この遺品――冒険者の日記の重要な点は、店で売っていたりダンジョンに落ちているポーションよりも高品質なものを作れると書いてあるところだ。 質の良いポーションであれば、レベルの高い魔物に通用する可能性がある。 混乱やマヒのポーションは、うまく決まれば相手を無力化できる。 ダンジョンで無限に出てくる魔物相手に、いちいち正面から戦うのは無理というもの。 だからぜひとも、無力化できる手段がほしかった。 一時的に無力化できれば、あとはボコるも逃げるも自由だからな。 錬金術はスキルである。 王都の冒険者ギルドで習えたはずだ。 その他にも生産系と思えるスキルは、あちこちの町にあった。 今までは余裕がなくてスルーしていたが、そろそろ取り組んでみよう。「ご主人様、考えは決まりましたか?」 部屋で待機していたエリーゼが言った。 ふと思いついて、俺は言ってみた。「エリーゼは裁縫スキルを持っていたよな。あれ、服とか作れるのか?」「どうでしょう……。わたしのスキルは低すぎて、繕いものをするくらいしかできません。でも、スキルを鍛えればできるようになるかもしれませんね」「なるほど」 スキルを最初から持っているのは強みだ。鍛えてみる価値はあるだろう。 さすがの俺も、全ての生産スキルを一人で極めるのは大変すぎる。手分けするのはいいアイディアだ。「ダンジョン攻略、ちょっと行き詰まってきだだろ。だからここらで方向転換しようと思ってな」 俺はエリーゼとクマ吾郎に考えを話して聞かせた。 二人ともうなずいている。「幸い、スキル習得に必要なメダルはたくさんある。これから各地を回って、めぼしいスキルを覚えてこよう」「はい!」「ガウッ」 そうして俺たちは春の季節を移動と町めぐりに費やした。 各町で見つけた生産系スキルは以下の通り。 鍛冶。ハンマーを振るって金属を加工し、武器や防具を作る。
Last Updated : 2025-04-27 Read more