「俺は、お前を守りたい」 その言葉に、胸がきゅっと締まる。でも、これは契約。だから心配してくれる。「蓮司…どうして契約妻にそこまで優しくしてくれるのですか?」 思わず聞いてみた。彼の本心が知りたい。 ドクドクと心が高鳴っている。なんて言われるのかな。変に聞かなきゃよかったかも…。「契約だからといって、ひかりが傷つくのを見過ごせない。それだけだ」 腕の力が少しゆるんで、私は振り返ることができた。蓮司の顔がすぐそこにある。こんなに広い家なのに、その距離は驚くほど近い。 でも、触れても、それは幻。 本気にしちゃいけない。「契約でも夫婦なんだから、妻を大切にするのは悪いことじゃない。それに、契約違反になるようなことはなにもしていないつもりだが」 その言葉に思わず笑ってしまう。仕事人間の蓮司らしいし、理不尽な目に遭った私に寄り添ってくれたんだね。「はい…ありがとうございます」「体は温まったか?」「はい、もう大丈夫です」 そう言うと彼はゆっくりと腕を離した。でも完全に離れるのではなく、私の肩にそっと手を置いて。「今日はもう休め。俺が片づけておくから」「でも…」「手を大事にしろって言っただろ」「分かりました。お先に失礼します」「おやすみ、ひかり」「おやすみなさい、蓮司」 自室に入り、ベッドに体を投げ出す。 は~~~~~~。今日は頑張った! 私、エライ!! それにしても、蓮司はどういうつもりなのかな。急に抱きしめられてびっくりしたのに、嫌じゃなかったんだよね…。 私は改めて『身体接触』について確認しようと思い、契約書のPDFをスマートフォンで開いた。【結婚契約書案】 本契約は中原ひかり(以下、甲)と御門蓮司(以下、乙)による、形式的な婚姻関係の締結を目的とする。 契約期間は原則1年間。延長・短縮については協議のうえ決定。 甲は乙と婚姻届を提出し、乙の指定する住居にて生活を共にするものとする。 生活費および住居費は乙が全額負担。甲の給与は必要に応じて別途支給。 甲乙間における身体的接触、恋愛関係の強制は一切なし。 ただし、外部に対しては“良好な夫婦”としてふるまうこと。 契約満了時(期間は契約日時より1年後)、甲には報酬として金1,000万円を支払う。『甲乙間における身体的接触、恋愛関係の強制は一切なし』 強制は
Last Updated : 2025-09-10 Read more