「ええ、旦那様に頼まれて物を取りに参りました。奥様もいらっしゃいますか?」「はい、二階にいらっしゃいます」階下の声を聞き、小夜は慌てて書斎の中を覗き込んだ。隅に置かれた黒いスーツケースが目に飛び込んでくる。彼女のスーツケースだ!書類は、きっとあの中にある!しかし、階段を上ってくる足音が近づいてくる。顔を曇らせた樹が、彼女に向かって歩いてくる。書斎には自分の荷物と書類が!どうしよう?……彰が階段の踊り場まで来たところで、小夜が樹の手を引いて下りてくるのが見え、思わず足を止めた。「奥様」小夜は頷くだけで何も答えず、そのまま階下へと向かう。彰は一瞬ためらった後、尋ねた。「奥様、これは……?」小夜の口調は淡々としていた。「樹を本家に連れて行きます」「お送りします……」言い終わらないうちに、小夜はすでに樹の手を引き、振り返りもせずに階下へと去っていった。彼に視線を落とすことは、終始一度もなかった。彰はしばらく階段に立ち尽くしていたが、やがて身を翻して二階の書斎へと向かった。手慣れた様子で書斎のロックを解除し、デスクの上で圭介から頼まれた資料をまとめ、部屋を出る際に、隅に置かれたスーツケースを何気なく一瞥した。彼が階下へ下りた時には、小夜を送る車はすでに出発していた。彼は特に気にも留めず、車に乗り込むと圭介に電話をかけた。「旦那様、資料は見つかりました。それから、奥様名義の物件はすべて調査しましたが、例の赤い帽子のロボットは見つかりませんでした」電話の向こうは、しばらく沈黙していた。「探せ。探し続けろ。小夜名義の家にないなら、周りの親しい人間を調べろ。他人名義で持っている物件があるかもしれん。特に、あの瀬戸芽衣だ。小夜が捨てるはずがない。あのロボットは、絶対に失くすわけにはいかないんだ!」彰は一言返事をすると、電話を切った。……病院の病室。圭介は電話を切ると、病室へ入り、ベッドのそばに腰を下ろした。若葉は、申し訳なさそうな顔をしていた。「圭介、ごめんなさい。私が怪我をしたせいで、『雲山』チームとの面会も延期になってしまって」圭介は微笑み、優しく若葉を慰めた。「気にするな。もともとお前が仲介してくれたおかげで取れた約束だ。数日くらいどうってことない。
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