LOGINルカリエ・セリアはスグラ王国の侯爵令嬢でクリス王太子の寵愛を一身に受けていた。しかし、突然現れた謎の男爵令嬢モリアにクリスは夢中になる。モリアの懐妊の知らせと共に、ルカリエは婚約を破棄するよう王家から要求される。絶体絶命な場面に現れたのはマサス王国の王レオナルドだった。彼は彼女の地位も名誉も回復して、彼女を妃とした。しかし、初夜の翌日、寝室に突撃してきたクリスは自分は洗脳されていて愛しているのはルカリエだと主張する。
View More「マサス国王陛下が身罷られました。私、ルカリエ・マサスは国王陛下の代理としてここに宣言します。これより、マサス王国は王政を廃止し共和制へと移行します」 私はスグラ王国一向を追い返すと、早速、国民へ向けて演説をした。 低く太く威厳を感じさせる声を出す訓練は、スグラ王国の妃教育で身につけたものだ。 でも、この声を使うのもこれで最後だ。 この国は、身分制度のない全ての人が平等な国にする。 合図を送って地上に出てきた、魔法使いたちが驚きの顔で私を見ている。 カリナ以外誰も私が王妃だとは知らなかったからだ。 しかし、王妃でいるのもこれでお終いだ。「国の代表は選挙で選ぶこととなります。全てのことは相談し決めていきます。マサス王国は氷の大地ですが、その住みにくい大地を住みやすものにする為に私たちは魔法研究をしてきました。国の為、影ながら努力し続けてくれた、魔法使いたちの成果を見てください」 私の隣にいるキースが魔法の力で氷を溶かし、草を生やし一面の大地を緑にした。 魔法学校で学んだ子達が、その植物を成長させる。 一斉に拍手が巻き起こる。「マサス王国は魔法を使って、これからより良い国作りをします」 演説が終わると、魔法学校のみんなに囲まれた。「ルカって王妃だったの?」 「そうだけど、私はもう王妃じゃないよ」「ルカちゃん、あんな男みたいな野太い声が出すんだね」 マリオの空気の読めない質問に癒される。「そうだよ。私の一部だけ知って、全てを知った気分にならないでね」 私は色々な自分を持っている。 本当は自然体の私だけでいたい。「これから、みんな魔法省の職員になるんだからね」 この国の根幹をつくる魔法省の人間の待遇は手厚い。 今まで窮屈な思いをしてきた彼らが、思う存分自分の人生を過ごせるようにしたい「カリナ! 最近お金も送ってこないから心配してたよ」 近づいてきたピンク髪の2人は、カリナの両親だろう。 彼らはカリナを捨
「嘘だろ⋯⋯ルカ⋯⋯お前は誰だ」 赤い炎に囲まれて、レオが私に化けたモリアの首を絞めた。「ああ、好きです⋯⋯このまま、あなたの想いのままにしてください」 恍惚とした表情を浮かべた私の姿もモリアがレオに囁いている。「あなたの事が好きな女で、ルカリエの姿をしていたら誰でも良いんでしょ⋯⋯彼女で良いじゃない」 私は思わず予定にない言葉を口走っていた。 私のその言葉がレオの逆鱗に触れたようだ。「俺が唯一愛しているのはルカリエだ! 君こそが俺の唯一の女神だ! 俺のこの体を君の炎で焼き尽くすことで証明してやる! 俺の炎と混ざり合い君は俺と永遠に愛し合うんだ!」 狂ったように叫ぶレオの言葉と同時に黒い炎がレオを取り巻く。「陛下⋯⋯レオ様⋯⋯私も一緒に⋯⋯愛してます」 私に化けたモリアは、レオに飛びついた。「偽物だなんて薄々感じていたよ⋯⋯それでも、ルカリエ、君を抱いていたかった⋯⋯」 レオは自分の出した黒い炎と共に、モリアと消し炭になった。 本当にレオは偽物だと気が付いていたのか、負け惜しみなのかはどうでも良い。 これは、私が全く予想していないことだった。 スグラ王国の力を使い、クリスにレオと別れさせて貰うつもりだった。(レオの愛が分からない⋯⋯スープ1つでなんなのよ⋯⋯)「ルカリエ⋯⋯図々しくも君に想いを寄せた男が消えたね。これで、晴れて俺たちは一緒になれる」 私を後ろから愛おしそうに抱きしめてくるクリスを追い払うにはどうしたら良いだろう。 レオを失脚させ、魔法学校の子たちを自由にした後は私はマサス王国をキースに任せてここを去るつもりだった。 本当に好きな人を見つけ、自由を知ったら到底そんな事はできない。 私は彼の腰から剣を抜いて、思いっきり自分の腹に刺した。 クリスが驚愕の表情で見ているが、彼は私がどれだけ彼から離れたいと長年思っていたか気付いていなかったのだろう。 思えば、彼と婚約した時から私は自己中心的で偉そうな彼が嫌いだった。
「モリアはマサス国王の企みで魅了の力をつけたんでしょ。多分、私も何か飲まされたんだと思う。でも、クリスの役にたつ力が使えるようになったのよ」 私はクリスの胸に手を当て、治癒の魔力を使った。「なんか、すごく温かくて力がみなぎる気がする」「結婚したら、毎晩、元気にしてあげられるね」 私が言った言葉に、クリスは頬を染め目を輝かせた。 金髪碧眼の美しい王子様のクリス⋯⋯私は彼のことも外見から好きになる努力をした。 内面は知れば知るほど、私をがっかりさせるものが多く見ないようにした。 (私が初めて内面を見る程に好きになっていったのが、キースなんだわ) 誰といてもキースのことを考えてしまうのだから、私が彼のことを好きなのは明白だ。 こんな気持ちで他の誰かとなんて一緒にいられる訳がない。 だから、私は私に執着するクリスとレオを自分から切り離すつもりだ。「私は今、公的にはマサス国王の妻なんだよ。正式にクリスの妻になりたい」「なれるよ。君とマサス国王は白い結婚なんだから、俺がなんとかする」 私はクリスの言葉に微笑んで、彼の頬に軽く口づけをした。 やりたくないけれど、彼の頭をピンク色に染め正常な判断能力を失わせる為に必要だ。「そう言うことは、正式に結婚するまで我慢だよ。ルカリエ!」「はーい!」「じゃあ、騎士たちには武器を下ろさせて、こんな武装してたら向こうから攻撃してくるわよ。戦いもせず、私を取り返した方がクリスの評価が上がるわ。だって、今はモリアの子がいるんでしょ」 私は悲しそうな顔でクリスを見つめた。 モリアの子、アンドレは魅了の魔力を持っている。 おそらく、その力により周りの人間には好意的に見られているだろう。 そしてクリスは唯一の王位継承権を持った者として立太子しているが、敵は多い。 クリスを扱い辛いと思っている貴族は、アンドレを次期国王にできないか画策しているだろう。「俺は本当に君を苦しめたのに⋯⋯君は俺のために悩んでくれるんだな」 私を愛おし
あれから、半年。 私たちは魔法の特訓を重ねた。 その魔法の特訓は今までのような戦いの為の特訓ではない。 飛行能力で種を蒔いたり、植物を育てる能力で畑作りをしたり、氷の能力で食材を冷やしたり生活する特訓をした。 レオはモリアが私に化けている事に気がついていないようだった。 私は気の置けない仲間と幸せな時間を過ごしていた。 そして、運命の日が来た。 私たち、魔法学校に出動命令が出たのだ。 理由はスグラ王国が大軍を連れて、ルカリエ王妃を奪還に来たからだ。 キースの話だと、再三スグラ王国はルカリエ王妃の返還を要請しなかったがレオが応じなかったらしい。 「私たちは自分たちの自由を勝ち取る為に戦うのよ」「オー!」 地下の広場に集めた魔法学校の学生を鼓舞する。 私は魔法学校の子たちが戦うのは最終手段だと思っている。 でも、今日は地下と地上を繋ぐゲートが開く。 魔法学校の生徒全員が外に出られるのだ。「カリナ、伝えた通り、私たちが攻撃として魔法を使うのは最終手段。私たちの魔法はマサス王家を滅ぼしてから自分たちの国を創るのに使うのよ」「ルカ⋯⋯いや、ルカリエ王妃殿下なんだよね」「私はルカだよ! 数時間後にはマサス王家を倒してこの国は共和制にする。王族が支配するのではなく、国家の全てを話し合ってみんなで決めるの」 私は自分の正体をカリナだけには明かした。 彼女の双子の姉モリアの存在は明かしていない。 ただ、今は替え玉がルカリエ・マサスとして国王陛下に付き添っていると言うことを話している。 私は誰も血を流すことなく、自分たちの自由を勝ち取りたいと思っていた。 ここにいる子たちは幼い子が大半だ。 そんな子たちが戦う必要はない。 戦う責任があるとしたら、この国に責任がある王妃の私だ。「みんなは、合図があるまでここで待機だよ。怖がらないで大丈夫。地上に出た時は、戦いなんて終わって平和が待ってるかもしれない