The Forbidden Lovers

The Forbidden Lovers

last updateLast Updated : 2024-02-03
By:  writerclarityOngoing
Language: English
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Synopsis

Meet Elissa a quiet girl whose life takes a twist when her rich dad decides to marry again. Feeling upset, she goes to a bar for the first time to forget. There, she has a one-night stand with a guy who, surprise, happens to be the son of her dad's new fiancée. As Elissa navigates this unexpected romance, she grapples with family secrets and her own feelings. Will she be able to handle the complications that come with this forbidden love, or will everything fall apart? Join Elissa on a journey of love, surprises, and family drama as she discovers the twists life has in store.

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Chapter 1

Synopsis

「……来たな」

 社長室の大きな窓から、|久世《くぜ》 |怜司《れいじ》はエントランスを見下ろしていた。

 |白川《しらかわ》 |澪《みお》。

 服装も化粧も控えめ。

 古い型のスーツを、無駄なく仕立て直している。

 目立とうとはしていない。

 だが、線の取り方、丈の落とし方、袖の収め方――

 そのすべてが、異様なほど正確だった。

(……なるほど)

 今日は、二次審査の日だった。

 服飾のハイブランド《ルクソリア》。

 その中でも、伝説と呼ばれるライン――《AURORA(アウローラ)》。

 そのデザイナーを選ぶための、最終候補を絞る選抜。

 そして今、その席にふさわしいかどうかを見極める相手が、もうそこにいる。

 伝説のドレス《アウローラ》を、もう一度この世に引きずり戻せるかもしれない。

 たった一人の女。

「……ちょっと、確かめてくる」

 背後で、秘書の佐々木が息を呑む音がした。

 扉を開ける直前、怜司は振り返りもせず、小さく呟く。

「面白くなりそうだ」

***

 私、白川澪が本社ビルに着いたのは、予定より少し早かった。

 南青山の《ルクソリア》本社。

 ガラス張りのエントランスは、朝の光を受けて静かにきらめいている。

 受付を通り、案内までの時間を確認してから、私は足を止めた。

 ——《アウローラ》。

 展示スペースの一角。

 写真と図面、簡潔な解説。

 着る人の人生を変えるドレス。

 視界に入った瞬間、世界が一段、静まった。

 息を吸うのを忘れる。

 ただ、そこに在る、という圧だけがあった。

 母の工房にあったものとは、違う。

 色も素材もデザインも。

 でも、纏う空気と完成度は変わらない。

 布の重なり。

 光の逃げ方。

 影になる位置。

 写真なのに、分かる。

 観客席から見えない部分。

 動いたときにだけ現れる線。

(……これ)

 考えるより先に、身体が反応した。

 バッグからスケッチブックを取り出す。

 鉛筆を走らせる。

 線が、止まらない。

 さっきまで霧がかかっていた部分が、するすると形になる。

 ここは、落とす。

 ここは、逃がす。

 光を集めすぎない。

 ページをめくる。

 もう一度、重ねる。

 ——楽しい。

 こんなふうに、頭と手が同時に動くのは、久しぶりだった。

 ふと、周囲の気配が戻ってくる。

 私は顔を上げた。

 時計。

 ——まずい。

 思ったより、時間が経っている。

 二次審査の開始まで、ほとんど余裕がなかった。

 慌ててスケッチブックを閉じ、立ち上がる。

 足が、前に出る。

 走ろうとした、その瞬間。

 重心が、わずかに崩れた。

「……っ」

 転ぶほどじゃない。

 でも、身体が一拍、遅れる。

 次いで、腕に触れる感触があった。

  強くない。

  引き寄せるでもない。

  ただ、止めるだけ。

 私は息を呑んで、振り返る。

 スーツ姿の男性が立っていた。

 背が高く、その黒のスーツは一見シンプルだが、寸分の狂いもないオーダーメイドだ。

 顎のラインが鋭く、襟元から影が落ちる。

(……なんて、目)

 視線が合った瞬間、胸の奥を射抜かれた気がした。

 冷たいはずなのに、奥底では確かに熱が揺れている。

 心臓が、一拍遅れて強く鳴った。

 視線は私を捕らえ、逃がさない。

 その熱が、肌にじわりと広がる。低い声が響く。

「……大丈夫ですか」

 世界が少し揺れた。

 ——近い。

 低い声は落ち着いていて、急かす響きがない。

「はい……ありがとうございます」

 少し遅れて、声が出た。

 心臓の音が、やけに大きい。

 男性の視線が、私の手元に一瞬だけ落ちる。

 スケッチブック。

 閉じきれていないページ。

 ——見られた、かも。

「その線、光を逃がさない。

 ただ……」

「え?」

「いえ、デザイナー志望?

 アウローラの二次審査ですか?」

「はい、なんで……」

「時間、近いでしょう」

 言われて、はっとする。

「……はい」

「向こうです」

 それだけ言って、男性は歩き出した。

 迷いのない背中。

 私は、半歩遅れて、その後を追う。

 扉の前で、彼はもう一度、私を見た。

 瞳の奥で、何かがゆっくりと蠢く。

 獲物を値踏みするような、静かな飢えを感じる。

 それなのに、声だけは穏やかだった。

「君の線は……」

 一瞬、言葉が途切れる。

 まるで、喉の奥で抑え込んでいる衝動を、そのまま飲み下すように。

「一度、見たら忘れられない」

 指先が、わずかに動く。

 さっき触れた腕の位置を、記憶するようになぞる仕草。

 触れていないのに、肌が、勝手に熱を持つ。

 私は、先に目をそらした。

 ――それが、間違いだったのかもしれない。

 男の唇が、ほんのわずかに上がる。

 微笑みではない。

 捕らえた、という確信に近いもの。

「では」

 それだけ言って、彼は背を向けた。

 それなのに、妙に印象だけが残った。

 扉の前で、私は一度、深く息を吸う。

 ドアノブに手をかける。

 二次審査が、始まろうとしていた。

***

 呼吸を整えて、会議室の扉を開ける。

 一瞬で、空気が切り替わった。

 長いテーブル。

 並んだ資料。

 すでに席についている人たち。

 テーブルの上に、名札が並んでいる。

 白地に、黒い文字。

 空いている席を探していると、

「初めまして」

 声がして、顔を上げた。

 向かいの席の女性が、軽く微笑んでいる。

 整えられた髪。

 流行をきれいに着こなした服。

 余裕のある姿勢。

「成瀬です。よろしくお願いしますね」

 柔らかい声。

 敵意はない。

 そのとき、視線がテーブルに落ちた。

 ——成瀬 美玲。

 胃の底が、冷たい塊になった。

 《ルクソリア》若手デザイナー・成瀬美玲。

 社内アワード受賞。

 《アウローラ》デザイナー候補。

(……私のデザインを、盗んだ人)

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