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第5話

Author: 神崎琉美
江戸川は私の苦しそうな様子を察したのか、低い声で再び耳元で問いかけてきた。

私の頭は少し鈍く、反応する間もなく、耳にひんやりとした湿り気が感じられた。

彼が優しく舐めている!

そのことを思い出すと、今の状況があまりにも気まずくて、終わらせたくなった。

けれども、体はだるく、少しも力が入らなかった。

江戸川は耳を伝って、ゆっくりと下へと進んでいった。

その両手も胸だけでは満足せず、ゆっくりと下へ滑り始めた。

私だんだんと快感に呑み込まれ、完全に諦めてしまった、一度だけ欲望に任せようか。

江戸川の手付きはすごく上手で、手だけで私を絶頂させた。

急に、彼の動きが止まった、マスクを外すと、彼が下着を脱いでるのに気づいた。

少し恥ずかしい気がするけど、間違っていると分かっていながら、体は正直なものだ。

彼は私を見下ろして軽く微笑み、その端正な顔立ちに私はますます心を奪われた。

「奥さん、いいでしょうか?」

心の中でこんな時にこんな質問をするなんてと悪態をつきながら、私はうなずいた。

その瞬間、子どもの泣き声が寝室から聞こえてきた。

膨らんだ頭が一瞬で正気を取り戻し、母親として私は体の感覚をなんとか抑え、江戸川を押しのけた。

足元がふらつきながら、寝室へと急いで歩いていった。

子どもはお腹が空いているようで、小さな顔を赤くして泣いていた。

私は少し胸が痛む、自分は不合格な母親だと思い、子どものことを気にかけていなかったことに気づいた。

片付たあと、彼女に授乳した。

子どもは母乳を飲んで泣き止み、私を見つめながらまばたきをした。

夫に似ているその顔を見つめながら、突然後悔の気持ちが心の中にあふれてきた。

私は今、取り返しのつかない過ちを犯しかけていた。

その時、江戸川が寝室に入ってきた。私は少し怒って、冷たい表情を見せた、全てはこの男が原因だった。

「もう帰ってください、後でお金は振り込むから」

江戸川は自分のタイミングを逃したことに気づいたのか、それ以上何も言わず、うなずいて寝室を出て行った。

授乳が終わって部屋を出た時、リビングは元通りに片付いていた。

私はその日のリビングの録画を取り出し、全て削除した。心の中でこれが最後だと言い聞かせた。

翌日、夫が帰宅したが、何も違和感を感じていない様子で、監視カメラを見る気配もなか
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