LOGIN2044年4月9日。 その日世界は崩壊した。 降り注ぐ隕石、崩れる高層ビル、燃え盛る住宅街、焼け爛れた道路を闊歩する異形な生物。 空が割れ、轟音が耳を劈く。 こんな世界にしたのは僕だ。 もうあの平和な日常には戻れない。 異世界と現世を繋いだために起きた悲劇。 城ヶ崎 彼方《カナタ》が繋いでしまった。 彼は何のために大きな代償を払うことになったのか。 魔法と科学が交わる先になにがあるのか。 これは世界の滅びを救うために動いた城ヶ崎 彼方《カナタ》と繋いでしまった異世界の物語である。
View Moreアレンさん達と最後の別れから一年が過ぎた。僕はというと五木さんの口添えもあってか単位を失うことなく、卒業を迎えることができた。「明日から五木さんのとこでお世話になるんだっけ?」卒業式は姉さんも見に来てくれた。フォーマルな格好に身を包み、そんな質問を投げ掛けてくる。「そうだよ。就職はどうしようかと思っていたけど五木さんが是非ウチにって言ってくれてさ」「ふーん。でも五木さんってその業界では権威って言われているほどの人でしょ?そんな人からなんで声がかかったの?」姉さんは知らない。異世界のことも魔神のことも、もちろんアカリのことも。姉さんを巻き込むわけにはいかないだろう。何も覚えていないのなら、そのまま平和に暮らして欲しい。だからアカリとの出会いは大学で知り合ったことにしておいた。彼女だと紹介したらとても喜んでくれた。そういえば春斗は警備会社に就職が決まっていたな。彼ほどの身体能力の高さがあれば暴漢に襲われても返り討ちにするかもしれない。フェリスさんはレディース専門の服屋に就職していた。夢が叶ったと喜んでいたが、売上も高く今では副店長を任されているらしい。あの人は怒らなければめちゃくちゃ人当たりのいい方だからな。しかも綺麗な人だ。多分それが売上につながったのだろう。アレンさん達は元気にしてるかな。たまに異世界が恋しく感じることもあるけど、それも次第に薄れてきた。この世界で魔法はほぼ使えないし、今までの日常が戻ってきている。「どうしたの?ボーっと空を眺めて」「ああ、いや何でもないよ。それよりこれからアカリと出掛けるから、先に帰っててよ」「デートね!?アカリちゃんを泣かせたりしてはダメだからね!」姉
五木さんの合図と共に"黄金の旅団"の面々が魔力を流し込んでいく。電気が溜まっていくのはランプの点灯で分かるが、そのランプが十個全て灯ると五木さんが手で大きく丸を描いた。「準備はできたみたいだね」アレンさんが仲間に合図をして流し込む魔力を止める。「起動します!」僕がスイッチを入れると、どでかいドーナツが回転を始め真ん中の空間が歪み始めた。色が徐々に紫と黒色のマーブル模様になると異世界と繋がった証。今回は前とは時間も違う。恐らく魔界に繋がるかもしれないが前回のように魔物が待ち構えていることもないだろう。一応事前にアレンさんへ伝えているが、全員でゲートをくぐるなら向こうでいきなり殺されるようなことにはならないはずだ。「この電力なら起動してからおよそ五分しかもたないよ!」「分かりました!」五木さんが叫ぶ。五分か……急いでゲートをくぐってもらわないと。「アレンさん急いでください!もう既に一分が経過しています。次に起動することはできません」「君の名前はボクらのグランハウスに刻ませてもらうよ。カナタ君、もう二度と会えないけどボクは君を忘れない」「僕もですよ。アレンさん、今までありがとうございました」アレンさんと固い握手を交わす。団員みんなと握手している時間はない。「さぁ!急いでください!」「カナタ!お前はオレ達の盟友だ!来世で会おうぜ!」「カナタ君、元の世界に帰してくれてありがとう。この恩は絶対に忘れない」「カナタ、またな!」みな口々に礼をしてゲートをくぐっていく。残すはアレンさんとレイさんだ。「春斗、アカリ。本当にいいんだな」「何度も言わせるなよ。俺はこっちの世界が気に入
連絡を怠り姉さんからしこたま怒られた日からおよそ二週間。巨大な空間に鎮座する異世界ゲートがあった。「遂に完成したね……流石に私も眠くて堪らないよ」「そうですね……最後の方なんかほぼ徹夜でしたし。でもこれでやっと……」「異世界かぁ。私も行ってみたいけど、彼方君の話を聞く限り危ないところなんだよね?」五木さんと一緒にいる時間が長かったこともあり、異世界の話を沢山していた。そのせいか五木さんが異世界に興味を持ってしまったが、それと同時にどれだけ危険なのかも詳しく話しておいた。そのお陰もあってか、行きたいけど実行に移そうとは流石に考えていないようだった。「魔物に魔法……どれも空想上のものだね。研究者としては是非とも行ってみたいけど帰ってこれないとなるとなぁ」「悪いことばかりではありませんでしたが、こっちの世界の常識は通じませんからね。みんな当たり前のように魔法を行使しているので」「私も魔法の一つや二つ使えたらなぁ。どうかな?そのアレンさんという方に、元の世界へ帰る前に魔法を教えて貰えないだろうか?」この世界に魔素が殆どないことを説明し覚えたところで使うことができないと伝えると五木さんは目に見えたようにガッカリしていた。「そっか……魔法、使えないんだね。まあ仕方ない、とりあえずその方達を呼んでくれるかい?」僕はアカリへと連絡する。連絡先を知っているのはアカリと春斗くらいだ。すぐに全員を連れて行くとのことで待つことおよそ30分。研究所に現れた数十人の異世界人。老若男女問わずの集団はあまりに異質だったのか五木さんは目を丸くしていた。「どうも初めまして。彼らを率いているアレン・トーマスです」
五木さんとの共同研究は想像より早く進んだ。物資の手配も驚くほど早く完成まで後少しというところまでおよそ一ヶ月という短い期間で作り上げた。大型のリングがほぼ完成している姿を見ると、あの時あの瞬間を思い出す。僕がジッとリングを見つめていると五木さんが背後から声を掛けてくる。「どうしたんだい?」「いえ……なんだか夢見心地のような感じでして」「夢見心地?まあそうだね、実現まで後少しだからね。それより最近家に帰っていないだろう?ご家族が心配するんじゃないかい?」五木さんは勘違いしていたがわざわざ本当の事を話す必要もない。頷いた後そういえば姉さんに連絡するの忘れてたなとポケットから携帯端末を取り出す。「あ、めっちゃ不在着信きてる……」「ほら、言っただろう?今日は帰りなさい。研究に根を詰めるのは身体によくないよ」五木さんに促され僕は帰宅することにした。実のところこの一ヶ月、家に帰ったのは三度ほど、あまりに僕が不在にしているせいで姉さんがブチギレてそうだ。ビクつきながらソッと玄関の扉を開く。もう時刻は夜中の十二時を回っていた。足音を立てないようゆっくりリビングに足を踏み入れると、腕を組んで仁王立ちの姉さんと目が合った。「うおぁぁぁ!?」真っ暗なリビングでそんな事をされたら誰だってびっくりする。飛び退いたせいで尻餅をつき、鈍痛が僕を刺激した。「うぐぐ……いってぇ……」「彼方!なんでこんな遅いの!?」目が釣り上がっていてブチギレのご様子。