Semua Bab お嬢!トゥルーラブ♡スリップ: Bab 21 - Bab 30

69 Bab

【第1部】 第13話 親友の思惑②

 そして、昼休み。  私は貴子と二人で屋上にいた。 天気は快晴。爽やかな風が通り過ぎていく。  晴れ渡る青空に、突然貴子の雄叫びがこだまする。「えーーー! キスうっ!」 「しーっ! 大声で言わないで」 私が人差し指を口にあて、貴子をきつく睨む。「ごめん、だってあまりに急展開で。さすがの私もビックリよ」 キャーキャーと声を上げながら喜ぶ貴子。「なんで喜ぶかな」 私はあきれ顔を向けた。すると、貴子は自信ありげに胸を張った。「だって、そりゃあ、ねえ。  それで、ヘンリーを見ると気まずくていてもたってもいられないと」 うんうんと貴子が満足そうに微笑んでいる。 本当に貴子はいつも楽しそうでいいな。「まあ……そうかな」 「それは、恋だね! あんたキスで恋に落ちたんだよっ」 名探偵にでもなったかのように、貴子は私に人差し指を向けビシッと決めポーズをする。 はあ、始まったよ。また貴子劇場。妄想爆発。  私はあきれつつ、曖昧に返事をしておく。「……あ、そう。それはいいんだけどさ。  ヘンリーと気まずいのが嫌で、どうにか普通の状態に戻れないかな?」 想像していた反応と違ったことが気に喰わないのか、貴子は不満げな表情をする。「本当に流華は鈍いんだから……。ま、いつか自分の気持ちに気づくでしょうよ。  あんたはヘンリーに恋に落ちたのよ、キスで覚醒したの!」 貴子は一人で妄想劇を繰り広げているのだろう、空を見上げ何か物思いにふけている。  口出しすると面倒そうだ、こういうときは放っておくのが吉だと知っている。 私は貴子が落ち着くまで待つことにした。 「ま、気まずいのはお互い辛いだろうし、いいこと教えてあげる」 妄想に満足したのか、私に向き直った貴子はまたビシッと私を指差した。「今日の夜、ちょうどこの学校で肝試し大会があるのよ。それに二人で
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-25
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【第1部】 第14話 肝試し大会

 夜の学校とは、なぜこんなにも気味が悪いのだろう。 いつもより数倍おどろおどろしい雰囲気を醸し出している学校を見つめながら、私はここへ来てしまったことを後悔し始めていた。 真っ暗な中、不気味な要塞のようにそびえ立つ学校。 空気も、気のせいかいつもより冷たく感じる。  周りを取り囲む只ならぬモノたちが存在しているかのような妖気を感じ、私は身震いした。 学校の外でこんな状態なのに、中はきっとさらに恐ろしいに違いない。 私は心の中で何かお経のようなものを唱えながら、学校の門をくぐっていった。  門から玄関までの道のりを、一歩一歩ゆっくりとした歩みで進んでいく。  何かが突然現れてもいいように、私は辺りへの警戒を緩めようとはしなかった。 その間、たくさんの生徒たちとすれ違っていく。  カップルらしき男女二人組、友達同士で来ていると思われる複数組、たった一人で来ている強者までいる。 まあ、ほとんどが男女のカップルだけど……。  そりゃそうだよね、そのためのイベントだし。  皆、怖くないのかな。 私は辺りをキョロキョロと見渡してみるが、皆楽しそうに友達と語り合ったり、男女で気恥ずかしそうに話したり、恋人のように寄り添ってラブラブな雰囲気を醸し出す人たちばかりだ。 その様子に、私はため息をつき、肩をがくっと落とした。 実は私、幽霊とか苦手で、結構な恐がりだったりする。  肝試しなんて普段なら絶対参加しない。 今日は生徒が企画したこととはいえ、学校も協力していた。  生徒の中に先生が一人混じっており、その先生が点呼を取っている。  来た時と帰る前に、その先生に名前を言う仕組みらしい。 生徒が考えた企画を学校を挙げて応援してくれるなんて、すごいな。  うちの学校は、生徒想いのいい学校だったんだ。と、今更ながら学校を見直す私だった。 そのおかげもあってか、恐怖で冷え込んだ私の心がほんのりと温かくなった……ような気がする。 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-26
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【第1部】 第15話 夜の学校……二人きり①

 肝試しといっても、何か仕掛けが用意されているわけではなく、学校の中を探索してくるだけのようだ。 この企画を考えた人は、ただ暗がりで男女二人きりになるというシチュエーションが欲しかったのだろうか。  まあ非日常ではあるから、吊り橋効果的なものも手伝って二人の距離が縮むと思われているのかもしれない。 スタートからゴールまでの道順は決められており、先ほど地図を渡された。 理科室や音楽室など、学校の恐い場所の定番を巡っていくツアーのようだ。  矢印で進むルートが示されている……この通りに進めばいいらしい。  それにしても……と、私は隣を歩くヘンリーへ視線を向ける。  先ほどからずっと何も話さない。 暗闇に恐怖を覚えつつ、私は横目でヘンリーの様子を観察していた。 窓から射しこむ月明かりがヘンリーを照らしている。  彼の綺麗な金色の髪が輝き、色白の肌がさらに白さを増して見えた。  いつもよりミステリアスな雰囲気に、なんだかドキドキしてしまう。 あの二度目のキス……。  あれから私はヘンリーを意識するようになり、避けてしまうようになった。 ヘンリーもそんな私の態度に遠慮しているのか、あまり話しかけてこない。今ではほとんど話さない状態が続いている。 このままの状態が続くのは嫌だ。 ヘンリーと出会ってからいろいろ大変なこともあったけど、彼と過ごす時間は私にとっていつの間にか大切なものになっていた。 ヘンリーと一緒にいると、心が満たされていく。 ずっと一緒にいられることが嬉しくて、傍にいるとほっとしたり楽しかったり。  出会って間もない彼にこんな感情持つなんて、私自身驚いていた。 そして一番驚いたことは、触れ合っても嫌じゃないこと。  体に触れたり、手を繋いだり、ちっとも嫌悪感を感じないのだ。一度目のキスも、二度目も、驚いたけれど嫌じゃなかった。 今まで男性にそんなことされたことがないから、比べようがないけれど。  これって特別なんじゃない
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-27
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【第1部】 第15話 夜の学校……二人きり②

 月明かりしかない夜の学校。  外から見ていた時より、数段上の恐怖と気味悪さを感じさせる。 普段の私なら、かなり怯えていたに違いない。  しかし、今はヘンリーと二人きりというこの状況が心の中の大半を占め、恐怖心はどこかへいってしまったようだった。 ヘンリーは、恐くないのかな? 私は勇気を出してヘンリーに問いかけてみる。  どうか、普通に話せますように。「ヘンリーはさ……幽霊とかって、怖くないの?」 私の言葉に、一瞬驚いたように目を見開いたヘンリー。  すぐにその顔は、嬉しそうな笑顔に変化していく。 あ、久しぶり……この笑顔。  その笑顔のおかげで、私の心は軽くなり、嬉しさが溢れ出てくる。「恐くないよ。だって、幽霊って元々僕たちと同じ人間だったんだから」 可愛い笑顔であっけらかんと言うヘンリー。  そんな彼を見ていると、幽霊は恐いものではないのかもと思えてくるから不思議だ。「そうだね。そう思えば、恐くないかも」 私が微笑むと、嬉しそうにヘンリーはニッコリと笑う。  彼の笑顔がキラキラと輝いて見えた。 う、嬉しい!  ヘンリーの笑顔もさることながら、普通に話せている喜びを嚙みしめ、私は密かにガッツポーズを決めた。 初めはなんでこんなとこ来ちゃったんだろうって思ったけど、来てよかった。  ありがとう~貴子。 私の脳裏に貴子の元気なスマイルが浮かぶ。  それから、私たちは自然に会話することができるようになっていた。  このままなら、もしかして以前の二人に戻れるかもしれない。と私は期待に胸を膨らませる。 やっぱり、気まずいままより、こうやって楽しく過ごせるのが一番だ。 私は軽快な足取りで前へと進んでいく。すると、突然ヘンリーが立ち止まった。  どうしたのかと驚き、彼を見つめる。  すると、真剣な眼差しを向けるヘンリーと目が合った。 彼はじっと私のこと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-28
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【第1部】 第16話 王子と姫①

 絶体絶命のピンチ!  私は覚悟を決め、目を閉じた。 そのとき、どこからともなく声がした。「王子と……姫?」 驚いた私達は、辺りを見回し声の主を探す。  すると、暗がりからメイド姿の女性が姿を現した。 紺色の上品な長袖ワンピースに白いエプロンをつけた、 昔ながらのメイドのイメージそのまま。 ゆっくりとこちらへ近づいてくるメイドは、どこか儚げで暗い雰囲気を漂わせている。 待って、こんなところにメイドってあり得なくない?  私は嫌な予感を抱きながら、彼女の足元へ目をやった。  彼女の足は、薄っすらとしか見えず、透明だった。 やっぱり……幽霊!?「きゃーーーーー!!」 私はヘンリーにしがみつく。  ヘンリーは何も言わず、そのメイドの女性をじっと見つめていた。「驚かせてしまい申し訳ありません。あなたたちが私の知っている人に似ていたので、つい声をかけてしまいました。  しかし、どうやら人違いのようですね。  そうですよね、もう生きているわけがないのに……」 メイドは酷く悲しそうな顔をして俯いてしまう。「王子と姫って?」 ヘンリーは抱きつく私の頭を優しくよしよしと撫でながら、普通に幽霊と会話を始めた。「……はい。私の仕えていた王子と、その恋人の姫様のことです。  あなたたち二人にそっくりでした。  本当に仲が良くて、お似合いで。二人は結ばれるものと思っていました。  あの戦争が起こるまでは」 「戦争?」 「はい。同盟国だった二つの国は、些細ないさかいから戦争へと発展しました。  王子と姫はある日突然、敵対する関係になってしまったのです。  二人はなんとかできないかと奮闘しましたが、王子と姫という立場上、その御父上の王に敵うはずもなく、成す術もありませんでした。  お二人はとうとう手を取り合い、駆け落ちしました。  追っ手に追われ、追いつめられた二人は崖から落ち
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-29
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【第1部】 第16話 王子と姫②

 なんだか、ずっとこの時を待っていたような……そんな高揚感に満たされていく。「新婦流華、あなたはここにいるヘンリーを、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」 熱く潤んだ眼差しに見つめられ、私の体は火照り、顔が熱くなった。 こうなったら、付き合うしかない……よね。  私は覚悟を決めた。 これはメイドさんのため、と自分に言い聞かせる。「はい……誓います」 「では、誓いのキスを」 メイドが淡々とその言葉を発した。「え?」 私は驚き、ぽかんとした顔でメイドを見つめる。  するとヘンリーが私の耳元で囁いた。「僕たちが仲良くしているところを見たら、きっとメイドさんは満足して成仏できる」 メイドはすごく期待した眼差しをこちらに向けている。 本当にキスしたら、成仏できるの?  っていうか、本当にキスするの? 戸惑いの眼差しでヘンリーを見つめると、彼の顔がゆっくりと近づいてきた。 なんでこうなるの?  ええい、もうやけくそよ! 私は観念し、目を閉じた。 唇に柔らかなものが触れる。  さらにヘンリーが私の体を強く抱きしめてきた。 そのまましばらく何もできずに私は動きを止めていた。 すると、調子に乗ったヘンリーが角度を変え、何どもキスを繰り返してくる。  息が苦しくなってきて、私の堪忍袋の緒が切れそうになる。「ちょ、いいかげんにっ」 キスから逃れようとする私の頭を掴み固定すると、ヘンリーはまた私にキスしてくる。「……っ、ちょっ……」 私はヘンリーの腕の中で必死にもがきながら、キスから抜け出そうとする。  しかし、上手くいかない。 ヘンリーは歯止めがきかなくなったのか、私に無我夢中でむさぼりついてきた。  しまいには、ヘンリーの舌が私の唇をこじ開けようとしてくるのを感じた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-30
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【第1部】 第17話 またお風呂から人が!①

 目をこすってから、先ほどメイドが立っていた場所に目を凝らす。 真っ暗な廊下を、月明かりだけが照らしている。  そこに彼女の姿はなかった。「いなく、なった……?」 「きっと、成仏したんだよ」 ヘンリーが嬉しそうに目を細める。「うん……そうだね。よかった」 私は愛想笑いを浮かべながら、先ほどのことを思い出す。  また映像を見た。 光が強くなった瞬間、目を閉じた私の脳裏に走馬灯のように映像が流れ込んできた。 それはメイドが見ていたであろう、王子と姫の姿。 二人が寄り添い、幸せそうに語り合う。  後ろ姿しか見えなかったけれど、確かに私とヘンリーに似ていたような気がした。 なんだか最近、そういう変な映像や夢をよく見る。  いったいこれは、なんなんだろう。「どうしたの? 流華、大丈夫?」 ぼーっとしていた私に、ヘンリーが声をかけてくる。「あ、うん、平気」 私は笑顔を見せたが、なぜかヘンリーはじーっと見つめてくる。「どうしたの?」 なんだか恥ずかしくなってきて、私はヘンリーから距離を取るため後ずさった。「また、キス、したいな……」 物欲しげな眼差しで、ヘンリーが私の唇を見つめている。「な、何言ってるの!? そろそろ帰らないと、みんな変に思うでしょ? 帰るよっ」 私はヘンリーを置いてさっさと歩き出す。  すると、突然ヘンリーが後ろから抱きしめてきた。  すぐ傍に彼の息遣いを感じる。 耳に息がかかり、私の背筋がゾクッと震えた。 これは世に言う、バックハグ!  って言っている場合ではない。  私が狼狽えていると、ヘンリーが私の顔を横に向けた。  ヘンリーの顔がドアップになる。 しまった、またキスされる! そう思ったそのとき、「お嬢っ!」 遠くの暗闇から、龍が姿を現した。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-01
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【第1部】 第17話 またお風呂から人が!②

「はあー、いい気持ちっ」 やっぱりお風呂の時間は最高。 ゆったりとお湯に浸かりながら、天井を見つめる。  一日の疲れが癒されていく瞬間。 今日は人生で初めて幽霊を見てしまった。  しかも幽霊と普通に会話をし、成仏までさせてしまうという非常事態。 この恐がりの私に、よもやこんな日が訪れるとは夢にも思わなかった。  でも……あのメイドの最後の笑顔を思い出すと、なんだか嬉しい気持ちになる。  成仏できてよかった。 それにしても、あのメイドって外国の人だったよね?  なぜ、あの学校にいたんだろう?  謎だ……。 私は考え込み、顔半分を湯に浸した。  息を吐くと、お湯がブクブクと音を立て、湯の表面に泡を起こす。 ヘンリーには本当に驚かされてばかりだな……。  よくもまあ、あれだけあっさり幽霊のことを受け入れられるものだ。  あの何事も前向きに捉えられる性格は、ある意味羨ましい。 それに、また私、ヘンリーとキスを――  思い出してしまった私は、湯舟の中でじたばたと暴れる。 きゃー、私ったら、何思い出してんの! 私が暴れたせいか、風呂の湯に泡が大きく目立ち始めた。 あれ? 私が動きを止めても、なぜか泡はボコボコと湯から湧き出てくる。  この展開は見たことあるぞ……。  私は嫌な考えにいきついてしまった。 その瞬間、お湯から突然人の顔がゆっくりと浮上してきた。  お湯の上にちょうど生首が浮かんでいるような感じ。 綺麗な銀色の長い髪がお湯の表面でゆらゆらと揺れ、その人物は銀色に輝く瞳を大きく開き、私のことを見つめている。「っひ……」 私は声にならない声を出す。すると、その生首がしゃべり出した。「……これはこれは。お嬢さん、どうもお邪魔します」 中性的な顔だったが、声は低く男性を思わせた。  その男性は、ニコリと爽やかに微笑んでくる。「い、いや
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-02
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【第1部】 第18話 王子の執事①

 風呂場から救出されたアルバートは、適当な浴衣を着せられ、空いている部屋へと運ばれていった。  龍が用意した布団に転がり、幸せそうな顔をして眠っている。 私とヘンリーと龍の三人は、布団ですやすやと寝むるアルバートを取り囲み見下ろした。「ヘンリー、説明してもらおうか?」 私がヘンリーを睨む。  ヘンリーは私の視線など気にも留めず、可愛くニコッと微笑むと語り出す。「アルバートはね、僕の執事なんだ」 「執事? はぁ、まあヘンリーは王子だもんねって、なんで執事までこっちの世界にやって来てるの?」 「さあ、なんでだろ?」 ヘンリーは不思議そうに、眠っているアルバートの顔をじっと見つめる。  そのとき、アルバートの瞳がカっと大きく開いたかと思うと、すぐにガバッと起き上がり、ヘンリーを見て叫んだ。「ヘンリー様! よかった、ご無事で!」 アルバートがヘンリーを抱きしめる。  ヘンリーは小さい子をあやすかの様に、アルバートの背中をさすっている。「アルバート、心配かけてすまなかった。僕はこの通り、元気でやっているよ」 「王子がいなくなってからというもの、生きている心地がしませんでした。  皆心配しております。早く帰りましょう」 アルバートは懇願するような瞳をヘンリーに向けすがりついてくる。  そんなアルバートを見つめながら、ヘンリーは気まずそうに頭を掻いた。「それが……戻り方がわからないんだ」 「……なんですってーーー!!」 アルバートはショックで固まってしまう。 それはそうだろう。  わけもわからず知らない場所へやってきて、帰り方がわからないなんて、絶望的だ。  それを楽観的に楽しんでいるヘンリーがどうかしているのだ。 私はアルバートに同情の眼差しを向けた。「でも、大丈夫。この流華が、とっても親切に僕のお世話してくれるから」 ヘンリーが懲りもせず、私に抱きついてくる。『あーーー!!』
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-03
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【第1部】 第18話 王子の執事②

 これはちょっとやばいかも。  私は急いで止めに入る。「ねえ、その辺でストップ! 今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ?」 「そうだよ、アルバートも流華のこと、悪く言ったら許さない」 私とヘンリーが二人の間に割って入ると、その場の空気が幾分やわらぎ始めた。  そこへ、ちょうど通りかかった祖父が顔を覗かせた。「おーおー、もう一人増えとるっ」 祖父は驚くことなく、嬉しそうにニコニコしながらこちらへやって来る。 何事にも動じない祖父はさすがというか何というか。  こういうところは、改めて大物だと感じる。いつもは忘れてるけど。「ご老人が、ここの主か?」 アルバートが祖父に尋ねる。「うむ、そうじゃ」 祖父が威風堂々と胸を張り頷く。  その姿には威厳があり、どこぞの王様のように見えなくもない。 アルバートは祖父の前にひざまずいた。「どうか、ヘンリー王子と共に、しばらくここに置いてはくださりませんか?」 「いいぞ」 え! そんなあっさり?  あまりの承諾の速さに、私は驚きを隠せない。「有難き幸せっ」 アルバートが深々と頭を下げる。  即座に龍が祖父に抗議した。「いいのですか! こんな訳の分からない輩を、また」 「別に一人も二人も同じじゃ。ヘンリーもいい奴だし、こいつもきっといい奴じゃて」 龍の肩をポンと叩き、何度か頷くと祖父は去っていった。「ふむ、実に聡い方だ」 アルバートが感心したように頷いている。  龍は納得いかない様子で、しかめっ面をアルバートに向け睨んだ。 私は大きなため息をついてから、ヘンリーとアルバートを交互に見つめる。「もうこうなったらおじいちゃんの言う通り、一人も二人も同じよ。  いいわ、ヘンリーとアルバート、二人とも元の世界に帰れるまで面倒みてあげるわよ」 こうなったらとことん付き合ってやろう
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-03
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