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第2話

Author: 塩梅
高木警部はマンションの周囲を見渡しながら、ふと思い出したように母に忠告した。

「この数カ所の遺体遺棄現場、美桜ちゃんの住んでいるアパートに近いな。美桜ちゃんに連絡して、最近は戸締まりに気をつけるよう伝えた方がいいんじゃないか?」

私の名前が出た瞬間、母の目からスッと光が消え、嫌悪感が走った。私を抱く手に力がこもる。

「私の前であの子の話はしないで!あの子が事件に巻き込まれるわけないでしょう?」

高木警部はタバコを持つ手を止め、ため息をついた。

「あの時のことはもう随分前の話だ。お前もそろそろ許してやったらどうだ。どうあれ美桜ちゃんはお前の実の娘だぞ。他人の俺から見ても、お前のあの子に対する態度は不憫すぎる」

「あの時」という言葉に、母の目元が瞬時に赤くなった。

「あの子が腹痛だなんて嘘をつかなければ、国夫は死なずに済んだのよ!玲奈の両親だって死ぬことはなかった!

全部あの嘘つき娘のせいよ。あいつが原因でみんな死んだんだわ!あの子が死なない限り、私は一生許さない!」

母が「国夫」と呼んでいるのは私の父、藤崎国夫(ふじさき くにお)。

十二年だ。私がどんなに説明しても、母は私を殺人犯だと思い込んでいる。

嘘をついて、父と玲奈の両親を死なせた、と。

母は私を田舎に追いやり、玲奈を養子にして、全ての愛情を彼女に注いだ。

ここ数年、祖母と父の友人が密かに援助してくれなければ、私はとっくに野垂れ死んでいただろう。

母の腕の中で、私は震えが止まらなかった。

お母さん、私はもう死んだよ。これで許してくれる?

私が腕の中で小刻みに震えているのに気づき、母はすぐに私を撫でて宥めた。

「怖くないわよ、チビちゃん。あんたのこと言ってるんじゃないの」

頭蓋骨は損傷が激しく、復顔作業はすぐには始められないようだ。

母は私を連れて車に戻った。

車に乗り込んだ直後、母の携帯が鳴った。

「もしもし、文子かい?美桜から連絡はないか?あの子、もう何日も電話に出てくれないんだ。こっちからかけても繋がらないし、あの子に何かあったんじゃないかって……」

祖母の心配そうな声が聞こえた。

それを聞いた途端、母は眉間に深い皺を刻んだ。

「知るわけないでしょ。あの図太い子がそう簡単に死ぬもんか!死んだのでもない限り、あの子のことで連絡してこないで!」

祖母がまだ何か言いかけたが、母は乱暴に電話を切った。

車の外に立っていた高木警部が心配そうに声をかける。

「美桜ちゃんはそんな子じゃないだろう。一度電話してみたらどうだ?」

母は冷笑を浮かべた。

「憎まれっ子世に憚かるって言うでしょ。誰がどうなろうと、あの子だけは無事よ!」

そう言うと、母は私とのLINEのトーク画面を開き、ボイスメッセージを数件吹き込んだ。

「藤崎美桜!また音信不通ごっこ?いい加減にしなさい!すぐにおばあさんに連絡しないなら、もう家から出て行きなさい!」

毎日母にメッセージを送っていた私が、ここ数日一通も送っていないことに、母は全く気づいていなかった。

その時、玲奈専用の着信音が鳴り響き、母の怒りに満ちた表情が一瞬で和らいだ。

「もしもし玲奈?心配しないで、ママはもうすぐ帰るからね。

お腹空いたの?じゃあウーバーで何か頼んでおいて。ママもすぐ戻るから」

母は花屋の前で車を止め、向日葵の花束を買った後、隣のケーキ屋でイチゴのショートケーキを一つ買って、嬉しそうに車に戻ってきた。

ケーキか……私も食べたいな。あの事件以来、私は一度もケーキを食べていない。

帰宅すると、母は片手にケーキ、片手に花束を抱えてドアを開けた。

「ママ!」

玲奈が驚喜して母に抱きつき、離れようとしない。

母は嫌な顔一つせず、甘やかすような声で玲奈をあやしていた。

その親密な様子を見て、私の心の中に酸っぱいものが込み上げてくる。

六歳までの私は、間違いなく母の宝物だった。

可愛いドレスを買ってくれて、ケーキを焼いてくれて、熱を出せば一晩中そばにいてくれた。

誰かにいじめられれば、私のために戦ってくれた。

残念なことに、その全ては私の六歳の誕生日に終わってしまったけれど。

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