どれほど抱き締め合っているのか分からない。けれどフェリシアは思う。やっとここまでこられたと、もうじきエルバートの正式な花嫁になれるのだと。* * *そんな余韻に浸れた時間は今宵だけで、翌日の朝。ルークス皇帝に婚姻のことをご報告する為、エルバートと共に皇帝の間へと向かい、やがて玉座の階段前で互いに跪くとルークス皇帝が口を開く。「エルバートよ、急遽、報告したき事とはなんだ?」「昨夜、隣のフェリシアと婚姻の約束を交わしました」エルバートの言葉を聞いたルークス皇帝は驚くと同時に優しく微笑む。「――そうか、ようやくか。エルバート、フェリシア、おめでとう」「ありがとうございます」フェリシアとエルバートは合わせて礼を言う。「そうと決まれば、婚姻の式を早急に挙げねばな」「2ヶ月後に公務が空くゆえ、その日に婚姻の式を挙げるのはどうであろう?」エルバートに目線を向けられ、フェリシアは頷く。「私達はその日で構いません。ですが2ヶ月後で準備が間に合うかどうか」「エルバートよ、心配ない。間に合うかどうかではなく、間に合わせる、必ずな」「お心強い言葉をありがとうございます」エルバートはお礼を告げ、フェリシアはエルバートと共に深々と頭を下げる。こうして2ヶ月後に婚姻の式を挙げることが正式に決まった。その途端、休む暇もなく、フェリシアはエルバートと結婚指輪の宝石を選ぶこととなり、ルークス皇帝のお墨付きの女性の店主が至急、アルカディア宮殿を訪れ、客間のテーブルに宝石箱がずらりと並べられる。店主によると指輪を作るのに2ヶ月もあれば充分とのことで、「一番惹かれるものをお選び下さい」と、エルバートには、「好きなものを選んで良い」と言われるも、どれも勿体無い程、高級で美しい宝石ばかりで選べない。どうしよう。こんなにもお待たせして選べられないだなんて言ったらもっと不快にさせてしまう。「フェリシア、ゆっくり選べば良い。私は怒ったりしない」自分の心を読まれたかのようにエルバートに声を掛けら
Last Updated : 2025-07-20 Read more