「ねえ、樹くんは行きたいところないの?」「俺は姫乃さんが喜んでるのを見てるのが好きだからなぁ」「でも私も樹くんに喜んでもらいたいよ」「またそういう可愛いことを言う」私ばかりがいつも喜ばせてもらっている気がして、なんだか気が引けてしまう。私だって樹くんに喜んでもらいたいと思っているのに。樹くんは「そうだなあ」と顎に手を当てて少し考え込むと、人差し指をぴっと立てて言った。「じゃあ大河ドラマ展なんてどう?」「!!!」大河ドラマ展だなんて、なんて素敵な響き。 毎週楽しみに見ている大河ドラマ。その展示物を見に行くなんて夢のようだ。でもそれは完全に私の趣味であって……。 そうこう考えているうちに勝手に顔が緩んでいたらしい。 樹くんはお腹を抱えて笑い出した。「姫乃さんわかりやすっ。よくそれで今まで彼氏がいるって思われてましたね」「むー」「はいはい、ごめんごめん」樹くんは笑いながらも両手を挙げてお手上げのポーズをした。「でも大河ドラマ展なんて、遠いじゃない。この辺じゃないよね?」「旅行ってことで」「旅行?!」彼氏と旅行とか、夢のようだ。 え、本当に? 夢? 現実?あれこれと考えていた私は、どうやら百面相になっていたらしい。 そんな私を見て樹くんはまたお腹を抱えて笑った。
Terakhir Diperbarui : 2025-08-13 Baca selengkapnya