Semua Bab 孤独な悪女は堅物王太子に溺愛される~犬猿の仲でしたがうっかり誘惑しちゃってたみたいで乙女ゲーム的な展開が待っていました~: Bab 11 - Bab 20

44 Bab

十一話 風魔法の実習授業

 今日は風のクラスで中級魔法である「フェザークロス」の練習をする日だ。 魔力でつくられた羽根を大量に作り出し対象を攻撃する中級風魔法で、最上級生ともなれば上級魔法を使える生徒も多々いるのだけれど、まだ中級魔法までの生徒も半分くらいはいる。  出来ない事をさせると大変な事故になりかねないし、能力のある生徒も皆中級魔法レベルに合わせて練習する事が多い。 幸い風魔法のクラスはそこまでやんちゃな生徒は多くない……と思うので、それほど大きな問題は起きずに授業をする事が出来ていた。 「…………風の精霊よ、我が魔力を以って命じる。汝の子らをその力で守りたまえ――――[防御魔法]シールド」 私は教室全体を保護するシールドを張り、教室が破損する事がないように準備をする。 もう魔法に関しては、クラウディア先生が使うことが出来ていた魔法は全て使えるようになっていた。 コツをつかめばなかなか楽しいものね。  あとは私の前に自身を防御するストームシールドを発動させ、風の攻撃魔法を吸収出来るようにする。 生徒たちには、そこに向かってフェザークロスを放ってもらうのだ。 「みんな、用意は出来たかしら?」 「「はい!」」 元気な返事が返ってきたところで練習を始める事にした。 「じゃあ順番に発動させてみて」 最初はおさげの女生徒デイジーから始まった。 彼女は子爵令嬢で、今のところ中級魔法まで使える――――フェザークロスも綺麗に発動させ、ホッとした表情を見せて次の生徒に代わった。  次は子爵令息のパトリックが難なく発動させ、黒いサラサラの髪をなびかせながら眼鏡をクイッと上げて次の生徒に代わっていく。 物凄く頭脳派って感じね。  その次は男爵令嬢のティファ、次は筋肉質な男爵令息のレックス……生徒達が次々と成功させていく――――この調子なら順調に終わりそうね。 「いい感じよ!その調子でどんどんぶつけてきて」 私の前のストームシールドが生徒達のフェザークロスを吸収していくので、私自身には傷1つつかない。 魔法って危険もあるけど、こうやって身を守る事も出来るんだなと感心してしまう。  6人目まで無事に成功したところで、伯爵令嬢のマデリン・トンプソンの番になった。 彼女はとても美しくて自分に自信のある生徒なのよね。 クラスにはもう一人美しい生徒がいて、先
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-29
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十二話 魔力暴走とハプニング

 まさか理事長が本当に風魔法の授業に参加するだなんて、失敗しないかすっごく緊張する。 相変わらずマデリンや生徒達には柔らかい笑顔を向ける理事長は、マデリンに寄り添うように彼女の隣りに立っていた。  「ゴホンッ、では授業を再開しましょう。マデリンからね」 私が声をかけたのが聞こえているのかいないのか……見た感じ聞こえていないかのようにマデリンはシグムント理事長へのアプローチを続けている。 「理事長先生……私、上手く出来るか不安で……理事長先生が傍にいてくれたら上手く出来る気がするんです」 そう言って上目遣いでシグムント理事長にお願いするマデリン。 「私はここに立っているから、そろそろ始めよう。クラウディア先生も待っている。君は素晴らしい魔力量を持っているのだから自信を持つんだ」 理事長が促してくれたおかげで、マデリンは不服ながらも私の方に向き直ってくれたようだった。 「…………ッ…………、………………ッ」 彼女が何かを呟いていたように思ったけれど、周りの喧騒にかき消されて聞こえなかったので聞き返そうとしたら、すでにマデリンはフェザーストームの詠唱を始めていて、彼女の周りにどんどん魔力で作った羽根が大量に舞い、集まっていく。  どんどん、どんどん集まって――――って集まり過ぎじゃない? この量は…………魔力の暴走?! 「いけない……!マデリン、もう少し抑えるんだ!」 シグムント理事長が危険を察知して彼女に声をかけると、マデリンは嬉しそうに振り返った。 「理事長先生、今マデリンと仰ってくださいましたね……私、嬉しい」 「そんな事より前を見るんだ!このままでは……」 「ふふっ、いいんです。クラウディア先生はお強い方ですもの、このくらいの魔力が必要なんです」 そう言ったマデリンは理事長から私の方へと向き直り、極上の笑顔で私に笑いかけてくる。 「クラウディア先生、先生はこのくらい、大丈夫ですわよね?……フェザーストーム!!」 「……っ!」 私は咄嗟にストームシールドを2つ増やし、自分の周りを防御するべく対応を取った。 これで彼女の魔力もストームシールドが吸収してくれるはず…………そう思っていたのに、物凄い威力で私へ向かってきた羽根達は途中で動きを変え、上下左右いたるところから私に襲い掛かってくる。 ストームシールドで四方は固めた
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-30
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十三話 2人きりの保健室

 ――――コンコン―――― 「カリプソ先生」 理事長が養護教諭のカリプソ先生の名前を呼んだけど、中から先生の返事は返ってこない。 「いないのでしょうか?」 「おかしいな……カリプソ先生」 …………シーン…………再度呼んでみても応答がない。 「いないようだな。仕方ない、入らせてもらおう」 そう言って中に入ると、やはりカリプソ先生は中にはいなかった。 トイレにでも行ってるのかな。 抱きかかえた私を無言のままベッドまで連れて行き、そのままそっとおろしてくれる――――なんだかお姫様になったような気持ち。 それくらい理事長が優しくおろしてくれたのだ。  クラウディア先生とは犬猿の仲だったのに、転生してからは何かにつけて優しい。 そして今も私が着られそうな服を探して、室内中をウロウロと歩き回っている。 慣れない行動のせいでとてもぎこちなくて面白い……探し物なんて王太子だから周りがしてくれるものね。 ようやく女性用のローブが見つかったらしくて、嬉しそうに持ってきてくれたのだった。 「見つかったぞ、これを羽織ればひとまず大丈夫だろう」 上から羽織るだけのシンプルなローブだけど、これにベルトをすればオーバードレスのようになりそうね。 助かった……。 「私が隣にいながら生徒の暴走を止める事が出来ず、こんな事になってしまい申し訳なかった」 私の隣りに腰掛けながら真剣な表情で理事長が謝ってくるので、どう返していいか分からなくなる。 これはシグムント理事長のせいではないし、そんなに責任を感じる事ないのに。 少ししょんぼりしているようにも見えて、本当に真面目なんだなと理事長が可愛く見えてしまったのだった。 「ふふっ、理事長が謝るなんて、貴重な表情が見られました」 「私は真剣にっ!」 反論しようとする理事長の唇に手を当て、言葉を遮る。 「分かってます、それ以上は何も仰らなくても大丈夫ですわ。今回のは担任である私の責任でもありますし、どうしても気が済まないのなら責任は2人で半分こしましょう」 「半分こ……」 「それにクラスの子達に何もなくて良かった~~それが何よりじゃないですか」 そう、あれだけ大きな爆発にも関わらず、生徒達には傷1つなかったし、クラスにもシールドを張っていたので散らかっただけで済んだのだ。 私の服は着替えればいいだけの
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-31
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十四話 心臓が痛い展開

  「まぁ今回の事ではそこまで影響はないとは思うけど、あっち側の人間は厄介だからね。クラウディア先生の父であるロヴェーヌ公爵は我が父上の側近だし、そういった意味でも彼女が気に食わないんだろうけど」 「だからと言って今日の事は看過できないし、家柄で恩赦すると不平等が生まれる。あくまで学園は――――」 「平等かつ中立的な立ち位置、でしょ?兄上は頭が固いな~~こんなの適当にあしらえばいいのに」 「私は……」 シグムント理事長が反論しているのをダンティエス校長が笑って流している……二人のやり取りって想像以上に尊いのでは?  美しくて仲がいい兄弟――――素敵。  それにしてもこの2人って、仲が悪そうに見えて実はすっごく仲が良い感じがするのは気のせいじゃないと思う。 本人達は無自覚なのかもしれない。 今の会話だけでもじゃれ合ってるようにしか見えないよね。 私がそんな事を考えていると無意識にベッドの上でモゾッと動いてしまい、ベッドがギシッと軋んでしまう。 しまった――――音を立ててしまったわ……。  万が一上半身裸の状態でベッドにいる姿を見られでもしたら、今まで理事長と2人だった事を鑑みても大きな誤解を生んでしまうのは間違いない。 そうなったら理事長の名誉にも関わってきてしまう。 私は元々貴族男性からも遊んでいる風に見られているから、あまり社会的にダメージはないんだろうけど、理事長はこの国の王太子だし、こんな事が表沙汰になったら責任を取らされたりし兼ねないよね。  どうしよう、でも動くわけにはいかないし……私がまごついていると、ベッドが軋む音に疑問を感じたダンティエス校長がこちらを窺い始める。 「今ベッドが軋んだ?誰かこのカーテンの中にいるの?」 わぁぁぁやっぱり疑ってる!どうかこっちにはこないでください…………祈るような気持ちでローブを抱きしめていると、理事長が助け舟を出してくれた。 「いや、さっきまで誰かがいたのかベッドがぐちゃぐちゃだったから、とりあえずカーテンを閉めておいただけだ」 「そうなの?ふ――――ん……」 ふーんが長い……絶対に疑ってるわよね…………。 「そんなにぐちゃぐちゃなら見てみたいな」 え――――そ、そんな―――――― 「待て、ダンテ。そんなの見たって――」 ダンティエス校長は理事長の制止も聞かずに
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-01
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十五話 正体不明の感情に振り回されて ~シグムントSide~

 ロヴェーヌ先生が職場に復帰して5日ほど経った。  彼女が階段から突き落とされた事件からすでにかなり日にちは経っているが、職場復帰した後も特に何事も起こっていないようでホッと胸をなでおろす。 またあのような事件が度々我が学園で起きると生徒達を怖がらせてしまうし、階段から落ちて瀕死状態のロヴェーヌ先生が脳裏によぎると……途端に怖くなってくる。 たまたまあの時、私が通りかかったから良かったものの、もし放置されてしまっていたら――――二度とあのような事があってはならない。 彼女の周りに不穏な動きがないかが気になり、度々ロヴェーヌ先生の様子を見守るようにしていたところ、放課後に教室の大きなゴミ箱を一人で抱え、捨てに行く姿が目に入ってくる。  あんな大きなゴミ箱を一人で?  私はつい体が動いて、彼女のゴミ箱を一緒に持ってあげようと声をかけてしまったのだった。 「君は風魔法を使えるのだから、魔法で重さを軽くしたらいいのに」 一生懸命ゴミ捨てをしようとしてくれている人間にかける言葉じゃないな……自分でも分かっているのだが、彼女とはいつも顔を合わせる度に嫌味の応酬だったので、こんな言葉がつい口をついて出てきてしまう。 だがそんな私の言葉など気にもしていない様子で、素晴らしい言葉を返してくる。 「それだと生徒に示しがつかないと思うんです。なんだかズルをしている気がして……魔法っていざという時に使うものだと思うので」 「ま、真面目だな…………」 真面目というか、こんなにしっかりとした考えを持っていたのか? ロヴェーヌ先生が目覚めてからというもの、私の中ですっかり彼女のイメージが変わりつつある。  服装はもちろんの事、立ち居振る舞いも全てにおいて淑女な感じに様変わりしたのだ。 人間はここまで一気に変わるものなのだろうか……いや、もしかしたら彼女の本質は元からこのようなしっかりとした女性だったのかもしれない。  私が決めつけていただけで。  実際に彼女が風紀を乱すというだけで、何をやっていても不真面目に見えて仕方なかった。 彼女の行動の全てにイライラしていたし、良いところなんて見ようともしていなかったのだから。 でも私が目の敵にしていても生徒や教職員達は皆彼女を良い先生だと言っていたな――――結局は私の眼が曇っていたという事か。  途
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-02
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十六話 クラウディア先生に釘付け ~シグムントSide~

 ゴミ捨てが終わった後、私は理事長室に戻る途中で色々な思考と闘っていた。  一緒にゴミを捨てに行っただけなのに、あのちょっとした時間で色々な感情がせめぎ合って、一気に疲れた気がする。  普段は仕事中だろうと王宮内でも感情が揺れ動く事など滅多にない。 物事に一喜一憂して他者に感情を読み取られる事は弱点を晒す事だと教え込まれているので、王太子として自分の感情をコントロールする事を心掛けていた私は、いつも誰と話していても一定の表情を崩す事はなかった。  ただ一人を除いて。クラウディア先生、彼女に関しては……事件がある前からずっと振り回されている。  私の感情を知らぬ間に動かすのはいつも彼女だ。 前はそれでイライラしていたはずだったのに、今は心臓が痛いくらいに鼓動が激しくなる。 原因不明の感情に振り回されるなど、王太子としてあるまじき事だ。 何としても原因を突き止めなくては。  理事長室に戻って一息入れながら、窓から学園の裏側にある庭園を眺めていた。 この理事長室から庭園が一望出来るのが、この部屋のいいところだ。 庭の手入れをしてくれる用務員のカールは働き者で、この広い庭園をほぼ一人で綺麗に管理してくれていた。  真面目な男なので私はかなり気に入っていたし、このままずっとここで勤めてほしいと思っている。 そのカールがいつものように手入れをしていると、そこにゴミ捨て場で別れたクラウディア先生がやってきたではないか。 「なぜクラウディア先生が……それにカールと……」 誰がどう見ても二人は凄く仲が良く見える。  いつの間に?  カールの水魔法に感動しているクラウディア先生が目にはいってくる――――あのくらいの水魔法で感動するのなら、私だって見せてあげられたのに……。 私だけではなく、この学園にいる生徒達も皆魔力があれば魔法が使えるのだが、それぞれの適性属性というものがあり、一番相性の良い属性を磨いていくのだ。 適性の低い魔法を使うと、コントロール出来ずに魔力の暴走を引き起こしたりし兼ねないので、たいていは自分に合った属性以外は使わない。  私は王太子としての教育の一貫で、全ての魔法を一通り試しながらある程度使えるようにしている。 一番得意なのは火属性の魔法で、次いで光属性の魔法が得意だが、水属性の魔法も使えない事はない
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-03
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十七話 答えが見つかった ~シグムントSide~

 魔法が得意なマデリン嬢が、いつまでも不安なフリをして私に寄り添ってほしいと言ってくる。 教壇の辺りでクラウディア先生はマデリン嬢がなかなか魔法を発動させないので、ずっと待ちぼうけをくらっていた。  私はその事の方が気になり「君は素晴らしい魔力量を持っているのだから自信を持つんだ」とマデリン嬢に声をかけたのだが……私の言葉の何かが気に入らなかったのか、彼女は突然魔力を高め始めた。 そして意図的に魔力を暴走させ、通常のフェザークロスの倍以上……いや、それ以上の威力に膨れ上がったものをクラウディア先生に放ったのだ。  ストームシールドを幾つも作り出して防御しようとしたクラウディア先生のところに大量の魔力の羽根が飛んでいく―――― あのまま吸収してくれればと思った瞬間、羽根は軌道を変え、四方八方からクラウディア先生に襲い掛かっていった。 あの動きは何だ?マデリン嬢が自分の魔力を操っていると言うのか?! 「クラウディア先生!!」 私は咄嗟に瞬間移動し、自身のマントで彼女を包み込んだ。 私のマントは特殊な加工が施されたマントで、中級魔法くらいならば簡単に防ぐ事が出来る。そのマントに更に強化魔法をかけて彼女を包み込む――――これでクラウディア先生は大丈夫だと思っていた。 実際に彼女に傷は1つもついていない。 しかし彼女の服が無残にも引き裂かれ、豊満な胸が露わになってしまっているのが目に入ってきて、思わず目が泳いでしまう。  こ、これは、傷よりもマズいのでは…………傷ならば回復魔法で治せるものの、服は直す事は出来ない。  こんな姿を生徒とは言え男達に見せるわけにはいかない。 「こ、これは大丈夫じゃないな……すぐに保健室に行こう」 マントでクラウディア先生を包み込んだまま抱き上げ、そのまま保健室へと向かったのだった。  マント越しだというのに彼女の柔らかさと匂いが私を落ち着かない気持ちにさせる……しかし全く不快ではなく、むしろこのまま抱きかかえていたいという思いに駆られてしまう。 顔を合わせば嫌味の応酬だった相手に対して、どうしてこんなに心境の変化が起こってしまったのだろうか。 するとクラウディア先生が恥かしかったのか、下ろしてほしいと懇願してきたのだった。 「理事長、一人で歩けます!下ろしてくださって構いませんわ……!」 顔を真
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-04
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十八話 癒しのラクー

  保健室から授業に戻ると、生徒達が心配して駆け寄ってくれたので、「もう大丈夫よ」と伝えるとまた風魔法の練習を始めた。  マデリンは少しバツが悪そうに私から顔をプイッと背けて、実習が終わるまで窓際で大人しくしていたのだった。  今日はさすがに疲れたので学園裏の庭園には行かずに、直ぐに馬車に乗って公爵邸に帰る事にした。 何と言っても邸には先日一緒に帰ったラクーが待っていてくれる。  ラクーは邸の中も慣れてきたのか、元気に飛び回りながらお腹が空くと調理場で食べ物をもらったりと、ちゃっかりしているところもあって可愛すぎる。 少しだけ成長したような気もするけれど、まだ小さくて飛び方に力強さはなく、ゆらゆら飛んでいる姿がまた可愛い。  とにかく癒されるのよね。  邸の皆もラクーが大好きで、すっかり公爵家の一員になっていた。 帰ったらいつもラクーがどこからともなくゆらゆらと飛んでくるのだけど、今日は飛んでくる気配はない。 いつもはすぐに飛んでくるのに……おかしいな。 「ラクーはどこにいるか知ってる?」 「さきほど厨房に入っているのを見かけたので、何か食べているのかもしれません」 セリーヌに聞いてみたところ、どうやら厨房でお食事中のようだったので、楽な服装に着替えてさっそく厨房に向かう。 「ラクー、このスクランブルエッグの残りを食べるかい?こっちのパンも食べていいんだよ」 料理長のゼノは今日もラクーに余っている食べ物を与えている。 ラクーも嬉しそうね……高い鳴き声を厨房に響かせながら全身で喜びを表していた。 「2人で楽しそうね~~私も交ぜてちょうだい」 「お、お嬢様!おかえりなさいませっ」 私がヒョコっと顔を出すと、ゼノは驚いて恐縮してしまい、慌てて立ち上がる。 セリーヌはかなり慣れてきたみたいだけど、まだ邸の人達は私の態度が変わった事に慣れていない様子だった。 ゼノも声をかける度に恐縮するから、むしろ私の方が恐縮してしまったりして、申し訳ないと思う時もあるのよね。  そんな私の元へラクーが嬉しそうな鳴き声をしながら飛んできたのだった。 「クゥゥ――」 あんまり嬉しそうに鳴くものだから、手の平に収めて頬ずりしてしまう……毛もふわふわしているし、可愛すぎるわ。 「ラクー、ただいま!元気にしてたのね。いっぱい食べた?ゼノ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-05
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十九話 忍び寄る闇

 風魔法の実習授業があった後の数日間は、穏やかな日々が過ぎていった。  理事長とは時々すれ違う程度で、挨拶は交わすし嫌な感じはしない――――でもちょっぴり気まずい感じもなきにしもあらずなので、お互い言葉は少なめでちょっと寂しい感じもする。 もう少しゆっくりお話してみたいな……なんて思うのはきっと、仲良くなれるはずがないと思っていた人物と仲良くなれそうだから、だよね? 自分にそう言い聞かせてみたものの……いまいち自分の気持ちがよく分からなくてモヤモヤする。 でもそういう時は考えたところで答えが出ないだろうから、体を動かすのが一番よね。 転生前はバレーボール部だったので、何か思い悩む事があれば悩む時間がもったいないので体を動かす、という生活だった。 もうそういう気質がしみついているのね。  というわけで、今日も放課後にせっせとカールが綺麗に整えている庭園へと向かうのだった。 きっとあそこなら手伝える事もあるだろうし、無心で植物たちと向かい合えるから、深く考える必要もないもの。 すぐに庭園に着くと、今日もいつものように植物たちに水やりをしているカールの姿が見える。  嬉しくなってカールに近づき、挨拶をした。 「カール、こんにちは!相変わらず精が出るわね。今日は私もお手伝いしたいのだけど、いい?」 「…………………………」 「……カール?」 私が声をかけても全くこちらに振り向きもせず、延々と水やりをしているので、ちょっとカールの様子がおかしいかなと思って、もう一度名前を呼びかけた。 すると水やり用のホースを落とし、苦しそうなうめき声を上げ始める。  「……っ…………うっ」 「カール、どうしたの?何かあった?!」 私がまくし立てるように呼び掛けると「に、げ、……てっ」と呟いて倒れ込んでしまったのだ。 顔が真っ赤だわ…………風邪?回復魔法をかければいいのかな…… 「ダメ、こんな状態で放っておけない。今、理事長か校長を連れてくるから……」 「……理事長?」 何故か私が理事長と言ったらその言葉に反応し、カールは上体をゆらりと起こし始め、ゆっくりと立ち上がる。 カールが自力で起き上がったのは良い事なのに、その姿に何故か胸騒ぎがして、嫌な予感が止まらない。  立ち上がったままピクリともしないので、ちょっと怖かったけど名前を呼び
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-06
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二十話 仲直り

  深い深い闇の中に一人でポツンと立っている。 私はあの後意識が遠のいていったから、ここは夢の中?でも真っ暗で何も見えない。 『クラウディア――――』 私を呼ぶ声が聞こえる。あなたは誰? 『…………ち――で――――――』 よく聞こえないわ。 あなたは一体………… 『…………ィア……』 聞こえそうで聞こえない。もどかしくて手を伸ばすけど、相変わらず何もつかむ事は出来なかった。  「クラウディア!!」 次の瞬間、私を呼ぶ大きな声でハッと目が見開く。 そして目の前にはシグムント王太子殿下の顔があった。 ベッドサイドにある椅子に腰をかけながら、心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいる。 「殿、下?どうして…………」 今が何時でどういう状況なのかが全く分からず、思考が上手く働かない。私は酷く混乱していて、ベッドに横たわったまま周りを見渡した。 どうやらここは、公爵邸の自室らしい事はすぐに理解する。 あんな事があったばかりなので、学園ではなく自室にいる事に少しホッとして、気持ちが一気に落ち着いてきたのだった。 「ここは私の部屋ですね。殿下が運んでくれたのですか?」 「ああ。君はぐったりと意識がない状態だったし、魔力が枯渇していたので普通の回復魔法では治癒する事は出来なかった……住み慣れた邸に連れて来た方がいいと思ってね。あれから4時間ほど眠っていたよ」 「そうだったのですね…………色々とありがとうございます」 実際に殿下の推察通り、邸に連れて帰ってくれてとても安心する事が出来たので、心から感謝の気持ちを伝えた。 魔力が回復してきたのか体を起こす事が出来る。 今も心配そうな表情を崩さない殿下の顔を見ると、何だかクラウディア先生の昔の記憶がよみがえってきて、つい笑ってしまう。 「ふふっ」 「どうした?」 「いえ、目覚めた時の殿下の表情が、懐かしいなと思いまして。よく2人で鬼ごっこをして、私が転ぶと心配そうに覗き込んでいたので」 今は微妙な関係の2人だけど、確か幼い頃は仲が良かったはず……ダンティエス校長とはあまり遊んだ記憶はないけれど、小さな理事長と遊んでいたのは記憶に残っている。 さっきの心配そうな顔も幼い頃に見た事があるのを覚えていて、つい職場での呼び方である理事長ではなく殿下と言ってしまった。  懐かしい――――多
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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