霜村冷司の脳内のチップの件で、霜村家は如月尭に謝罪を求めていた。そして、霜村家の長女である霜村若希は、もし如月家が謝罪を断るならば、霜村家は如月尭を決して許さないと言った。霜村爺さんが亡くなった今、屋敷を含め霜村家を管理しているのは霜村若希だった。だから彼女は、霜村冷司が如月尭によって、チップを埋め込まれていたことを知ったとき、家の者を連れて北米へと乗り込んだ。怒り狂った霜村家が乗り込んできたわけだが、如月尭にはそれを鎮圧する力があった。しかし、この件について非は自分にあると理解していたため、霜村家から罵詈雑言を浴びせられても、特に言い返すことはしなかった。彼を罵り終えた霜村若希と弟たちは、ようやく如月家へ乗り込んできた目的を口にした。「今、命をもって償えとは言わない。しかし、なんとしてでも弟の脳内のチップを取り出す方法を考えてほしい。さもないと......」彼女は最後の言葉をなんとか飲み込んでいたが、如月尭は彼女の脅しの意味は理解していた。「うちに昔から付き合いのある医者がいてね。脳の手術には結構詳しいんだ。だから、まず彼に冷司さんの状態を診させてくれないか?その上で約束しよう。それでいいかな?」ソファに背を預け、腕を組んだままの霜村若希は、冷ややかに顎を上げると、低く鋭い声で言い放った。「そのチップを埋めたのはあなただよね?もし、あなたの医者がチップを取り出せずに、弟を治すことができなかったら......あなた、自分の命で償いなさいよ!」つまり今ここで、如月尭にに約束させようとしているのだ。そうでなければ、霜村家の人間は絶対にこの件を黙って済ませはしない。団結して向かってくる霜村家の兄妹を前にして、如月尭は自分の子や孫たちの顔を思い浮かべながら、観念したようにうなずいた。「分かった。約束しよう」もう生きていく希望もなかったから、死ぬ前に和泉夕子のために何かできるなら、それもいいと思った。ただ、霜村冷司の脳内のチップは、本当に厄介なものなのだ。如月尭はモーアを連れて再び帰国した。今回は霜村若希にせかされ、和泉夕子に会う暇もなく、霜村冷司に会いに行くこととなった。見るからに生気を失っている霜村冷司は、まるで魂が抜けたように、医師たちに処置にされるがままだった。彼からは全くというほど生きる気力が感じられず、生への執着が完全に無くなっ
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