Share

第6話

Author: モリサマー
その後数日間、蒼介は一度も家に帰ってこなかった。

紬は5年間暮らしたあの家へ一人で戻り、荷造りを始めた。

丹念に書き溜めていた結婚生活のアルバムや日記を、彼女は1枚1枚破り捨てた。二人の写真、映画の半券、心を込めて綴った日記の数々が、無残に引き裂かれ、ゴミ袋の中へ落ちていく。

リビングに飾られていた大きなウェディングフォトを外し、床に叩きつける。ガラスが粉々に飛び散った。

彼女はその破片の中から写真を引きずり出し、蒼介が写っている半分をハサミで無残に切り落とし、それもゴミ袋へ突っ込んだ。

5年間の結婚生活が、たった数十分の作業でゴミと化した。

なぜか、肩の荷が下りたような清々しさを感じていた。執着を手放すのは、案外一瞬の出来事なのだ。

その間、蒼介から一度だけ電話があった。相変わらず感情の読めない冷淡な声だった。

「ここ数日、手術が立て込んでいて帰れない。自分の体は自分で労れよ。落ち着いたら、お前の好きなものを買って帰る」

紬は一言も発さず、そのまま通話を切った。

彼が本当に残業しているのか、それとも結衣のそばにいるのか、もはやどうでもよかった。

離婚協議書にはすでにサインをもらったし、自分も間もなくゼルディアへ発つ。これからは、赤の他人だ。

出発の前日、紬は引き継ぎの手続きをするためテレビ局へ足を運んだ。

エントランスに入った途端、ロビーのど真ん中に置かれた葬式用の花輪が目に飛び込んできた。

そこには墨文字で、【涼川紬へ。いじめっ子は地獄へ落ちろ、泥棒猫は一生恨まれろ】と書かれていた。

引き継ぎを終えてテレビ局を出ると、待ち構えていた週刊誌やネットニュースの記者たちに群がられ、マイクやカメラを容赦なく顔に突きつけられた。

「涼川さん、ネットでは高校時代に後輩をいじめ、彼氏を奪ったと書かれていますが、事実ですか?」

「ご主人が瀬戸さんを初恋の人だと公言しましたが、今の心境は?」

「正義を振りかざすジャーナリストとして、ご自身の過去の行いを恥ずかしいと思いませんか?」

「テレビ局はクビになったんですか?それとも自主退職ですか?」

……

紬は背筋をピンと伸ばし、カメラを真っ直ぐに見据えて冷静に答えた。

「やっていないことは、やっていません。現在、事実無根を証明する証拠を整理しているところです。後日、必ず公表します」

もちろん、そんな型通りの回答でハイエナのような記者たちが納得するはずもなかった。

四方八方からさらに矢継ぎ早に質問が飛び交い、彼女が口を開く隙すら与えない。

紬は息が詰まりそうになり、思わず一歩後ずさった。

その時、野次馬の中から石が飛んできて、彼女の肩に激突した。

「最低だな!」

群衆の中から誰かが吐き捨てるように叫んだ。

「いじめの加害者が証拠整理だ?瀬戸結衣はお前のせいで自殺未遂まで追い込まれてるんだぞ!」

また石が飛んできて、彼女の額にクリーンヒットした。

紬の体が大きくぐらついた。

痛む額に手を当てると、指先にべっとりと血がついていた。

流産したばかりの体は、まだひどく弱っている。膝から力が抜け、その場に崩れ落ちそうになった。

もし、仲の良い同僚の星川沙耶(ほしかわ さや)が間一髪で駆けつけ、彼女を庇いながら群衆をかき分けてくれなかったら、そのまま公衆の面前で倒れ込んでいたかもしれない。

テレビ局のバンに逃げ込むと、沙耶は一つの封筒を差し出し、深くため息をついた。

「局長から。予定をさらに早めて、今すぐ出発しろって。

航空券の変更も済んでる。3時間後のフライトよ。パスポート、ビザ、特派員の身分証、全部この中に入ってる。

紬先輩、早くここから離れた方がいい。これ以上ここにいたら、何をされるか分からないわ」

紬はまだ血の滲む額を押さえながら、静かに頷いた。

確かに、もう潮時だ。

しかし、このまま濡れ衣を着せられたまま去るわけにはいかない。

清算すべきことは、きっちりと終わらせなければ……

夕暮れ時。

蒼介は彼女の体を気遣って買った栄養ゼリーやフルーツの入ったレジ袋を提げ、自宅のドアを開けた。

「紬?」

返事はない。

リビングの壁に飾られていた大きなウェディングフォトが消え、ポツンと画鋲だけが残されている。

洗面所のドアを開けると、紬の歯ブラシもスキンケア用品も、すべて綺麗に無くなっていた。

彼はもぬけの殻となった寝室に立ち尽くし、紬のスマートフォンに電話をかけた。

呼び出し音が虚しく鳴り続けるだけだ。

もう一度かけ直そうとした時、同僚の医師から着信があった。

「島崎先生!早くネットを見てください!奥さんが50ページにも及ぶ告発スライドを公開したんです!LINEの履歴、同級生の証言、全部載ってます!トレンドがとんでもないことになってますよ!」

Patuloy na basahin ang aklat na ito nang libre
I-scan ang code upang i-download ang App

Pinakabagong kabanata

  • ゴミ箱の薔薇と、戦地での真実の愛   第20話

    紬の顔はさらに赤くなった。そこへ、医師が手術室から出てきてマスクを外した。「傷の処置は終わりました。大したことはありませんよ。ご本人はすでに意識を取り戻していて、しきりに紬さんを呼んでいます。どなたが紬さんですか?」紬はホッと胸を撫で下ろし、足早に病室へ入った。ベッドの上から慧がじっと彼女を見つめているのを見ると、彼女はわざと険しい顔を作り、問い詰めた。「先輩、わざとやったんでしょう?」慧は無実を装って笑った。「わざとって、何が?」「先輩ほどの腕前なら、瀬戸結衣みたいな女、片手で取り押さえられたはずじゃない。どうして自分の体を盾にするような真似をしたのよ」紬は目を赤くして睨みつけた。「私に同情してもらいたかったんでしょ。絶対にわざとよ。そうでしょう?」慧は言葉に詰まり、しばらくの間口ごもっていたが、結局何も言い返せなかった。紬は彼のおでこをツンと小突いた。「私、そこまで落とすの難しくないんだから。もう二度と自分の命を粗末にするようなマネはしないで」彼は紬の手をギュッと握りしめた。「それってつまり……口説き落としたってことで、いいのか?」紬は何も答えなかったが、彼の手を振り解くこともしなかった。茜は病室のドア枠に寄りかかり、スマートフォンで凄まじい勢いでフリック入力をしていた。二人が一斉に彼女の方を見ると、彼女は軽く肩をすくめた。「気にせずイチャイチャ続けて頂戴。私は両親に吉報を送ってるだけだから。出来の悪い息子の嫁の引き受け手が、ようやく見つかりましたってね」それから間もなく、紬は慧の両親と対面することになった。彼女はひどく緊張していた。蒼介の両親に初めて挨拶をした日のことを思い出す。料亭の個室の前で、彼女の手のひらは冷や汗でびっしょりだった。かつて義母となる女は彼女を頭の先からつま先まで値踏みするように舐め回し、蒼介に向かって「まあ、悪くはないわね」とだけ吐き捨てた。義父はピクリとも笑わず、ただ一度頷いただけで個室に入っていった。あの日の息の詰まるような初対面は、その後何度思い出しても胃が痛くなるほどのトラウマだった。だが、慧の両親は全く違った。母親は顔を合わせるなり彼女の手を両手で包み込み、「あらあら、写真で見るよりずっと美人さんじゃない!」と大歓迎してくれた

  • ゴミ箱の薔薇と、戦地での真実の愛   第19話

    紬は目頭を熱くし、半ばパニックになりながら彼にすがりついた。「馬鹿なこと言わないで!絶対に死なない!死なせるわけないじゃない!」救急隊員が駆けつけてきた。「ご家族の方は少し下がってください」紬は後ずさるしかなかった。手早く応急処置を施され、ストレッチャーに乗せられる慧を見つめながら、あの夜、ゼルディアの瓦礫の中から瀕死の状態で運び出された彼の姿がフラッシュバックした。胸がギュッと締め付けられ、彼女はそのまま救急車に同乗し、病院まで付き添った。慧はすでに意識を失っており、すぐに救命救急センターへと運び込まれた。紬は手術室の前でただ祈るように待っていた。廊下の向こうから、コツコツとヒールの音が響いてきた。紬が顔を上げると、スタイリッシュなショートヘアの女性が足早に歩いてくるのが見えた。目鼻立ちがどこか慧に似ている。女性は紬の姿を認めると、小さく息を呑んだ。「あなた……」紬は立ち上がり、礼儀正しく尋ねた。「あの、私をご存知ですか?」「初めまして。私は慧の姉で、桐生茜(きりゅう あかね)と言います。弟の財布の中で、あなたの写真を見たことがあるのよ」茜はパッと明るい笑みを浮かべ、気さくに話し始めた。「あなた、知らないでしょうけど。うちの弟ったらこの何年も、恋人も作らないしお見合いも全部断るから、母さんがすっかり心配しちゃって、私が探りを入れに行かされたのよ。そしたらあいつ、『どうしても忘れられない奴がいるんだ』って言って、あなたの写真を見せてきたの。大学時代のゼミの集合写真から、あなたの顔だけこっそり切り抜いた写真らしいわよ。『そんなに忘れられないなら、さっさと口説き落としなさいよ』って言ったら、『あいつ、もう結婚してるんだ』って。『相手が結婚してるのに、いつまで待つつもり?』って呆れて聞いたの。そしたら、あいつ何て答えたと思う?」紬は胸の奥が震えるのを感じた。「……何て言ったんですか?」「あいつはこう言ったわ。『もう少しだけ待ってみる。俺の記憶の中で、彼女がおばあちゃんになるまではな』って」紬は雷に打たれたように固まった。慧が自分に好意を寄せているのは、かつての淡い初恋の延長であり、異国で偶然再会したことでその熱が再燃した程度のことなのだと思い込んでいた。自分が蒼介という

  • ゴミ箱の薔薇と、戦地での真実の愛   第18話

    紬は答えず、そのまま機内へと姿を消した。自分の心の中は、痛いほどよく分かっていた。彼女が蒼介を許す日は、永遠に来ない。彼には散々傷つけられ、絶望を味わわされ、大切なものを奪われ続けた。彼を許すことは、必死で立ち直った自分自身を裏切ることに等しい。いつか彼の存在を忘れ、過去への執着を手放す日は来るかもしれない。だが、決して許しはしない。彼に復讐をしないだけでも、十分すぎるほど情けをかけているのだ。飛行機が滑走路を走り始める。窓の外では、ゼルディアの灰色のターミナルビルやヤシの木のシルエットが、ものすごいスピードで後ろへと流れ去っていった。彼女はやはり、一度も振り返らなかった。十数時間のフライトを終え、本国に到着してロビーに出た紬は思わず足を止めた。到着ゲートの前に小さな人だかりができており、「涼川紬」と書かれた手作りの応援ボードが掲げられていたのだ。ボードは金色の縁取りがされ、隅には「紬」の文字をあしらった花のイラストまで丁寧に描かれている。「涼川さん!おかえりなさい!」「ゼルディアからの報道、全部見ました!本当にかっこよかったです!」「無事に帰ってきてくれてよかった!ゆっくり休んでくださいね!」報道記者を何年もやってきて、自分に熱心な視聴者のファンができるなど想像もしていなかった。車椅子に乗った慧が茶化すように笑った。「おや、手強いライバルがいっぱいだな。俺の道のりも険しそうだ」紬も思わず笑みをこぼした。差し出されたノートとペンを受け取り、一つ一つ丁寧にサインをしていく。慧は車椅子の上で、その様子を穏やかな微笑みを浮かべて静かに待っていた。一人の若い女性ファンが彼に気づき、興味津々に尋ねた。「涼川さん、そちらの方は……もしかして、新しい旦那さんですか?」紬がサインをする手がピタリと止まった。慧の耳がピクッと動き、期待に満ちた目で彼女を見つめる。紬が返答する間もなく、黒いマスクをした女が人混みを掻き分けて紬の目の前に飛び出してきた。その女の目は、瞬き一つせず不気味に紬を凝視していた。見覚えのある目元だったが、紬は一瞬誰だか思い出せなかった。女がポケットから1本のペンを取り出す。紬はサインを求めるのだと思った。しかし次の瞬間、女はその尖ったペン先を、紬

  • ゴミ箱の薔薇と、戦地での真実の愛   第17話

    慧は左肺に重傷を負っており、長期の継続的なリハビリが必要なため、本国での療養を命じられた。紬の帰国辞令は、慧の移送通知と全く同じ日に届いた。彼女がゼルディアから発信した一連の報道は、国内の主要メディアで大きく取り上げられ、累計の再生回数は2000万回を突破していた。特に、彼女が3日3晩現場に張り付いて伝えたあの中継は、業界内で「今年度最も臨場感とジャーナリズムに溢れた戦地報道」と高く評価された。テレビ局上層部は彼女の功績を認め、報道局解説委員室の副室長というポストを用意して帰国させた。異例の若さでの抜擢であり、記者としての前途は約束されていた。最終的に、彼女と慧は同じ帰国便に搭乗することになった。搭乗ゲートへ向かう前、紬は蒼介の姿を見つけた。彼はわざわざ彼女を見送りに来てくれたのだ。「あなたはいつ本国に帰るの?」と紬は尋ねた。「帰って何の意味がある」蒼介の表情は暗く沈んでいた。「本国に帰っても、俺の家にお前はもういない」紬は短くため息をついた。「馬鹿なこと言わないで。あなたの腕前は医療界の誰もが認めてる。このままキャリアを積めば、いずれ大きな病院の院長になるのも夢じゃないわ。こんな辺境の地で時間を無駄にしないで」蒼介は苦しげな笑みを浮かべた。「俺は帰れない。ここで、罪滅ぼしをしなければならないんだ」「何の罪滅ぼし?」蒼介はうつむいた。彼は自分の両手を見つめた。外科医としてのその手は骨張って大きく、爪は短く切り揃えられ、指の腹には長年手術器具を握り続けたせいで薄いタコができている。この手で多くの命を救ってきたが、同時に取り返しのつかない過ちも犯した。「俺が、あの子を死なせた。俺はここで命を救い続ける。あの小さな命への祈りとして。あの子が来世で、少しでも幸せな家庭に生まれ変われるように」紬の目頭が熱くなった。彼女は何度か瞬きをして、溢れそうになる涙をグッと押し留めた。「蒼介。そんなふうに自分を罰しなくてもいいのに」彼は何も言わず、ただ手を伸ばして、彼女を強く抱きしめた。紬は本能的に肩を強張らせた。両手を彼の胸に当てて、押し退けようと力を込める。「最後だ」彼のくぐもった声が頭上から降ってきた。「これで最後だ!少しだけ、抱きしめさせてくれ……こ

  • ゴミ箱の薔薇と、戦地での真実の愛   第16話

    10時間以上に及ぶ大手術が終わった。午前4時、テントの入り口のシートが捲られ、蒼介が出てきた。足取りはおぼつかず、目の下には濃い隈ができている。紬の姿を認めると、彼は無理に笑みを作った。「破片はすべて摘出した。失血が酷かったが、輸血が間に合ったおかげで、今はバイタルも安定している」「ありがとう」紬は心から感謝を口にした。過去の因縁はともかく、彼の外科医としての腕前だけは、彼女も常に尊敬していた。「礼には及ばない。医者として当然のことをしたまでだ」蒼介は、自分はここですぐに立ち去るべきだと分かっていた。だが、極度の不安に青ざめた紬の顔を見ていると、どうしても足を踏み出すことができなかった。彼は軽く咳払いをして尋ねた。「お前とあの桐生隊長は、一体どういう関係なんだ?」紬が返答に窮していると、テントの中から「紬……」と微かな声が聞こえた。彼女は躊躇うことなく中へ駆け込み、ベッドのそばに寄り添って慧の手を両手で包み込んだ。「ここにいます」彼女は言った。「先輩、私、ここにいますから」その光景を目の当たりにして、蒼介は呼吸ができないほどの痛みを胸に覚えた。ふと、結衣が手首を切った日のことを思い出した。自分は病室のベッドの傍らに座り、結衣の手を握って、今の紬と全く同じセリフを吐いたのだ。「俺はここにいる。結衣、ずっとそばにいるよ」と。あろうことか、妻である紬の目の前で。あの時の紬も、今の自分と同じように、心臓を握り潰されるような痛みを味わっていたのだろうか。すべては自業自得だ。彼は自嘲気味に笑い、音を立てずにテントから退室した。一方、慧は半分しか開かない目で、目の前の紬を真剣に見つめていた。「まさか、生きてお前に会えるとは思わなかった」紬の目からボロボロと涙がこぼれ落ちた。3日間耐え抜き、10時間以上の手術中もずっと気を張って堪えていた涙が、彼が目を覚ましてこんな馬鹿なことを言ったせいで、一気に堰を切って溢れ出したのだ。「思わなかったって、何よ。私は最初から信じていますわ。この2日間、ずっと信じて待っていました。絶対に生きて戻ってきて、また私のことを見てくれるって」慧はふっと笑い声を漏らした。その振動で眉骨の傷が引っ張られ、「痛っ」と短く呻いたが、それでも彼は笑い続けた

  • ゴミ箱の薔薇と、戦地での真実の愛   第15話

    行方不明になったのは、慧だった。紬はテレビ局の中継車の横に立ち、マイクを固く握りしめ、カメラに向かって事態の最新の進捗をリポートしていた。彼女はこれまで、数え切れないほどの災害報道をこなしてきた。洪水、地震、武力衝突、空爆。いかなる時も、彼女はマイクを持つ手を一切震わせず、感情を殺して冷静な声で事実を伝えてきた。ニュースに記者の涙など必要ないからだ。だが、自分の大切な人間が災害の中心に取り残されている状況で報道を行うのは、これが初めてだった。死傷者の数、捜索の進捗、国際社会の反応を読み上げる。その声は一定のトーンを保ち、普段の完璧なリポートと何ら変わりはなかった。だが、彼女の心臓が破裂しそうなほど狂ったように脈打っていることは、彼女自身にしか分からなかった。「行方不明者」という言葉を口にするたび、目に見えない巨大な手に心臓を鷲掴みにされ、力一杯捻り潰されるような痛みに襲われた。カメラのランプが消えた瞬間、彼女は糸が切れたようにその場にへたり込んだ。幸輝が慌てて彼女を支える。「涼川、しっかりしろ。まだ続報が入ってくるぞ」「武田さん……」彼女の喉から絞り出された声は、ひどく掠れて震えていた。「今まで、こういう爆撃で助かったケースってありますか?先輩、本当に死んじゃったんじゃ……」「馬鹿言うな、大丈夫だ」幸輝は彼女を励ますように言った。「現在全力で捜索隊が動いてる。絶対に見つかるさ」紬は両手に顔を埋めた。彼女の肩が小刻みに震え始める。全身が粉々に砕け散ってしまいそうだった。幸輝は重いため息をついた。「なぁ、局に連絡して代わりの記者を寄越してもらおうか?お前は一度戻って休んだ方がいい」紬は首を横に振った。「帰れません。私は記者です」あの日、彼女の元から去っていく時の、慧の迷いのない足取りと、強い意志を宿した眼差しを思い出した。自分もまた、彼のように強くならなければならない。彼女は素早く精神状態を立て直し、再び自分自身の戦場へと身を投じた。彼女は丸3日間、その場に留まり続けた。プロとして職務を全うし、休むことなく続報を伝え続けた。そして心の底から、慧が無事に生還する知らせを待ち続けた。その祈りが通じたのか、3日目の夕暮れ時、ついに「桐生隊長を発見した!」

Higit pang Kabanata
Galugarin at basahin ang magagandang nobela
Libreng basahin ang magagandang nobela sa GoodNovel app. I-download ang mga librong gusto mo at basahin kahit saan at anumang oras.
Libreng basahin ang mga aklat sa app
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status