LOST WITHOUT YOU

LOST WITHOUT YOU

last updateLast Updated : 2024-03-28
By:  Samuel ArnoldOngoing
Language: English
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Synopsis

Michael Evans, the heir to Evans Enterprises is being pressured to get a spouse so he can reproduce an heir to keep up their legacy. But what happens when he tries to elope with his disapproved lover and along the way, he gets involved in a car crash and forgets everything about his past life? What will become Michael's end?

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Chapter 1

CHAPTER 1

あの夜、夫によって薬を飲まされた五人の浮浪者と同じ部屋に閉じ込められたあと、奈月は震える指先で国際電話をかけた。

「もしもし、なっちゃん?」

受話器から兄の梅川新一(うめかわ しんいち)の声が聞こえた途端、込み上げる嗚咽を必死に噛み殺して告げた。「お兄ちゃん……っ!私、離婚することにした」

新一は電話の向こうでほっと息をついた。「やっと目が覚めたか。大知はお前には向いてないって、俺、ずっと言ってただろう。こっちに来い」

奈月は小さく頷く。「うん。離婚の手続きが全部片づいたら、すぐそっちに行くから」

通話を終えると、奈月は羽織った大きめの上着の前をきつく引き寄せ、全身に浮かんだ青あざを隠すように、裸足のまま屋敷へと戻った。

大知の部屋の前を通りかかったとき、扉の隙間から誰かに懺悔しているような声が漏れ聞こえてきた。

「結奈……さっき、あの女には指一本触れていない。怒らないでくれ。

お前と離れてどれだけ時が経っても、俺が愛しているのはずっとお前だけだ。それだけは絶対に変わらない」

見なくても分かる。今この瞬間、大知の腕の中にはきっとあのぬいぐるみが抱かれているのだ。

この三年間、ずっとそうだった。二人の服の裾や指先がほんの少し触れただけでも、彼は部屋に戻り、結奈が残したぬいぐるみに向かって懺悔するのだ。

三年前。奈月の二十一歳の誕生日に、兄は都内の名家や有力者の子息たちを大勢招き、祝いの席を設けた。名目は誕生日だが、実際は彼女に見合いの相手を選ばせるための場だった。

群がる男たちは羽を広げた孔雀さながら、我先にと彼女の気を引こうとした。

そんな中、大知だけが違っていた。整った顔立ちを黒いスーツに包み、胸元には一輪の白い花。身の回りには人を寄せ付けないほど冷たい空気を纏っていた。

自然と彼に視線が吸い寄せられた奈月に、兄は首を振って言った。「今日ここにいる男なら誰を選んでも文句は言わない。ただ、あいつだけはだめだ」

その一言が、かえって奈月の好奇心をかき立てた。兄によれば、大知の想い人、兼松結奈(かねまつ ゆな)は、二人の愛が最も深まっていた頃に亡くなったという。

それ以来、大知は固く心を閉ざし、誰も愛さないと決めた。胸に挿した白い花は、亡き恋人を悼み続ける証だった。

死んだ最愛の人には、決して誰も取って代われない。彼に嫁いだところで幸せになれるはずがない。誰もがそう思っていた。

けれど恵まれて育った奈月は、それほど一途な男は珍しいとむしろ心惹かれ、まっすぐに恋に落ちていった。

縁談を経て大知と結婚してから三年。奈月はあの手この手で大知の気を引こうとしてきたが、大知にまともに触れることさえできずにいた。

そして昨日、残酷な診断を受けた。母から受け継いだ難病で、余命はもう長くないという。

だから彼女は、大知に強い媚薬を盛った。この命が尽きる前に、一度でいいから本当の意味で彼の妻になりたかったからだ。

だが思いがけず、大知は込み上げる欲望を無理やり抑え込むと、彼女を突き放し、赤く血走った目で見据えた。

「そんなに男が欲しいなら、望み通りにしてやる」

彼はその場で人を呼び、五人の浮浪者を連れてこさせると、奈月とともに一部屋に閉じ込めた。

奈月は逃れようとしたが押さえつけられ、無数の手が彼女の身体を好き勝手にまさぐり、着ていた服まで引き剥がされていった。

いっそ死んでしまいたい。絶望の底に沈んだとき、ふいに扉が開いた。

大知が人を呼んで浮浪者たちを追い払わせると、裸のまま怯えきった奈月の体に上着を投げかけ、冷ややかな声で告げた。

「次があったら、今度こそあいつらの好きにさせるからな」

その瞬間、奈月の中で何かが決定的に折れた。

残された時間の中で、本当に自分を大切にしてくれる人のもとへ帰ろう。そう心に決めた。

足早に自室へ戻ると浴室に駆け込み、冷たい水を全身に浴び続けた。

けれど胸に染みついた恐怖は、どれだけ洗い流しても消えてはくれない。肌がひりつき、血がにじむまで擦って、ようやく少しだけ落ち着きを取り戻した。

奈月は引き出しの奥から離婚届を取り出すと、自分の名前を書き込んだ。

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