『お母さん、今日は1日ゆっくり休んでよ』エプロンをした娘の葵が台所に立っている。『今日は俺たちが夜ご飯を作っておくから、お母さんはお父さんと出掛けてきなよ。2人で映画を観に行くんだろう?』倫が話しかけてくる。すると……。『母さん、それじゃ行こうか?』夫が笑顔で手を差し伸べてきて――**――コンコン『クラウディア様、まだ眠っていらっしゃいますか?』『おーい、姫様、そろそろ起きてもらえるかな?』扉の外でノック音と共に、リーシャとスヴェンの声が聞こえている。「え? い、今扉を開けるわ!」私は、また日本に残してしまった家族の夢を見ていたようだ。慌てて飛び起きると、扉を開けに向った。――ガチャ扉を開けると、リーシャとスヴェンの姿があった。リーシャは私の姿を見ると安堵のため息をつく。「あぁ……良かった、クラウディア様。さっきからずっと扉をノックしていたのにお返事が無かったので心配してしまいました」「え? そうだったの?」「ああ、姫さんを呼びに行ったリーシャが中々戻ってこないから俺も様子を見に来たんだよ。そしたらまだ姫さんが起きていなかったから驚いたよ」「ごめんなさい、2人とも。すっかり眠ってしまっていたのね? ところで今何時なのかしら?」髪をなでつけながら2人に尋ねた。「はい、12時を少し過ぎたところです」「えっ?!12時?!」リーシャの言葉に驚いた。確か部屋に戻ったのは6時半頃…。私は5時間半も眠ってしまったことになるのだ。「ごめんなさい……私、そんなに眠ってしまっていたのね」2人に謝罪した。「そんな、姫さん。謝ることなんか無いって!」「そうですよ! クラウディア様はお疲れなのですから!」慌てたように首を振るスヴェンとリーシャ。「ところで、私に何か用事があったの?」「実は『クリーク』の町の人達が私達の為に食事を用意してくださったんです。すごいご馳走ですよ?」リーシャが目を輝かせている。「『クリーク』では食物倉庫は戦争被害を受けなかったらしいんだ」「そうだったのね。あ、それでは私のせいで皆さんをお待たせしているのね? すぐに準備したら向かうわ。何処に行けばいいのかしら?」「この宿屋の1階です。食堂として使われていたそうですよ。私もお手伝い致します」「いいのよ、1人で出来るから。貴女はスヴェンと先に行っ
Huling Na-update : 2025-08-14 Magbasa pa