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第3話

Author: 南辛
私は振り返って、ドアの外に向かって行った。

岩男はは一歩も離れず、私の後ろについてきた。

そのとき、風の嘲るような声が響いた。

「なあ岩男、いつまで正義の味方を気取ってるんだ? いい加減、そのヒーローごっこに飽きねえのかよ」

岩男は振り返って、風の腹に一足蹴りつけた。

風はすぐに腹を押さえて、しゃがみこんでしまった。

「風、お前は必ず後悔するよ!」

私は目的もなく民宿の裏山に向かって行った。

山の頂上に立って、眼下の広大な景色を見ながら、ぼんやりとしていた。

岩男は何も言わずに私のそばに立っていた。

先ほど須賀が私の上にのっかっていたとき、私は泣かなかった。

風が私を須賀に差し出したことを知ったときも、私は泣かなかった。

でも今、星がきらきらと輝く山頂に立って、涙は大粒になって、頬を伝い落ちていた。

一体どうして自分が泣いているのか。

なぜ風は私にこんなことをするのだろうか?

大学時代の彼は、あんなにも優しかったのに。

私の全身の力が抜けてしまった。

しゃがんで、頭を膝に埋めた。

最初の小さなうめき声から、最後には大声で泣き出した。

胸に溜め込んで
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