「はぁ、はぁ……っ」私は、無我夢中で廊下を走り続ける。悲しさと苛立ちが最高潮に達して、つい感情のままに叫んでしまったけど。もしかしたら私、とんでもないことをしちゃったかもしれない。この前の数学の補習のときに、藍はこれからもモデルの仕事を頑張りたいって話していたところなのに。もしも陣内くんに、あの写真を流出されたりしたら……藍のモデルとしての生活にも影響があるかもしれない。「ああ、どうしよう……」走ってやって来た屋上の隅っこで、私は一人うずくまる。補習のあのとき、教室には私と藍以外誰もいなかったとはいえ、学校だからもっと危機感を持つべきだった。今になって後悔したって、もう遅いけど。もし、陣内くんにあの写真をばら撒かれたら……芸能人の藍に迷惑をかけちゃう。私自身はどうなっても構わないけど、藍のことだけは守りたい。さっきは、つい勢い余って拒否してしまったけど。あの写真を拡散させないためには、陣内くんの言うことを聞いて、彼と付き合うしかないのかな?冷静になって、もう一度じっくりと考えてみる。だけど、頭の中に繰り返し浮かぶのは藍の顔。やっぱり、好きでもない陣内くんと付き合うなんてできない。そんなのは、絶対に嫌だ。私が付き合いたい人は……陣内くんじゃなくて、藍なんだから──。「……って、やだ。私ったら、今何を思った?!」屋上の隅でうずくまり、ずっと俯いていた顔をガバッと勢いよく上げる。そして、パチパチと瞬きを何度も繰り返す。藍と付き合いたい……だなんて。ああ……私ったら、いつからそんなことを思うようになっていたんだろう。藍は、昔から可愛い弟のような存在で。藍のことが大切で大好きなのは、ずっと家族愛みたいなものなんだって思っていたけど。知らず知らずのうちに、藍に家族や幼なじみ以上の感情を抱くようになっていたなんて……!「私……藍のことが好きなんだ」だから、藍がこの前屋上でレイラちゃんと一緒にいたのを見たときも、あんなにショックだったんだ。ああ……まさかこんな形で、自分の気持ちに気づくなんて。恋を自覚した瞬間、ぶわっと顔が急激に熱くなった。小学生の頃、一度振ってしまった藍のことを好きになってしまったなんて、自分でもびっくりだよ……。──バンッ!!私が自分の想いを自覚したそのとき、勢いよく屋上の扉が開き、飛び出すように誰かが
Last Updated : 2025-04-22 Read more