レイがいなくても幽霊島は滞りなく朝を迎え、夜を過ごして毎日が過ぎていく。 ミオもまた、ベッドで寝たきりの生活を終えて畑仕事の再開に向けてリハビリとして街の散歩をしていた。 ミオの父親はミオが意識を失っている内にフロード王国に送還されたらしい。グランツと国王との間で、もしくは父との間にどのような取引があったのかは分からない。 恐らくは賠償金の請求になるのだろう。 詳細も近々グランツに聞かなければいけない。レイがいない今、自分も政に参加しなければならないのだ。 しかしそれ以外は変わりのない日常である。 洞窟都市は拍子抜けすることくらい平穏であった。 だが、だからこそミオの胸にはポッカリと穴が空いたような虚しさだけが広がっている。 レイがいなくてもこの島は変わりなく日々を過ごしている。 洞窟都市の巨大シャンデリアはいつも通り都市を照らし、夜には暗くなる。 洞窟外の空は相変わらず曇空で、簡素な船着場には定期船が到着する。そしてエクラの患者たちが船から降りて来て、そして治療を終えて去って行く。 ミオだって明日には今まで通りジャガイモ畑に行って農作業に精を出すのだ。 こうしてこの島は少しずつ何かしら変化しながらも生きていくのである。レイが赤竜を斃して、発展させてきたこの島は明日も明後日と日々を紡いでいくのだ。 ミオがこうして生きていられるのもレイのおかげである。 レイがミオの居場所をくれたのだ。 「ありがとう怜士さん、私に生きる意味をくれて」 高台から洞窟都市を一望しながらミオはそう呟く。 毎日農作業から帰る途中で見る、いつも通りの午後の光景である。 レイは大丈夫だろうか。ちゃんと須代怜士として元の世界で無事に暮らしているのだろうか。二年もいなくなっていたのだから色々問題があったりしてはいないだろうか。 けれどきっと彼の友人も家族も温かく怜士の帰りを喜んでくれるだろう。 「これで……良かったんだよね……」 一人ごち、ミオは髪を耳に掛けつつ少し俯く。 レイは元の世界に帰り、ミオ達は幽霊島で今まで通り生きていくのだ。 少し想定とは違ったが、概ねミオが思い描いた通りのハッピーエンド、めでたしめでたしである。 勇者は赤竜を斃し、そして仲間に助けられて元の世界に戻りました。 そして新しいお嫁さんをもらい子供が産まれ、家族と
Terakhir Diperbarui : 2025-06-30 Baca selengkapnya