「ありがとう、公子様。もう離れても大丈夫だと思うよ?」 宗主たちの傍を離れ、竜虎たちの待つ焚火の前まで歩く。その短い間でさえもずっと隣を歩いていた。見上げてへらへらと笑ってみせる無明とは違い、少しむっとした顔で白笶は見下ろしてくる。「離れない」「う、うん? そっか····じゃあ、ひとつ訊いてもいい? 白笶はあの妖鬼と知り合い?」「······何年か前に一度、顔を合わせたことがあるだけだ」 その時に嫌なことでもあったのだろうか? 無明は狼煙という名のあの妖鬼のことを知りたいと思ったが、これ以上は情報を得られそうにないと悟る。「無明! いい加減、誰とでも仲良くなるのは止めろ。毎回心配する俺の身にもなれっ」「なんで竜虎が心配するの? 別に仲良くなる分にはいいでしょ? あれ〜? さっきは俺を心配して来てくれたんだ? へー。ふーん?」 白笶がいることも気にせずに、無明はどすっと地面に胡坐をかいて座り、正面に座る竜虎をからかうように、にやにやと笑いながら言った。竜虎が小言を言うのはいつものことだが、それは無明を嫌ってのことではない。「公子様も座って? 一緒に休もう」 雪陽から茶を受け取って、立ったまま口元に運んでいる白笶が首を振る。「じゃあ俺もずっと立ってようかなぁ······」「駄目だ。身体を休めて」 よいしょと立ち上がるふりをした無明の肩に手を置き、座るように促す。茶碗を雪陽に手渡し、白笶はじっと見張るように無明の動きを観察しているようだった。「そんなに見つめられたら、穴が開いちゃうよ? 気になって休めないし。ね? だったら一緒に座ろう? ほら、ここ。俺の横にいてくれる?」 くいっと薄青の衣の裾を軽く引いて、自分のすぐ横の地面をぽんぽんと叩き、ここと指定する。少し考えた後、わかったと頷いて白笶は大人しく指定された場所に座った。(········あの白笶公子さえ、これだ。無明はどうしてこうも変わり者に好かれるんだ?) 誰にも懐かない野良猫さえ無明には喉を鳴らす。極端なのだ。ものすごく好かれるか、死ぬほど嫌われるか。「お前という奴は、本当に······」「なに? 恥知らずって言いたいの? それとも痴れ者? 悪いけどどっちも俺には誉め言葉だよ?」 ふふんと自慢げに鼻を鳴らし、行儀悪く斜めに立てた右足の膝に頬杖を付いて、べぇっと舌を出し
Terakhir Diperbarui : 2025-05-26 Baca selengkapnya