和泉夕子には、霜村冷司が胸の奥に秘める覚悟の大きさが理解できなかった。ただただ、彼を心配するばかりだった。「冷司、今までの任務なんてせいぜい一日か二日で終わっていたじゃない?今回は一ヶ月もかかるなんて。絶対、危険な任務なんでしょ?」霜村冷司は顔色一つ変えず、優しく和泉夕子を宥めた。「多少の危険は伴うが、私を信じろ。必ず無事に戻る」和泉夕子は信じられなかった。「じゃあ、私も連れて行って」霜村冷司は苦笑しながら、和泉夕子の髪を撫でた。「夕子、私の周りは男ばかりで、連れて行くわけにはいかないんだ」和泉夕子も、霜村冷司が自分を連れて行くはずがないことは分かっていた。ただ、一度くらいワガママを言ってみたかっただけだ。でも、自分のワガママで彼に迷惑をかけてはいけないことも、よく分かっていた。和泉夕子は、力を失くしたように彼のシャツを掴み、顔を胸に寄せた。「私、本当に役立たずね......」彼を助けることもできないのに、家でただ帰りを待つだけなんて......本当に役立たずね!霜村冷司は口角を上げ、目を細めて和泉夕子を見つめた。「お前がいるから、私の人生には意味があるんだ」彼女がいなければ、自分の人生は色褪せてしまうだろう。自分の人生を支える彼女が、役立たずなはずがない。危険な任務に赴くのは彼なのに、逆に自分が慰められている。無条件に自分を愛してくれる霜村冷司に、和泉夕子は胸を締め付けられた。「あなた、もし一ヶ月経っても帰ってこなかったら、私が探しに行く」生きていようと死んでいようと、ずっと一緒にいるべきだった。しかし、霜村冷司はそれを許さなかった。「もし一ヶ月後、私が帰ってこなくても、必ず誰かに伝言を頼む。だから、絶対に探しに来てはいけない」つまり、一ヶ月という期限は、あくまでも仮の時間に過ぎず、霜村冷司がやはり帰ってこられない可能性もあるということだった。和泉夕子の心臓はドキリと音を立てた。「もし一ヶ月経っても帰ってこなかったら、私、再婚する」霜村冷司の胸は締め付けられ、鋭い痛みが心を襲った。「夕子......お前は私を追い詰めて、期限内に帰らせようとしてるんだな。必ず戻る。約束する。だが、何が起こるか分からない。少し遅れることはあるかもしれないが、戻ってこないという意味じゃない......待っていてくれないか?」和泉夕
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