All Chapters of 愛した男が黒幕でした。: Chapter 11 - Chapter 20

26 Chapters

11.僕にできることなら、何でもします⋯⋯。(キース視点)

 魔法学校の校長はしたくてやりたい仕事ではなかった。 僕、キースの両親は魔法の力を持った魔族だった。 僕たち魔族が住んでいた集落は、僕を残してマサス王国により全滅させられた。 僕たちには魔法が使えない時間があり、その秘密がマサス王国の間者に漏れていたのが原因だ。 捕らえられた両親は、俺の目の前で血を生き絶えるまで採取された。 絶望の淵にいた5歳だった僕の前に現れたのは、先代のマサス国王陛下だ。「余は我々を辱めた大陸に一泡蒸すことを考えている。キース、お前を息子のように扱うと誓う。余の大陸侵略に力を貸せ」 そう言った彼は両親を失った僕が、彼の提案に飛びつくと考えていた。 僕が選ばれたのは、村で1番幼かったからだ。 まだ、子供で庇護する相手が必要な子供を拐かすなどわけないことだと思われていたのだ。 僕は魔法の力で人の心が読めた。 そのため、彼の心を読むと建前とは違う醜悪な考えを持っていることが分かってしまっていた。 それでも、生きる為には気付かないフリ、愚かなフリも必要だと思った。 「僕にできることなら、何でもします⋯⋯」 いつか復讐してやるという気持ちを隠しながら、僕はマサス王国の魔法研究をすることになった。 レオナルド・マサスの治世になると、魔法研究と、魔法使いの訓練所として魔法学校が創設された。 地下に秘密裏に創設された設備には、薬で誕生した魔法使いが集められた。 魔法使いと人間は根本的な遺伝子構造が違う。 それゆえに、オーダーされた魔法の力がつく薬を作っても摂取した人間のおよそ9割は拒否反応で死んだ。 上位の魔法を得る薬程、死亡率は高くなった。 副作用として、薬で誕生した魔法使いは魔法の力を1人だけに分けることができた。 でも、その不思議な副作用も含めて、まだ謎の多い薬を人に使う事に僕は反対だった。「9割が死ぬ薬など使えません」 僕はレオナルド国王陛下に進言した。 僕は魔法の力でレオナルド国王陛下の心を読んだ。
last updateLast Updated : 2025-06-17
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12.こんな楽しいのは初めてだ⋯⋯。(キース視点)

「ルカリエ様、聞いていたより賢くない方ですね」 思わず、僕の本音が出てしまった。 彼女は聡明な絶世の美女ということになっているが、僕の前では本音を曝け出し過ぎて危なっかしい。 もう少し、慎重にならないと敵はどこに潜んでいるか分からない。 僕がマサス王国に対して反逆心を持っているから問題になっていないが、他の人の前で王妃が国王から逃げたい等と言ったら大変なことになる。 後で自分の発言を顧みたときに、彼女が怯えないように僕は自分は反逆心があることを告白した。「私のことは好き⋯⋯?」「好きですよ。僕と共犯者になりましょう」 彼女が怯えながら言ってきた言葉に、僕は同情した。 結局彼女は男を味方につける方法を1つしか知らない。 僕は国王陛下が、魅了の力を手に入れたモリアをスグラ王国に派遣して強引にルカリエを奪った事実を知っている。 魅了の力は魔法の中でも上位の力で、モリアが力を手に入れるまで54人の女が死んだ。 国王陛下はルカリエを手に入れた今はハーレムを解散しているが、彼女を手に入れるまではハーレムを持っていた。 陛下はルカリエを想っても、手に入れられない自分の欲望をを発散する場所として用意していたのだ。 極寒の地で貧困にあえぐ、女たちは皆働き先としてハーレムに入りたがった。 陛下が選ぶ女は、皆どこかルカリエに似ている美しい女ばかりだった。 ハーレムの女たちに魅了の力を得る魔法薬を飲ましたが、力を得られず女たちは死んでいった。 そこで、目をつけられたのが、モリアだった。 モリアの双子の妹であるカリナが既に、魔法の中でも上位の力である治癒能力を得ていたからだ。 モリアとカリナは双子として生まれたが、彼女らの親は2人も育てられないと1人を選んだ。 魔法学校は学校とは名ばかりで、侵略のため作られた軍の訓練機関だ。 それゆえ、学費は免除されて給与が出る。 彼女らの親は妹のカリナに魔法の薬を飲ませることを志願した。 カリナが生きて魔法の力を手に入れられれば、金が定期で
last updateLast Updated : 2025-06-18
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13.ここは世界から捨てられた人間が来るところ。(カリナ視点)

 私、カリナは物心つく前に、魔法学校に来た。 魔法の薬によって治癒の力を得られたからだ。 この魔法学校はマサス王国の大陸侵略の為に創設されたものだという噂がある。 私たちは魔法をコントロールする訓練をしたり、戦闘演習をして過ごしている。 地下の魔法学校には、1通り娯楽設備もあり、買い物するところもある。 私たちは来るべき時まで地上に出ることは許されないらしい。 魔法の薬で手に入れた魔力は暴発することがあり、地上の人を危険に晒すことがあるらしいのだ。 私は給与の半分以上を、地上の両親に仕送りしている。 いつも手紙を書いているけれど、忙しいのか1度も返事があったことはない。(私の魔法は治癒能力だから暴発しても、危なくないから地上に出たい⋯⋯)「自己紹介させてください! 今日から、魔法学校に入学しましたルカリエと申します。ルカって呼んでください。これから、皆さんと協力をして魔法を学んだり、時には恋とかしたりして学校生活を楽しみたいと思います」 見たこともないような綺麗な女の子が、煌びやかなドレスを着てやってきた。 ルカリエみたいな子が来るようなことは初めてだ。 そして、魔法学校で恋をしたいなどと言うバカな子も見たことがない。(美人だけど、頭が悪くて捨てられちゃったのかしら⋯⋯) それに、ここにくる人間は皆死を覚悟しながら魔法の薬を飲んで力を勝ち取った人間だ。 もっと覚悟が決まった面持ちをしながら入学してくるのに、ルカリエは明らかに学校生活が楽しみで仕方ないと言った顔をしている。 私は物心つく前に魔法の薬を飲んだから、恐怖はなかった。 しかし、地上で貧困により追い詰められた大人がやってくることがあった。 その大人の1人が、「ここは世界から捨てられた人間が来るところ」と言ったのだ。 それは、ここの魔法学校にいる人間は薄々気づいていていたところだった。(私は、両親から捨てられた訳じゃないはず⋯⋯手紙もいつか返事くるよね) 校長先生が、笑いながらルカリエをフォ
last updateLast Updated : 2025-06-19
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14.僕が君に化けて陛下に抱かれるよ。(キース視点)

 僕はルカリエの力が、国王陛下から与えられたものだと知っている。 彼女の魔法の力は分け与えられたものなので、人に分ける事はできない。 彼女は魔女としてスグラ王国で迫害された事まで、国王陛下の陰謀だと知ったらどう思うだろうか。 耐えられるのだろうか⋯⋯そんな男に今晩も好きなようにされることを。 そして、火の魔力を自らの命を危険にさらしながら得て、ルカリエに分けた事に快感を覚えている変態国王を怒らせることが起きてしまった。 カリナという別の人間の魔力が、ルカリエに注がれてしまったのだ。 ルカリエに対する過剰な独占欲と執着を持つ陛下がこれを許せるはずない。「ルカリエ、君はまず人に魔法を分け与える事より、魔法のコントロールを覚えた方が良い」「校長先生、ルカリエは火の魔法が使えるんですか?」 カリナなの当然の疑問に、どう答えたら良いのだろうか。 魔法の力を持った者は地下に閉じ込められているのに、国王陛下は地上で自由にしている。 氷の大地で貴重な力となる火の魔法を、陛下は身につけ寵愛する女ルカリエに分け与えている。(言えない⋯⋯ルカリエにも⋯⋯魔法学校のみんなにも)「私、多分、魔女の血を引いているんじゃないかと⋯⋯」 ルカリエの言葉に周りがどよめいている。 当然だ、僕を残して魔族は25年前に全滅している事はここにいるみんなが知っている。 周囲の思考を読むと、ルカリエが顔が良いだけの変な子と考え出したのが分かった。 真実を教えると、国王陛下だけ魔法が使えるのに地上生活を許されていることと、ルカリエが王妃であることがバレてしまう。 (ルカリエは友達を欲しがっている⋯⋯変な子扱いも王妃扱いもマイナスだ⋯⋯) 「ルカちゃん、めちゃ綺麗ね。俺と付き合おうよ。恋がしたいんでしょ」 俺が考えあぐねてたところに現れたのは、マリオ・キルギスだった。 この魔法学校では珍しい貴族出身者で、自ら志願してここにきた人間だ。 アイスグレーの髪にアイスブルーの
last updateLast Updated : 2025-06-20
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15.私、女の子の友達ができたの初めて!

 キースは仕事があるようで教室から去ってしまった。 そのことが少し寂しく感じる自分がいて、やはり自分は彼に惹かれていると再確認した。 先程の自己紹介の時も、きっと私はうまくやれなかったのに彼が助けてくれた。 私のことを優しい見守るような目で見てくれるのも、彼が初めてかもしれない。  キースは私の代わりに陛下に抱かれても良いと言っていた。 それは、彼が女だけでなく男もいけるということを示していた。 私は彼のことを好きになると、恋のライバルが女だけでないことを知った。(私に口づけしたし、嫌われている訳じゃないよね⋯⋯) 「ねえ、カリナ様、今の授業時間は先生はいないんですか?」 「今は、自習時間。魔法のコントロールを教えているレイリン先生が体調不良なんだ⋯⋯それより、ルカ! 私は友達だから敬語は禁止! 校長先生にタメ口なのに、なんで私には敬語なのよ」 カリナが楽しそうに笑っている。 そういえば、彼女は私と友達になってくれると言っていた。  「カリナ! 嬉しい! 私、女の子の友達ができたの初めて!」 私がそう言うと彼女は笑顔で微笑んでくれた。 「じゃあ、ルカちゃん。俺も友達からはじめよっかな。君と俺って相性良いと思うよ。俺のこともマリオって呼び捨てにして、敬語も禁止で」 マリオが口説きモードを封印し、握手をしようと手を出してくる。 友達からはじめて何を目指しているのかは不明だ。 相性が良いと言うのは、火の魔法が暴発しても消化してくれると言うことだろう。 (私は魔法を狙って出したことはないわ⋯⋯そもそも、あの時の炎を自分で出した自覚もない)  「マリオ! 宜しくね。魔法のコントロールが実は全然できないの。怒ったりした時に、ブワって火が出ちゃう感じで」 私がマリオの握手しながら言った言葉に急に周りが騒ぎ出した。 「ルカちゃん⋯⋯ここ、地下なんだよね。ブワってされると流石に火のまわりが早いと思うんだ。俺も対応できるか不明だから、治癒魔法のコントロールから練習し
last updateLast Updated : 2025-06-21
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16.俺は君しかいらないんだ。

「ルカリエ王妃殿下、国王陛下がいらっしゃいます」 私は寝室で、侍女に髪をとかれながらレオを迎える準備をする。 昨晩は彼を愛していると思って、彼を幸せな気持ちで受け入れた。 しかし、私を陥れて手に入れようとしたという真実を知り彼への想いは消えた。 それどころか、今、私が気になっているのはキースだ。 そのせいか、レオを受け入れるのがとてもじゃないけど出来そうにない。 処刑台に送られるのと変わらない絶望的な気持ちになってくる。 ノックと共に、レオが寝室に入ってきて侍女が頭を下げて下がった。「ルカ! 会いたくて気が狂いそうだったよ」 私を強く抱きしめてくるレオに寒気がしてしまった。 黒髪に黒い瞳で色気のある彼は、とても美しい。 まずは、彼の見た目から好きになったはずだった。 それなのに、今はその姿を見るのも不快になっている。(私の幸せを願ってもくれない人と一緒にいるのは嫌⋯⋯) それでも、私は彼の庇護のもとでないと生きられないと分かっていた。 私がレオに対する拒絶反応が出ると分かって、キースは代わりになろうかと言ったのだ。(やっぱり、キースが好き⋯⋯私のことを心配してくれる彼が⋯⋯)「レオ⋯⋯今日は気分が悪いから1人になりたいの」「魔法学校になんて行ったからだろう。あそこは、臭い平民ばかりだから⋯⋯」 私の髪を愛おしそう撫でながら、紡いでくるレオの言葉は受け入れられなかった。 平民とか、貴族とか、美しいとか、醜いとか、なんの意味もない。 私はスグラ王国で全てを奪われて以来、身分など何の意味もないと感じるようになっていた。 そんな意味もないことを当たり前のように語る、レオにがっかりだ。 「レオ、側室を迎えたらどお?」 私は彼の相手をする気に到底なれなかった。 スグラ王国は一夫一妻制だったが、マサス王国は一夫多妻制だったはずだ。「君以外、女に見えない俺になんでそんな残酷なことを言うの? 魔法学校で何
last updateLast Updated : 2025-06-22
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17.本当にクリスにとっての悪女になってやろう。

「クリス、そんな目で見ないで。私はマサス国王の妻よ」 私の言葉にクリスは苦い顔をした。「彼に汚されてしまったこと、俺は一生かけて忘れようと思う。君はまだ綺麗だよ。ルカリエ⋯⋯」 クリスの返しは想像もつかないものだった。「私が汚されたって⋯⋯そうね⋯⋯モリア・クーナはどうしたの?」 私はクリスに捨てられてから、生きるのに精一杯だった。 その結果をあっさり彼は、「汚された」で片付けようとしている。「モリア⋯⋯あの、詐欺師か⋯⋯アレが子供を産んだら洗脳が解けたんだ。全く、酷い目にあったよ。ルカリエ⋯⋯離れてくなんて酷いじゃないか」 クリスは洗脳されていたと言う間のことを、どこまで覚えているのだろうか。 私を足蹴にして追い詰めた記憶まであったら、こんな被害者ヅラできないはずだ。 しかし、そんな事聞くのも面倒な程、私はクリスの愛に興味は無くなっていた。「モリアはあなたが私を捨ててまで、ご執心だった子じゃない。彼女、子供を産んだんだ。ゆくゆくは国王になる、あなたの大切な子ね」 モリアを詐欺師呼ばわりしたと言うことは、クリスが彼女を罪人扱いしているのは確かだ。 彼女の子であり、スグラ王族の血を引いている名も知らぬ子の行方が気になった。 私はボロギレを着ている幼い子を中心に形成された魔法学校を思い出していた。 彼らがどこから来たのかはわからないけれど、自分の意思で行き先を選べる年ではない。 そして、モリアとクリスの子も意思もはっきりせぬまま政治の為、道具のように扱われているのではないかと気になった。(まあ、王族の血を引いてるし丁重に扱われてるわよね)「洗脳されてた俺自身が1番傷ついているのに酷いこと言うんだな。ルカリエ⋯⋯君以外の女なんて、どうでも良いよ」 クリスと私は今までプラトニックな関係だった。 それなのに、クリスは今、焦ったように私に口づけをしようとしてきた。 私は自分の口を手で塞ぎ、それを避ける。「やめて⋯⋯クリス、私以外の女どうでも良いって言うなら、私もそのどうでも良い
last updateLast Updated : 2025-06-23
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18.私の気持ちを読んでよ。

「別れさせるって、どうやって?」「雪解けが来たら、大軍でマサス王国ごと潰してやる。モリアが拷問で吐いたんだが、全てはマサス国王の企みだったんだ」 私は、モリアはレオの命令でクリスに魅了の魔法を使ったと聞いたことを思い出した。 (モリアも生きる為に必死だったんだ⋯⋯私と同じだ) 私は、モリアには沢山嫌なことをされた。 しかし、彼女の境遇を考えると急に居た堪れない気持ちになった。 王命に従い彼女は好きでもない男の子供まで産んでいる。(そんなこと、私にもできないわ⋯⋯でも、王命に逆らえる訳ないよ)  その上、今は我が子を取り上げられ、拷問まで受けているのだ。 本当に、身分とは何なのだろうか。 身分が高く生まれただけで、クリスもレオも女をモノのように扱っている。 今、私に愛を語る2人も、私を所有物のように扱っているだけで私の幸せを願っていない。 ガゴン! 船が凄い勢いで揺れて、クリスに咄嗟に抱きしめられた。 私を守る為の彼の行動なのに、彼の高めの体温さえも気色悪く感じる。(本当に私、クリスが嫌いになってるんだ⋯⋯)「失礼します。船が氷山に衝突しました。船が浸水し始めています」 ノックもなく入ってきたスグラ王国の騎士から伝えられた言葉に私は震えた。「すぐに、周辺の島国に救援要請を出せ! 大丈夫だよルカリエ⋯⋯しばらく、島暮らしで不自由をかけると思うけど」 クリスはこんな時も落ち着いている。 彼は冷たい海がどれだけ怖いか知らないのだろう。 私は、マサス王国に住んで冷たい海に入ると1分も持たずに人が死ぬことを知った。 ガゴン! また、大きな音がなった。 別の箇所も氷山に衝突したのではないだろうか。 浸水のスピードが早くなりそうだ。「私、こんなところで死にたくない!」 私はクリスを突き飛ばして部屋の外に出た。 クリスは驚いた顔をしていたけれど、彼は自分が死ぬことなんて想像
last updateLast Updated : 2025-06-24
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19.あったかいお風呂って天国ね。(キース視点)

「ルカリエがスグラ王国の奴らに誘拐された! 探し出せ!」 ルカリエが全てのマサス国王陛下の言葉に、俺は彼女に同情した。 彼女はおそらく狂気の愛を持った陛下の側を離れる方が幸せだ。 スグラ王国のクリス・スグラに脱獄され、ルカリエが消えた今国王陛下は必死だ。 彼は自分が彼女を求めるばかりで、1度も彼女の心に身を寄せたことがない。  彼女は国王陛下のせいで、魔女と迫害され故郷を追われ生きてる心地もしない日々を過ごした。 彼女の不安な気持ちを利用して、自分に心酔させることだけを考えている国王陛下はクズだ。 しかし、この時期のマサス王国近海は氷山に囲まれてて危険だ。 そんな危険な中、出航したスグラ王国の船に乗せられたルカリエが心配になった。  僕はルカリエが幸せであれば、彼女の隣に誰がいようとどうでも良い。 一見、誰からも羨まれる彼女の人生の記憶を読む程、全く幸せに見えなかった。 彼女が出会ったばかりの気を遣わない、俺に想いを寄せてしまうのも仕方がないことに思えた。 スグラ王国時代は周囲からクリス王太子を愛することを強制され、彼に疑問を感じても必死に媚を売っていた。 マサス王国に来てからは、生きる為に少しでも自分の気持ちを安定させるようと必死にマサス国王を愛そうとした。 彼女の綱渡りのような人生も、一瞬も幸せを感じていない不安定な心も誰も理解していない。 ルカリエは本当はささやかな幸せを願う女の子だ。 そんな彼女がまた碌でもない男に振り回されていて、僕は反逆計画を忘れ彼女を助けたいと思ってしまっていた。 真夜中に近海の海をひたすらルカリエを探した。 真っ赤な炎に包まれる、船上にいるルカリエを見た。  ルカリエは火の魔法で海の温度を上げて沈没に備えていた。 緊急時なのに、落ち着いて考え対策をしている彼女が愛おしかった。 そんな彼女を魔女だと非難するスグラ王国の人間を焼き殺したくなった。 ルカリエの手段は彼女が必死で自分のできる
last updateLast Updated : 2025-06-25
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20.男が女に服をプレゼントする意味をキースも知っているのかな⋯⋯。

「ねえ、こういう服がキースは好きなの?」 私は彼がお風呂上がりに用意してくれたブルーのワンピースを着ていた。 生地がふわふわしていて、雪国仕様になっていて温かい。 彼が私に服を用意してくれたのが嬉しい。(男が女に服をプレゼントする意味をキースも知っているのかな⋯⋯ドキドキ)「好きも何も、僕たち魔法使いは姿形をいくらでも変えられるから美醜に興味はないんだ」 キースの言葉に、私の中の色々なものが崩れ去っていく気がした。 (私の価値って美しさ以外何があるの?) 昔から見た目ばかり褒められてきた。 私よりも才能があったり、商売で成功しているような優秀な子はいる。 私は自分に見た目しか取り柄がないと知っている。 魔法使いであるキースは見た目に興味がないという。(彼が私に口づけしてくれたのは、同情だ⋯⋯)「そうなんだ、じゃあ、キースを好きな子はオシャレしても意味ないね⋯⋯それより、キースは私がどうして魔法が使えるか知っていたりする?」 私はどうしたら私のような見た目だけの女が彼から思われるかを考えた。(私が魔女の血を引いてたら、彼と繋がりが深いってことだよね) 「君の魔力は、国王陛下から君に分けられたものだ。カリナが君に治癒の魔力を分けたのと一緒だ」 キースの言葉に私はスグラ王国時代、レオと一度ダンスを踊ったことを思い出した。 その時に体に熱い何かが流れ込んでくる不思議な感覚があった。 私が魔女として迫害を受けたのも、レオの仕業だったと言うことだ。 私はとんでもない男に自分の体を捧げていた。(こんな私、キースは軽蔑しているかな⋯⋯) 「私ね、いつも赤い炎が出てたのに、処刑前だけ黒い炎が出たの。それは、なぜだかかわかる?」 私は、震える声を振り絞りながら尋ねた。「黒い炎は国王陛下が出したものだよ⋯⋯」 私から目を逸らしながらキースが言った言葉に、私は怒りと悲しみで気が狂いそうになった。 私が処刑される直前に黒
last updateLast Updated : 2025-06-26
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