author-banner
プリン伯爵
プリン伯爵
Author

Novels by プリン伯爵

もしもあの日に戻れたのなら

もしもあの日に戻れたのなら

2044年4月9日。 その日世界は崩壊した。 降り注ぐ隕石、崩れる高層ビル、燃え盛る住宅街、焼け爛れた道路を闊歩する異形な生物。 空が割れ、轟音が耳を劈く。 こんな世界にしたのは僕だ。 もうあの平和な日常には戻れない。 異世界と現世を繋いだために起きた悲劇。 城ヶ崎 彼方《カナタ》が繋いでしまった。 彼は何のために大きな代償を払うことになったのか。 魔法と科学が交わる先になにがあるのか。 これは世界の滅びを救うために動いた城ヶ崎 彼方《カナタ》と繋いでしまった異世界の物語である。
Read
Chapter: 再戦①
アレンさん達との邂逅から一ヶ月が過ぎた。中級魔法も少しばかり使えるようになった僕はある程度の自衛ができるといってもいいだろう。ただ、魔神の居所だけは掴めていなかった。"黄金の旅団"総動員で探しているがなかなか見つからないそうで、今は探すのではなくおびき寄せる作戦でいこうと近くのスタジアムに人払いの結界を張り、各々魔力を垂れ流しているところだ。「それにしてもよくスタジアムを貸し切れましたね」「ん?まあまあそこはね、魔法をちょちょっと使うとできるってだけだよ」アレンさんは笑顔でそう言うが、多分正攻法ではないだろう。催眠というかそういった類いの魔法に違いない。だからそこには突っ込まないでおくことにした。スタジアムの中には"黄金の旅団"のメンバーが勢揃いしている。あくまでこの世界に飛ばされてしまった面々だけだが、それでもかなりの人数になる。「これだけ魔力を垂れ流せば多分魔神にとっても無視できないはずなんだ。可能な限り守るつもりだけど自分の身はできるだけ守るんだよカナタ君」「は、はい」緊張してしまい、ついどもってしまった。魔神の脅威は嫌という程見てきた。だからかこれから魔神を呼び込むと聞けば緊張しないはずがない。そんな時だった。「団長!結界に何者かから干渉を受けています!」突然スタジアムに響き渡る声。何者か、が誰を指しているのかなど想像に容易い。「来たようだね……全員臨戦態勢!」アレンさんの号令と共に各々仲間達が武器を構えた。僕も魔法を発動できる準備だけして周りを警戒する。邪法が使えたら僕だって戦力の一つとして数えてもらえるのに。
Last Updated: 2025-07-26
Chapter: 記憶を辿って⑤
「まずは初級魔法を試していこうか!」アレンさんの指示通りに頭の中で魔法をイメージして片手を突き出して魔法名を口にする。「ファイアーボール!」掌からほんのりと煙が出ただけで、火の玉は出てこなかった。「不発だね。さあドンドン試していこう。数こなせばいずれできるようになるから。少なくとも煙は出たんだから一切魔法適性がないというわけではないさ」アレンさんは励ましてくれたが僕は落胆していた。思い出せ、あの時に学んだ魔法の技術を。記憶を辿れば必ず使えるはず。過去には実際に魔法を行使できたんだ。できないはずがない。熱く燃えるようなボーリング大の玉が掌から勢いよく飛び出すイメージだ。僕は目を瞑って集中する。肌を焦がすような熱量。弾丸のように放たれる想像を膨らませる。「ファイアーボール!」ボウッと目の前が赤く染まり凄い速度で僕の掌から火の玉が放たれた。標的である木の人形に当たると爆散し、砕け散る。「で、できた……」「やるじゃないかカナタ君!初級魔法とはいえ二回目で成功させるとは思わなかったけど、これなら中級魔法を覚えるのも時間の問題だよ」「ありがとうございます!」記憶をより鮮明に思い起こすと魔法の行使は成功した。やはりこの辺りの記憶も完全に消えたわけではないようだ。「すげぇぜカナタ!まさかこんなすぐに習得するなんて思わなかったぞ!」春斗も相当驚いているのかテンションがかなり高い。「いや本当にね。意外と才能があるかもしれないよ?」「いえ流石にそれはないかと思います……。記憶の中のアレン
Last Updated: 2025-07-25
Chapter: 記憶を辿って④
「へぇ……?魔法を覚えたいんだね?」どこか僕を見定めるような眼つきでアレンさんはじっと見つめてくる。「はい。せめて自衛くらいはできるようになっておきたいなと思いまして」「なるほどなるほど……それは……名案だね!」アレンさんの笑顔が輝いていた。あれ?てっきり断られる雰囲気かと思ってたのに想像と違う言葉が出てきたな。「団長、いくら何でもこの世界の人間に魔法を教えるのは」「まあそう固いこと言わないでよレイ。彼だって守られてばかりは嫌だって言うんだから。それに、カナタ君が自衛できた方が有り難いだろう?」「それはそうですが……」レイさんは気が進まないようだったがアレンさんがゴリ押ししようとしていた。「カナタが魔法使えるようになったらかっけぇな!」「……自衛は大事」「まぁアタシ達の負担は減るかしら?」概ねこの場にいるみんなはアレンさんに同意していた。唯一レイさんだけが反対していたが、民主主義には逆らえなかったのか渋々ながら頷いていた。「問題はカナタ君がどれだけ魔法適性があるかだけど、君の記憶にいるボクが適性なしと判断したんだっけ?」「そうですね……僕はそれほど高位の魔法を覚えることができないと言われました」「まあ中級くらいまでなら覚えられるだろうから、地道にやろうか。どうせ魔神の居所は数日で見つかるものでもないしね」そう言ってアレンさんは僕を宿り木の地下へと連れて行った。そもそも地下があるなんて知らなかったからかなり驚いたが、土属性の魔法を使える仲間の一人が地下を作ったそうだ。まあ訓練する際に人目につくと不味いか
Last Updated: 2025-07-24
Chapter: 記憶を辿って③
気持ちのいい朝日を浴びて服を着替える。今日の予定は昨日と同じく宿り木でアレンさん達に会いに行かないとならない。あまり大学を休むのは気が進まなかったが、今はそんなことも言っていられないかと自分を納得させて家を出た。まだ今の状況が夢見心地に感じていて、足取りが少しフワフワした感覚になる。宿り木まで来るとインターホンを鳴らす。出てくるのはいつもレイさんだ。今回も当然のようにレイさんが出迎えてくれた。「お待ちしていましたカナタ君。どうぞ中へ」レイさんは相変わらずクールな印象を受ける。出迎えを受けたその足で僕は客間へと案内された。するとそこにはアレンさんとアカリ、春斗、そしてフェリスさんがいた。「おっ、来たな!カナタ!」「よっ、昨日ぶりだな」春斗と友人らしい挨拶を交わし空いていた席へと腰をかける。レイさんも席についたのを見てアレンさんが口を開く。「さてと、今日カナタ君に来てもらったのは他でもない魔人について聞きたいことがあるんだ」「何でも聞いてください。僕が分かる範囲なら全て答えるつもりです」「それは助かるよ。じゃあまずは――」アレンさんから飛んでくる質問を全て答えていくと気づけば数時間経っていたようで夕日が差してきたのが視界の端に映る。「なるほどなるほど。魔神のこと詳しく教えてくれてありがとう。これだけ情報があれば少なくとも初撃で遅れは取ることはないだろうね」「どこまで役に立つか分かりませんが、少しでも役に立つのなら良かったです」「いいや十分役立つよ。魔神の情報って案外少ないんだ。だからどんな魔法を多用するとかどれだけの威力があるのかなんて分からなくてね。これでボクらの被害は最小限に抑えられ
Last Updated: 2025-07-23
Chapter: 記憶を辿って②
レイさんの反論にアレンさんも腕を組んで目を瞑る。確かに僕は何の力も持たないただの一般人だ。いや、一般人どころか学生でしかない。そんな奴が魔神との戦いに参戦した所で何の役にも立たないだろう。「でも彼はボクらにはない情報がある。何も前線に出すわけじゃないさ」「しかし共に行動するのはリスクが付きまといます。こちらの世界に骨を埋める覚悟をしている者もいますが、元の世界に戻りたいと考えている団員の方が多いのですよ?そんな彼らにとってこの子は救世主そのもの。少しでもリスクは減らすべきです」レイさんの言い分は理解できる。僕に何かあればそれこそ永遠に元の世界へ戻る方法は失われてしまうと考えているに違いない。しかし僕以外にも優秀な頭脳を持った人達はいる。五木さんに僕の研究論文を共有しておけば、いずれ異世界ゲートを作り出すことも可能だろう。「レイの言い分は分かったよ。でも魔神の情報は必須だ。少なくとも彼から情報は貰わないといけない。だからこの話はまた今度にしよう」レイさんは渋々ながらアレンさんに同意する。上の立場の者にそう言われたらまあ頷くしかないのが組織というものだ。「魔神を探すにも時間はかかると思うけど、とりあえずカナタ君には色々と奴の情報を教えてもらいたい。可能であれば明日もここに来てくれるかい?」僕は断るわけもなく頷いた。レイさんは僕が関わることに難色を示していたが、アレンさんとしては僕の持っている情報を欲しがっている。一度団員同士で話し合うと言われてしまえば僕が口出しするのも変な話だ。だから今日はパーティーを普通に楽しんで帰路についた。――――――「おかえり〜、今日はどうだった?」「あ、まあそれなりに、かな」家に帰ると早々姉さんから今日の発表はどうだったかと質問が飛んでくる。適当に誤魔化したが、姉さんは変な所で勘がいいから気をつけないといけない。「いや〜今日は疲れたよ〜。聞いてよ、それがさ――」姉さんの愚痴をご飯のお供に夜は過ぎていった。
Last Updated: 2025-07-22
Chapter: 記憶を辿って①
アカリとの再会を果たした後は二人で宿り木へと戻った。アレンさんはニコニコ笑顔で出迎えてくれて、仲間に紹介すると中へと入れてくれた。「さてと、さっきも話した通り彼が魔神を倒すための中心人物になる。だから新たなメンバーを快く迎え入れてあげよう!」どうやらアレンさんは僕が戻って来る前に仲間へと話をしておいてくれたようで、誰も僕を怪訝な表情で見つめる者はいなかった。「あっ!」どこからともなく聞き覚えのある懐かしい声が僕の耳へと入ってくる。仲間を押し退けて前へと出てきたのは、異世界に行く時に僕を守って死んだ春斗だった。「おいおいカナタ!そんな面白そうな話、なんで先に言ってくれねぇんだよ!」「春斗……」「ん?どうした?昨日も一緒に遊びに行った……ああ、そうか。カナタの記憶で俺は死んだんだっけ?安心しろよ!この時間軸の俺は生きてるから!」「ああ……そうだな。いや、悪い悪い。次は絶対に死なせないからな」満面の笑みの春斗を見るとなんだかどうでも良くなってきた。「俺がそう簡単にくたばるかよ!って言いたい所だけど、魔神に殺されたんだったか?そうだ!団長、これからその魔神を倒すために話し合うんすよね?」「そうだよ春斗。まずは親睦を深めようと思ってね。出前を頼んでるからカナタ君は好きな席に座るといいよ」だから"黄金の旅団"のメンバーが全員揃ってるのか。それなら再会を喜んでいる暇はないな。僕が分かる魔神の能力や使っていた魔法もみんなに伝えないと。「てかアカリ泣いてね?」「うるさい」「おいおい!泣いてんじゃねぇか!カナタが泣かせたのか!?女を泣かせるなんてなかなかやるなぁ!!優れているのは勉強だけじゃなくて女の扱いもお手の物ってか!?」
Last Updated: 2025-07-21
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status