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Body Swap Madness

Body Swap Madness

By:  Crayon PiggyCompleted
Language: English
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My husband Norman had always hated how his childhood friend Julia clung to him no matter the occasion. He even cut her off for my sake. One morning, I woke up and realized that I had mysteriously swapped bodies with Julia. I wanted to find my husband and figure out what to do, fearing he'd turn me away because of Julia's appearance. I cooked up a hundred explanations in my head until I finally arrived at our home. When Norman opened the door and saw me, he frowned and quickly shut the door, pushing me away. Just as I was about to explain that I wasn't Julia, he suddenly pulled me into his arms. "What are you doing here? Can't stand being apart from me for even two days, huh?"

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Chapter 1

Chapter 1

第1話 機織り娘

 カンカンと隣の部屋から何台もの機《はた》を織る音が聞こえる。

 だけどフィリス一人だけは、作業部屋で祈っていた。

 フィリスの前には、宙を舞う無数の糸。床に敷かれた色あせた絨毯の上には、織りあがった白い布が降り積もっていた。風はないはずなのに、フィリスの銀がかった長い金の髪は揺れ、長いまつ毛の下にはエメラルド色の瞳が覗いている。日のあたらない作業部屋にずっといるせいか、肌は絹のように白かった。

「フィリス! まだできないの!」

「はい、ただいま」

 紺色の襟の詰まったドレスに、きっちりと結い上げられた赤毛。継母の鋭い目を見るとそれだけで息がつまる。

 フィリスは、できるだけ継母を視界に入れないようにした。

 美しく、正確に……だけど、継母が横で急かすのもあって、フィリスは出来る限り早く作業を進めた。頭の中に図案を思い浮かべると糸たちが勝手に宙を飛び、互いが結びつくように布へと変わっていく。

 作業部屋の小さな明り取り用の窓からわずかに光が差し込み、フィリスが織る真っ白な亜麻糸がきらりと光った。

「できました」

 宙を舞っていた糸たちが全て布へと姿を変え、ふわりと絨毯に落ちる。フィリスは、布を丁寧に作業台へ乗せた。

 白くて長い布には、植物の模様が織り込まれ、角度を変えると模様が浮き上がる。

 フィリスは、木製の長い定規で規定の長さを測りながら、模様に狂いがないか最終確認した。

 フィリスが「大丈夫です、持っていってください」と言い終わるか終わらないうちに、継母はまるで汚いものでも追い払うようにフィリスの肩を強く押した。

 満足に食べさせてもらえていないこともあり、細くなってしまったフィリスの体は、簡単に作業部屋の床に尻もちをついた

 継母は、木製の巻き芯にパタンパタンとできあがった布を巻き上げ、小脇に抱えた。

「本当にのろま。注文が溜まってるんだから、休まずさっさと次の注文に取り掛かりな」

「……はい」

 フィリスの返事を聞く前に、継母はもうすでに作業部屋からいなくなっていた。ガチャリと部屋の外から閂がかかる音だけがやけに耳に残った。

 しょげたのは、あくまでもフリだ。

 こうでもしておかないと継母は、尻もちをつかせるだけでは済まない意地悪をしてくることがあるのだ。

 鍵がかかるとすぐにフィリスは、作業部屋の扉に耳を押し当てた。

 この時がフィリスにとって一番楽しみな時間だった。

「旦那様、お待たせいたしました。今、出来上がったばかりでございます」

「おぉ! これまた、なんと美しい!」

 ふふ、そうでしょう。

 フィリスは、扉に耳を押し当てながら、一人で頬を染めた。

「これも娘さんが一人で作っているのですか?」

「もちろんですわ。うちの娘は、祝福持ちですから」

 祝福持ちというのは、生まれながらに神に与えられた特別な能力を持つ人間のことを言う。

 フィリスは、亡くなった母と同じ『神織り』の能力があり、自分が織った布に何か効果を付与することができるのだ。

 今回の注文は、テーブルクロスで、食べ物がより一層おいしく見える効果をフィリスが考えて付与した一品だった。

 だがフィリスは、そのことを家族には黙っている。亡くなった母がこのことを隠しておくようにと口酸っぱく言っていたからだ。

 だから布についた効果については、一切宣伝していないのだが、祝福の力で特別に織った布――というだけで拍がつくのか、『神織り』を使って織った布を買いたいという客は、後を絶たないのである。

「いや~、それにしても、こんな可憐なお嬢さんがこんなに美しいものを作れるだなんて、神は二物をお与えになるのですな」

「まぁ! お恥ずかしいですわ」

 母に変わって答えたのは、姉のマリエッタだった。

 フィリスが作ったものは、対外的には全て姉が作っていることになっている。

 そんなことはいい! リンデン商会の旦那様、もう一回、織物を褒めてくださいませ!

「お嬢さんは、グランツ商会の跡取りから縁談の話が来ていると噂に聞きましたが」

 その話は、初耳だった。

「実は、そうなんです。娘の祝福が見初められて、今度お見合いがあるんです」

 自分の能力じゃないのに?……結婚後は、どうやって誤魔化すつもりなんだろう。

「それでは、この布は、我が商会で加工してお客様のもとへ届けさせていただきます。代金は、いつものように口座へ。今回は特に出来がいいですから、色をつけさせていただきます」

「いつも、ありがとうございます」

 ぎぃと扉が開く音がした。馬の蹄の音がして、遠ざかっていった。

 これで、終わりか……

 結局最初しか褒めてくれなかった。

 誰かが褒めてくれる、一日の中で唯一のハッピータイム、終了である。

「はぁ……」

 フィリスは、重いため息を吐いた。

 ふと見上げると本棚には、最新の夫人雑誌がつまっていた。

 フィリスが布を織るのに、最新の情報があった方がいいだろうと、父が毎月フィリスに与える数少ない物が雑誌だった。その中には、ブライダル専門の雑誌もある。

 フィリスは、そっとその雑誌を手に取った。

 表紙には、ウエディングドレスを身にまとい、幸せそうに笑う女性の写真が載っていた。

「……私もいつかは、結婚できるのかな」

 先日迎えた記念すべき二十歳の誕生日も、フィリスはこの部屋で一日仕事をさせられていた。もちろんお祝いもない。

 休みなんか、思い出せる限り一日だってもらったことはない。

 もし誰かと結婚したら、この工房を出ることができるだろうか……

 母が亡くなってから、久しく見ていない外の景色をフィリスは想像した。

 パンの焼ける香ばしい香りのする町。

 大きく開けた青空。

 走っていく子供たちの笑い声。

 どれもこれも、フィリスにとっては、思い出すだけで幸せな気分になれる、亡き母との思い出だった。

 その時――

 急にガチャリと鍵が回される音がして、フィリスは慌てた。

「何してるのよ」

 姉のマリエッタだった。

 赤毛の髪を巻いて、大きなリボンで頭の上でまとめた髪型は、ただでさえ吊り上がったマリエッタの瑠璃色の目をより一層鋭く見せている。

 着ている服も私のぼろのワンピースとは違い、真新しい。

 マリエッタの手には、去年マリエッタが着ていたドレスが握られていた。

 フィリスは咄嗟に、手に持っていた雑誌を背中に隠した。

「何を隠したの。見せなさい」

 マリエッタは、入口近くの作業台を回り込み、フィリスに近づいて強引に手首を引っ張った。

 ばさりと音を立てて雑誌が落ち、美しいドレスを着た女性がにこりと微笑んだ。

「ふっ」

 マリエッタは、口を押えて笑った。

「なに、あんた。まさか自分が結婚できるとでも思ってるの?」

 フィリスは、ぎゅっと拳を握って床を見ていた。

 ただ、嵐が通り過ぎるまで、じっとしているしかないのだ。

 マリエッタが床に落ちた雑誌を足で踏みつけた。フィリスが踏まれたわけではないのに、ひどく胸が痛んだ。

「ただ織物ができるだけの祝福しかないお前に、結婚なんかできるわけないでしょ? 」

 マリエッタがぐりぐりと雑誌を踏むから、ドレスの女性の顔は、跡形もなく破れてしまった。

 最後にマリエッタは、どんとフィリスを強く押した。

 今度は、後頭部を後ろの本棚に強くぶつけたフィリスは、痛みでその場にしゃがみこんでしまった。

 気が済んだのか、ふんと鼻で笑ったマリエッタは、手に持っていたドレスを乱暴に作業台の上に乗せた。

「来週は、グランツ商会のルドルフ様とのお見合いよ。これを直しておきなさい」

 大事なお見合いにマリエッタが古いドレスを着ることが信じられなくて、フィリスは首を傾げた。いつもパーティーに行くときは、決まって新しいドレスを着ていたからだ。

「……お姉さまは、新しいドレスを着ないのですか?」

「当然私は、新しいのを着るわ。これは、お前のよ。貸してあげる。感謝なさい」

「え……私も連れていってくれるのですか?」

「えぇそうよ」

 これは、チャンスかもしれない。

 このヴァイセン織物工房に閉じ込められて十年。次に外に出られる日が来るとも限らない。外に出られるというのだから、隙を見て逃げ出すなら、その時しかない。

「楽しみにしていなさい。きっと私にも、お前にも、忘れられない日になるわ」

 姉はそう言ってニヤリと嫌な笑みを浮かべてから、作業部屋を出ていった。

 またガチャリと重い閂のかかる音がした。

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