俺も、できることなら堂々と恋人だと名乗りたい。けどそのせいで鈴が困ることになったら耐えられない。この秘密は絶対に隠し通さないと。しかしこの青年は、先程とはまた違う視線を向けてきた。「あぁ~、なるほど道理で……。どうも、風間秋です。鈴鳴とはサークルが一緒なんです」「そうそう、学科は違うんだけどね。実は和巳さん、秋も同せっ」鈴は何か言い掛けたけど、今度は風間君に口を手で塞がれていた。「どうせ……何?」「あー、どうせ学科移るんだろってよく言われるんですけど、俺は今のままでいいって話してるんです! 今まで勉強したこと無駄になっちゃうし」そう言って風間君はけらけら笑う。直後、少し鈴を睨んだように見えたけど……彼の口から手を離した後、また興味深そうに一歩近寄ってきた。「それは置いといて~、和巳さん……は、今日は何でここに?」「実は鈴の大学を見たくて、無理言って案内してもらってたんだ。ここは本当に綺麗で、良い所だね。設備もよく整ってるみたいだし」「へぇ。あ、アメリカにいたんでしたっけ。鈴鳴から聞いたことあるんで、知ってますよ」彼の話し方はとても自然だけど、不自然なほど鈴と密着している。肩に寄りかかるような形で、やたらベタベタしてる。ちょっと変わった子なのかな。というより、距離近くないか? 冷めた感じの子に見えたのに、鈴の頭を撫でたり頬をつついたりしてる。……本当に仲良いんだな。────いや、これって仲良いのか?「なぁ鈴鳴、俺達のサークルに連れて行ったら?」「あぁ、それはいいね! 和巳さん、一緒に行こうよ!」鈴が笑顔で手を差し伸べてくる。それ自体は嬉しいはずなのに、何かおかしい。変な気分だ。可愛く微笑む彼の手をとる。……けど、逆に引っ張って俺の方へ引き寄せてやった。「うわっ!」小柄で軽い鈴は簡単にバランスを崩し、俺の腕の中にすっぽり収まった。「か、和巳さん?」「……ごめん。今日は他に約束があるから遠慮しとくよ。また今度……ね、鈴」驚いた顔をしている鈴に笑いかける。卑怯だと思ったけど、彼は黙って頷いた。「……ごめん、秋。そういえば店予約してるの忘れてた。今日はもう帰るね」「おぉ。わかった、じゃあまたな。和巳さんも、次はのんびりできる時に来てください」「ありがとう。また遊びに来るよ」そう答えると風間君は微笑み、去って行った。俺達も
Last Updated : 2025-07-21 Read more