翔太は、星とよく連絡を取っているだけじゃなく、仁志とも頻繁にやり取りしていた。仁志は、翔太が知る人たちの中でも――父親を除けば――間違いなく一番の万能人間だった。子どもはすごい人に憧れる。翔太も例外じゃない。仁志は翔太の顔を見るなり、楽しそうに笑って言った。「翔太さん。次は何で勝負しますか?」射撃じゃ勝てない。だから翔太は、乗馬で勝負を挑んだ。――結果は、完敗。その後もバスケットボール、フェンシング、ローラースケート……思いつく限り、次々と挑戦した。けれど、どれだけ頑張っても「仁志さん」には届かない。それなのに翔太は落ち込まなかった。むしろ宝物を見つけたみたいな顔で、嬉しくて仕方ないという表情をしている。仁志さんが本当に何でもできるなんて、そんなわけない。翔太は小さな顎をきゅっと上げ、誇らしげに宣言した。「仁志さん!今度はピアノで勝負する!」仁志さんは、たぶん生まれつき運動神経がいい。スポーツで勝負するのは分が悪い。でも――芸事ならどうだ。自分は星の息子だ。母の音楽の才能だって、きっと受け継いでいる。ピアノの先生も「この子は将来、音楽の道に進めば必ず名を成す」と言ってくれた。仁志は眉を上げ、あっさり頷いた。「いいですよ。ただ、しばらく弾いてないので指が鈍ってます。数日、練習させてください」驚いたのは翔太だけじゃない。星も思わず横目で見た。「仁志、ピアノも弾けるの?」仁志は淡々と答える。「子どもの頃、授業で少し。ほんのちょっとです」星は言葉を失った――授業で、って。今どきは園でも興味の授業があるところが多い。けれど自分たちの時代は、小学校から高校まで音楽や美術は「一応ある」程度で、扱いも軽かった。先生も本気で教えるというより、息抜きの時間みたいなものだった。それでも翔太は目を輝かせ、全力で崇拝している。「仁志さん、すごい!ピアノまでできるなんて!できないことってあるの?」仁志は笑った。「僕にできないことがあるなら、翔太さんが見つけてください」その光景を隣で見ていた雅臣は、胸の奥がざらついた。星と仁志と翔太――三人で笑い合う姿は、まるで本当の家族みたいで。そこに自分だけが入り込めない。翔太が仁志を慕っているのも、雅臣にははっきり分かった。清子を「好き」と言っていた
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