(そうして人々は自然の力の下に繁栄した。日々の糧を喜びとし日常を営んだ……) 本を閉じて、ふう、とテイワズは息を吐く。 あれからフォルティに教えてもらい、本をスラスラ読むことができた。 頻出するその言葉に、フォルティが首を傾げていた。「火、水、大地……それぞれの魔術の要素、力のことをまとめて自然の力と読んでるんでしょうか?」 自然の力。すべてを統べる力。「自然の力ですべてを治め……って、ことはまさか、三大要素をすべて持っているっていうことですかね……?」 ううむ、と唸ったフォルティはテイワズよりも深く思案しているようだった。「自然の力を持つ王が統治する世は太平な世として栄えていった……と、ふーむ」 こっちの方がわかりやすいですね、とフォルティが叩いたのは赤髪の男性に勧められた方の本だった。「しかし、なんで建国にまつわる古代の話や魔術の創生の本なんて読んでるんです?」「ちょ、ちょっと興味があって……」「ふうん。そうなんですか」 テイワズの言葉に、フォルティは引っかかった様子もなく頷いた。「あの一緒に観に行った劇もそうでしたが、やっぱりこういった不作の年はみんな明るい夢のある話が読みたくなるんですね」 ──そう、治安のよかったこの街で、しばしば物盗りが起こるようになったのはひとえに不作のせいだった。 天候不順による不作。人々はそれを王のせいにした。 領主が魔術を使うことにより、大雨時にも災害を防ぎ、害虫の発生も延焼させ対策し、地崩れも塞ぐことができるが──全ての作物を守れるには至らない。 日照りや豪雨は防げない。 大地の力は枯れた草木を甦らせるには至らない。 周りに天才と呼ばれ魔術の能力の高いルフトクスの大地の力でさえ、花一輪咲かせるのが精一杯。本来草木の成長までは操ることができない。 同じ大地の魔術を使うエイルでさえ、それをできない。とはいえエイルは地を揺らし割ることができ──破壊力という面では兄弟一番であった。「一人で複数の魔術要素を持つとか、第四の元素があったとか……」 フォルティは読んだ本を撫で、観た劇を思い出し、テイワズに呟いた。「人は夢を見るのが好きですね」 フォルティとの会話はそれで終わり、戻ってきた兄たちと食事をして寝支度を整え、そして寝室で一人で過ごす今に至る。 そうだ、夢みたいなできごとだった。目
Huling Na-update : 2025-07-25 Magbasa pa