変わり者令嬢がやさぐれ勇者の嫁になりまして

変わり者令嬢がやさぐれ勇者の嫁になりまして

last updateLast Updated : 2025-07-05
By:  阿良春季Completed
Language: Japanese
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 色恋沙汰に興味なく冒険者に憧れる貴族令嬢のミオ。ある日美しい妹の身代わりに異世界から転移してきた勇者の嫁として勇者が住む幽霊島に行くことになったが、勇者レイの態度は思った以上に冷たくて、挙句嫁なのだからと服を脱ぐよう強要されて……。    主人公が居場所を見つけたり少しずつ愛を深めていく純愛系のお話です。

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Chapter 1

プロローグ

강현시 모 병원.

“자궁외임신이에요. 나팔관이 파열되면 정말 위험해요. 이렇게 큰 수술인데 왜 혼자 오셨어요? 남편은 어디 있는 거죠? 당장 불러서 서명받아야 해요!”

송하나는 복부가 찢어지는 듯한 극심한 통증을 참으며 전화를 걸었다.

통화연결음이 한참이나 울리고 마침내 전화기 너머로 차가운 목소리가 들려왔다.

“무슨 일이야?”

“강우 씨, 바빠요? 배가 너무 아픈데, 당신이 좀...”

“됐어!”

그녀가 말을 채 끝내기도 전에 짜증이 섞인 목소리가 가차 없이 심장을 후벼팠다.

“배 아프면 의사 찾아. 나 바빠!”

“강우 씨, 누구예요?”

전화기 너머로 낯선 여자 목소리가 들려왔다.

“아니야, 아무것도.”

그의 목소리가 한결 부드러워졌다.

“어떤 게 더 마음에 들어? 골라봐, 내가 사줄게.”

귓가에는 통화가 끊긴 연결음이 뚜뚜 울렸다.

송하나의 심장이 칼날에 베이듯 잔인하게 찢겨 나갔다.

그녀의 얼굴이 창백해지고 호흡이 가빠지자 의사가 다급하게 외쳤다.

“안 되겠다. 당장 수술실 준비해. 이 환자분 수술 진행해야겠어.”

송하나가 다시 정신을 차렸을 때, 병실에 누워 있었다.

“이제 정신이 좀 들어요? 환자분 어젯밤에 정말 위험했어요. 다행히 제때 수술해서 목숨을 건졌어요!”

간호사가 링거를 놓으며 투덜거렸다.

“환자분 남편 참 너무하네요! 이렇게 큰 수술을 했는데 어쩌면 얼굴 한번 안 비춰요? 정말 무책임하네요!”

“자, 여기 간호센터 전화예요. 필요하시면 간병인 부르세요.”

“고맙습니다.”

송하나는 간호사가 건네는 명함을 받았다.

휴대폰을 꺼내 간호센터에 전화를 걸려던 순간, 화면에 갑자기 [핫 뉴스] 알림이 떴다.

[강현 갑부 이원 그룹 이강우 대표, 연인을 위해 경매 최고가 280억 원 들여 마담 뒤 바리 다이아몬드 목걸이 낙찰!]

강렬한 타이틀에 송하나는 동공 지진을 일으켰다.

사진 속 티 없이 완벽한 얼굴의 소유자는 바로 그녀의 남편 이강우였다.

송하나는 그가 항상 수치스럽게 느끼는, 숨겨야만 하는 아내였다.

결혼 생활 4년 동안 이강우는 그녀에게 얼음처럼 차갑고 무심했다.

태생이 그런 사람인 줄 알고 마음을 녹이기 위해 순종적인 아내로 살아보려 노력했지만, 막상 그가 딴 여자를 껴안고 애정을 과시하는 모습을 보게 되니 철저하게 깨달았다.

이 남자는 나를 전혀 사랑하지 않았구나...

가슴을 쥐어뜯는 듯한 고통이 밀려왔다.

송하나는 저도 몰래 눈시울이 붉어졌다.

이제는 정말 단념할 때가 되었다.

4년이나 끌어온 결혼이란 쇼는 막을 내릴 때가 되었다.

의사가 걱정스러운 표정으로 물었다.

“아직 몸이 많이 허약한데 두 날만이라도 더 입원하지 그래요?”

“집에 일이 있어서요.”

“이 기간에는 절대적인 안정을 취하셔야 합니다. 격렬한 운동은 피하고 부부관계도 가지면 안 돼요. 그럼 7일 후에 다시 검사받으러 오세요.”

“네, 알겠습니다. 감사합니다, 선생님.”

송하나는 성수 빌리지에 있는 단독 주택으로 돌아왔다.

가정부 서민경은 아니꼬운 얼굴로 그녀를 타박했다.

“사모님, 대체 요즘 어떻게 된 거예요! 며칠씩이나 외박하다니. 대표님이 아시면 분명 화내실 거라고요!”

그녀는 비록 이씨 가문 가정부이지만, 사실상 반쪽짜리 시어머니나 다름없다.

이강우의 유모인지라 스스로 특별한 존재로 여겼으니까.

제대로 사랑받지 못하는 이씨 가문 사모님 송하나였기에 서민경은 처음부터 눈길조차 주지 않았다.

송하나는 잘 안다.

서민경이 자신에게 이렇게 함부로 대하는 것은 설령 이강우가 직접 지시한 것이 아니더라도 그의 묵인이 있었기 때문이다.

그렇지 않고서야 감히 이렇게 오만하게 굴 수는 없을 터였다.

송하나는 이전에 이강우의 환심을 사려고 그의 주변 사람들까지 챙겼었다.

서민경에게 괴롭힘을 당하고 억압받아도 언제나 이를 악물고 참아왔다.

하지만 이번에는 더 이상 참고 싶지 않았다.

송하나는 곧바로 귀싸대기를 날리며 싸늘한 어투로 쏘아붙였다.

“건방진 것! 한낱 가정부 따위가 감히 나한테 이딴 식으로 말을 해?”

“야!”

서민경이 얼굴을 감싸고 당황스러운 눈길로 그녀를 쳐다봤다. 손을 댈 거라곤 미처 상상도 못 했나 보다.

“감히 날 때려?”

“그래! 때렸다, 어쩔래? 반격이라도 하게?”

송하나의 살벌한 기세에 서민경은 기가 눌렸다.

그녀가 아무리 이강우에게 사랑받지 못해도 이 집안 어르신 홍경자가 직접 선택한 손주며느리인지라 서민경은 차오르는 분노를 삼키는 수밖에 없었다.

송하나는 고개를 홱 돌리고 위층으로 올라갔다.

곧이어 서민경이 뒤에서 구시렁댔다.

“예쁘게 생기면 뭐해? 도련님은 어차피 거들떠보지도 않는데. 이씨 가문 사모님 자리는 조만간 딴 사람이 차지할 거야!”

공격적인 말은 날카로운 칼날처럼 송하나의 심장을 파고들었다.

그녀는 깊은숨을 몰아쉬었다.

이제는 그 어떤 것도 중요치 않다.

오늘이 지나면 이강우에 관한 모든 것이 아무 의미가 없을 테니까.

방으로 돌아온 송하나는 자신의 개인 물품을 일일이 정리했다.

그녀의 물건은 많지 않아 상자 하나면 충분했다.

상자를 옮기다 실수로 상처 부위를 건드렸더니 복부에서 격렬한 통증이 밀려왔고 식은땀이 쉴 새 없이 흘러내렸다.

진통제를 몇 알 삼키고 나서야 겨우 통증이 가시는 듯했다.

약효 때문인지, 아니면 지쳐서인지, 그녀는 침대에 누워 몽롱한 상태로 잠이 들었다.

깊은 밤.

훤칠한 실루엣의 남자가 방으로 들어섰다.

욕실에서 물소리가 쏴 하고 들리더니 20분 후, 이강우가 허리에 샤워 타월을 두른 채 걸어 나왔다.

그는 더할 나위 없이 잘생긴 얼굴에 넓은 어깨와 좁은 허리를 지녔고 초콜릿 복근은 보기만 해도 힘이 차 넘쳤다. 물방울이 복근을 따라 흘러내리며 느슨하게 늘어진 수건 속으로 스며들었다.

그는 아무 말 없이 늘 하던 대로, 형식적으로 송하나의 잠옷 치맛자락을 들어 올렸다.

꿈속에서 헤매던 그녀는 통증에 화들짝 놀라 몸을 뒤척였다.

“아파...”

그녀는 본능적으로 이강우를 밀어냈다.

“저리 가.”

“갑자기 웬 밀당? 우리 하나 또 새로운 수법이 늘었네?”

낮고 조롱 섞인 목소리가 머리 위에서 울렸다.

이강우는 물러나기는커녕 오히려 보복하듯 그녀를 비웃었다.

“한 달에 한 번 합방하는 거 네가 할머니께 졸라서 받아낸 거잖아. 이제 하기 싫어진 거야?”

상처 부위가 찢어지는 듯한 극심한 고통에 송하나는 순식간에 눈물을 쏟았다.

그녀는 이강우가 자신을 증오한다는 것을 알고 있다.

실은 이씨 가문의 어르신 홍경자가 그녀와 이강우의 결혼을 부추겼다.

결혼 후, 이강우는 송하나를 대하는 태도가 마냥 냉랭했다. 이를 본 홍경자가 뒤늦게 규칙을 정했는데 매달 하루는 송하나와 합방해야 한다고 했다.

그는 매번 송하나를 단순히 욕망을 해소하는 도구처럼 대했다.

지난 4년간의 결혼 생활을 되돌아보니 송하나의 마음은 고통으로 가득 찼다.

매사에 조심스럽고 서러움도 참으면서 굽혀왔지만 이 남자의 마음을 요만치도 얻지 못했다.

이럴 바에야 뭐가 아쉬워서 미련을 버리지 못할까?

“강우 씨, 우리 이혼해요...”

송하나의 말이 채 끝나기도 전에 휴대폰이 갑자기 울렸다.

이강우는 평소라면 밤늦게 걸려오는 전화를 질색하지만, 이번에는 부드러운 말투로 받았다.

“그래, 무슨 일이야?”

“강우 씨, 나 혼자 너무 무서운데 와서 좀 같이 있어 주면 안 될까요?”

수화기 너머로 애교 섞인 여자 목소리가 들려왔다.

“알았어.”

그는 망설임 없이 대답했다. 이 목소리에는 송하나가 단 한 번도 느껴본 적 없는 다정한 온기가 담겨 있었다.

“20분만 기다려. 금방 갈게.”

통화를 마치고 이강우는 몸을 돌려 떠났다.

송하나에겐 눈길 한 번 주지 않은 채.

몇 분 후, 아래층에서 차가 떠나는 소리가 들렸다.

송하나는 눈물이 베개를 적시고 창백한 손가락으로 이불을 꽉 움켜쥐었다.

사랑하는 것과 아닌 것의 차이가 이토록 선명할 줄이야.

다음 날 아침.

송하나는 이혼합의서를 남겨두고 캐리어를 챙겨서 집을 나섰다.

복부에서 날카로운 통증이 느껴졌고 몸 아래에 뜨거운 무언가가 흘러내리는 듯했다.

고개를 숙이고 보니 다리에서 피가 뚝뚝 떨어졌고 끔찍한 핏자국이 바닥을 뒤덮었다.

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プロローグ
 一体自分の何が彼をそんなに怒らせてしまったのだろうか。  幽霊島での初めての夜。部屋は暗く、ベッド脇のランプだけがほんのりと灯りを灯している。  そこでミオ・エヴェーレンはベッドの上で荒々しく男に組み敷かれていた。その行為にミオは怯えを隠せない。それでも黄昏色の瞳を男から逸らすことはなかった。  そんな自分を蔑むように黒い瞳で見下ろす男の名前はレイ・シュタインと言う。まだ年若い容貌だ。二十歳前後と言ったところだろうか。人形のように整っている訳でも精悍な顔立ちという訳ではない。  ただ年若い青年特有の色気が冷たい視線やミオを組み敷くしなやかな身体の線から滲み出ていた。そしてこの世界ではとても珍しい、夜闇のような漆黒の髪と瞳を持つ青年だ。  それも当然である。彼は異世界から召還された勇者であった。二年前、ミオの住むフロード王国の魔術師たちが総力を挙げて国を救う勇者を召喚した。それが彼である。  そしてミオはその勇者の花嫁としてこの島に半ば無理矢理送り込まれた。  かつて災厄と呼ばれた赤竜の棲処であったこの幽霊島は今は勇者とその仲間たちが住んでいる。 「……っ」  一糸纏わぬ姿でベッドに組み伏せられたミオの白い乳房をレイは凝視している。  その視線の熱さに咄嗟にミオは手でたわわに実った胸を隠す。 「なんだよ、嫁なんだから隠すなよ」  その隠した手を無理矢理外しながらレイは笑う。その笑みは到底結婚相手に見せるとは思えない冷たく嘲るような笑みであった。 「あっ」  ぐり、と爪で淡く色づいた胸の先端を摘まれる。ぐりぐりと優しさの欠片もなく淡い桃色の乳首を押し潰され、思わずミオは痛みに顔を顰めてしまう。しかし痛みの中にもチリチリとした僅かな快楽を感じてしまっているのも確かであった。ぐにぐにと乳首を引っ張られたり押し潰されている内にミオの呼吸が少し乱れてくる。 「ん……っ」  乳首の頂点を爪でカリカリと弄られると自然甘い吐息が漏れてしまった。 「なんだ感じてんの?」  そう嘲笑うとレイはその強引な愛撫で固く立ち上がったミオの乳首に吸い付く。 「やっ! あぁ!」  チュッ、ズッ、ジュルッとわざと下品な音を立ててレイはミオの誰にも触れさせたことの乳首を嬲るように、強く何度も角度を変えて吸い尽くす。  コロコロと舌で転がされ、強く押し潰された
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第1話・勇者の嫁を強いられまして 1
 午後の優しい日差しが木漏れ日として差し込むフロード王国の郊外の静かな森の中である。そこはエヴェーレン公爵が所有する土地だ。 その森の一角にある小さな倉庫をミオ・エヴェーレンは目指して一人歩いていた。その小さな倉庫がミオの大切な隠れ家である。  ミオの格好は地味だ。地味と言うよりはお世辞にも身なりに気を遣っているとは言えない格好であった。 まず目につくのはお洒落とはかけ離れた時代遅れのぐるぐるの瓶底眼鏡である。 赤みを帯びたブラウンの髪は適当に三つ編みで結えているだけだ。なので三つ編みのあちこちから毛が飛び出してボサボサである。言うまでもなく化粧っ気もない。 ドレスは黒地に小花柄の、地味だがけっして安物ではない生地のものだ。しかし別にお洒落と言うわけではない。汚れが目立ちにくい柄と言うだけで彼女はそれを好んで着ているだけだ。 その外見をミオは別にどうとも思わなかった。  素敵なドレスに身を包んで素敵な殿方と恋愛をすると言う年頃の貴族の娘たちの夢を、ミオはどうしても素敵だとは思えなかったのである。 ミオが素敵だと心奪われたのはただ一つであった。 それは素敵な殿方との甘い恋よりも冒険者たちの山あり谷ありの冒険譚である。 ミオは幼い頃から冒険者になりたかった。 いつか魔術を駆使して魔物を倒しながら冒険者になるという夢があったのである。  見知らぬ国へ旅へ出て、どこまでも広がる海と言うものを見てみたい。フロード王国にも湖はあるが世の中には目の覚めるようなエメラルドグリーンの色をした湖も、夕陽のように赤い湖もあると言う。一度で良いからそんな美しい景色を見てみたいのだ。 陽炎揺らめく灼熱の砂漠も、一面雪に覆われて真っ白な雪山と言うのも見てみたい。  しかし女が生まれる確率が低い、十人赤子が生まれて三人女児が産まれたら慶事とされるこの世界において女子は家にいて家庭を守るものが美徳とされてきた。 子供を産まなければならない女は「家の宝」として大切に囲われているのである。宝物として、外に出ることもなく籠の鳥として家に居続けるのだ。それが貴族の娘であれば尚更であった。 だから貴族令嬢のミオにとって冒険に出るなど夢のまた夢である。 しかしどうしても冒険に行きたい。冒険者になって世界中を冒険することがミオの夢であった。 勇ましく剣を振るう戦士で
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第1話・勇者の嫁を強いられまして 2
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第1話・勇者の嫁を強いられまして 3
 荷造りも一通り終わった頃にはすっかり深夜になっていた。 ミオは宝石箱の中から長方形の板を取り出す。 それは我々の世界で言うところのスマートフォンである。しかしミオはおろかこの世界の誰もその呼び名を知らないだろう。(勇者様、私のこと覚えてらっしゃるのかな……) 懐かしむ眼差しでミオはスマートフォンを見つめる。 実はミオは以前勇者に一度出会っていた。 二年前、いつものように隠れ家の森を歩いていると、ミオは道に倒れていた男を見つけた。  勇者が倒れていたのだ。  しかし当時のミオは彼が召喚されたばかりの勇者だとは知らずに、隠れ家へ連れて行った。 倒れていた原因は症状を見る限り毒だった。なので毒消しの薬を飲ませて一晩看病したのである。  だがミオが目覚めたら勇者の姿はなかった。しかし代わりにこの魔法の板が落ちていたのである。 最初は指で触ると動き、まるで生きているような精巧な人物の絵や、その場で吟遊詩人が奏でているかのような音楽が聞こえたのである。それどころか動いて笑う絵まであった。 興奮して家族に伝えようとも思ったが、この板は恐らく勇者の物だ。禁呪か何かの類かもしれないし、父親に取り上げられるかもしれないと思えば吹聴する訳にはいかない。  だからスマホのことはミオ一人の胸の中に閉まっておき、しばらく預かっていた。しかしその内どこを触っても板は真っ黒いまま反応しなくなってしまった。壊してしまったのである。 実際は壊れたのではなく単なるバッテリー切れだろうが、それを知ったところで電気もないこの世界では意味はない。(とにかくこれを返さないと……) スマートフォンをミオが持っている中で一番綺麗で見栄えがするハンカチで包むとトランクの一番安全そうな場所に入れる。  後日助けた青年が勇者と知った時はミオはとても誇らしかった。変わり者で能無しの自分でも勇者を助けられたのだと嬉しくなってしまったのである。  あの時はロクに会話も出来なかったが、触れた漆黒の髪のサラサラとした感触は覚えている。この世界では珍しい夜を思わせるような黒髪の艶やかさも覚えているし、荒々しい息遣いも発熱で熱く火照った勇者の体も。「……って何考えてるの私!」 あらぬところまで思い出してしまい一人で声を上げて赤面してしまう。しかし嫁になるのだからそう言うこともする
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第1話・勇者の嫁を強いられまして 4
 そして早朝である。自室を出てトランクを引き摺りながら玄関へ向かおうとしたミオの正面にメイド長のスーマがいた。「おはようございます、ミオお嬢様」「おはよう、スーマ」 体格の良いスーマはミオからトランクを預かるとひょいと片手で持ち上げた。「……ありがとう」「いいえ、このくらいさせてくださいな。全く急なお話で……お嬢様がいないと寂しくなります」 この家の中で彼女、スーマだけはミオに優しくしてくれた。その為ミオも実の親以上にスーマに懐いていた。「そう言ってくれるのはスーマだけよ」 苦笑いしながらそう答えるとスーマはトランクを運びながら気の毒そうな表情を向ける。「きっと良い事がありますから。ミオ様は心優しい方ですもの。きっと神様は見てくださいますよ」「そうかな……? そうだといいな」 スーマの素朴な優しさに満ちた言葉につい涙が出そうになり、ミオは慌てて作り笑いを浮かべた。昨夜の涙とは違う嬉し涙が出そうになったのである。「そうですとも」 スーマに優しい言葉をかけてもらいながら玄関へと到着する。緋色の絨毯が一面に敷かれた玄関の正面にはエヴェーレン家の紋章であるペガサスの彫像の飾られていた。 この玄関とも今日でお別れだ。「早いのね」 この家から離れられてせいせいする気持ちと、先行き不安な気持ちで内心揺れ動いていると、玄関に母が現れた。「おはようございますお母様」「ミオ、ちょっとこっちに来なさい」 母に手招きされてミオは素直に母に近寄る。「何ですかお母様?」「そんな眼鏡みっともないでしょう? 仮にもエヴェーレン家の長女なのだからみっともない格好で恥を晒さないで」 ポウッと柔らかな白い光に包まれると眼鏡越しの視界が突然歪んでしまう。 まさかと思い恐る恐る眼鏡を外すと、今まで以上に鮮明に世の中が見えた。 母の治癒魔法なんて、初めてかけてもらえた気がする。「そんな眼鏡もう捨ててしまいなさい。くだらない勉強なんかしてる女は男に嫌われてしまうのよ」「……はい」 母は母なりにミオの将来を案じてくれているのだ。 どんな時も女は男を立てて、黙って三歩後ろを歩く。男の機嫌をいつでも上向きにさせなければならず、女の喜びは男の金で着飾って美しくあること。良き妻であり母になること。 しかしどうしてもミオにはその生き方を羨ましいとは思えなかった。い
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第2話・幽霊島へ行きまして 1
 勇者のいる幽霊島には馬車で隣国の港まで向かい、そこなら船で行かなければいけない。 災厄と言われた赤竜が棲処にしていた幽霊島は北の果てにある。赤竜が居着くまでは元々海賊の根城になっていたとも言われているが、更にその前は死者の国とも呼ばれていたのだ。海で亡くなった死者の魂が島に行き着き、そして皆そこに住み着くと言う言い伝えがあった。 それが幽霊島の由来である。どこをとっても恐ろしい伝説しかなく、どう考えてもミオの胸中には不安しかない。 家を出て丸一日、馬車は何事もなく隣国イリーガルの港に到着した。そしてそこから船に乗ったミオは来る時にトランクに入れた幽霊島についての歴史が書いてあった本を荒波に揺られながら読み耽っていた。 貴族用の個室の船室を用意してもらえたのは有り難かったが、待遇としては島流しとほとんど変わらない。そもそも四月の雪解花が満開であるこの時期に、コートが必要なほど海上は寒い。幽霊島は更に北にあるのだからもっと寒いのだろう。 自分は本当にやっていけるのだろうか。 ミオの不安に比例して、さっきまでかろうじて晴れていた空がどんよりと曇っていく。風も時間が経つにつれて段々と強くなってきた。その風に煽られて波もどんどんと唸りを上げて荒々しさを増してくる。とてもじゃないか読書に集中できる状況ではなかった。(もしかして……これが本物の嵐の海……?) ミオの乗っている船は充分な大きさなのに、荒波はそれ以上に大きく、船はまるで小さな葉っぱのように右へ左へと大きく揺らされてしまう。「きゃあっ!」 冒険小説には付き物の嵐の海に遭遇していると言う感慨も多少はある。しかしそれ以前にその大きな揺れに立っていられずミオは客室でしゃがみ込んでしまう。 船の窓の外では、嵐波が絶え間なく船体をザブンザブンと容赦なく打ちつけてくる。その度に船は今にも転覆しそうに大きく揺れる。(もうやだ助けて……) 泣き言を言ったところで帰れる家はもうない。今頃家ではミオの結婚パーティと称したパーティの後片付けをしている頃だろう。主役の自分など必要ない。妹のエルフェさえいればあの家はそれで充分なのだ。 助けてくれる人もいない。心細さと惨めさと船が大きく揺れる気持ち悪さにまた涙が滲んできてしまう。「……っ頑張れミオ」 しかし溢れた涙は数粒で堪えた。ミオはハンカチでそっと涙を拭う
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第2話・幽霊島へ行きまして 2
海竜。 冒険小説の挿絵でしか見たことのない怪物が窓越しに存在していたのである。 巨大な海蛇の化け物、海竜が荒れた波の中でその巨躯をくねらせてこの船に遅いかかってきたのだ。 ドンッとまるで船が壊れたかと思うほど今まで一番大きな衝撃が船中に響く。 海竜が船に体当たりをしてきたのだ。「救命ボートを出します! 早く避難を!」 船員が廊下の向こうで切羽詰まった大声を張り上げている。 その船員の声にミオも慌てて着の身着のままで廊下の外に出た。船員達に促されて、甲板に出る間にも二度ほど海竜の体当たりによる大きな揺れに襲われる。 その揺れに耐えきれず、ミオは小柄な体を廊下のあちこちにぶつけてしまう。なんとか這うようにして甲板に出た時だ。「ひ……っ!」 ミオは思わず顔を引き攣らせて悲鳴を上げてしまう。船と同じくらいの大きさの海竜がマストにその長い体を巻き付けようとしていたのだ。「早くこっちへ!」 船員に促されるも濡れた甲板は滑りやすい。ましてこの嵐と海竜のせいでひっきりなしで大きく揺れ続けているのだ。ミオの体がよろめき、ついに甲板の上に転んでしまう。 べしゃりと膝を打つ痛みに遅れてドレスが海水に濡れていく。しかしそれよりも海竜に襲われるか、また揺れがあればそのまま甲板から海に転がり落ちてしまう可能性がある。 早く立たなければ、と焦るミオの頭上を黒い影が一つひゅっと横切った。「うおりゃあ!」 低い気合いの声に空を見上げた先にはマストに絡みつく海竜に飛びかかる一人の影があった。 人影、いやただの人ではない。全身肌が見えるはずの部分が美しいブルーグレーの毛皮に覆われている。そしてふさふさの尻尾が見えた。 獣人だ。一人の獣人が海竜に勇敢にも飛びかかっているのである。 獣人の勇ましい掛け声と共に獣人の身の丈もある大きな棍棒が振るわれる。その棍棒は海竜の脳天に吸い込まれるように落雷のような衝撃で叩きつけられた。 その衝撃に海竜は一瞬怯み、獣人から間合いを測ろうと頭をマストから離そうとする。しかしその隙を獣人は見逃さない。「でりゃああっ!」 海竜の身体を蹴って跳び、まるで宙を舞っているかのような身軽さで海竜に飛び掛かる。そして今度は海竜の凶悪な牙が生え揃ったその顎をも、その棍棒であろうことかそのまま上空へと吹き飛ばすように殴りつけた。 漆黒の巨躯はだ
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第2話・幽霊島へ行きまして 3
 その刹那凄まじい黄金の光線が一条、荒波を切り裂き、そしてそのまま巨大な海竜の身体をも真っ二つに斬ったのである。「は……?」 これにはミオどころか荒事に慣れているはずの船員たちでさえ呆気に取られてしまったようだ。 ただ一人獣人だけがふうと溜め息を吐く。「全くレイの奴、いいとこだけ奪っていくんだもんなー」 レイとはまさか勇者レイ・シュタインのことだろうか。確かにあの海竜を倒した光線はあの日城壁を破壊した光線にとてもよく似ていた。「おおい、海竜の回収は任せていいのか?」 獣人は甲板から身を乗り出して何言か会話を交わす。 そして、くるりと振り向くと今の今までずっと甲板でへたり込んでいたミオに肉球のついた手を差し伸べた。「大丈夫か?」 よく見れば獣人は女性らしい。ブルーグレーの艶やかな毛並みに覆われている為、遠目からではよく分からなかった。しかしこうして近付いてよく見てみると、快活な表情に彩られた柔和そうな顔立ちは狼型の女性のそれであった。 目を丸くしてそれからミオは礼を言いながら獣人の手を取った。「はい、ありがとうございます」「アンタの心配じゃないよ、こっちは積荷の心配をしていただけ」 ミオの礼にニヤリと狼の牙を見せて彼女は意地悪そうな笑みを浮かべた。返答に窮したミオは一瞬固まるが、すぐにアルマはプッと吹き出して破顔する。「なんてね、冗談だよ。あんたがフロード王国からの押しかけ女房ってやつかい?」 その人懐っこい狼の笑みにミオは彼女は恐い人ではなさそうだと内心安心した。「……私のことが分かるんですか?」 まさか彼女は勇者の関係者なのだろうか。 問いかけながらも、ミオは初めて魔物に襲われたことで動揺していた心をなんとか落ち着かせてじっと彼女を見つめる。 彼女の特徴はよく知っている気がする。 ブルーグレーの毛並みをした狼型の獣人。 そして勇者の関係者の女性。「あなたもしかして、アルマ……さん? 勇者レイ・シュタインのパーティの獣人アルマ?」 名前を思い出したミオはハッとした顔でそう問いかける。 その問いかけに彼女は少し意外そうな顔を見せた。「へぇアタシを知ってるの?」 肯定と取れる言い方にそれまで恐怖に蒼ざめていたミオの表情がパアッと明るくなる。「知ってます、女性なのに冒険者やってて、すっごく強くて竜もみんな棍棒と爪で
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第2話・幽霊島へ行きまして 4
 そうして数時間後、船は港とはけして呼べぬような簡素ないや粗末と言った方が相応しい船着場へと到着した。「……」 トランクを持って下船したミオは辺りを見渡し、その光景に困惑を隠せない表情を浮かべてしまう。 到着した幽霊島は「災厄」と呼ばれた赤竜が棲処としていた時と恐らくは全く変わらない様子で荒れ果てており、まさに未開の地そのものであった。上空は今にも雷雨が襲ってきそうな程曇った鉛色の空である。気温は低く吹きつける風も冷たい。何せ客船の中で引っ張り出した真冬用のコートを着ていても体の芯から凍えていきそうなのだ。 そして地上は赤竜の全身から放たれていたと言われる毒霧の影響だろうか草木一本生えない、まさに岩だらけの荒野であった。 そんな島の悲惨な様子にミオは先程微かに見えたような希望の光が消えてしまうような気がした。(一体こんなところにどうやって住んでいるの?)「何してんだ、下に行くぞ」 荷物が入った大きな木箱を二つ抱えたアルマに促されてミオは慌ててトランクを引き摺って着いていく。舗装もされていない道では引き摺るよりも持ち上げた方が早かった。 荒野の中でもまだ歩けるマシな獣道をスタスタと歩いていくアルマに暫くえっちらおっちらと追いかけていく。アルマがミオの棘鎧亀の如くノロマな歩みに合わせて歩いてくれているのが分かった。そうして歩いている内にやがて岩山の中に重厚な鉄門があるのが見えた。 門番に二人に見張られたやたら真新しくピカピカに磨かれた鉄の門である。アルマが声を掛けると門番たちがその錆一つない重たげな門を開いた。「わあっ……!」 門の中、洞窟の中へと連れていかれたミオはその広大さに思わず呆気に取られてしまう。 広大、なんてものではない。正にフロード王国の王都一つ分の面積の都市が丸々その洞窟の中に広がっていたのである。 洞窟都市である。 その雄大な光景をミオは興奮した面持ちで見渡す。 地上はどんよりと重々しく曇っていたのに洞窟は何故か明るい。地上よりも明るいのはどう言うことだろう。 所々に松明の灯りがあるが、それだけではこの明るさは説明できない。 ミオは洞窟の上を見る。 するとそこには空中を浮かぶ美しい巨大なクリスタルの城があった。 いや城と見まごうばかりの巨大なシャンデリアが下がっている。そのシャンデリアが太陽のように眩く輝き、洞
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第2話・幽霊島へ行きまして 5
 見知らぬ土地で一人きりになってしまった。 途端にそれまでのワクワク感が一気に萎れてその代わりに不安感で胸がいっぱいになってしまう。 異国の食べ物らしき不思議な匂いと、聞き慣れない生活音は今のミオには心細さを倍増させるだけである。「どうしよう……」 心細さのあまり頭を抱えてそう一人ごちた時であった。「お姉さん、困っているの?」 そう言って背後からミオの袖を引いたのは緑色の髪をサイドで二つに結んだ少女だ。 どことなく不思議な雰囲気をした十歳位の少女が人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてくる。「もしかして外の世界からきたの? 迷子?」 一瞬どう言おうか迷ったが取り繕っても始まらないためミオは正直に頷いた。「……そうみたい」「あはは、ダメな人だなー」 ミオの返答にケラケラと少女は快活そうに笑う。「勇者様にお会いしたいのだけど、勇者様のお家を教えてくれる?」「ゆうしゃー? あ、レイ様のこと? レイ様はねー海竜を倒しに行ったよ」「知ってるわ、海竜をやっつけるところ私見てたもの」 光線しか見てないけど、と言う事実は伏せてミオは少女に自慢げに告げる。「えーいいなー」 少女の予想以上に羨ましそうな顔にちょっと大人気なかったかなとミオは内心少し反省した。そして少女と目線を合わせるようにその場にしゃがみ込む。「私はミオって言うの。あなたの名前聞いてもいい?」「ピラートだよ」「ピラート。可愛い名前ね」「えへへ」 ピラートは屈託なく笑う。その無邪気さにミオもつられて微笑んだ時である。「どうしたピラート」 そう言ってミオたちの前に現れたのは体格の良い大人の男性である。男性はその若さの割に老人のように杖をついて歩いていた。片足を引き摺っている。平然とした表情や歩みの速さからして生まれつきか、古い怪我の後遺症なのかも知れない。「あっパパ! この人ミオさんって言って迷子なんだって!」「はは……こんにちは」 ピラートがパパと言うからには彼はピラートの父親なんだろうか。元から得意ではない愛想笑いをぎこちなく浮かべてミオは軽く彼に会釈する。「勇者様にお会いしたくてアルマ様と行動を共にしていたのですが、島の物珍しさにあちこち見回っている内にはぐれてしまって……」「なんだ、レイ様のお客か。大通りまで行けばすぐだが、ここらは道が入り組んでいるからな。
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