聡は旭日テクノロジーへ行ったことがある。二度も。そして二度とも、透子と「一進一退の攻防」を繰り広げていた。一度目は、公然と透子を口説いていた。二度目は、自らデザイン部にプレゼントを届けに来て、聡が透子に気があることは、部署内のほとんどの人間が知るところとなった。「そんなに大事なことを、なぜもっと早く報告しなかったんだ!!」蓮司は、怒りが爆発する寸前の状態で問い詰めた。相手は答えた。「新井社長、お聞きになりませんでしたので。最初、如月さんのことをお尋ねになり、うちの桐生社長とのご関係についても聞かれましたので、その件についてはすべてお話しいたしました。その後、ご連絡がありませんでしたし、新井グループとの提携の件で社長ご自身もこちらへお越しになっていましたから、てっきりもう僕からの情報はご不要になったのかと」蓮司は必死に耐え、深呼吸をした。うっかり堪えきれずに、相手に暴言を吐いてしまいそうだったからだ。彼が手配した人間はただの平社員ではない。旭日テクノロジーのある部署の責任者だ。見返りとして、いつでも新井グループに転職できるという条件を提示し、情報を探らせていた。それなりの役職に就いているからこそ、情報を集めやすい。だからこそ、蓮司はまだ相手との関係をこじらせるわけにはいかなかった。「他にはないのか?透子と聡のことだ」蓮司は冷静さを取り戻して尋ねた。相手は言った。「今のところはございません。柚木社長が旭日テクノロジーへお越しになったのは二度きりですし、提携も決まりましたので、もういらっしゃることはないかと」蓮司はその言葉を聞き、冷たく言い放った。「なら、もうお前には用はない」その言葉に、相手はすぐさまこう返した。「桐生社長の件がございます。僕が新井社長のために、引き続き監視いたします。社内では確かに噂が立っておりますが、最近、桐生社長が如月さんとご一緒に行動されている様子はございません。何か進展があれば、すぐにでもご報告いたします」それを聞き、蓮司はようやく少し満足し、駿の一挙手一投足を監視するよう命じた。電話を終えると、彼はSNSを開き、聡にメッセージを送った。返信を待つ間、我慢できずに電話もかけたが、あのクソ野郎はまたしても出ない。腹立たしくて仕方なかった。その頃、柚木グループの
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