翔太の顔に、突如として赤い発疹が浮かび上がった。頬は火照り、息は荒く、身体は小刻みに痙攣している。今にも気を失いそうな様子だった。雅臣は慌てて翔太のもとへ駆け寄り、名を呼んだ。だが反応はない。すぐに呆然と立ち尽くす清子に怒鳴る。「救急車を呼べ!」清子はその声に我に返り、青ざめた顔で慌てて電話をかける。レストランの客たちも騒然とした。「アレルギー反応だ!すぐ処置しないと危ないぞ!」「救急車を待ってたら間に合わないかもしれない!」清子は涙に声を震わせる。「雅臣、どうすればいいの......?」雅臣は眉間に深い皺を刻み、唇を結ぶ。彼にとっても初めて見る症状だった。だが素人判断で翔太を動かすわけにもいかない。彼は鋭い視線を巡らせ、低い声で叫んだ。「医者はいないのか!誰でもいい、この子を救えるなら20億払う!」20億。その言葉に、場内は一斉にざわめいた。他人が言えば大げさな冗談で済まされたかもしれない。だが雅臣の佇まいからすれば、それが虚言でないことは誰の目にも明らかだった。大金の響きに釣られて、一人の男が前へ出た。「見せて!」雅臣の冷ややかな眼差しが突き刺さる。「助けられるのか?」一瞬ひるんだものの、男はすぐに気を取り直した。「私は医者だ」確かに彼は医師だった。だが専門は外科で、小児科ではない。それでも――20億の誘惑に勝てなかった。男は慌てて証明書を差し出す。「ほら、これが医師免許だ」雅臣は目を細め、それを確認すると少し表情を和らげた。男は翔太の容体を見て、心肺蘇生を行おうと身構える。その瞬間。「待って!」澄んだ女性の声が空気を裂いた。男は手を止め、驚いて振り返る。人垣を押し分け、星が駆け込んでくる。先ほど洗面所に立っていた彼女は、騒ぎに気づき、不安に駆られて駆けつけたのだった。そこに倒れているのが翔太だと知り、血の気が引く。さらに、見知らぬ医師が心肺蘇生を始めようとしているのを見て、慌てて声を上げた。清子が取り乱して叫ぶ。「星野さん、止めてどうするの!今は一刻を争うのよ!このままじゃ救急車が来る前に――」「星野さん、やらせて!この先生に救わせて!」星の瞳は氷のように冷た
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