観覧者達は立ち上がると、興味津々で檻に群がってきた。「椎名よぉ〜。あんた運営側だろ ? なんで檻に入ったんだぁ ? 」「美果さぁん。あなたのような若い子が痛がる姿が、わたくし一番好きなの ! いい声で鳴いてね ! 」「蛍 ! 涼川 蛍 ! 俺はおめぇに賭けてんだぞ !! 」 蛍の熱烈な中年ファンは別として、全て外国語の会話だ。 騒がしい言葉の渦。蛍と美果には雰囲気しか伝わっていないが、少しの英語を聞き取った坂下は小さく震えていた。「し、椎名ってのお前だろ ? 俺を羽目てんじゃねぇだろな ? なんで側近が俺と組んでんだよ ? 」 坂下からすれば当然の質問である。 椎名はそのままの表情で呟いた。「俺は主人の躾を受けに来ただけだ。あんたと『組んだ』等と思っていない。勝手にやって、勝手に食ってくれ」 蛍はこの言葉に確信する。 椎名は初めから欠損上等でゲームに挑む気だと。 坂下は椎名の言葉に顔を顰めると、今度は全く動じていない蛍と美果を眺めた。「お前らもだ ! どうなってんだ葬儀屋 !! イカれてやがる !! 」 恐怖。震えが止まらない程の不安。 坂下は黒服が檻の机にのったナイフとフォークを見てまた嘔吐く。 何とか別のことを考えようと視線を観覧者へ向ける。 一度明るくなった会場。 食事はイカれた場所で口にするとは思えないほど上品そうで、こんな状況でも無ければ食べたいと思っただろう。女性陣はチークルームに向かう者も多く、空席が目立つ 人のまばらになったその会場で、坂下の見知った顔が一人紛れていた。「な、なんで…… !!? お前…… !! おい !! 」 坂下に声をかけられ、渋々檻に近付いてきたのは坂下 椿希だった。 この姿には蛍も驚く。「椿希 !!? 」「よ ! けい君。 なんかぁ、あのルキ ? って奴 ? あいつから招待受け
Last Updated : 2025-07-05 Read more