Lahat ng Kabanata ng 断罪された悪妻、回帰したので今度は生き残りを画策する(Web版): Kabanata 51 - Kabanata 60

144 Kabanata

第1章 49 カモフラージュ

『お母さん、今日は1日ゆっくり休んでよ』エプロンをした娘の葵が台所に立っている。『今日は俺たちが夜ご飯を作っておくから、お母さんはお父さんと出掛けてきなよ。2人で映画を観に行くんだろう?』倫が話しかけてくる。すると……。『母さん、それじゃ行こうか?』夫が笑顔で手を差し伸べてきて――**――コンコン『クラウディア様、まだ眠っていらっしゃいますか?』『おーい、姫様、そろそろ起きてもらえるかな?』扉の外でノック音と共に、リーシャとスヴェンの声が聞こえている。「え? い、今扉を開けるわ!」私は、また日本に残してしまった家族の夢を見ていたようだ。慌てて飛び起きると、扉を開けに向った。――ガチャ扉を開けると、リーシャとスヴェンの姿があった。リーシャは私の姿を見ると安堵のため息をつく。「あぁ……良かった、クラウディア様。さっきからずっと扉をノックしていたのにお返事が無かったので心配してしまいました」「え? そうだったの?」「ああ、姫さんを呼びに行ったリーシャが中々戻ってこないから俺も様子を見に来たんだよ。そしたらまだ姫さんが起きていなかったから驚いたよ」「ごめんなさい、2人とも。すっかり眠ってしまっていたのね? ところで今何時なのかしら?」髪をなでつけながら2人に尋ねた。「はい、12時を少し過ぎたところです」「えっ?!12時?!」リーシャの言葉に驚いた。確か部屋に戻ったのは6時半頃…。私は5時間半も眠ってしまったことになるのだ。「ごめんなさい……私、そんなに眠ってしまっていたのね」2人に謝罪した。「そんな、姫さん。謝ることなんか無いって!」「そうですよ! クラウディア様はお疲れなのですから!」慌てたように首を振るスヴェンとリーシャ。「ところで、私に何か用事があったの?」「実は『クリーク』の町の人達が私達の為に食事を用意してくださったんです。すごいご馳走ですよ?」リーシャが目を輝かせている。「『クリーク』では食物倉庫は戦争被害を受けなかったらしいんだ」「そうだったのね。あ、それでは私のせいで皆さんをお待たせしているのね? すぐに準備したら向かうわ。何処に行けばいいのかしら?」「この宿屋の1階です。食堂として使われていたそうですよ。私もお手伝い致します」「いいのよ、1人で出来るから。貴女はスヴェンと先に行っ
last updateHuling Na-update : 2025-08-14
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第1章 50 村の噂話

 階下に降りていくと、大勢の賑やかな声が廊下から聞こえてきた。「随分賑やかね……大勢人が集まっているのかしら?」食堂に近付いてくるに連れ、益々声が大きくなる。「あ、あそこかしら?」前方には木の扉が大きく開け放たれている部屋があり、賑やかな声はその部屋から聞こえていた。扉を覗き込んだその時。「あ! 王女様だ! 王女様がいらっしゃったぞ!」1人の若者が私に気付いたのか、立ち上がって声を上げた。その人物は一番初めに命が救われたサムだった。「王女様だ!」「いらして下さったのね!?」「お待ちしておりました!」人々の視線は一斉に私に注がれる。「王女様! どうぞ中にお入り下さい!」サムの隣りに座っていたのはトマスで、私に声をかけてきた。「え、ええ……それではお邪魔するわ」大勢の人々に見守られながら、緊張の面持ちで食堂の中へ足を踏み入れた。「姫さん! こっちに来いよ!」スヴェンが笑顔で手を振って私を呼ぶ。彼の隣にはリーシャが笑いながら私を見ている。リーシャ……。そんな姿を見ていると、本当に彼女は私を裏切ろうとしているとは思えなかった。「ええ、今行くわ」でも、やはり用心しなくてはいけない。私は2人が待つテーブル席へ向った――私が着席するとすぐに町長さんが立ち上がり、こちらを振り向いた。「王女様、この度は王女様のお陰で我々の町は救われました。ささやかではありますが感謝の意を込めて、食事の席を設けさせていただきました。どうぞお召し上がり下さい」食堂の中には3つに長テーブルが置かれ、豪華な料理がズラリと並べられ、ワインが置かれている。「皆様、お手元のワインをお取り下さい」町長が皆に声を掛け、私達はその言葉に従ってワインを手にした。「それでは我らを救っていただいた王女様と連れの御一行様に感謝と、旅の無事を祈って……乾杯!」『乾杯!』町長の言葉の後に、人々は乾杯の声を上げ……賑やかな食事会が始まった――****「クラウディア様、ここの食事……とっても美味しいですね」リーシャが嬉しそうに話しかけてくる。「ええ、そうね」「料理だけじゃない。ワインも美味しいぞ」スヴェンは余程ワインが好きなのだろう。既に彼はワインを1瓶空けていた。「このワインは隣の村『シセル』で作られたワインです。あの村は、農業がとても盛んでしたからね。ワ
last updateHuling Na-update : 2025-08-15
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第1章 51 町の再建についての提案

 『クリーク』の町の人達による食事のおもてなしが終わったのは15時を少し過ぎた頃だ。何しろ、町の人々がひっきりなしに私の元へやってきてはお礼を述べていくものだから、中々お開きにすることが出来なかったのだ――****「申し訳ございませんでした。王女様」最後の町民の挨拶が終わると、町長さんが謝罪をしてきた。「え? 何がですか?」「いえ……お付きの方々はとっくにお部屋に戻られたのに、王女様だけ部屋に戻ることが出来ずに町民たちの話に付き合わせてしまいました。本当に申し訳ございません」「あ……そのことですか?」リーシャは後半、かなり疲れた様子を見せていたのでスヴェンと一緒に先に部屋に戻ってもらっているし、ユダをはじめとした『エデル』の兵士たちは私達とは違うテーブル席に着席していたので、とっくに食堂からいなくなっている。つまり、私1人が『クリーク』の人達と最後まで一緒に食堂に居残っていたのだ。「はい、町民たちがどうしても王女様とお話がしたいと言ってきかなかったものですから…」そこで私は申し訳なさそうにしている町長さんに笑いかけた。「そんなこと気にしないで下さい。『クリーク』の町の人々は全員、大切な領民です。戦争によって、この町は今後『エデル』の領地となりますが、私はこれからその国に嫁ぎます。なので今も、この先もこの町の人達は私にとって大切な領民達に変わりはありません。皆さんの話を聞くのは当然です。いいえ、むしろこのような席を設けて頂き、感謝しております」「王女様……何て嬉しいお言葉を……」その時、トマスがルカを連れて私の元へやってきた。「王女様。ルカがどうしても王女様と話がしたいとのことで連れて来たのですが……よろしいでしょうか?」その背後でルカは私と視線が合うと、深々と頭を下げてきた。「ええ、大丈夫よ」すると町長さんが2人に諭した。「良いか? ルカ。王女様はお疲れなのだ。用件は手短にするのだぞ?」「ええ、分かっております」「なら良いが……では王女様。私はまだ片付けが残っておりますのでこれで失礼致します」「ええ、ありがとう。町長さん」恐らく、町長さんは気を利かせて席を外してくれたのだろう。テーブルに3人だけが残されると、ルカは早速口を開いた。「王女様、あの薬の原液は私がトマスから確かに受け取りました。このことは他の者達には決し
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第1章 52 次の村へ向けての準備

「か、覚悟って……? 一体どういうことですか?」トマスが怯えた様子でユダに尋ねた。「つまり、あの村に行くには覚悟が必要ってことだ。悪いがそれ以上のことはここでは話せない」ユダはチラリと視線を向けると、その先には人々が食堂の後片付けをしている姿があった。「そ、そうですか……」トマスはそれだけ言うと黙ってしまった。恐らくユダの雰囲気からそれ以上のことは聞きにくいと感じたのだろう。「クラウディア様、明日からまた旅が始まります。もう部屋で休んだほうがいいでしょう。送りますよ」「ええ、ありがとう。それじゃ、トマス。又ね?」「はい、王女様」「では参りましょう、クラウディア様」私はユダに連れられて、食堂を後にした。「ユダ」食堂を出るとすぐに名を呼んだ。「何でしょうか?」「私の部屋の前で見張りをした後、部屋には戻らなかったわよね?」「ええ」「外に出たみたいだけど……」「そうです。リーシャが話をしていた人物がまだ外にいるのでは無いかと思い、様子を見に行ったのです」「それで『エデル』の人は誰かいたの?」「いいえ、いませんでした」首を振るユダ。「ユダは、もう誰が怪しいのか見当はついているの?」そこまで話した時、ユダは足を止めた。「どうしたの?」「いえ、部屋に到着したからです。それではごゆっくりお休み下さい」「え? まだ話は終わって……」するとユダが唇の前で人差し指を立てて静かにするようにジェスチャーをした。「ユダ……?」「いけません、ここで話をしては。誰に聞かれているか分かったものではありませんから」「そ、そうね……確かにその通りよね」ユダの言葉はもっともだった。ユダを含めて『エデル』の兵士は総勢11人いるのだ。この中に敵が何人潜んでいるかも分からないのだ。それにリーシャだって……。思わず俯くと、ユダは何か勘違いしたようだった。「やはりまだお疲れのようですね。明日からまた長旅が続きます。何しろ次の村までは半日以上かかりますから、ゆっくりお休み下さい」「ええ……分かったわ。もう今日は休むことにするわ」考えてみれば隣の部屋にはリーシャがいる。ユダはリーシャのことを強く疑っているのだから、ここで話は出来ないだろう。「ではごゆっくりお休み下さい。明日は9時には出発しますから」「そうね。ユダ、貴方も休んでちょうだい」「
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第1章 53 闇の中の侵入者

「ふぅ……やっと【聖水】の原液が完成したわ」机の上には光り輝く10本の小瓶が乗っている。この光り輝く液体を手桶の場合、ほんの一滴垂らすだけで【聖水】に変化させることが出来る。「これだけあれば、きっとあの村も救われるはず……」時計を見ると、既に21時を回っていた。「ええっ!? もうこんな時間だったの?」そう言えば作業の途中で手元が暗くなってきたから、アルコールランプを灯した記憶はあるけれど……。どうも錬金術を使用している間は時間の感覚が分からなくなってくる。「明日も早いし、もう眠った方が良いわね……」出来上がった【聖水】の入った瓶を割れないように布で1本1本包むと麻袋の巾着に入れ、念の為に枕の下に隠した。「ここに隠しておけば……多分大丈夫よね?」寝間着に着替えると部屋の明かりを消して、ベッドの中に潜り込むと、目を閉じた。いよいよ、明日は『シセル』へ向かうことになる。一番問題が発生している『レノスト王国』最後の領地へ――**** ベッドに入って、どれ位時間が経過しただろうか……。ミシッ……ミシッ……床を踏みしめるような音で、ふと目が覚めた。何……? ま、まさかこの部屋に誰かいるのだろうか?静寂に満ちた暗闇の中で、人の動く気配を感じるというのは恐怖以外の何物でも無かった。侵入者は何かを探しているのか、足音を立てないように動いている。一体誰がこの部屋に……?恐怖で身体の震えが止まらない。メッセンジャーバッグの中には侵入者の興味を引く物は一切入っていない。錬金術を行なう為に必要な道具は全て私が使っている枕の下に隠してある。侵入者がこちらへ来ない限り……見つかるはずは無いのだから。お願い……どうか、諦めて早く部屋から出ていって……!その時――「チッ! ここには無いか……」部屋の中で舌打ちする声が聞こえたかと思うと、暗闇に声が響き渡った。「目が覚めているんだろう?」「!」その言葉に冷水を浴びせられたかのように、全身から血の気が引くのを感じた。「……」恐怖の為に一言も言葉を発することが出来ない私に、再度暗闇の中で侵入者は追い打ちを掛けてくる。「寝たふりをしてごまかせるとでも思ったか?」「わ、分かったわ……」言うことを聞かなければ、どんな目に遭わされるか分かったものではない。ゆっくりベッドから起き上がり、侵入者
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第1章 54  逃げた犯人、そして…

 覆面男に向って花瓶を投げつけるものの、簡単に避けられてしまった。ガチャーン!!対象物を無くした花瓶は床の上に落ち、派手な音を立てて粉々に砕け散る。「ハハハハ……一体どこを狙っているんだ? さぁ大人しく来てもらうぞ」覆面男はベッドの上で震えている私に向ってへズカズカと近付いてくると、いきなり左腕を掴んできた。「は、離して!」「フン! 暴れても無駄だ」覆面男はすごい力で腕を握りしめてくる。お願い! 誰か来て!あなた……助けて……!願っても無駄なのに、愚かにも日本に残してしまった夫の姿が頭に浮かんだ。その時――「「クラウディア様!!」」ほぼ同時に2人の人物が暗闇の部屋の中に飛び込んできた。その人物は……。「リーシャッ! ユダッ!」何と真っ先に駆けつけてきのは犬猿の仲だったはずのリーシャと剣を握り締めたユダであった。「クラウディア様!?」「貴様……その方から離れろ!」ユダは剣を鞘から引き抜くと、覆面男に剣を向けた。「姫さん!」騒ぎを聞きつけてか、スヴェンも部屋に飛び込んできた。彼の背後には4名のエデルの兵士達も混じっている。「チッ……!」分が悪いと感じたのか、覆面男は掴んでいた私の腕を離すと窓まで後ずさった。「クラウディア様!」覆面男が私から離れると、リーシャが駆けよってきた。「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」「え、ええ……」両肩を抱えて震えながら私は何とか返事をした。「貴様……ふざけた覆面などしおって一体どこのどいつだ? まぁいい……その身を捉えて覆面を剥げば貴様が何者か分かるだろう」ユダは剣を向けたまま、一歩覆面男に近づく。「生憎……捕まるわけにはいかないんだよ」男はそれだけ言うと、突然窓に向って駆け出した。ガチャーンッ!!あろうことか、男は額の上で腕をクロスさせるとそのまま窓を突き破ったのだ。「馬鹿な! ここは2階なのに!?」ユダが剣を握りしめたまま、窓枠に駆け寄った。スヴェンとエデルの兵士たちも窓に駆け寄り、見下ろしている。「ど、どうだったの……?」恐る恐る彼等に声をかけた。「姫さん……駄目だったよ」こちらを振り向いたスヴェンが残念そうな表情で私を見る。ユダを含めた、その場にいた全員の視線が私に注がれた。「でも……無事で良かったよ。姫さん」スヴェンが私の側に来ると笑みを
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第1章 55 3人で過す夜

 自分の持ち物を全て持参し、リーシャが借りている隣の部屋へ向った。扉は開いており、部屋の中には長ソファで寝る支度の最中のスヴェンとベッドメイクをしているリーシャの姿があった。「あ、来たんだな? 姫さん」スヴェンがいち早く私の姿に気付いた。「クラウディア様、今ベッドのお支度が出来ました。いつでもお休みになること出来ますよ?」「ありがとう、リーシャ。それにごめんなさい、スヴェン」私はスヴェンに頭を下げた。「え? 何故謝るんだ?」不思議そうにスヴェンは首を傾げる。「それは……あんなことがあったばかりに、貴方をソファの上で寝かせることになってしまったから…」するとスヴェンが笑った。「アハハハ……。本当に姫さんは変わった方だよ。俺みたいな、ただの領民にもそんなに腰が低くてさ。でも、そんなところが姫さんのいいところだよ。だからユダも……」「え? ユダがどうかしたの?」「ユダさんがどうかしましたか?」ユダに対してあまり良い印象を持っていないリーシャは面白くなさげにスヴェンに尋ねた。「あ……悪い、今のは言葉の綾だ。気にしないでくれよ。さってと、姫さんとリーシャはもう寝ろよ。今夜の見張りは俺に任せてくれ」スヴェンは腰に差した剣を握りしめた。「スヴェン、その剣はどうしたの? 貴方……短剣しか持っていなかったんじゃないの?」「あ? この剣か? 実はこの町の町長に貰ったんだよ」「え? 町長さんにですか?」リーシャが会話に加わってきた。「ああ。ここ【クリーク】は兵士が多くいた場所だろう? 武器庫の大半は燃やされてしまったらしいけど、まだ地下倉庫には武器が残っていてさ。これから姫さんを守っていくなら剣が必要だろうと言って、今日貰ったんだよ。嬉しかったよ。他の仲間たちにも持たせてやりたかったな……。そうすれば戦争で……」そこでスヴェンは言葉を切った。その表情は少し悲しげだった。スヴェン……。きっと彼は戦争のせいで辛い目に…。申し訳ない気持ちで一杯になる。「……ごめんなさいね。スヴェン。私の父が戦争を始めたばかりに」「え? 何言ってるんだよ? 姫さんは何も悪くないだろう? あ……ごめん! 俺が変なこと言ってしまったばかりに悪かった! 今の話は忘れてくれ! 俺は姫さんには感謝の気持ちしか無いからな?」「そうですよ、クラウディア様は何も悪くあり
last updateHuling Na-update : 2025-08-19
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第1章 56 耳を疑う言葉

「姫さんは……ユダ……あいつのこと、どう思う?」そんな漠然とした質問をされても何と答えればよいか思いつかない。けれど、先程のユダの様子から、一つ確信を得られたことがある。「そうね……旅を続けていた最初の頃は私のことは、敵国の姫として憎んでいるように見えたけど……今は違う気がする。多分私のことを本気で心配してくれている気がするわ。だから今は信用してもいい人……かもしれない」何しろ私の悲鳴を聞きつけて真っ先に部屋に駆けつけてくれたし、覆面男が逃げた後のユダの様子はいつもと違って見えた。いつもの冷静なユダでは無かった。「そうか……姫さんもユダの様子に気付いたんだな……」スヴェンがため息をついた。「スヴェンもそう思ったの? 何だか普段のユダとは違っていたわね。何があって、あんなにユダの様子が変わったのかしら?」「え? 姫さんは分からないのか? ユダが何故変わったのか」スヴェンが驚いた様子で私に尋ねてきた。「ええ、さっぱり分からないわ。スヴェンは分かったの? なら教えてくれるかしら? どうしてユダがここにきて突然変わったのか」「……」するとスヴェンは少しの間、口をポカンと開けて私を見ていたが……。「い、いや。俺も正直なところ、よく分からないんだ。今の所姫さんとユダは親しい間柄に見えたから……姫さんなら理由を知っているかと思って尋ねただけだよ。ごめん、変なこと尋ねて」「いいのよ。別に。でもありがとう、スヴェン」膝を抱えて座りながらスヴェンを見た。「え? 何で俺に礼を?」「ええ……。実はさっき覆面男に襲われた時の恐怖がまだ身体に残っていたのだけど……スヴェンと話をして気が紛れたわ。ありがとう」「い、いや。だから俺に礼なんか言うこと無いって。逆に感謝するのは俺の方だよ。姫さんは俺が酷い言葉を投げつけても村を救ってくれたし、姫さんのお陰でこうして旅に出て……今迄狭かった俺の世界が広がった。それに同じ領民であるこの町の人達を救ってくれたじゃないか」「スヴェン……」「姫さん。『エデル』の兵士達が話してるのを偶然立ち聞きしてしまったんだけど……次は『レノスト』王国最後の領地に行くんだってな」「ええ、そうよ?」「そこで大変なことが起こっているはずだから、きっと次こそ姫さんは困ることになるだろうって話していたんだよ」「え……?」まさか、その話っ
last updateHuling Na-update : 2025-08-20
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第1章 57 聞こえてきた会話

「ユダが仲間の人達と次の村のことについて話していたの?」心の動揺を押し隠しながらスヴェンに聞き返した。「そうだよ。俺は耳には自信があるからな」「それは頼もしいわ」スヴェンの言葉に相槌を打ちながらもユダのことが頭から離れなかった。あの時……本当に私のことを心配しているように見えたけれども、信用させる為に演技をしていただけなのだろうか……?疑い続ければきりがない。だけど、私はユダを信じてみたかった。「どうした? 姫さん。気分でも悪いのか?」「え? そんなことないわよ」「そっか……。なら、いいけどさ。少し元気が無いように見えたから。何しろ、その……姫さんは俺たちにとって希望だからさ」スヴェンは照れ屋なのだろうか? 再び顔を真っ赤に染めている。「希望……ありがとう、そう言ってもらえると嬉しいわ」笑みを浮かべてスヴェンを見た。何しろ回帰前は訪れた場所全てで『悪女』呼ばわりされてきたのだから、当然領民と信頼関係など築けるはずも無かった。「姫さん……。俺、何があっても、絶対に姫さんを守って無事に『エデル』まで送り届けてやるからな?」「ええ、ありがとう。スヴェン。それじゃ、もう貴方は休んで? 私が起きてるから」「でも本当にいいのか? 俺が休んでも」「もちろんよ。何かあったら貴方を起こせばいいんでしょう?」「ああ。すぐに起こしてくれ。俺、寝起きはいいからさ」そしてスヴェンは腰から剣を抜き取ると抱きかかえるようにしてソファに寝転がった。「スヴェン、もしかして剣を抱えたまま寝るの?」「ああ、万一の為だ。それじゃ姫さん。悪いけど少し休ませてもらうよ」「ええ。休んでちょうだい」「悪いな……」**** どのくらい、沈黙が続いただろうか……。やがて向かい側に横たわったスヴェンから微かな寝息が聞こえてきた。スヴェン……余程眠かったのかもしれない。音を立てないようにソファから立ち上がると、テーブルの上に置いたメッセンジャーバッグを取りに行った。やはり手元に【賢者の石】と【聖水】を置いておかないと不安だったからだ。メッセンジャーバッグを肩から掛け、再びソファに戻ろうとした時に話し声がこちらに近付いてくるのに気付いた。もしかしてユダ達だろうか?私は扉付近の壁に耳を近づけ、会話を聞き取ろうと試みた。すると、彼らの会話が聞こえ始めた。『
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第1章 58 驚くべき言葉

 月明かりに照らされた部屋の中は家具が一切置かれていなかった。「ユダ。私……貴方に聞きたいことがあるの」大きな窓の方を向いているユダの背中に語りかけた。「クラウディア様……」ユダは私の方を振り返った。彼は窓から見える月を背に、じっと私を見つめると口を開いた。「まずはその前に、ご報告させて下さい」「報告?」「はい、我らの仲間の内……1人が消えました」「消えた……?」「はい。あの後、クラウディア様の部屋に集まってこなかった仲間の点呼確認の為に各部屋を訪ねたのです。そして1人、部屋の中がもぬけの殻でした」「それでは、その人物が?」「はい。クラウディア様を襲った人物で間違いないでしょう」「彼は一体何者なの?」「あの人物はホセと言う者で、戦争が始まってすぐに『エデル』の兵士になった人物です。本人の話ではそれまでは傭兵の仕事をしていたそうです」「傭兵……」「あまり我らと話すこともありませんでしたが、少しだけ小耳に挟んだ話があります。どうやらホセは金に困っていたそうです」「あ……」その時、覆面男の台詞を思い出した。『【エリクサー】をどこにやったかって聞いてるんだよ』「どうかしましたか? クラウディア様」』「あの覆面男……【エリクサー】を探していたわ。私が持っていると思っていたようね」「何ですって?【エリクサー】を探していたのですか?」「ええ。そうよ。それでは、ひょっとして彼が私をずっと見張っていた人物なの?」「……」ユダは少しの間考え込む素振りをしていたが、やがて口を開いた。「恐らく彼は違うと思います」「え? どうして?」何故、そんな風に言い切れるのだろう?「本来、ホセはクラウディア様の同行者のメンバーではありませんでした。我らが選抜された後に自分の方から仲間に加えてくれと言ってきたのです。理由を尋ねても、単に敗戦国の様子が気になるからだと言って詳しくは話してくれませんでしたが……どうやら借金取りから逃げ回っていたみたいです」「そうなの?」「はい、当時はそんな事情があるとは我々は知りませんでした。しかし、もともとクラウディア様を迎えに行くには心もとない人数だと思っていたので、全員で話し合いの末、彼を仲間に加えることにしました。恐らくホセは【エリクサー】を狙っていたのでしょうね。金儲けの為に」「……」私は黙ってユダ
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