理久とクロは、理久の世界、すっかり夜になった東京の、理久とクロの世界を繋ぐ扉のある公園の中の木の前に戻ってきた。 二人の回りを、キラキラ輝く、異世界転移の魔法の粒子がまだ舞っている。 理久とクロは、まだ抱き合ったまま、唇同士を重ねていた。 クロは、突発的に理久に付いて来たので獣人のままだ。 人と同じ体に下半身に尻尾、頭に犬耳がついたまま。 理久の世界の人間にこの獣人のクロを見られるのは危険だ。 しかし、理久とクロの唇は、角度を変えて何度も互いに求め合う。 止まらない。 そして、クロの腕が尚一層強く理久を抱いた。 理久はその力に、キスしたまま甘い吐息を漏らした。 だがそこに突然、クロが背後に何かの気配を感じ、ハッとして理久から唇を離した。「どうしたの?クロ」 理久が怪訝そうに尋ねた。「いや……何でも無い」 クロは、理久の背中に腕を回したままニコリとしたが、内心穏やかでは無かった。 確かに何かがいて、すぐ気配が消えた気がしたのだ。 まさかクロの世界の何かが偶然クロ達に付いて理久の世界に来ていたとしたら、とんでもない事だった。 それでもクロは、理久を心配させたく無かった。 そこに、理久がクロを見詰めてシュンとして呟いた。「クロ……ごめん。やっぱり俺に付いて来なくちゃいけなくなって」 クロは、クロを見上げる理久の左頬に、クロの右手の平を添えた。「大丈夫だ、理久。やはり俺が理久の両親にちゃんと会って理久との結婚を許してもらうべきだし……それに……」「それに?……」 理久は、少し首を傾げた。「それに……今離れたら、もう二度と理久と会えない気がした」 そう言い、クロは理久を強く抱き締めた。 理久は驚いた。 クロが、理久と全く同じ事を考えていたからだ。 そして、それが不思議だった。「クロ……」 でも理久はそれ以上何も言わず、クロの逞しい体を抱き締め返した。 クロは、尻尾と頭の犬耳を隠し人間に扮した。 理久の方は、たった1日理久の世界を離れてただけだ。 しかし、まるで何十年ぶりに帰ってきた感覚だ。 公園内は、所々に電灯があるだけでかなり暗い。 その中を、理久とクロは手を繋ぎ理久の家へ急ぐ。 だが理久は、隣にいるクロが握ってくる手の確かな温もりを感じているのに、何故か犬のクロをこの公園で何日も何日も探し回り泣い
Última actualización : 2025-10-17 Leer más