いもおい~日本に異世界転生した最愛の妹を追い掛けて、お兄ちゃんは妹の親友(女)になる!?

いもおい~日本に異世界転生した最愛の妹を追い掛けて、お兄ちゃんは妹の親友(女)になる!?

last updateHuling Na-update : 2025-11-12
By:  栗栖蛍Kumpleto
Language: Japanese
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異世界から日本へ転生した妹のリーナを追って、兄ヒルスは彼女の親友(女)として生まれ変わる--。 最強のウィザードから女子高生に生まれ変わった芙美(リーナ)と、咲(ヒルス)のダブル女子主人公。 現世の兄・蓮と、前世の兄・咲の恋人関係に、芙美は翻弄される。 果たして地球は救われるのか──?

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Kabanata 1

プロローグ 妹リーナ、異世界へ

"آسفة يا آنسة ياسمين، لقد فاتك أفضل وقت لإجراء العملية..."

ظلت ياسمين واقفة متجمدة وهي تمسك بورقة التحليل التي تؤكد إصابتها بسرطان الرحم. بعد صمت طويل، اتصلت بسكرتير عمر، كريم الزهري.

رنّ الهاتف طويلًا قبل أن يُجيب أخيرًا، بنبرة لا مبالية كعادته:

"سيدتي، هل لديكِ أمر ما؟"

قبضت ياسمين أصابعها المرتجفة وقالت:

"أين عمر؟ أريد التحدث معه."

أجاب كريم:

"السيد عمر مشغول الآن ولا يستطيع الرد."

قالت بصوت متوسل:

"هل يمكنك أن تجعله يرد عليّ للحظة فقط...؟"

لكن قبل أن يكمل كريم كلامه، سمعت ياسمين من الطرف الآخر صوتًا ناعمًا:

"عمر، ما المفاجأة التي تخبئها لي حتى تتصرف بهذه السرية؟"

ثم جاءها صوت عميق مألوف حتى النخاع، لكنه كان يحمل حنانًا لم تنله هي أبدًا:

"ارفعي رأسك."

وفي اللحظة التالية، أنهى كريم المكالمة بلا تردد.

وفي الوقت ذاته...

بوم——

دوّى انفجار من جهة الميناء، فرفعت ياسمين رأسها بوجه شاحب.

ارتفعت في السماء المقابلة ألعاب نارية متلألئة، تتشابك ألوانها الزاهية في ليلٍ أزرق قاتم، فتبدو بجمالها كما في الأساطير.

أمام باب المستشفى، كان الناس يتحدثون بصخب:

"سمعتم؟ هذه الألعاب النارية التي أطلقها السيد عمر الراسني من شركة الأفق الأزرق لعيد ميلاد حبيبته، كلفته أكثر من مليوني دولار في ليلة واحدة!"

"إنها ليلى السويدي! حاصلة على دكتوراه من معهد كاليفورنيا للتكنولوجيا، نخبة تتنافس عليها أكبر الشركات المحلية، ذكية وجميلة ومن عائلة مرموقة، وحبيبها وسيم وقوي النفوذ!"

"ليس غريبًا أن يحبها السيد عمر الراسني إلى هذا الحد، حبيبة كهذه تُعتبر فخرًا له!"

ظلت ياسمين تحدق طويلاً في تلك الألعاب النارية الباذخة، ثم ارتخت قبضتها ليسقط ورق التحليل من يدها إلى الأرض.

استدارت ورحلت.

في ساعات الفجر الأولى، عاد عمر إلى المنزل، فوجد ياسمين جالسة في غرفة المعيشة دون أن تشعل أي ضوء.

رفع الرجل يده وأشعل المصباح، قطّب حاجبيه وقال:

"لماذا لم تنامي بعد؟"

رفعت ياسمين عينيها إليه، كان يحمل سترته على ذراعه، وعيناه السوداوان العميقتان تحدقان بها ببرود معتاد.

كانت تظن يومًا أن طبعه بارد بالفطرة، لكنها أدركت اليوم أن ذلك الجليد الذي ينام إلى جوارها ما هو إلا جمرة متقدة في قلب شخص آخر.

قالت بصوت خافت:

"لم أستطع النوم... ذهبت اليوم إلى المستشفى."

ألقى عمر سترته على الأريكة بلا مبالاة وسأل:

"وماذا قال الطبيب؟"

كانت ياسمين قد اشتكت منذ فترة من ألم في أسفل بطنها، وقد وعدها أن يرافقها للفحص، لكنه كان يؤجل دائمًا.

مرة بحجة عقد بملايين، ومرة بمشكلة معقدة في مشروع.

حتى البارحة وعدها أن يذهب معها إلى المستشفى، لكنه علم أن ليلى أخفت عنه عيد ميلادها، فسارع للحاق بها ولم يسعفه الوقت إلا لإطلاق الألعاب النارية.

أما ياسمين، فلم يجد وقتًا لها.

خفضت رأسها وقالت بهدوء:

" لا شيء يُذكر، مجرد أن أنتظر قليلًا وكل شيء سيكون بخير... لكن لماذا عدت إلى البيت اليوم؟"

توقف عمر لثوان، ثم اقترب منها.

ضمها إلى صدره، أنفاسه الحارة تتردد على عنقها، وصوته مبحوح:

"هذه الأيام هي فترة إباضتك."

وأضاف ببرود:

"لقد طلبتِ مني واتفقنا أن نكون معًا في هذه الأيام من كل شهر، حتى ننجب وريثًا لعائلة الراسني. أم أنك نسيتِ؟"

كانت رائحة عطر نسائي تفوح منه بوضوح، كرصاصة مزقت ما تبقى من كرامة ياسمين التي كانت تتشبث بها.

لم يكن مخطئًا؛ ثلاث سنوات من الزواج وهو بارد معها، لا يقترب منها إلا استجابة لإلحاح الحاجة الراسني بضرورة إنجاب وريث لعائلة الراسني.

تاهت ياسمين في أفكارها: طفل؟ لم يعد ممكناً.

كان طبعها دائمًا هادئًا وخاضعًا، لكنها هذه الليلة لم تعد قادرة على الاحتمال.

قالت بحدة:

"عمر، ألا تخشى أن تغار حبيبتك إذا جئت لتنام معي؟"

كانت عيناها تلمعان في الظلام، كحيوان صغير أظهر أنيابه أخيرًا.

تأملها عمر، ورأى جديتها، فبردت نظراته شيئًا فشيئًا.

ثم ابتسم ابتسامة باهتة لا تصل إلى عينيه وقال:

"ولماذا أخاف؟ نحن متزوجان سرًا، وأنتِ من تعيشين في الظل."

وتابع ببرود:

"بما أنكِ اخترتِ أن تكوني الدور الثانوي، فلا يحق لكِ المطالبة بالكثير."‬

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Higit pang Kabanata

Rebyu

柴田来知
柴田来知
なろうからきえててびっくりした
2026-03-28 13:18:49
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186 Kabanata
プロローグ 兄ヒルス、異世界へ
 ただ水の音だけが広がる沈黙の中で、ヒルスはルーシャに背を向けたまま呆然と立ち尽くしていた。「貴方、良く堪えたわね。後追いでもされたらどうしようかって内心ヒヤヒヤしてたのよ?」「する気だったけど、アンタを信じたんだ。別の世界に行く穴は1人分だったんだろ? アイツは……リーナはちゃんと向こうへ行けたのか?」 ルーシャが滝壺へと構えた杖を引いて「勿論よ」と答える。彼女が空中に描いた藍色の魔法陣が宙に溶けていく。 ヒルスは項垂れた背をゆっくりと起こし、もう二度と会えない妹を思って自分の肩をそっと抱きしめた。「リーナのさっきのアレは何だったんだ?」 彼女が最後に耳元で何を話したのか、ヒルスには聞き取ることが出来なかった。言葉だと言われればそんな気もするし、魔法だと言われれば魔力のないヒルスは『そうなのか』と納得せざるを得ない。「アイツはもう魔法なんて使えない筈だろう?」「彼女にも色々と事情があるのよ。必要になる時が来たら教えてあげるから、今はまだ我慢して。リーナは貴方の妹だけれど、この国の大切なウィザードでもあるんだから」「……ウィザード様ね。そんなの分かってるんだよ」 今まで何度もそれを納得しなければと思って生きて来た。 妹である前に彼女はこの国にとって大切な魔法使いだ。いつも側に居るのに、間を隔てる壁は厚い。「けど、リーナが幸せだと思えるなら、それでいいのかな。どうせならこっちの事を何も思い出さないで転生する方が幸せなんじゃないかって思うのは、僕の我儘なのか?」「それじゃ何のために行くのか分からないでしょ? 先に行った二人は、あの子が追い掛けてくるなんて夢にも思っていないでしょうね」「アイツらが恨めしいよ。けど、本当にアッシュは死ぬのか?」「死ぬわよ」 杖の先についた黒い球を撫でながらキッパリと肯定したルーシャに、ヒルスはその意味を噛み締めるように唇を結んだ。閉ざされた運命を辿る友を思うと、引いたはずの涙がまた零れそうになる。「彼女はアッシュの武器を引き継いで、ラルと一緒に異世界を救う覚悟で崖を飛んだの。お兄ちゃんがそんな顔してたら、彼女の想いが無駄になってしまうわ」「無駄になんてさせるかよ……」「えぇ。そして貴方はやっぱり彼女と同じことを私に聞いたわ。貴方も異世界に行きたいんでしょう?」「――えっ?」「さっきはあぁ言ったけど、
Magbasa pa
1 スカートの丈は短い方が可愛い
 広井(ひろい)駅を出発して少しすると、電車は大きな川を超える。そこからはもう民家もほとんどない田舎の風景が広がっていた。「何考えてるの?」 小さな集落の無人駅を過ぎたところで、荒助(すさの)芙美は並んで座る相江湊(あいえみなと)に声を掛けた。虚ろ気に外を見つめる彼に芙美がそれを尋ねるのは、入学式から数えて2回目だ。「あ、いや、天気良いなと思って」 前も同じような返事だった気がする。促すように空を見上げた彼の視線を追うと、まだ真夏の気分を残したモクモクの入道雲が山の緑に重なっていた。「今日も暑くなりそうだね」「そうだな」 ほんの少し笑って見せて、湊はまた風景に没頭する。 広井駅を過ぎると、改札から遠い2両目の車両には他の客が誰も居なくなった。恋人同士ではないが他人という訳でもなく、芙美はなんとなく彼の側に居る。 芙美が挨拶すれば彼はちゃんと答えてくれるし、嫌がっている様子もない。ただ毎度のように黙って外を眺める彼は、心がどこか遠くにあるような気がした。『次は白樺台(しらかばだい)』 少しずつ民家が増えてきたところで、アナウンスが流れる。 山奥の小さな町の駅に下りるのは、同じ高校の制服を着た男女ばかりだ。 エアコンのきいた車内からホームへ出ると、昨日の雨で湿度の高くなった暑い空気がムンと広がった。「あっついね」と芙美が手うちわを扇ぐと、湊が「ほら」と改札の向こうを指差す。「咲ちゃん!」 芙美の到着を待ってましたと言わんばかりに笑顔を広げる彼女は、同じ一年の海堂咲(かいどうさき)だ。ウエストをくるくると巻き上げた超絶ミニ丈のスカートから惜しみない美脚を晒して、駅から出る芙美を迎えた。「おはよう、芙美。会いたかったよ。ついでに湊も、おはよう」 大袈裟に目を潤ませる咲を冷たい目でチラ見して、湊は「おはよ」とそっけなく返事する。「おはよう咲ちゃん。この間一緒にプール行ったばっかりだよね?」「そんなの一週間も前だろう? それは久しぶりって言うんだよ。あの時の芙美は、めちゃくちゃ可愛かったな」 鞄を胸に抱きしめて、咲は「うんうん」と夢見がちに何度も頷いた。 ちなみに、咲がいつも下ろしているストレートの髪を高い位置で結わえているのは、この間プールに行った時に芙美が「ポニーテールも可愛いよ」と褒めたからだと芙美は思った。「あの時の咲ちゃん
Magbasa pa
2 初めての転校生は、可愛い女子がいい
 ロマンスグレーの髪を朝の風に揺らしながら手を振る校長にぺこりと頭を下げて、芙美は黙った二人に「どうしたの?」と声を掛けた。ピリと漂った緊張感が気のせいであったかのように、咲が「いやぁ」とはぐらかしてスカートのウエストをくるくると詰めていく。「こんな辺ぴな田舎の学校に来るなんて、物好きな奴がいるなと思ってさ」「今流行りのⅠ(あい)ターンとかかな?」「もしそうだとしても、広井町まで行けば学校なんて幾らでもあるのにな。けど、最近この辺りに引っ越してきた奴なんて居たかなぁ?」 広井町は、この白樺台の駅から三駅離れた芙美の家がある町だ。確かに向こうは都会で有名な進学校や専門校が幾つもあるが、白樺台に家があるのは三人のうち咲だけで、湊の家も広井町から更に一つ遠い有玖(あるく)駅の側にあった。「咲ちゃんは町の高校に行こうとは思わなかったの?」「家から近い方がいいんだよ。ギリギリまで寝てられるし」「言ってることと逆だけど、確かに通学時間が短いのは楽だよね。湊くんはどう思う?」「……え?」 湊はずっと物思いに耽っていたようで、覗き込んだ芙美に驚いて「ごめん」と謝った。「えっと、荒助さんは校長先生に誘われてウチの高校受けたんだっけ?」「そうだよ。近所の図書館で偶然校長先生に会ったの。それで「良かったらどうですか?」って言われて」 去年の夏、芙美は広井町の図書館でよく受験勉強をしていた。そこで何度か会った田中という初老の男にここの校長だと聞かされたのだ。「あの爺さん、ここが私立だからって外で勧誘(ナンパ)してるのか?」「毎年定員割れしてるから、生徒を増やすのに必死なんじゃないかな」 咲の言い方には問題があるが、学校にとって切実な問題であろうことは明確だ。山奥で一学年一クラスの設定だが、定員の三〇人にはどの学年もとどいていない。 ――「進路に迷っているなら、うちに来ませんか? ちょっと遠いけど空気が綺麗ですよ」 友達が居なかったわけでも、成績が悪かったわけでもない。ただ、どうしようか迷っている時にタイミング良く声を掛けられたのだ。「ずっと町に住んでるから、田舎もいいなって思って。制服も可愛いし」 半袖シャツに、赤とグレーのチェック柄スカート、そして、胸元の赤いリボンが白樺高校の夏の女子制服だ。男子は開襟シャツにスカートと同柄のパンツで、生徒たちから
Magbasa pa
3 突然抱き着く理由なんて色々ある
 転校生と湊は、どうやら知り合いのようだ。 再会した二人の抱擁にクラス中が湧き上がる中、芙美は入試の時に咲と初めて会った時の事を思い出していた。緊張しながら教室へ踏み込んだところを、待ち構えた咲に突然抱き着かれたのだ。 ――『会いたかったよ』 同じだなと思った。けれど、真っ赤な顔で目を潤ませる咲と芙美は初対面だ。受験当日という事で困惑してしまったが、後に咲が説明してくれた。 ――『この町の学校は女子が少なかったんだ。だから外から可愛い女の子が来てくれたのがとっても嬉しかったんだよ』 確かに新入生15人のうち女子は5人で、地元出身は咲1人しかいない。他はみんな町の高校へ行ってしまったらしい。そんな記憶を重ねながら斜め前の席に座る彼女を伺って、芙美は『あれ』と首を傾げた。湊たちを見つめる横顔が、今にも泣き出しそうに歪んでいたからだ。「そろそろいいですか?」 担任の中條の声で湊が「はい」と素っ気なく席に着くと、転校生が黒板の前へ戻って何事もなかったように自己紹介を始めた。 小さく唇を噛んだまま彼に向けられた咲の視線は、怒りさえ含んでいるようにも見える。「咲ちゃん……?」 音にならない程の声でそっと呟いたところで、芙美の視界を人影が塞いだ。「よろしく」という男子の声に顔を上げると、今しがた教壇の横に居た転校生が目の前で芙美を見下ろしている。 自分の席が空席を置いて一つ後ろに下げられていた理由は察していた。それなのに咲に気を取られているうちに、彼の自己紹介を聞き逃してしまったらしい。「よろしく。えっと……」 慌てて黒板を見て、彼の名前を確かめる。「長谷部(はせべ)、智(とも)くん」 「おぅ」とはにかんで、智は前の席に腰を下ろした。咲はこちらを振り返ろうとはしない。 中條は教壇に手をつくと、改めて話を始めた。『夏休みを終えて、新学期への心構え』と題した内容に、クラス中が上の空状態になる。そんな中、智が窓際の湊へ一方通行の視線を飛ばしているのに気付いて、芙美はそっと声を掛けた。「長谷部くんって、湊くんの知り合いなの?」 彼の行動が気になって、聞かずにはいられなかった。湊とはいつも色々と話はしているつもりだが、特定の友人というのは彼の会話に登場したことが無い気がする。しかも会った瞬間に抱擁を交わすなんて、ただの友達とも思えない。「気になる?」
Magbasa pa
4 ソフトクリームを食べてから本題に入りたい
 駅前の大きな平屋建ての一角にあるのが『田中商店』だ。「あぁ俺この間、編入試験で来た時に、ここでアイス食ったよ」 ガラス扉の上に掲げられた看板を見上げながら、智が先導する咲に続いて店へ入った。智の家は、芙美たちとは反対路線の多野(たの)という駅が最寄りらしく、帰りの電車が来るまで1時間以上も待たされたのだという。 「へぇ、そうだったんだぁ」と可愛い子ぶる咲に不信感を抱く湊が、芙美にこっそりと耳打ちした。「アイツ何企んでるんだ?」 咲の提案で強制的に開催となった『智の歓迎会』だが、その目的が他の所にある事を湊は知らない。智から過去を聞き出すのは、もしかしたら彼にとって都合の悪い事なのだろうか。 「えっと」と口籠る芙美に、湊が「荒助さんもなの?」と諦め顔で席に着いた。 店内はそれほど広くなく、奥に並んだ二つの棚に雑貨や食品がパンパンに入っていて、手前にはレジカウンターと花柄模様のビニールクロスが掛けられたテーブル席が三つあった。スピーカーから流れてくるFMラジオは、軽い音楽に乗せて人生相談の真っ最中だ。 一つだけ空いていた隅のテーブルに咲の指示で男女向かい合って座ると、先に頼んでいた四つのクリームソーダが運ばれてきた。「失礼しまぁす」 トレイを片手に笑顔全開でやってきた女に度肝を抜かれて、智がギョッと目を丸くする。下着のラインギリギリまで短いホットパンツを履いた彼女は、細い生足を惜しみなく披露して、身体のラインがハッキリと分かる白のTシャツを着ていた。上につけたエプロンが豊満な胸を強調させるが、智は咲の視線に気付いてサッと目を逸らす。「全く、男ってのは好きなんだから」 さっきまで可愛い女子を装っていた咲が、すっかり素に戻ってニヤニヤと笑みを浮かべている。「しょうがないだろ」と開き直る智の横で、湊は自分への飛び火を警戒して面倒そうにそっぽを向いた。「この間来た時は、別の店員さんだったんだよ」「私が忙しい時は、近所の人に手伝って貰ってるのよ」 店員の女性は、にっこりと笑む。「絢(あや)さん、今日はもうこっちなんですか?」「えぇ。部活動も休みだから、始業式だけ出て戻ってきたの。そこの彼、転入生なんですって?」「は、はい」「絢さんはここに住んでて、私たちの先生もしてるんだよ」 緊張を見せる智に、芙美はクリームソーダの上でくるくるとスプー
Magbasa pa
5 二人は別の世界から来たらしい
 ラジオから流れてくる昼下がりの恋愛相談が終わって、流行りのアイドルが歌うラブソングが店内に響き渡っている。テンポの良い「夏だ、海だ」とはしゃぐ元気な曲調とは裏腹に、芙美たちのテーブルにはキンと鋭い緊張が走っていた。 両腕を組んで智の言葉を待つ咲の横で、芙美はメロンソーダをちびちびとすすりながら、向かいの席で機嫌悪そうに黙り込む湊を伺う。「あの、言いにくい話なら、別に……」「いいんだよ芙美、智が話してくれるって言ってんだから」 咲はいつの間にか智の事を呼び捨てにしていた。ただの興味本位が、やたらと真剣な話へ発展してしまっている。「本気なのか? この二人に何を話すつもりだよ」 湊はいつになく声を尖らせるが、智は「いいじゃん」と軽く返事する。「どうせ信じてもらえる話でもないし」「だからって言わなくてもいいだろう? 話したら巻き込むことになりかねないとは思わないのか?」「そんな事はさせないよ」 狼狽する湊に、智は悪びれた様子もなく笑顔さえ見せた。「お前、久しぶりなのに全っ然変わってないね。眼鏡かけるようになったくらい?」「まさか今までもそうやって言いふらして来たのか?」「ここで話すのが初めてだよ。俺さ、記憶戻したのが高校に入ってからなんだ。だから慌てて親に頼み込んで編入してきたってワケで……」「ちょっと待てよ」 湊が智の言葉を遮る。ドンと立ち上がった衝撃で、クリームソーダのグラスがカチャリと揺れた。「そんなに最近なのか? 俺は5才の時にはもう自分が自分だって分かってた」「俺は優等生じゃないからね」 二人の口から出た『記憶』という言葉に、芙美は首を傾げる。それは智の言っていた『生まれる前』の事なのだろうか。困惑する芙美に助け舟を出すように、咲が二人に声を掛ける。「おいおい、二人で話すと芙美が混乱するだろ? 生まれる前の記憶とやらを思い出して、智がここに編入してきたってとこまでは分かった。けど何でここに来た? オトモダチの湊がここに居るって知ってたから来たのか?」「あぁ、ごめん。湊の事を知ってたわけじゃないよ。けど、居るだろうとは思ってた。ここに集まるって約束してたから」「ここ?」「厳密には少しずれてるけどね。この白樺台が教えられてた座標と一致したってこと」 地面を指差す咲に、智がそんな話をする。どんどん現実味が無くなっていく気
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6 可愛い少女が異世界を救った話
 湊と智が日本で生まれる前に生きていた世界は、異次元空間を挟んだ先にあるという。 『ターメイヤ』という名前の国で、魔法使いが存在するらしい。本やアニメの世界ならすんなりと受け入れることが出来るのに、いざ現実だと言われるとピンと来ない。そんな芙美の気持ちを汲んで、智が悪気ない笑顔を見せた。「実際、次元とか詳しい事は俺もよく分かってないけどね。俺たちはそっちの世界でウィザードの側近をしてたんだ」「ウィザード?」「魔法使いの中でも最高位の存在……まぁ、強い魔法使いってことだよ。それでね、ある日突然空が暗くなって、国が恐怖に飲まれた。ハロンって魔物が現れたんだ」「魔物?」「まぁ、ゲームで言えばラスボスみたいなものかな。映画だと大怪獣みたいな? 俺たちはその時の事を『ターメイヤの脅威』って呼んでる」「脅威……そんなすごい敵だったんだ」 智は表情を陰らせて「うん」と唇を噛んだ。「強かった。本当に……俺なんて全然歯が立たなかった。生き残れたのが不思議なくらいだよ。リーナが居なかったら、もうあの世界は消えていただろうね」「リーナ?」「俺たちが仕えたウィザードの名前だ」 湊が横でボソリと呟く。過去を憂う微睡んだ瞳は、彼が電車で外を眺める表情と同じだった。「リーナって、女の人の名前だよね……?」「可愛い女の子。初めて会った時、リーナは俺たちより年下の14歳だったんだ」「若い! 今の私より若いコが大怪獣と戦ったの?」「魔法でリーナに勝てる人間なんて、あの世界には居なかったしね」 芙美は年下の彼女を自分に重ねる。魔法使いと言えばカッコいい気がするけれど、最前線で戦うからには怪我もするだろうし死ぬ事だってあるだろう。 智がハロンとの戦いを口にすると、湊はうつむいたまま押し黙ってしまった。「けど、だからって一発で勝利が決まる訳じゃない。戦闘が長引いて、最前線に立ったリーナは心身ともに疲弊してね、力不足の俺たちにはどうしてやることもできなかった。だからそれ以上の戦闘続行を危惧して、彼女の師だったウィッチの――ウィッチは魔女ってことね。そのルーシャが最終手段を企てたんだ」「最終手段?」 芙美はゴクリと息を飲んで智の説明を待った。 テーブルの下で握り締めた手に、咲が横からそっと掌を重ねる。彼女の手が震えていた。いつも咲だが、智の話を聞いて怖くなったのだろ
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7 恐怖の大怪獣が現れる
「ええええっ!」 驚愕に満ちた芙美の声が店中に響いて、ラジオの音すら掻き消される。他のテーブルから視線が一斉に集まって、咲が「すみませぇん」と可愛く手を合わせた。 智は視線が散らばるのを確認して、困惑する芙美を宥める。「そんなに驚くとは思わなかったな」「だって。ここに魔物が来るなんて言うから……」「大丈夫だよ、俺たちが仕留めて見せるから」 さっき智が言った『映画に出て来る大怪獣』というワードが頭から離れない。地球に飛来する大怪獣が街を一瞬で炎に包むシーンを、身近な風景に重ねてしまう。 背中に触れた咲の手に緊張を解くことが出来ないまま、芙美は智を見上げた。 彼の言った言葉を要約すると――つまり、二人の居た世界を脅威に陥れた『ハロン』という魔物を『次元の外』へ追い出した。それで一件落着したと思ったのに、ハロンは何故か、地球の、日本の、しかもこの町に現れるというのだ。「今年の12月って言ったよね? 今度の年末ってこと?」「そういうこと」 彼等の話を信じたいと思うのに、否定したい気持ちが先に出て現実味が沸いてこない。咲も「すごい話だけど」と首を捻った。「東京とかならまだ――いや、百歩譲って広井町なら分かるけど。こんなド田舎にピンポイントで現れるなんて話、信じろって言うのか?」「だから、信じるかどうかは任せるよ。ハロンがこの町を選んだんじゃない、たまたま辿り着くのがここなんだ」 「な」と顔を見合わせる智から引き継いで、湊が咲に声を掛ける。「海堂も怖いの?」「そりゃ、か弱い女子だからな」 咲は素直に認めるが、怖がっている様子はまるでなかった。組み替えた足にミニ丈のスカートがピラリとめくれて、芙美が慌てて手を伸ばす。「見えるよ、咲ちゃん」「いいんだよ。見た奴には千円ずつ払ってもらうから」「はぁ?」 「ふざけるな」と湊が目を逸らすと、智は「あっはは」と笑って芙美を振り向いた。「芙美ちゃんはどう思う?」「本当のことなんだよね……?」「うん。俺たちはまたハロンと戦う為に、ルーシャの力でこの世界に生まれ変わったんだ」「生まれ変わったってのは、俗にいう異世界転生してきたってやつだろ?」 咲の言う例えに、芙美はうんうんと頷く。アニメや漫画の設定でよくある話だ。湊も「まぁ、そういうことだ」と否定はしない。「異世界転生なんて言葉はこっちに来
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8 苦手なものはたくさんある
 田中商店の店員で体育教師の絢が、パンの4つ乗った大皿をテーブルの真ん中に置いた。「育ち盛りの若者が昼にクリームソーダだけなんて、身体に良くないわよ。これ今度店に出そうと思って焼いてみたんだけど、食べてくれない?」「差し入れですか? ありがとうございます!」 咲が「やったぁ」と笑顔になって、パチリと手を合わせる。高さのある丸いパンは、中心に描かれた黒い渦に白い砂糖がコーティングされたシナモンロールだ。焼き上がったばかりのようで、他のテーブルにも配られたそれがスパイシーな香りを漂わせている。「あ、俺これ好き。ここで焼いてるんですか?」「そうよ、転校生くん。私の趣味みたいなものだけどね」 男子二人が「いただきます」と手を伸ばした所で、咲が険しい顔をする芙美に気付いて声を掛けた。「あぁ、シナモン苦手だっけ」「うん──」 芙美は両手で鼻と口をを押さえたまま、「ごめんなさい」と絢に謝る。「気にしないで。シナモンって好き嫌い別れるわよね。じゃあ特別に別の持ってきてあげる。アンパンなら食べられる?」「はい。ありがとうございます」 絢はカウンターの向こうから丸いパンを取って来て「どうぞ」と芙美に渡した。「転校生くんたちはどう? 美味しい?」「はい。芙美ちゃんの分も頂いていいですか?」「構わないわよ。口に合ったなら良かったわ」 芙美の分のシナモンロールを半分にして、男子二人があっという間に完食する。絢が満足そうに微笑むと、咲も「めちゃくちゃ美味しいですぅ」と笑顔を広げた。 絢は隣のテーブルから空いた椅子を引いてきて、興味津々な顔を4人の間に突っ込む。「で、さっきは何の話してたの? 人生相談なら乗るわよ。それとも恋愛相談かしら?」「あ、いえ。そういうのじゃないんです」 アンパンにかじり付きながら、芙美は慌てて手を横に振った。どうやって誤魔化そうか考えていると、咲がニコリと悪い笑みを浮かべる。「絢さぁん。この二人ったら、トラックに轢かれて異世界転生してきたとか言うんですよ? 笑っちゃいますよね」「ええっ? なにその話」「おかしな事言うなよ。トラックにも轢かれたなんて誰も言ってないからな?」 湊が「オイ」と睨むが、咲はケラケラと笑うばかりだ。もちろん絢も冗談だと思ったらしく、それ以上追求せずに呆気なく席を立った。「楽しそうな話してるなら、
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