All Chapters of 捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています!: Chapter 41 - Chapter 50

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「俺は、お前を守りたい」 その言葉に、胸がきゅっと締まる。でも、これは契約。だから心配してくれる。「蓮司…どうして契約妻にそこまで優しくしてくれるのですか?」 思わず聞いてみた。彼の本心が知りたい。  ドクドクと心が高鳴っている。なんて言われるのかな。変に聞かなきゃよかったかも…。「契約だからといって、ひかりが傷つくのを見過ごせない。それだけだ」 腕の力が少しゆるんで、私は振り返ることができた。蓮司の顔がすぐそこにある。こんなに広い家なのに、その距離は驚くほど近い。 でも、触れても、それは幻。  本気にしちゃいけない。「契約でも夫婦なんだから、妻を大切にするのは悪いことじゃない。それに、契約違反になるようなことはなにもしていないつもりだが」 その言葉に思わず笑ってしまう。仕事人間の蓮司らしいし、理不尽な目に遭った私に寄り添ってくれたんだね。「はい…ありがとうございます」「体は温まったか?」「はい、もう大丈夫です」 そう言うと彼はゆっくりと腕を離した。でも完全に離れるのではなく、私の肩にそっと手を置いて。「今日はもう休め。俺が片づけておくから」「でも…」「手を大事にしろって言っただろ」「分かりました。お先に失礼します」「おやすみ、ひかり」「おやすみなさい、蓮司」 自室に入り、ベッドに体を投げ出す。 は~~~~~~。今日は頑張った! 私、エライ!! それにしても、蓮司はどういうつもりなのかな。急に抱きしめられてびっくりしたのに、嫌じゃなかったんだよね…。 私は改めて『身体接触』について確認しようと思い、契約書のPDFをスマートフォンで開いた。【結婚契約書案】 本契約は中原ひかり(以下、甲)と御門蓮司(以下、乙)による、形式的な婚姻関係の締結を目的とする。 契約期間は原則1年間。延長・短縮については協議のうえ決定。 甲は乙と婚姻届を提出し、乙の指定する住居にて生活を共にするものとする。 生活費および住居費は乙が全額負担。甲の給与は必要に応じて別途支給。 甲乙間における身体的接触、恋愛関係の強制は一切なし。 ただし、外部に対しては“良好な夫婦”としてふるまうこと。 契約満了時(期間は契約日時より1年後)、甲には報酬として金1,000万円を支払う。『甲乙間における身体的接触、恋愛関係の強制は一切なし』 強制は
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 翌日。いつもと変わらない朝を迎えた。蓮司は朝から始まるモーニングビジネスニュースを見て、経済の動向について考えている。本部長のポストともなれば、世の動きをきちんと把握し、クライアントの要望に応えることも必要ってことか。大変だなぁ。 蓮司はいまだに謎な人物。 でも、妙にドキドキするようになってしまった。まだ新婚生活、1週間しか経ってないのに! 「朝食、できました」  お母さまにツラツラと『こんなもの夫に食べさせますがなにか?』的に偉そうに言っちゃったけど、栄養のバランス考えて作るだけでいいのかな。特に文句も言われないし、大丈夫だとは思うけど…。 しかも、もともと食べていなかった謎の食生活していた人だから、お母さまにとっても私の存在は安心できるものになっているはず! 「ありがとう」  今まで会社では、冷徹で笑ったとこなんか見たことないし、無表情男で表情筋をどこかに失くしてきたのだと思っていたのに、ふわっと笑うようになった。 くっ…無駄にイケメンだからキュンとしちゃうのよ。 蓮司にときめくなんて、私としたことが! 「少し前に作ってくれた玉子焼き、あれは悪くなかった」「食べたいのですか?」「あ…いやまあ…そうだな」  そしてわかりにくいのかと思いきや、意外にわかりやすい男。『悪くない』=『好物だ』ってことね。りょーかい。 「今日はご飯と焼き魚と味噌汁にしました。玉子焼き、すぐ作りますから先に食べていてください」「いいのか?」「もちろんです」「じゃあ、頼む」  そして意外にちゃんとおねだりしてくれる。 欲しいものは欲しいと言ってくれるから、わかりやすくていい。 いちいち前の夫と蓮司を
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 「いい嫁だと思っている。頑張り屋だし、料理もうまいし」「あ…そ、そうですか。それはありがとうございます……」 なんか、思っている答えじゃなかったけど、褒めてもらえて嬉しいな…。 「それがなにか?」「いえっ、なんでもありません!! お味噌汁とご飯、入れ直しますねっ」 誤魔化すように慌ててご飯を入れ直した。「どうぞ」「ありがとう。いただきます」 小食なのかと思っていたのに、結構がっつり食べるのね。焼き魚も綺麗に食べたし、玉子焼きも気に入っているみたいだし。 「蓮司はいつもご飯はなにを食べていたのですか?」「食べないな」「今は食べているじゃないですか」「ひかりのご飯はうまいから」「そ…そうですか」「なんだどうした。さっきからおかしな質問ばかりして」「なんでもありません!! いろいろ考えていたら、聞きたくなっただけです!!」「そうか。別に隠すことはなにもないし、気になることがあれば聞いてくれ。質問は随時受け付ける」 人間味があると思ったら、急にビジネスモードになる。冷徹な部分があるのは否めない。「真白の家の修行のことだが、適当でいいぞ」「そういうわけにはいきません」「まあ、母さんがついてるから変なことはしないだろうがな。もし、おかしなことをされたら、すぐ俺に言えよ?」「大丈夫です。返り討ちにしてやります。黙ってやられるタマじゃありませんから」「ははっ。俺の嫁は強いな。最高だ」 ドキっ――! し、ししし、心臓に悪いッ!!「それより、昨日怪我させられた手は大丈夫か?」「蓮司が買ってくれた湿布のおかげで、すっかり良くなりました」「そうか。よかった。朝食うまかった。差支えが無ければ明日も作ってくれたら嬉しい」「お母さまと約束しましたし、作りますよ」「義務的だな」「契約ですから」「それもそうか」 わかんないっ。いったいどういうつもりなの!?「食べたいものがあれば、リクエストをください。作りますから」「なんでも作れるのか?」「まあ、一通りは。そんな難しい料理はできませんけど…インピタ映えするようなキラキラご飯は無理です」「そういうのは求めてない」 うん。だよね。「じゃあ、なにが?」「ハンバーグ」「えっ…」「やはり難しいのか?」「あ…別に……できますけど……」「そうか」ぱっと顔が輝いた。「会社の近くで
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 仕事を無事に終え、帰り支度をしていると、受付から呼び出しがあった。山川と名乗る男性の方が、中原さんにお会いしたいと言っている、とのこと。  山川ってまさか…。 「よっ、ひかり!」  出た! 諸悪の根源、山川球児(やまかわきゅうじ)!「待ってたんだよ」 珍しくスーツを着ていた。いつも派手な柄シャツか、ジャージが多かったから。 目の前の男は、言わずともがな私の前の夫。  背も高くきちんとしていたら割とイケメン。だからスーツ着ているとまともに見える。  私と結婚する前までは、今みたいなきちんとした身なりだった。優しいし、話も合うし、スポーツ好きでアウトドア好き。だからいいなと思ったし、大事にしてくれるから結婚したのに…ほんと、騙された!!「なんの用? 私、これから用事あるの。アンタと話すことなんかなにもないわ」「ツレないこと言うなよ。俺とお前の仲だろ」 肩に手を回されたので、手をはたいた。「やめて! 触らないで!」「あれあれ~? いいのかな~。会社なのに大声出して~」 悪びれもなく脅してくるこの男…。会社に来たのはそのためね。私が断ったら騒ぎ立てるつもりなんだ。ホント、クズ!! 私、こんな男と結婚していたなんて、最大の選択ミスだわ。 こいつと結婚する前の過去に戻って、人生やり直したい。「ちょっと来て。カフェでも行きましょ」「いいね~オゴリだよな?」「は? 自分の分くらい自分で払いなさいよ。アンタに払うお金なんて1円でも惜しいわ」「ケチくせぇな~。昔はよく奢ってくれたじゃん」「それは“好きな人”だったからよ。今はただの“迷惑な他人”だから」 私はさっさと会社を出た。ついてきた球児がニヤ
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 「は? えっ…妻!?」 驚いて球児が後ろに視線を注いでいる。私は慌てて振り向いた。 そこには、蓮司が立っていた。来てくれたの…?「ひかり。探したぞ。今日、約束のハンバーグを作ってくれると言っていただろう」「あ、ごめんなさい。この人に呼び止められて話があると…」「こちらの方は?」 ジロリと蓮司が球児を睨んだ。「随分妻を貶める発言をされていたようですが」「なんでもありません。彼は私の離婚した夫です。お金の無心をしてきたので、断っていた所です。もう用事はすみましたから、帰りましょう」「ん、そうか。じゃあハンバーグ作ってくれる約束は有効だな?」「もちろんです。買い物行きましょう」 私は立ち上がった。蓮司が伝票を持ってくれる。「あ、代金は…」「いいよ。彼にはお金がないみたいだから、俺が払う」 蓮司が私に笑いかける。トクン、と胸が高鳴る。今まで球児に痛めつけられ、ヒリヒリしていた胸の奥が嘘のように穏やかになった。一緒にレジへ向かおうとしたときだった。「待てよ」 球児が低い声で言った。「アンタ、誰なんだ! ひかりのこと、妻とか言ってるけど、どこの誰なんだ? この女は俺と離婚したばかりなんだぞ」 その問いに蓮司は立ち止まり、ゆっくりと振り返った。「名乗るほどのものではありませんが――彼女と結婚した者です」「け…結婚んん!?」 球児は口をあんぐりと開けた。「もう、一週間前から一緒に暮らしています。あなたはひかりとの生活を放棄したわけですよね?」 球児の眉がピクッと動いた。「ふーん……俺は別に放棄したつもりはないけど。その女が勝手に出てっただけで」 その瞬間、蓮司の目つきが一段と鋭くなった。「あなたのような人間が、“女”などと呼ぶ資格はない。ましてや、彼女を傷つける権利もない」「は? なんだよお前、どんだけ上から目線なんだよ。夫だかなんだか知らねえけど、こんな女のどこがいいんだよ!」「全部」 間髪入れず、蓮司が答えた。「彼女は、誠実で、強くて、優しい。俺の女神様だ。彼女のことをずっと慕っていた。離婚を聞いてチャンスだと思い、結婚を申し込んだ。それがなにか?」 蓮司ったら恥ずかしげもなくそんなことをっ…!!  いくら球児をやり込めるためとはいえ、そんなこと言ってくれるなんて…。  恥ずかしいけど、嬉しかった。「さあ、行
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 「今後、妻とお話になりたい場合は、こちらを通してください。暴言を吐かれて彼女は大変傷ついておりますから、連絡はこちらにお願いします」  蓮司は1枚の名刺を球児の前に置いた。  御門蓮司と書かれた社の名刺だ。「じゃあ、帰ろう」「はい」 仲良く手を繋いで歩いた。球児の苛ついた視線を背中に感じたが、無視して店を出た。「あの…蓮司、ありがとうございました」(ここではもっと仲のいい夫婦のふりをしておこう) と耳元で囁かれ、慌てて頷いた。  確かに、このまま他人行儀に戻れば、店を出た球児に見られてしまう。「まずは真白の家に行こうか。すぐ送るから。俺も行く」「えっ」「修行は30分、仕事のトラブルで退勤時間が押してしまい、到着がやや遅れると伝えてある」「ありがとうございます」「乗ってくれ」 目の前にすーっとやってきた送迎者に乗り込む。  扉が閉まり、車が発車した途端、蓮司の低い怒り声が聞こえた。「なんなんだ、アイツは…!」「すみません。元夫が失礼なことをして…」「ひかりが悪いわけじゃない。俺のひかりをあんな店先で堂々とディするなんて…絶対に許さん」 ――俺のひかり  ん? え? 今なんて…!? 「ひかり」「は、はいっ」「……そんな顔をしないでくれ」 蓮司の低く落ち着いた声が耳に落ちる。  私が驚いて彼を見ると、彼は私の方を向いて言った。「元旦那が店を飛び出し、この車を追ってくる可能性もある。だから本当に幸せそうな妻の顔をして欲しい。困った顔はナシだ」
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 真白さんの家でお母さまと蓮司が監修のもと、花嫁修行に励んだ。30分で退席すると伝えてあったので、難なく帰る。仕事でどうしても今日中にやらなければならない事案がある、と蓮司は真顔で言っていたけれど、ほんとうはハンバーグを作るというミッションがあるだけ。 いいのかな…。 嘘はついていない。このミッションも立派な『仕事』であることに変わりはない。 でもなぁ~~~~~。 「さあ、スーパーはどこがいい? 案内してくれ」「別に近所のスーパーでいいですよ」「そうなのか」「どうせなら、安いスーパーにしましょう。おいしいものが安く売っている、ギョムースーパーがいいですね」 業務・店舗用の大きなお肉や調味料が豊富に、しかも激安で売っているスーパーがある。全国展開していて、どこにでもあるものだ。「行きましょう」 店舗検索すると、車で10分ほどの距離にいちばん近くの店舗があるので、そこに行ってもらうことにする。駐車場が無いので近くで待ってもらうことにして、私と蓮司がそのスーパーに向かう。 狭い入口前から、激安品が積み上げられている。「わあ、安い♡」 目がハートになるくらい、ティッシュからキッチンペーパー、ラップ、なんでも安い!!「すごい所だな…」 蓮司は狭さと混雑具合に若干ヒいているみたい。「庶民の味方のお店ですから! さあ、買うわよ~」 カゴを持って合い挽きミンチのお得パック、玉ねぎ、食パン、牛乳、玉子、デミグラスソース、照り焼きソース、もみじおろし、ポン酢、調味料類、チーズ、バンズを買った。他にも欲しい調味料があるので、どんどんカゴに入れていく。途中で蓮司にカゴを取り上げられた。重いから持ってくれるとのこと。優しいな。 球児(元夫)なんか、カゴすら持ってくれたこと無いよ。「たくさん買うんだな」「蓮司の家は全然調味料なんかが揃っていないから、買っておかなきゃ」「それはこれからも家で飯を作ってくれるというこ
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 食材を買い込み、私たちは帰路に着いた。私には不釣り合いな豪華絢爛のホテルのようなエントランスを通り抜け、庶民の激安ギョムースーパーで買った買い物袋を提げて部屋に入る。 お買い物も、きっとこのマンションにお住いのお金持ちの人たちは、優雅な高級紙袋か、もしくはブランドものの買い物バッグに入れて持ち帰っているはず。こんなビニール袋はないでしょう。 「さあ、俺はなにをすればいい?」  スーツから私服に着替えてリビングに集まった。時間は19時半を回ったところ。蓮司は手伝う気でいてくれている。 時短で手早く料理するにはひとりでぱっぱとやった方が効率いいんだけど…。 「座って待っていてくれたらいいですよ」「そういうわけにはいかないだろう。俺がリクエストをしたんだ」「一緒にやりたいのですか?」「まあ、そうとも言えるな」  さっきも楽しそうにセルフレジを打っていたし、私が普通だと思っていることは、蓮司にとって初体験なのかも。 「じゃあ、一緒にやっていただけますか? お願いします」「任せろ」 手を洗って早速スタンバイする蓮司。「まずはなにからやればいい?」「先に白ご飯を炊きます。その間に玉ねぎの皮を剝きましょう。やっていただけますか?」「わかった」 剥き方を教え、私から玉ねぎを受け取り、早速蓮司は皮を剥いた。結構うまい。器用なのね。 ご飯を仕掛けて、剝いてもらった玉ねぎをフードプロセッサーで小さくした。軽く炒めて塩コショウ。冷やして作ったつなぎと合わせて、調味料を加えてミンチと混ぜる。「これを混ぜていただけますか?」「わかった」「それが終わったら、手でこねます」「こうか?」「上手です! そう、優しく作ってくださいね」 蓮司は手際よくハンバーグをこねてくれた。その間に付け合わせやサラダを作り、味噌汁を
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 「ひかり?」「あ、ごめんなさい! すぐ持って行きますね」  いけない。 「うまそうだ」  しっかりしなくてどうするの。 「いただきます」  一口食べて、蓮司が満面の笑みを浮かべる。 まずい。ドキ、ドキ、と、心が高鳴ってしまう。「これはうまいな!」「よかったです」 別のソースを勧め、お味噌汁を渡した。それを渡す時、彼の長い指に触れた。(あっ…) 彼の方はなにも意識していない。ぜんぶ、私だけ。 こんな…どうしよう。蓮司を意識しすぎておかしいよ。  これ以上私の中に入ってこないで。 入れてあげないって思っていたのに、容易く割り込まないで。 球児から守ってくれて、無防備な笑顔を見せて、私の心を乱さないで。 「難しい顔をしていないで、ひかりも食べたらどうだ」「そうですね。いただきます」  蓮司の言う通りだ。今、あなたのことを考えていても仕方がない。 まずは蓮司の契約妻を見事にやり切って、お祖父様を納得させて、それから――… 「うまいだろう?」「ふふ。そうですね」「俺のひかりが作ったんだから、当然うまいに決まってる」 (また…)  俺のひかりってどういうつもり? 意識させようとして、わざと? …そんなわけないよね。蓮司になんのメリットがあるの。 私なんかを意識させたって、しょうがない。 蓮司は私を球児から守ってくれて、
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