「おい、里中。どうしたんだよ? 急に難しい顔して黙り込んで。何か悩み事でもあるのか? 俺で良ければ相談に乗るぞ?」突然静かになった里中を見て近藤が声をかけた。「いや、何でも無いですよ!」里中は慌てて首を振る。「そういえばここ最近、間宮君の様子がおかしいって聞いてるぞ。お前何か知ってるか?」「え? そうなんですか? 別に俺は何も知らないですよ」「う~ん……お前のその様子だと本当に何も知らなさそうだな。実はここのところ間宮君がよく食器を取り落して割ってしまったり、出来上がった料理を運ぶ際に落としてしまう事がたまにあるらしいんだ」「え? どういうことなんですか?」「それが俺も良く分からないんだよなあ。でも取り落した時はいつも真っ青な顔で片側の手で手首を掴んで震えているらしいから、もしかして手首の調子でも悪いんじゃないかって言われてるんだよ。診察でも受けてくれれば、ここでリハビリ出来るのにな」話が終わると、じゃあなと言って近藤は去って行った。「間宮……気になるな。今日はレストランで昼飯食べるか……」里中はポツリと呟いた――**** 昼休憩に入り、里中はレストランに来ていた。空いているテーブルを見つけて座るとオーダーを取りに来たのが偶然にも渚であった。「里中さん。今日はここでランチなんだね」「あ、ああ。まあな。ところで……今日の日替わりメニューは何だ?」「カツフライ定食だよ」「じゃあ、それを頼む」「はい、かしこまりました」渚はテーブルの上にあるメニューを手に取ったその瞬間、何故か取り落してしまった。バサッ!軽い音を立てて床に落ちるメニュー。「あ……」渚の顔は真っ青である。「お、おい。大丈夫か?」里中はメニューを拾うと渚に渡した。「お前……すごく顔色悪いぞ? どこか具合でも悪いのか?」「平気だよ。僕は大丈夫だから……」無理に笑顔を作って言っているが、身体は小刻みに震えている。「無理するなよ?」「うん、ありがと……」渚はメニューを受け取ると厨房へと戻って行った。そんな渚を里中は心配そうにして見つめてポツリと言った。「……気のせいか? 一瞬間宮の両手が透けて見えたような気がしたな………」**** 食事を終え、支払いを済ませて職場へ戻ろうとしていた時に里中は渚に呼び止められた。「里中さん。これ、千尋からリハビリス
Terakhir Diperbarui : 2025-05-13 Baca selengkapnya