「それでは王女様。一緒に野戦病院に参りましょう」町長が声をかけてきた。「ええ。分かったわ」返事をしたその時。「ちょっと待ってください!」声を上げたのはトマスだった。「どうしたのだ? トマス」町長さんがトマスに尋ねた。「はい、王女様と2人きりで話したいことがあります。……王女様。よろしいでしょうか?」「トマス……」恐らく私が倒れた件で話があるのだろう。私としてもその方が都合が良かった。トマスと2人きりになれれば【エリクサー】の原液を渡すことが出来るからだ。リーシャを完全には疑いたくは無かったが、それでも人目に付く前に彼に早急にこの万能薬の元を渡してしまいたかった。「ええ、分かったわ」次にその場にいる全員を見渡した。「私は少しトマスと話をしていきますので、皆さんは先に野戦病院に行って貰えますか?」「ええ、分かりました。では私どもは先に参ります」町長さんは眼鏡の青年と部屋を出て行った。「それじゃ、姫さん。また後でな?」スヴェンは笑みを浮かべて部屋を後にする。そしてリーシャだが……。「クラウディア様。私もここに残って話を聞いては駄目ですか? 私はクラウディア様のメイドです。お傍にお仕えするのが私の役目ですから」リーシャは両手を前に組み、願い出てきた。「リーシャ……」どうしよう、困ったことになった。トマスも困り顔でリーシャを見ている。すると……。「駄目だ、いくら専属メイドだからと言って、クラウディア様が彼と2人だけで話をすることを望んでおられるのだから邪魔立てするな。我々も行くぞ」ユダが迫力のある目でリーシャを睨みつけた。「う……」リーシャはその迫力に押され、次に私を見た。「ごめんなさい、リーシャ。話が済んだらすぐに行くから……ユダ、リーシャをお願いね」「はい、承知いたしました」ユダは頷くと、リーシャに声をかけた。「行くぞ」「は、はい……」ユダに連れられたリーシャは名残惜しそうに何度もこちらを振り向きながら去って行く。そんな彼女に笑みを浮かべ、私は手を振った。****「……随分あのメイドの方は王女様を慕っていらっしゃるのですね」「え? ええ。そうね」トマスの問いにあいまいに答えた。「それよりも王女様。もしかして倒れられたのはあの薬を作られたからではありませんか?」トマスはあえて何の薬なのか、名前
Last Updated : 2025-08-04 Read more