「結婚を……前提としたお付き合い?」 私は御堂《みどう》がそんな風に考えているなんて、思いもしてなかったから。真剣に彼と付き合いたいとは思っていたが、だからといって結婚はまだ考えて無くて。 ……ううん。考えなかったんじゃなくて、敢えて考えようとしなかったのかもしれない。御堂がいつ私から離れてもショックが少ない様に、彼の言う未来から目を逸らしていたのだと思う。「真剣に付き合ったからと言って、みんなが必ず結婚を考えるわけじゃないわ。御堂《みどう》だって、結婚を考えない付き合いをしたことくらいあるでしょう?」「……そんな意味のないことに興味はない。俺は真剣に家族になりたいと思うから、今こうして紗綾《さや》と付き合っている」 そんな訳ないじゃない。御堂《あなた》みたいな良い男を、誰もが放っておくわけがないんだから。「疑っています、って顔をしているな。ならば俺の言葉が信じられるようになるまで、何度だってお前に伝えてやる」 「……もし、よ?」 彼の言葉を本当に信じていいの? 私の過去の過ちを、この人は本当に受け止める事が出来る……?「なんだ? 話してみろ」 「もし私が……誰かを――――」 そう言いかけた所で、御堂が放送で呼ばれてハッと正気に戻る。 私は何をやっているの? 彼の優しさに甘えて、こんな醜い自分を受け入れてもらおうだなんて……「変なこと言ってごめんなさい。私は先にデスクに戻るわね」 私はまだ何かを言いたそうにしている御堂と目を合わせないようにして、彼をその場に残し急いでオフィスへと戻った。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-17 Baca selengkapnya