「で、おまえ、その体どうしたんだよ」 大地はあゆの傷だらけの体を心配してくれているようだった。 なぜ彼が心配するのかは不明だが、あゆはなんだか嬉しくて、あたたかい気持ちに包まれる。「大丈夫です。これは私の不注意で、心配いりません」 まともに大地と会話したのが初めてだったので、緊張して声が震えてしまった。「そんなに……俺、恐いか?」 大地があゆの顔を覗き込む。 なんだかすごく不安そうで、迷子の子犬のようなその瞳にあゆは笑ってしまう。「ふふっ、もう、恐くないです」 あゆの笑顔を見て、大地も嬉しそうに笑ったが、ふと我に返った。「ってことは、今まで恐かったんじゃねえか」 「だって、恐そうにしてるからいけないんですよ」 「そうか? 俺普通だと思うけど……」 「そう思っているのは、本人だけなんじゃないですか?」 「なんだと?」 大地が軽く睨んできたが、不思議ともう恐怖心はちっとも湧いてこなかった。「大丈夫です、もう私は恐くありません!」 あゆが真面目な顔で答えると、大地があきれたように笑った。「はいはい」 あゆは不思議だった。 こんなに自然に話せるのはチワくらいで、人とこんな風に会話できたのは初めてだ。 いや、小さい頃のあの男の子以来かもしれない。 あゆが大地をじっと見つめると、 どうした? という優しい表情を向けてくる。 あゆは人と目線を合わせたり会話することが苦手だったが、大地は全然嫌じゃない。 むしろ心地がよかった。こんな感情……初めてだ。 二人の様子をずっと見つめていた人物がいた。 大地のことを探しにきた美咲だった。 少し離れた廊下の曲がり角、そこに潜んで二人を睨みつける。 彼女の心は酷く乱れていた。 あんな優しい顔、見たことない。 大地の優しさは知っていた。悪ぶっ
Terakhir Diperbarui : 2025-06-11 Baca selengkapnya