飛行時間と同じだけ、蒼真はぐっすり眠っていた。苑には、それがブラックアウトの三分間のせいなのか、それとも本当に飛行機が怖いのかは分からなかった。とにかく、彼は気持ちよさそうに眠っていた。寝相はひどく、頭は苑の肩に乗せ、手は彼女の手を握ったまま、体はほとんど彼女に寄りかかるように傾いていた。これがわざとじゃないなら、それはそれでどうなんだって感じだった。昨晩、一緒にベッドに入ったときも、もしかしてこんなふうに寝てたのかしらと苑は思った。残念ながら自分は寝てしまっていたので、彼がどんな寝方だったのかは分からない。飛行機が着陸しても、蒼真の反応は離陸のときと変わらなかった。ただし今回は自分から苑にくっついてきた。「飛行機が怖いですか?」苑は遠慮なく、ストレートに聞いた。「うん、恐怖症だ」蒼真の答えは、苑の予想を大きく超えていた。このレベルの人物が飛行機を怖がるなんて、じゃあ世界中を飛び回ってる交渉はどうしてるの?「じゃあ普段は乗らないですか?」苑は半信半疑で尋ねた。蒼真は、自分から彼女にしがみついてきた。さっき苑が彼を抱いたときよりもずっと近く、まるで怯えた子どもみたいに苑の首元に顔を埋めていた。彼の温かい吐息が肌にかかって、くすぐったくて妙にビリビリした感覚が走る。「これが……二回目」苑の肩に置いていた手がぴくりと震えた。その「初めて」がどれだけ怖かったか、想像に難くない。だからずっと避けてきたのだろう。その瞬間、苑は何を言えばいいのか分からなくなった。「ごめん、知らなかったです。私……」苑はやっぱり謝らずにはいられなかった。もし彼が佳奈に会わせるためでなければ、わざわざこんな苦痛な飛行機には乗らなかっただろう。「知らなかったのに謝るって何だよ。君のごめんってバーゲンセール中か?」着陸して恐怖心が消えたのか、彼の口調はまた棘だらけだった。昔の人は「女と卑しい人は扱いが難しい」って言ったけど、彼女はそこに蒼真もって加えてもいいと思った。セドナなんて苑は聞いたこともなかったし、当然初めて来た場所だった。でも風と空気の温度が、言い表せないほど心地よかった。蒼真の手配した車はすでに外で待っていた。運転手がドアを開け、荷物も受け取ってくれたので、苑と蒼真は車に乗り込んだ。一方で、急に便乗してきた蓮
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