半刻ほど経っただろうか。 変わる街並に、思いを馳せられない。 変わったように感じる、兄弟のことを思い出す。(どうしてみんな) 変わってしまったのか。(私は何も変わってないのに) あの日から、向けられる視線の色が変わった。視線が帯びる温度は高くなった。 わかってしまう。(ずっと一緒にいたから) きょうだいだったから、わかってしまう。(なのにどうして、きょうだいじゃなくなろうとするの?)(恋よりも、家族愛の方が信じられるのに) 婚約破棄の一件は、声にしないだけでテイワズの心に傷を残していた。 兄たちが触れないようにしてるから触れないようにしてるだけ。 だから膿んだ傷は、そのまま。(思い出せば、今も胸が痛い) どうすればいいのかわからない。 フォルティの仕草も、ロタの視線も、ルフトクスの言葉も。 すべてが今はもう──(私を、女として見ていた) それがわかる。女として生きてきたからわかる。(あんなに真っ直ぐに言われてしまったら) 言われ続けてしまったら。(どうすればいいのか、わからない……) だから逃げ出した。衝動のままに走り出した。 知ってる場所が、知ってる人がいるところが、東の街しかなかったから。 曖昧な情報を頼りにするほど、心がふらついてしょうがなかった。(……お兄様) 思い浮かべたのは、同じ金髪。 御者が馬を走らせながら、馬車の中にいるテイワズに声をかける。「お嬢様、東の街に入りますが、どのあたりに行きますか?」 言われてテイワズは言葉に迷う。「ええっと……」 ここに来るまでに考えようとしていたのに、結局答えが見つかっていなかった。 素直に道のプロの話を聞くことにする。「一番人がいそうな場所って、わかりますか……?」「ああ、えーっと、それなら」 自分もそんなに知ってるわけじゃないんですけどねえ、と前置きした上で御者はテイワズに話した。「噴水のある広場が、店とか多くて賑わってるみたいですよ。食べ物だけじゃなくて宝石商とか、画廊もあるとか」「画廊!」 テイワズ見開かれた目が輝いた。「では、そちらにお願いします!」 わかりました、と御者は頷く。「それにしても、大丈夫ですか? 突然おでかけになられて……どちらへ?」 御者の心配はもっともだ。家に雇われている彼に迷惑をかけないよう、テイ
Terakhir Diperbarui : 2025-06-18 Baca selengkapnya