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All Chapters of PSYCHO-w: Chapter 131 - Chapter 140

140 Chapters

41.Rと白い亡霊

 Mのいる総合病院から一番近い、病院。その警備員が何かおかしな動きに気付いた。「と、止まれ〜っ !! 」 警備員が腕を振り上げ向かってくるトラックを止めようとする。 しかし、運転手と目が合っていると言うのに、ハンドルを切ろうともしなかった。 ドガッ ! !「トラック ! 入口に突っ込んだ ! 」 パニックになった警備員が無線で叫ぶ。その声が少しずつ震えていく。 暴走したトラックの下から、真っ赤な鮮血が染み出て来ている。 もつれそうな足で下を見ると、先程挨拶を交わしたばかりの患者や看護師たちが車椅子ごと引き摺られ、潰れていた。「う、うわぁぁ ! だ、誰か来てくれ !  くそ ! おい、出てこ……」 警備員が運転手を外に出そうとしたが、既に運転手の姿は無かった。 □ 椎名は銃をとりだすと待合室へ一直線に向かう。「事故かしら ? 」「居眠りとか踏み間違い ? 最近多いわね〜」 総合病院と同規模の記念病院だ。待合室には多くの人が呆然と自動ドアの隙間から見えるトラックのグリルを眺めている。「なぁ、あれ……血じゃねぇか ? 」 一人の爺様がグリルに付いた血液と毛髪に気付く。 椎名はここへ来るまでの間、散々人混みを轢き走って来ていた。「トドメだ ! 」 パン !  大きな銃声に人々の肩がビクッと跳ねる。「てめぇら ! 今日死ぬ ! 荷台には発破積んで来た ! 出口はねぇ !  ただし、俺の胸の中で死にてぇ奴は飛び込んできな ! 」 そういいジャケットを脱ぎ捨てる。 身体に巻かれたC4。 手には起爆スイッチ。「ヒィィィ ! 」「た、助けて !! 」 その時──一発の銃撃。 銃口から出た弾丸は正確に椎名の起爆スイッチごと指を飛ばす
last updateLast Updated : 2025-09-14
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42.混乱

 真理がマリンパークから湊駅前に移動してから、椎名や久岡のもたらした混乱が尾を引いていた。「……」 真理の一番欲しい情報は、その犯罪者の行方だ。一度コンビニの駐車場に車を停めると、車載テレビのニュースを見つめる。懸念しているのは各地で起こした無差別殺人の犯人が確保されずに検問や職務質問を受けることだ。トランクに乗せている物全てが違法だ。『各地で起きた同時無差別殺人事件。既に犯人は死亡が確認されています』『とても考えられない状況ですが、速報が入り次第、追ってお伝えいたします。 えー、ここで元警視庁  捜査一課  鈴林 秋広さんにリモートが繋がっております。 鈴林さん、これはどういった状況なのでしょうか ? 』『これはねぇ、一言では言えないですよ ! 通常期間が開くような凶悪事件が一日に同じ町で何ヶ所も、複数の実行者がいると ! これは、同時多発テロとか、何か首謀者は別にいて、各地で起こったんではないかと ! 断言は出来ませんが、極めて可能性が高いです ! 』「断言出来ないのに可能性が高いって……日本語は便利よねぇ」『死亡が確認された二人の男性ですが……』 男性。 学生や児童、少年等ではなく。 それなら死んだのは椎名と久岡で確定だ。「……ケイ君は何をしているの……。あの半グレ達をどう使うのかしら ? 」 時刻は14:00。 タイムリミットまで二時間。「考えても仕方ない……あの子は連続殺人犯……。何もしないわけが無いものね」 真理は車を総合病院へと走らせる。 行ったところで、Mを狙撃することは出来ない。分かってはいたが、何も分からないうちに、何も知られずに、Mの前から姿を消して死ぬ事だけは避けたかった。 病院で患者を狙えばいいと言う名目で、最後はスコープ越しに愛した男を見る為
last updateLast Updated : 2025-09-16
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43.美学

 走行中のトラックの荷台。 その解かれた幌の隙間から、厳重に包まれた塊が頭を出す。 そして横から伸びてきた防護服の手に持ったナイフが一突き、その袋を切り裂く。 ザフッと音を立てて、トラックの荷台から白い煙の様に粉が落ちる。「ひょほーーーっ ! こりゃひでぇ〜ね」「少しでいいから切らさないで撒いて」 この日、海から上がる風が町をすり抜け落ちた粉を舞いあげては空へまで飛んでいく。「重てぇ〜。 けい、このトラックどうすんの ? 」 既にナンバープレートは力技で引っぺがしてあるものの、自宅から無くなったトラックに防犯カメラに映る荷台の高い特徴的な荷台。すぐに多くの人が涼川葬儀屋のトラックだと勘づくだろう。重明や社員は特に。「盗む時、家のカメラとかに写ってないの ? 」「ネットにいた外国人に頼んだから俺は写ってない。頼んだ時も顔見られてないし」「そりゃあそうか。けいみたいなのに隙があるはずがないよねぇ」「今もこんな格好じゃ、すぐにはバレないし」 そういい、金髪のウィッグの毛先がかかる胸元を見下ろす。「撒き終えたら処分したいけど……」「スクラップ屋紹介しようか ? まぁ〜、これもルキさんにツケにして。次こそ仕事欲しい」「……。確かに。町中で好きにゲームをさせたらこうなるのは分かってたはず」 蛍にも手に取るように理解できる。Mはただルキの安住の地を壊したかったのだ。それが嫉妬や破滅願望として幼稚な思考なのか、町一つぐらいどうということは無いと言う狂想なのか。 蛍には前者に思えて仕方が無い。 そしてゲーム中なら自分は狙われないとでも思ったのかと、腹立たしいのだった。「ルキならこうはならなかった」「ルールに穴があるってこと ? まぁ〜、ここまでやったらテロだもんなぁ」「違うよ」 Mは蛍を甘く見ていたということだ。 殺人に飢えた獣に餌をやれば、すんなり懐く
last updateLast Updated : 2025-09-17
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44.糸引き

 ルキがヘリを飛ばし、真理はライフルのスコープで上空から町を見ていた。「……流石ね……」 思わず呟いたが、その声はヘッドセットを通し全員に共用される。 隣にいた美果も真理からスコープを借りて惨状を目の当たりにした。「この人達……皆んな死ぬの ? 」「どうかしら。フェンタニルだけなら解毒出来るし、一時的な中毒に治まるかしら。……でもルキの言う通り混合物なら……ただでは済まないわね」「……こんなの……ケイ君らしくない……」「殺人にらしいもらしくないもないでしょ」「いいえ、ケイ君は拘りますよ」「それは俺も思った」 会話を聞いていたルキが返した。「けれど今回の件はケイはゲームとして見ていないんじゃないかな」「どういう事 ? 」「スミスが説明した通り、俺と真理さんの命が賭けられるのは事前に知っていたからね。Mは必死にどちらを選ぶのかケイが苦悶する様子を見たかった。勿論、観覧者も。 けれど、これがケイの答えだよ」「無差別テロが ? 」「Mを殺して、組織を炙り出すことさ。こんな騒ぎじゃ二度とこの地に足を踏み入れられない。そうさせないつもりなんだ」「でもそれは死んだMの身柄で話が終わるんじゃないの ? あんたはどうなのよ ? 」 ルキがこのまま蛍から姿を消すとは考えられなかった。「Mとは血縁じゃないし、何も証明がないからね。でもMのビジネスは引き継がれる。 残念ながら、ゲームマスターは続けられないけれど」「ふん。それを聞いて安心したわ」「美果ちゃん、嫌い。すぐ俺をイジメるんだもんな」 ヘリがコンテナターミナルに到着する。普段、働いている作業者は避難済み。 その手配をした人間がヘリを出迎えた。
last updateLast Updated : 2025-09-18
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45.蠱惑的な闇

「さっきの話。ケイ君のファンって、檻にくっ付いてたオジサンよね ? そんな大富豪なの ? 」「意外かい ? 東北訛りで身なりも庶民的だから目立ってたかな ? 」「あ……いや、そんな意味じゃないけど。町の汚染を支援って、お金の問題だけじゃないでしょ ? 致死量2ミリgの薬物テロで、どう対処するの…… ? 」「まぁ、まずは防護服、洗浄車両の確保と運輸、検査員や職員の派遣、避難所の維持、とにかく莫大な費用。  けれど、一方でフェンタニルの歴史は長い。以前、2002年に対テロリストとしてフェンタニルを特殊部隊が使った事例があるけど、噴霧器でガス状にする必要があった。その場所だって事後処理は通常装備で踏み込める程度だった──らしいよ。  ケイがやってるのはそこまでの脅威ではないと見てる。Mのような被り方をしない限り、道端の鳩もすぐに元気に歩きだす」「……なら……いいけど。さっき路上に倒れてた人達……あの人たちはもう……」 美果が戸惑いを感じるのは無理もない事だ。蛍の犯行とは今までこんな形では無かったはずなのだ。「……ケイくんは真理さんもルキも殺す気はなかったって事よね ? なら、すぐ止めてくれるはず」「ああ。手元にどれだけ残ってるか分からないけど……。  寧ろ、これで一番得をするのがあの二人さ」「 ? 」「葬儀屋と寺……まさか。そんなはずは……。お金の損得で殺しはしないわよ」 美果は蛍に夢など見ていない。犯行手口として納得がいかないのだ。「全く、俺も美果ちゃんも。変わった子に関わっちゃったよね。結々花もさ」「あんたが言う ? 」 呆れるようにため息をつく結々花に、美果が初めて声をかける。「わたしも今、そう思った。ってか、結々花さんがルキに寝返るなんて信じられない。信用出来ないんですけど」「あら、案外警察も信用出来ないのよ ? 」「それは……そうかもしれないけど、今朝までスパイだった人を信じろと言われても」「そういう美果ちゃんも、ケイ君次第でなんでもするでしょ ? どちらかと
last updateLast Updated : 2025-09-19
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46.汚れた手

「さ、離れて」 西湊の山奥。 高い金属塀に囲まれたスクラップ業者。そのほとんどが古いストーブや錆びた自転車。解体し、磨いて使えるものは転売する。しかしほとんどは死を迎える為に連れてこられた金属たち。 その中に蛍が乗ってきたトラックが乗り入れた。 幌や防護服、薬袋に使った袋は椿希の部下が、焼却炉へ行くことで引き取られた。 剥き出しになったただの平ボディのトラック。「ども、ボス。お会いできて光栄です。汚い場所ですみませんね」 奥のプレハブ小屋から熊のような作業着の男が出てきた。「汚くないですよ〜」「梅乃様ぁ、こういう場所にゃご自身で来られなかったんでねぇ。いやいや、さっき連絡貰ったときゃ驚きましたよ」 作業服の汗のツンとする匂い。 プレハブの横には古い洗濯機と斜めになった洗濯物干し。白いタオルと穴の空いた作業着が何着かかかっている。 不清潔な男では無い。単純に真面目に仕事をしているだけの一般的な男だ。秋とはいえ、まだまだ野外作業は暑い時期だ。滝のような汗をかいている。「これがそのトラックね ? 」「ええ」「任せてくれ。俺なら一日で解体して、例の工場の溶解炉に持ちこめるよ」「俺は焼いちゃった方がいいと言ったんですけど、椿希が……」 男は蛍を見て、ノンノンと指を立てる。「警察ぁ、犯人探しとなったら小さなネジまでこねくり回すから。側を焼いても、証拠隠滅は出来ねぇんだわ」「でも一日でって、出来るんですか ? 」 流石に早すぎるスピードだ。ひき逃げ事件ですら、犯人は証拠隠滅にどれだけの時間を要するかを報道で見ている。蛍は不安に思っていた。「部品の転売や、エンジンの譲渡とかも止めていただきたいんですけど……」 口を挟んだ蛍に、男はニッと笑う。「おいおい。俺を誰だと思ってやがる」「ケイくん心配なぁい。この人、本当に手馴れてるし長年山王寺の証拠隠滅してきた人だよ ?
last updateLast Updated : 2025-09-22
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game - ED. PSYCHO - we.1

「やめ……う……ぁ……」 木の幹に拘束された手首が真っ黒に腫れ上がる。全裸にされ、一方的な暴力を浴びた後だった。ゴムを外す音が響き「これは証拠隠滅される」と言う復讐すら許されない絶望の中。自分を犯した少年が、鞄を開けた。縛られた女は足を広げたまま、顔を逸らし、全ての行為が終わった後に生きていることだけを願う。ジッパーが開き、何やら器具を取り出し始めた少年の持つ物体が、凶器なのか撮影なのかと更なる恐怖を覚えた。 まだ日が昇る前。日課のウォーキング中だった彼女は、挨拶してきた高校生姿の蛍に微笑み、会釈を返しただけだった。 倒れ込んだ笹薮の中、落ち葉に広がるおびただしい血液。女の腕や足首には無数の注射針が刺さり、故意に瀉血させられていた。その中でも一層太い針はチューブ状で、足首の骨に埋まる程深く差し込まれていた。 家から数キロ。程良く息が上がってきた頃だ。この仕打ちは心臓自らが血液の排出を促すようだ。どんどん冷える身体の感覚に、突然ジリ……っと言う音と共に焦げた臭いが漂う。「っ……あ…… ! グッ !! がっ !! や、やめ !! 」 蛍は女を殴りつけると、取り上げた免許証をもう一度確認する。そして彼女の下腹部に型を付けた熱線を押し当てる。細い動線は皮膚を簡単に焼き、ズブズブと脂肪の中へ埋まっていく。波形の二重線。女の生年月日は一月三十一日。水瓶座だった。「うぅ……ふ……ふっ……うぅ…………」 突如降りかかった暴力に、涙が止まらない。何故襲われたのかも分からず、何をしたら助かるのかも分からない。見ず知らずの少年の行動に、激しくパニックを起こし続けている。 パパパッ !! 「ンギャァァッ !! ……クッ……あぁ…… ! 」
last updateLast Updated : 2025-09-23
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game - ED . PSYCHO - we.2

 ドンドン、ドンドンドンドン !! 「けーい、けいけいけい〜 ! 起きてるー ? 」「うるさいな !! いるよ !! 」「うぉ、今日は元気 ……あ」 椿希は蛍が開けた玄関の隙間から、ルキの靴をみて納得する。「うん。そっかぁー。俺お邪魔かぁ〜」「別に。もう出るよ」「あ、椿希君。入りなよ」「ルキさん早よーっす。じゃあ、お邪魔します」「え、いや。俺の部屋なのに、なんであんたらで完結してんの ? 」 蛍が騒ぎ立てる中、椿希はルキに通されると、まっすぐコレクション棚へ向かう。「うぉ〜、今日もあんね。Mの首〜。こういうのって、キメェけど慣れてくると見ちゃうよね〜」「……」 椿希は蛍に向き直ると、さも当然の如く炬燵に潜り込む「なぁ、こないだあのマンション墓地でゲームしたろ ? あれなんだったの ? 」 蛍と第3ゲームに出た椿希が墓地を経営すると聞き付けた烏達は、少しの興味を示してきた。稼ぐ金など烏からすれば微々たるものだが、死者が絡むと合っては何やら期待が大きいようだった。  そこで、ルキが景気付けにデモンストレーションとして蛍にショーをさせた。 内容は第一回目の人体アートと同じルール。  そして場所は蛍と椿希が建てたマンション墓地の最上階。 ガラス屋根で光に満ち溢れた空間。遺族がエントランスで指定したキーを打つと、位牌が最上階ルームに排出されて、墓参りすることが可能なのである。 そしてそのビルのイメージデザインを手掛けたのが美果だ。「死体並べてるだけにしか見えなかった。あれ、何がよかったの〜 ? 」 不貞腐れている椿希の作品は最下位だった。意外な事に、椿希は殺すことは出来ても、遺体が苦手らしく全く使い物にならなかった。これから海玄寺の業務を継ぐかもというのに、蛍もルキも一抹の不安を覚えるが、葬式で見るような遺体と違うのは言うまでもない。蛍がズレているだけなのだ。「ケイは最初に参加した時、ダビンチの最後の晩餐を
last updateLast Updated : 2025-09-24
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game - ED. PSYCHO - we 3

 残された蛍と結々花は無言のまま。 ポンっと音が鳴り、エレベーターの扉が開く。 最上階ルームはエレベーターから直接、一歩踏み出すとワンフロアを贅沢に使ったゲストルームだ。霊園だとは思えない温かみがありながら、どこか近代的な造り。 結々花はガラス屋根を見上げながら、つい先日この場で行われたショーに関して呟く。「まさか先日、この天井に人がぶら下がってたとは……今日のお客様は知る由もないわね……」「だってダリの最後の晩餐は、いるじゃん。上に。半裸の人」「んー。絵ってあんまり興味無いし、ダリが最後の晩餐描いてたのも知らなかったわ。 あの日、ケイ君がぶら下げ始めた時、観覧者から凄い歓声が上がったわよね」「……客の声なんてオフになってるから聴いてないよ」「美果ちゃんはどうして、ダリの最後の晩餐をここのモチーフにしたのかしら ? だって一応、最初は海玄寺の宗派を受け入れる方針だったじゃない ? 仏門に関する絵じゃないんだ〜って思ったわ」「そう言えば美果は ? 」「来てるわよ。聞いてみよっか」 結々花は半分暇を持て余し、意味無く美果にコールする。数分後、倉庫から美果が飛んできた。「ごめんごめん。つい夢中になっちゃってて」「卒業制作上手くいってる ? 」「すっごい便利 ! まさか秘書室という名のアトリエが貰えるなんて ! 」 美果は結局、涼川葬儀屋へ就職となった。結々花がマンション墓地やスポンサー等との橋渡しなど、重明とあまり関わらない日陰の部分に暗躍するのと違い、美果ははっきり葬儀屋で外へ発信できる人材として存在する予定だ。 このマンション霊園の概ねのデザインもそうだが、位牌や仏壇、ペット用のメモリアルグッズなどを手掛けることで、合法的にこの場にアトリエを持てているのだ。「ただ絵を描いてただけなのに、今は小さい仏壇や神棚を考えて、小物作って、内装をデザインして、宗教も勉強して……人生分からないわ
last updateLast Updated : 2025-09-25
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game - ED.PSYCHO - we.4

『と、ここまで進化した最新の墓標はいかがでしょうか ? 今回は展示という事で込みの価格が表示されていると思いますが、普段は無いですよ〜。まさか売り物じゃあるまいしねぇ ? 』『ははは』 結局、客前でトークするのは椿希の役目になってしまった。 蛍も最初こそ無愛想にしていたが、途端その技術が必要と理解すると、すぐに吸収していった。 だが今日は突然の来訪者が顔を出した。 それにより、客人に合わせメタバース霊園を見るようになったのだ。『凄いね。現代的だ』『ええ。それに、あんな小さかった蛍君がこんなに立派になるなんて ! 嬉しい……』 アポ無しでたまたま飛び込んできた夫婦。 商店街で花屋を営む、涼川葬儀屋の契約生花店の二人だ。 つまり──香澄の両親だった。 回線を三人だけにし、蛍が対応していた。『俺も驚きました。 その……聞くに聞けなくて。お墓の場所とか……』『そうよね。葬儀は蛍君のところでしたけれど、その後どうしても……。納骨するのが寂しくて今まで……』 香澄の死後。 両親は四十九日、百か日を過ぎても娘の死を受け入れられなかった。四十九日の法事は重明が取り仕切り、するだけの事はしたが、納骨には至らず参列者にテンプレ通りの挨拶を述べるだけで精一杯だった。 香澄の骨壷はずっとダイニングで共に食事の際にも置かれ続け、就寝の時も両親が寝室へ運んでいた。 その後、蛍の知る通り、花は毎日学校へ持たせ誰かに飾らせ、自分たちは香澄の死の真相を探り続けた。 転機はMの提示した湊駅周辺でのゲームだった。『他にもここを検討してる人、沢山いてね〜』『そうそう。被害者の会でよく話題に上がるのよ』 蛍の起こしたテロと椎名、久岡、そして真理の無差別殺人事件。 これにより墓が急激に売れる始末。中でも、未だ墓地を持たず尻込みし
last updateLast Updated : 2025-09-26
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