「あゆ!」 突然自分の名前を呼ばれ、ビクッとあゆの肩が上がった。 振り返ると、大地がこちらへ向かって走ってくるのが見えた。「……大地か、びっくりした」 あの幼馴染の男の子が大地だとわかってから、二人の距離は急速に縮まっていった。 会えなかった時を埋めるかのように、二人は磁石で引かれ合うがごとく側にいることが増えていく。 お互い傍にいることが嬉しくて、居心地が良くて。幸せで。 そんな日々を送る中、いつの間にか自然とお互いのことを名前で呼び合うようになっていた。「何で一人で帰っちゃうんだよっ、一緒に帰ろうって言ってるだろ?」 大地が息を切らしながらあゆに視線を向ける。 その表情は少し拗ねていた。「だって、いつも一緒に帰っていたら周りに誤解されるじゃない」 あゆは大地から視線を外した。 本当は自分を探して追いかけてきてくれることがすごく嬉しいのに、素直になれない。「いいじゃねえか、何て思われても。それに……誤解じゃないかもしれないだろ?」 「え?」 あゆが聞き返そうとしたそのとき、「だーいちっ」 突然現れた美咲が、いきなり大地の背中に抱きついてきた。「おまえなあ、いつも急に抱きつくなって言ってるだろ!」 大地が美咲を離そうとして体を左右に振る。 美咲は振り子のように揺れながら、大地にギュッとしがみつくと笑った。「もう、大地は照れ屋さんなんだから」 「な、違う! 離れろっ」 大地の背中にピタリと体を密着させ、美咲はあゆに余裕の笑みを向ける。「木立さん、私も一緒に帰っていい?」 あゆはなんだかモヤモヤしたが、それを無視して美咲に微笑んだ。「どうぞ、私は一人で帰るから。さよなら」 大地を軽く睨んで、あゆはさっさと一人で行ってしまう。「ちょ、待て! あゆ」 美咲の耳がピクッと動く。「大地、あの子のこと、“
Terakhir Diperbarui : 2025-07-02 Baca selengkapnya