつ、淡々と評価をしていた。「アニムスCランクからの|P《快楽》エネルギー生産は2|org《オルガ》。平均純度は40から45%。快楽指数が高め、その分アニムスの射精で純度が減少。始値20|JWL《ジェル》/org前後ね」 それが玲奈の値段予測だった。「属性に処女があると快楽指数が高くなりやすいのよ。その分だけPエネルギーの成長が見込める。――将来性を期待して、隷価が上がるわ。処女プレミアムと呼ばれる所以ね」 玲奈は高いのか安いのか、それすらわからない。 玲奈の喉が小さく震える。 ルリは眼鏡を机に置いて、ようやく手元から目を離し、玲奈を見た。「6時間、ぶっ通しでセックスしていたから疲れたでしょう? 今日はもう休んでいいわ」 優しい言葉ではない。 ただの通告。――明日も、明後日も、永遠に続く……。――処女を搾取され、商品として喘ぐ……。 玲奈は身体が震えた。 現実の恐怖。 玲奈の様子を気にすることはなく、ルリがクロゼットの方に向かい、箱を取り出してきた。 箱を開けるとそこにあったのは。「隷嬢用の服と武器……刀ね。これからはこの刀――銘は『|玖段《クダン》』がナビゲートとサポートするから」 玲奈の苗字は刀のものとなり、玲奈はRENA-09となった。 それを自覚して、さらに涙が零れる。 そんな玲奈の顔がルリにぐっと持ち上げ、耳元で囁かれた。 グロスが塗られて艶やかなその唇から紡がれた言葉。 それが玲奈を地獄に落す。「よろしくね。RENA-09。しっかり腰を振って、金を産みだしなさい。でなければ、貴女のセックスに価値がないわ」 そう言って、玲奈の頭をベッドに打ち付ける。 玲奈は何も言えず、ベッドに
Last Updated: 2026-08-02
Chapter: 第三話 公開資料
 玲奈がいる部屋のドアが開かれる。 玲奈はびくりと肩を震わせた。 これからの行為に、恐怖して呼吸が一瞬止まる。 呼吸のリズムが崩れたまま、喉の奥がひゅう、と鳴った。 入ってきたのは一人のルリにアニムスと呼ばれた全裸の男だった。 身長175センチメートルほどだろうか、玲奈よりも背が高い。 そして人間とは思えない程、整った顔立ちをしている。 だが、表情がなく、玲奈は余計に怖かった。 玲奈はそれを直視できず、すぐに視線を逸らした。 それでも視界の端に、裸の輪郭と、股間が映る。 恐怖が先に来て、全身が硬直した。 足先が冷たい。 指先もうまく動かない。 ベッドの上でそのアニムスから逃げようと後ずさりをする。 だが、それもすぐに終わる。◇◇◇ カチ、と小さなクリック音が聞こえた。 ルリが端末を操作したのだ。 玲奈は反射的にそちらを見ると、ベッドのフレーム、枕元のインテリア、頭上のスプリンクラーのようなもの、それらにすべて、赤いランプが灯っている。――視線を感じていたのは、カメラ……。 玲奈は、ようやく現実を理解する。 ルリの言葉に嘘はなかったと。 診察ではない。 ただの性行為でもない。 知らない誰かとの行為を撮られ、知らない誰かに見られている。――わたしの処女に、値段がつけられる……。 その理解が、遅れて玲奈の胸を締め上げた。「…………っ」 玲奈は悲鳴を上げようとしたが、声にならない。 ルリは画面を見たまま言った。「始めていいわ」 玲奈の人間としての尊厳が叩き壊される――。◇◇◇ アニムスが近づいてくる。 玲奈は後ずさろうとした。 だが、ベッドの上では逃げ場がない。 アニムスが自分の手にべっとりと涎を付ける。 その無表情が玲奈をより恐怖に落す。 アニムスが陰茎を扱くように涎を付けた。「…………っ!」 そして玲奈はアニムスに近づかれる。 体温を感じ、生理的な嫌悪感、恐怖感から玲奈はビクっと身体を震わせる。 シーツを握りしめ、涙が頬を伝う。 逃げ出したいのに力が出ない。「い……、いや……」 アニムスが玲奈の乳房を触り、乳首を軽くつまむ。 もう片方の手で秘部を優しく触れる。 好きでもない人間の指先が自分の大事なところに触れる。 恐怖で心が冷える。「もう少し、気持ちよくなりなさい。でない
Last Updated: 2026-07-26
Chapter: 第二話 上場準備
第一章 第二話 上場準備 玲奈は再び目を開いた。 少し目を閉じたことで身体が回復したのか、視界がクリアになる。 白い天井は変わらない。 ただ、学校や病室の天井で見る、白地に黒やグレーの点々があるトラバーチン模様の天井材ではなく、真っ白な天井だった。 火災になったときのためか、スプリンクラーのようなものが設置してある。――視線も感じるけど……、気のせいね。 玲奈の印象は病室というよりも、ビジネスホテルだ。 部屋の中は輸液バックのあるスタンドがあるものの、セミダブルほどのベッドの大きさ、そして机と椅子が一脚ずつある。 気になることは多々ある。 ――なんで裸で、点滴を受けているのかしら……。包帯が巻かれているわけでもないのに……。 自分の制服はどこに行ったのだろうか? そして――。 視線が彷徨った先。「なにこれ……」 自分の左肩が目に入った。 そこに文字がある。 それは見慣れない書体であるものの、意味は理解できる。――RENA-09。 意味は分からない。 だが、それが自分のものだということだけは分かった。 玲奈の胸がゆっくりと上下する。 身体の中で寒さを感じ、少しでも熱を求めるように。 ごくっと喉元を鳴らす。  玲奈は嫌な予感だけが、はっきりしていた。◇◇◇ しばらくするとキイっと無機質な音がした。 扉が開く。 玲奈は反射的にそちらを見ると部屋に入ってきたのは、一人の女性だった。 医師のようでスクラブスーツの上に白衣を羽織っている。 背筋がまっすぐで、無駄のない歩き方だった。 年齢は三十前、二十代後半に見える。 玲奈よりも身長が高く、金髪のポニーテールが似合っているのだが、眼鏡が少し、怖さを感じさせる。――よかった。 玲奈はホッと安堵の息を漏らした。――女性医師なら、何もないわよね。 女性は何も言わずにベッドの横へ来る。 点滴のチューブを見て、無言で外した。 玲奈の腕に軽い痛みが走る。「……あの」 久しぶりに出した自分の声はかすれていた。「ここはどこですか」 女性は答えなかった。 玲奈が女性を見るとネームプレートと顔写真がありトクガワ=ルリ、|五州《ゴス》|隷嬢《レイジョウ》エネルギー事業部、と書かれていた。――五州? 隷嬢? 聞き覚えないわ。 文字は見たことがない。 しかし
Last Updated: 2026-07-26
Chapter: 第一話 閉場後の噂
 午後三時――。 鐘の音が五回鳴る。 ディスプレイに映った数字が止まる。 鐘は都市中央にある、教会に似た建物の屋上にあった。 その建物の中を貫くのは一周50メートルほどの透明な円柱だ。 ガラスのようにも見えるが、その表面には光の文字と数字が浮かぶ。 |五州《ゴス》国|亡都《ボウト》の証券取引所。 今日も閉場の鐘の音が響く。 その音と共に教会に似た証券取引所の透明な円柱――チッカーが、ゆっくりと減光していく。 文字が消え、ただ透明なリングになる。 遅れて、その場にいた人間が息を吐いた。 歓声と舌打ちが混ざり、端末を閉じる音が連なる。 誰かが笑い、誰かが罵り、誰かが黙って立ち上がる。――亡都の夜は、いつもこうして始まる。◇◇◇ 証券取引所から通りを一本外れた場所に、小さなバーがある。 テーブルやカウンター席に座るスーツを着た男たちは、グラスを傾けていた。 バーテンダーはシェイカーを丁寧に振り、時につまみをそっと出す。 このバーに訪れる年齢は様々だ。 二十代後半や三十代、五十代もいる。 お互い顔見知りなのか、気安く話し合う。 三時を過ぎたとはいえ、まだ明るい中彼らは酒を楽しむ。「……今日は荒れたな」「俺は取れた。新人のCERES-03に目をつけていた甲斐があった」 カラン、とグラスの氷が鳴る。 男たちは今日の市場の感想や、利益、損失をつまみに談笑を始めた――。 いつものように、自分の利益を誇り、損失で周りから慰めてもらう。 それが終われば、自分たち以外のトレーダーの話になっていく。「踏み上げられた空売り筋は悲惨だったぞ」 三十代の男性がその光景を思い出したのか、クククっと笑う。 証拠金の強制決済が始まり、呆然とした表情だったのが見ていて笑えた。「空売りなんかやるからだ。だから新人はいい。軽いし、動く」 五十代の男性は自業自得とばかりに、冷めた反応だった。 仲間以外のトレーダーたちの反応を、酒のアテにしながら徐々に企業の動向へ話は向かう。 お互いが次の動きを読むために。「老舗の五州|隷嬢《レイジョウ》が動くらしいな」「首位を隷嬢エネルギーホールディングスに明け渡してから、今は第三位だ。ズルズル落ちていく前に、何か出すだろう」「打つ手あるのか? 隷嬢の移籍とか難しいだろう。特に五州隷嬢は給与を出し渋る
Last Updated: 2026-07-26
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