Semua Bab 正義のヒロインとあの日の約束: Bab 11 - Bab 20

22 Bab

第7話 動き出す想い②

「で、おまえ、その体どうしたんだよ」 大地はあゆの傷だらけの体を心配してくれているようだった。  なぜ彼が心配するのかは不明だが、あゆはなんだか嬉しくて、あたたかい気持ちに包まれる。「大丈夫です。これは私の不注意で、心配いりません」 まともに大地と会話したのが初めてだったので、緊張して声が震えてしまった。「そんなに……俺、恐いか?」 大地があゆの顔を覗き込む。  なんだかすごく不安そうで、迷子の子犬のようなその瞳にあゆは笑ってしまう。「ふふっ、もう、恐くないです」 あゆの笑顔を見て、大地も嬉しそうに笑ったが、ふと我に返った。「ってことは、今まで恐かったんじゃねえか」 「だって、恐そうにしてるからいけないんですよ」 「そうか? 俺普通だと思うけど……」 「そう思っているのは、本人だけなんじゃないですか?」 「なんだと?」 大地が軽く睨んできたが、不思議ともう恐怖心はちっとも湧いてこなかった。「大丈夫です、もう私は恐くありません!」 あゆが真面目な顔で答えると、大地があきれたように笑った。「はいはい」 あゆは不思議だった。  こんなに自然に話せるのはチワくらいで、人とこんな風に会話できたのは初めてだ。  いや、小さい頃のあの男の子以来かもしれない。 あゆが大地をじっと見つめると、   どうした? という優しい表情を向けてくる。 あゆは人と目線を合わせたり会話することが苦手だったが、大地は全然嫌じゃない。  むしろ心地がよかった。こんな感情……初めてだ。   二人の様子をずっと見つめていた人物がいた。 大地のことを探しにきた美咲だった。  少し離れた廊下の曲がり角、そこに潜んで二人を睨みつける。 彼女の心は酷く乱れていた。 あんな優しい顔、見たことない。  大地の優しさは知っていた。悪ぶっ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-11
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第8話 企み①

 ろうそくの灯りしかない薄暗く長い廊下に、窓は一つもない。  全体が石畳で造られたその通路は、無機質で圧迫感さえ感じる。 廊下をしばらく歩いていくと、重厚で大きな扉が眼前にそびえ立つ。  その扉を開くと、さらに暗く不気味な雰囲気が漂う大きな広間が存在した。 広間へと足を踏み入れた京夜は眉を寄せる。 たくさんの魔族たちが目の前を通り過ぎて行くのを、不快そうな顔で京夜は睨みつけていた。「京夜殿、珍しい。このような席には滅多におられないのに」 一人の魔族がニヤついた顔で京夜に話しかけてくる。  その話し方から、嫌味だとすぐにわかった。 京夜は気まぐれで、魔族の集まりに顔を出すことは滅多になかった。  それをよく思っていない連中がいることも知っている。こいつもその一人だろう。「まあ、たまには出席しないと、魔王様にお叱りを受けますので」 面倒くさいので適当にあしらおうとする京夜だったが、懲りない魔族は余計な発言をしてしまう。「そうですね、魔王様も心が広いとはいえ、限度がありますから」 京夜は鋭い眼差しでその魔族を睨んだ。  すると命の危険を感じたのか、魔族は青い顔になり、そそくさとその場から立ち去っていく。 どうやら京夜のことは恐れているらしい。 確かに先ほどの魔族はカスだ、レベルが違う。京夜は数秒とかからぬうちに灰にできる自信があった。  去り行く魔族を見つめながら、京夜は肩を竦める。 その時、その場にいた魔族たちが一斉に跪いた。  京夜も皆にならって跪く。 暗闇の中から魔王が姿を現した。 その場の空気が一変した。ものすごい威圧感だ。 ゆっくりとした動作で歩いていくと、魔王は王座に座り皆を見渡した。  魔王から発せられる、邪悪な気が辺りを包み込んでいくのを感じた。  圧倒されるようなその雰囲気に、皆が呑まれていく。 ある一人を除いては。 場の空気は張りつめ、緊張が高まる。  皆は静まり返
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-13
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第8話 企み②

 その頃、須藤は家で一人くつろいでいた。 とあるマンションの一室。  彼の部屋には特に変わった物はなく、ごく普通の一般的な男性の部屋だった。  古めかしいレコードの機会が置いてあることを除いては。 レコードの機会から、クラッシックの穏やかなメロディーが流れている。 その音楽に耳を傾けながら、ソファーにゆったりと座った須藤は少しの眠気を感じ、のんびりとあくびをした。 ふと足元に気配を感じ、視線を移す。  そこには、いつの間に現れたのか、行儀よくお座りしたチワが須藤を見つめていた。「やあ、いらっしゃい、チワさんでしたっけ?」 須藤が微笑みかけると、チワが小さな体で丁寧にお辞儀する。「この前はありがとうございました」 ゆりあとの戦闘の後、ボロボロになったあゆの怪我を治療し、家まで運んでくれたのは須藤だった。「いえいえ、当然のことをしたまでですよ。天界のために頑張ってくれている木立さんには感謝しています」 「まさかあなた様が下界にきているとは思わず、正直驚きました」 須藤は天界でかなり位の高い天使だった。本来なら下界に降りてくることなど、あり得ない。  下級の天使や、使い魔のチワのような存在以外、滅多なことでは動かないはずだ。  それほど、今下界は非常事態だということがわかる。 チワの言葉に頷くと、須藤は神妙な顔つきになった。「それだけ強い魔族がこちらに来ているということです。  私はあなたたちを見守る役目として使わされました。  しかしこちらのことに手出しはできないので、戦うのは木立さんに任せるしか。……すみません」 チワも須藤も目を伏せる。  自分たちではどうすることもできないことを、あゆのような少女に押しつけていることに、心を痛めていた。「大丈夫です。あゆはああ見えて強いんです。かならず魔族を倒してくれます」 チワが誇らしげに言うと、須藤は優しい笑みを向け頷いた。「そうですね、木立さんは優しくて強い人です。大丈夫」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-15
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第9話 大切な気持ち①

 次の日、美咲は学校へ着くとすぐに大地を探した。 生徒をかき分け走っていく。  遠くにその姿を捉えると、美咲はまっすぐ大地へと向かっていった。「大地っ」 美咲は大地の手を取り引っ張った。「美咲?」 振り返った大地は美咲を見ると優しく微笑みかける。「どうした? そんなに慌てて」 「大地……」 美咲は恐る恐る大地に抱きついた。  すると、いつもなら突き離されるその手で、優しく抱きしめ返される。「大地、大好き」 「俺も、好きだよ」 大地が美咲の耳元でそっと囁くと、美咲の目に涙が滲んでくる。 嬉しくて、嬉しくて、美咲の頭も心も大地でいっぱいになる。  これ、夢じゃないよね? 美咲はほっぺをつねるが痛みを感じた。 大丈夫、これは現実だ。  やっと手に入れた、私の宝物。  もう離さない、二度と。私のものだ、誰にも渡さない。 涙で滲む美咲の瞳の奥は、密かに暗く淀んでいた。が、本人も誰もそのことに気が付く者はいなかった。  「いい天気」 あゆは雲一つない青空を眺めつぶやく。  今は昼休み、昼食を取るため屋上へやってきていた。 教室でご飯を食べるのが嫌で、いつも屋上にきては一人を満喫するのがあゆの日課だった。 教室のあの人がごちゃごちゃいる感じが好きじゃないし、こそこそと何か言われているように感じてしまい、ストレスが溜まる。  それならば、と屋上へ足を運んだ。 この空間、誰も居ない一人の世界を満喫できるここが、天国に思えた。 それ以来、屋上はあゆの居場所となった。「あゆ、仕事だ」 あゆがご飯を口に運ぼうとした、まさにその時、チワが足元に姿を現した。「……お昼なんですけど」 チワを睨むあゆのことは完全に無視し、素知らぬ顔でチワは話を続ける。  ちなみにこれ、いつものこと。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-16
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第9話 大切な気持ち②

 美咲は勢いに任せ剣を振り回してくる。  不規則なその動きに、あゆは対応するのがやっとだった。 あゆも最初は押されていたが、だんだん美咲の動きが読めてくると反対に今度はあゆが押し始める。「くそっ!」 美咲は必死に攻撃をしかけるが徐々に追い詰められていってしまう。  攻撃に隙が出た瞬間を、あゆは見逃さなかった。 あゆが美咲の剣を弾き飛ばすと、その反動で美咲は尻餅をつく。  その隙に、あゆは美咲の喉元に剣先を向けた。 突き付けられた剣に怯えながらも、美咲は強気な瞳であゆを睨み返した。「殺さないで! 私はこれから大地と幸せになるんだから!」 必死に張り叫ぶ美咲に、あゆは静かに告げる。「おまえが欲しかった“もの”は、本当にそんな偽りの気持ちなのか?」 美咲の瞳が大きく開く。  動揺した心を隠そうと何か言いかけたとき、「美咲!」 どこからか、大地の声が聞こえた。  声の方へ視線を向けると、大地がこちらへ走ってくる姿が目に入った。「大地? ……なんで」 突然の出来事に、美咲は大地を凝視する。  二人の前にやってきた大地は、美咲を背に庇いながらあゆの前に立ちはだかった。「美咲の様子が変だったから、つけてきたんだ。  ……お前誰だよ! 美咲に手出しはさせない!」 大地があゆを睨みつける。  その瞳は、あの優しい眼差しではなかった。  敵意を含んだその眼差しに、あゆは激しく動揺する。「ど、どけ! そいつをやらないと……うっ」 あゆの腹部に黒い剣が突き刺さっていた。  大地に気を取られていたあゆの隙を突き、美咲は大地の後ろからあゆ目掛け剣を突いていたのだ。 まったくの不意打ちに、あゆは気づくことも避けることもできなかった。「ふん、口ほどにもない。私の邪魔をするからよ」 美咲は吐き捨て、ニヤッと微笑む。  勝った! 美咲は心の中で勝利を確信する
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-18
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第10話 向き合う心

 大地は悩んでいた。 昨夜のこと―― あゆがなぜ美咲と剣を交えていたのか。  美咲の変化、須藤の能力、あゆと須藤の関係、そして……あゆのこと。  色々わからないことだらけで、大地の脳みそはパンクしそうだった。「あーっ、わっかんねえ!」 大地が頭を抱えたそのとき、「おはよう、大地」 美咲が元気に声をかけてきた。  ニコニコと微笑む彼女は今までと何も変わらない。 昨日のことなどまるで無かったかのような振る舞いに、大地は戸惑う。「じゃあ、私先行くね」 大地の肩を軽く叩くと美咲は走り去っていく。 なんだか、微妙に距離を感じる。  言葉では説明できない、心の距離。 いつも当たり前にそこにあったモノが急に無くなったような、そんな物悲しさ。 美咲の背中を見つめながら、複雑な心境に駆られる大地だった。   美咲は決めていた。 もっと人間として成長したら改めて大地に告白する。  今までの私では振り向いてもらえなかったのはしょうがない。  自分が思っているほど、いい女じゃなかった。 だから、大地に相応しい女性になる。  それが今の私の目標だ。 なんだか嬉しくて、胸が弾む。  前よりもきっと大地に近づいていける、そんな気がするのだ。  待ってて大地! 美咲は弾けるような笑顔でジャンプする。 「やるぞー」と気合を入れた。   あゆの足取りは重かった。  廊下を歩くその速度は、通り過ぎて行く他の生徒より激しく遅い。 生徒が横切る廊下の隅で、壁にもたれかかり小さくため息をつく。 あゆはぼーっとするその頭で、思考を巡らしていた。  美咲に刺されたあと、どうなったのかまったく記憶にない。 あの時、確かに剣は私の腹部を貫いていた
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-20
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第11話 打ち明けられた秘密①

「え? 犬? どこから……」 突然現れたチワを、大地は大きな目で穴が開くほど見つめている。  その視線を軽く受け流し、チワが淡々と話し出す。「大川大地、私は天界からやってきた使い魔のチワ。  あゆと共に魔界からやってきた魔族と戦い、人間を救っている」 チワワがしゃべり出したことに驚き、開いた口が塞がらない大地が急に大声を出した。「犬が、しゃべってるっ!」 その言葉に、少しムッとしたチワは不機嫌そうな声音に変わった。「悪いか? 世の中にはおまえが知らない世界がたくさんあるということだ。人知れず悪魔と戦うあゆのような存在もな。  おまえたちがのうのうと生きている世界では、悪魔が人の心の弱さにつけ込み、魂を食らおうとしている。  魂を食われた者は、本来の自分とは違ってしまう。純粋で綺麗な心は消え、本来なら奥底に隠している醜い部分が露わになる。  そんな存在ばかりになれば、この世界の秩序は乱れてしまう。  ここまで言えばおまえみたいな馬鹿そうな奴でも、言っている意味はわかるだろう?  そういう存在から人々を守るため、天界があゆを選んだ。  あゆは人々のために、悪魔と戦っているのだ」 目の前で起こっていることに驚きつつ、何とかついていこうと努力する大地。  あゆとチワを交互に見ながら一人何やらつぶやいている。  混乱する頭を整理しているようだ。 そんな大地の様子を憐れむように見つめたチワが、一つ咳払いをしてから話し出す。「本来なら、一般人のおまえにこんなことを知られては問題なのだが。  昨日あれだけ見られてしまってはどうしようもない。  上には報告して確認を取った。  おまえがこのことを口外しないと誓うなら、おまえの記憶はそのまま残る。  もし口外しようものなら、昨日のことは記憶から一切なくなる」 チワの顔は真剣そのものだ。  天界が下した判断は絶対で、誰にも覆すことはできない。  ここで、大地が反発するようなら、何のためら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-23
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第11話 打ち明けられた秘密②

「あの、それじゃ、私はこれで」 なんだかいたたまれない気持ちになったあゆは、さっさとこの場を去りたかった。 これだけの奇想天外な出来事をすんなり受け入れてくれた大地には、驚きと共に感謝もしている。すごく懐の大きな人だと感心した。  でも、本当のところがわからない。 もう、この前ように普通には接してくれないかもしれない。  こんな訳のわからない、得体の知れない人間と一緒にいたいと普通思わないだろう。  さっきの話だって、本当に信じているのかどうかなんてわからない、適当に返していただけかもしれない。 なんで私はいつもこうなんだろう……先に傷つかないための予防線を張ってしまう。  本当のところなんて本人にしかわらないのに……。 弱い自分――傷つきそうなことからは、さっさと逃げ出そうとする悪い癖。「なあ」 大地が唐突にあゆに声をかけてきた。  一人ふさぎ込んでいたあゆが大地の方へ顔を向ける。「あのさ、俺……これからは木立のこと、手伝ってもいいか?」 突然の提案に、あゆの身体は硬直し動きが止まる。 え? 今、なんて言った?  あゆは自分の耳を疑った。「あのときは美咲が心配で、美咲のことしか見えてなかった。  まさか相手が木立っていうのも知らなかったし、腹刺されたのがおまえってわかったときは、本当にショックだった。……後悔した。  木立の力になりたい、守りたいって思ったんだ」 大地は真剣だ。その強い想いは、あゆの心にじわっと染み渡っていく。  彼は本気で心配してくれている、そう思った。「俺は特別な能力なんてないし、選ばれた人間でもない。  だから役には立てないかもしれない。それでも傍にいて……支えたいって思う。  ほら、一人より二人の方がいいだろ?」 大地の気持ちは嬉しかった、すごく、すごく。  自分のことをこれほど大切に思ってくれる人なんて、いないと思ってたから……。  だから、余計に。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-25
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第12話 十年前①

 十年前……。  あの大きな木の下で、いつも俺達は会ってた。 どこまでも続く青空、雲は一つもない。  風が吹くと、ざあっっと大きく草木が揺れる。広い原っぱには緑の絨毯が広がっていた。 その中央に一本の大きな木があって、その存在を証明するかのようにそびえ立っていた。 木にもたれかかりながら、大地は大きく伸びをする。  新鮮な空気をお腹いっぱいに吸い込み、息を吐いた。 暖かな日差しが体に降り注ぎ、体がポカポカと暖まっていくのを感じる。「……気持ちいい」 原っぱの上で、大の字に寝そべる大地。  その瞳には、可愛らしい少女が一生懸命花を摘んでいる姿が映っていた。 花を摘み終わったあゆが、嬉しそうな笑みを向け大地に近づいてきた。「はい、あげる」 あゆの手には、原っぱで摘んだ色とりどりの花が握られていた。  それを大地の方へ差し出す。「なんだよ、こんなのいらねえよ」 大地は格好つけてそっぽ向く。  すると、あゆが今にも泣きだしそうな表情になり、慌てて大地は花をあゆから奪った。「しょうがねえから貰ってやる」 あゆの顔がぱあっと明るくなり、「ありがとう」と可愛く微笑んだ。  大地はドギマギして照れ隠しに俯いてしまった。  俺はいつもおまえに振り回されてばかりだった。  その表情、仕草、一つ一つが俺を翻弄する。 二人でいると楽しくて、とても穏やかで……。 いつまでもこんな時が続けばいいと思ってた。  そんなある日のこと。 俺は喧嘩していて、偶然あゆと出くわしてしまった。  本当にたまたまだったんだ。 いつも、あの原っぱでしかあゆとは会ったことなかったのに。 俺が大勢相手にやりあっていたから、俺を守りたいって思ったのか――あゆは小さな体を精一杯大きく伸ばして俺の前に立った。 いつもは弱気で臆病なあゆが、その時ばかりは年上
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-27
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第12話 十年前②

「ふん、つまらないな……」 先ほどから屋上の入口付近で二人を観察していた京夜は、不機嫌そうにつぶやいた。「あいつは俺のおもちゃなのに――変な男が周りウロチョロされたんじゃ迷惑だ」 京夜は大地を睨む。「さて、どうするかな」 手に持ったリンゴを放り投げ、キャッチする手前でリンゴは消滅した。  京夜は楽しそうに笑った。「こんなところで何をしているんですか?」 気づけば、京夜の後ろには須藤が立っていた。 こいつ! 何も気配を感じなかった!  警戒しながら、京夜はいつも通り優等生の笑顔を須藤に見せる。「……いえ、屋上で新鮮な空気を吸おうと思って来てみたら、先客がいたので戻ろうと思っていたところです」 笑顔のまま軽くお辞儀した京夜は、階段を下りていく。 あいつ、前から読めない奴だと思っていたが、要注意だな……。  京夜は横目で須藤を睨んだ。  京夜が去っていくと、須藤は短いため息をつく。「うちのクラスは癖のある人が多いですね」 「先ほどの者は魔族ですか?」 須藤の足元にはいつの間にかチワの姿があった。「そうですね、かなりの実力者だと思います。  木立さんのことを気に入ってずっと観察しているようですが、今後どう行動するか私も観察中です」 「そうですか。……あの、今回のことであゆには何もお咎めないですよね?」 チワは心配そうに須藤を見上げる。 あゆの正体がバレてしまったことは、今回が初めてだ。天界がどのような行動をするのか予測がつかない。  不安だった。これ以上、あゆが傷つくことになってしまうことをチワは恐れていた。 そんなチワの心境を察してか、須藤は優しく微笑む。「大丈夫。大川君が黙ってさえいれば、それでいいとのことです。  これも普段から木立さんが頑張っているから天界も容認したのでしょう」 その言葉を聞いたチワはほっと胸を撫で下ろし、遠く
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-29
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