夜の都会は人も灯りも多すぎて、空を見上げなければまだ昼間のような気がしてくる。 頭の中のモヤモヤした気持ちは何一つ解決していないけれど、蓮に会ってホッとしたのは嘘じゃない。「メールじゃなくて、話がしたいなって思って。電話でも良かったんだけど……」「会えたのは嬉しいけど、流石にこんな時間だし家に帰る? 今から話したら終電もなくなるよ?」 蓮がスマホで時間を確認して、駅の方を一瞥する。 そんなのは咲も分かっている。最終は十時半。田舎へ行く電車なんて、そんなものだ。「芙美の家に泊るって言って来た」 それは別に一人で夜を徘徊する選択もあったからで、蓮と過ごすためではないけれど。「えぇ? 本気? ウチに来てもいいけどさ」「駄目だ。できるわけないだろう?」 咲はそのシーンを想像して、強めに訴える。「芙美の居る家に蓮と行って、何て説明するんだよ。別に一人で公園にでも寝ればいいよ……」「そんなことさせられる訳ないでしょ? けど、朝までファミレスとかカラオケって訳にもいかないか……高校生だもんね」 自分でも訳の分からないことを言っている自覚はある。蓮を困らせてしまうのは重々承知だし、流れとはいえ彼に甘えてしまっている自覚もある。 流石に申し訳ない気持ちになった所で、蓮が額に手を当てて「うーん」と唸った。「ごめん……なさい」「俺は構わないけど、本当にいいの? 朝まで一緒に居るってことだよ?」「蓮が嫌じゃなかったら」「嫌じゃないよ。じゃあ、とりあえず行こうか」 背を向けた蓮に「うん」と答えて、咲は彼の横に並んだ。「どこへ行くんだって聞かないの?」「どこでもいいよ」「どうでもいいみたいに言わないで」 蓮が「もぅ」と咲を覗き込む。「……じゃあ、蓮とならどこでもいいよ」「だったら嬉しいんだけど。芙美が咲ちゃんの話する時ってさ、いつも強くて明るくて楽しくてって言うんだよ。けど、俺の知ってる咲ちゃんは、ちょっと違うよね」「別に、こんな暗い女嫌なら、ここに置いて行ってもいいんだぞ」「そうじゃなくて。また不安そうな顔してるから、この間よりは話してくれたら嬉しいなと思ってる」「うん……」 今まで誰かに自分の過去を知って欲しいなんて思ったことはなかった。ヒルスが本当の自分で、咲は仮の姿みたいなものだと思っていたからだ。 けど咲として芙美に会っ
Terakhir Diperbarui : 2025-06-30 Baca selengkapnya