この一時間の間に、陶子は真奈に何度も電話をかけていた。真奈はそれに驚くこともなく、むしろ落ち着いた様子で陶子の番号をダイヤルした。すぐに、陶子が電話に出た。電話の向こうの陶の声には申し訳なさが滲んでおり、「瀬川さん、今日福本信広が家に来て、使用人を全員殺してしまいました。私は陽子さんを裏切るようなことはしませんでしたが、やむを得ず陽子さんを連れ帰らせてしまいました。本当に申し訳ありません」と言った。「私に謝る必要はないわ。福本信広はもともと手強い相手なんだから、あなたが自分自身や私のことを隠し通せただけで十分よ」真奈は陶子を責めるつもりは毛頭なかった。陶子はようやく安堵の溜息をつき、「本当に申し訳ありません。あんなに真剣に陽子さんの世話を頼んでくれたのに、台無しにしてしまいました」と言った。「福本信広は使用人を全員殺したのに、なぜあなただけ残したの?」その鋭い問いに対し、陶子はあらかじめ真奈がそう聞くのを予期していたかのように、「恐らく……私は楠木家のお嬢様だから、彼はまだ私に手を出せないのだと思います。とにかく、私はそう考えています」と答えた。この答えに真奈はあまり納得がいかず、含みを持たせて言った。「実は私も不思議に思っているの。なぜ陽子の行方が分からない中で、福本信広が突然あなたを見つけ出せたのか」その一言に、陶子の瞳が揺れた。「少し用事ができて、先に海城へ戻らなきゃいけなくなったの。迷惑かけちゃった申し訳なかった、楠木さん」そう言うと、真奈は電話を切った。電話の向こうで、陶子は自分のスマホをじっと見つめた。真奈は知っていたのか?それとも気づいていないのか?その疑問は陶子の脳裏を一瞬掠めたが、すぐに彼女は望んでいた答えに辿り着いた。真奈は、知っていた。この電話を、真奈はずっと待っていたのだ。自分が何を言い、どんな理由を並べようと、実は大した問題ではなかった。重要なのは、福本陽子に何かが起きた時、福本信広が真っ先に誰を思い浮かべるか、だった。これが真奈の仕掛けた罠だと悟ると、陶子は逆に笑みを浮かべた。真奈が侮れない相手だということくらい、とっくに分かっていたはずだった。だが、これでいい。その方が、物事はもっと面白くなる。海城。「楠木陶子?楠木陶子だと?」立花は
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