翌朝、目が覚めると、棗さんはすでに仕事で出かけていていなかった。リビングに行くと、リビングに置き手紙が置いてあった。【起こすと悪いと思ったから、先に仕事に行く。今日は定時で帰る。外で夕食でも食べよう】 「え……?」外で夕食を……? 外食なんて、久しぶりだな……。「でも……ちょっと楽しみかも」そんなことを考えながら家事をこなしたり、花に水を上げたりしながら過ごしたりした。普段の日なら午後になってから、夕飯の買い物に行くのだけど、今日はそれがないから何をしようか考えてしまう。またネコの動画でも見ようかなとか思いながらも、今日着る服を決めようと思い、寝室へ行った。 クローゼットを開けて自分の服を選ぼうとしたけど……。「……なんで私、服を選ぶのにこんなに時間がかかってるんだろう」いつもなら簡単に決められるのに、なぜだか決めることが出来ない。だって……頭から離れない。 昨日の夜、棗さんが言ったあの好きという言葉が。棗さんがなぜ好きだと言ったのか分からない。 それに今まで一度もそんなことを言ってくれたこともないし、言ったこともない。あの「好きだ」という言葉は、どういう意味で言ったのだろうか……?私にはまだ分からなかった。 あの言葉を信じてもいいのかさえ、分からないままだ。本当なら夫に好きって言われたら、普通は嬉しいはずだよね……。だけど私には、その言葉の意味が分からないから、信じてもいいのか分からない。とりあえず私は、適当に服を選びすぐに出掛けられるようにナチュラルメイクをほどこす。そういえば……棗さんと結婚してから、あまり化粧をしなくなったのは自分でも分かっていた。 コンシェルジュとして働いていた時は、毎日メイクをしていたし、コンシェルジュとして働いている時はとても楽しかった。お客様の喜ぶ顔が見れるたびに、この仕事をしていてよかったって思った。今はメイクをしなくなった分、肌の調子はいい方だと思うけれど。だけど私は、棗さんからキレイだと言われたこともない。……きっと私を、妻として見てくれている訳ではないということだと思う。きっと私を抱くのだって、夫婦としての儀式みたいなもので……。夫婦になったんだから、私は棗さんに抱かれるのが当たり前なんだろう。きっと私のことを好きで抱いているわけじゃない。 夫婦として当たり前の行為だから、
Last Updated : 2025-07-10 Read more