麗らかな春の陽射しが射しこむ白亜の城。 姦しい小鳥の合唱に煽られながら、簡素な黒いドレスにエプロン(メイド服)をまとった女性達が忙しく動き回っていた。「今日の掃除当番は、私の班――」 「洗濯物はうち――」 「こっちは今からお昼の準備だよ。大変だ――」 全員、城詰めの侍従(侍女)だった。彼女達の仕事は、午前中が最も過酷だった。それでも、余計なことを喋っている余裕はあった。 外から聞こえる小鳥達との鳴き声と相まって、和やかな雰囲気を醸し出していた。その光景を目にすれば、自然と笑みが零れる。 しかし、笑っていられたのは、侍女達の姿を遠目に眺めていたときまで。近くに寄って見てみると、彼女達の頭から「奇妙なもの」が生えているのに気付く。 侍女達の額、左右の蟀谷辺りから、それぞれ「大人の指ほどもある突起物」が生えていた。 有体に言えば、それは「角」だ。 それぞれ形や大きさは違えども、共通して先端部分が「真っ赤」に染まっていた。しかも、金属のような光沢があった。 実際、先端部分は金属並みに硬質化している。侍女達から頭突きを食らえば、痛いでは済まない。 頭に凶器を持つ侍女、「鬼メイド」と呼ぶべきか。 しかしながら、頭部以外は至って普通の少女達。「只の城詰めのメイド」として、忙しいながらも、毎日楽しく過ごしていた。 侍女達の誰しもが、「これからも、きっと楽しい日々が続く」と想像して、それを信じていた。 しかし、今日、この瞬間(午前十時半頃)、侍女達の日常は破壊された。(((駄目っ、ダメダメ駄目ですぅっ!!))) 「「「「「!?」」」」」 突然、城の奥から「女性の絶叫」が轟いた。それを聞いた侍女達の顔から笑みが消えた。「何?」「今の?」 互いに顔を見合わせて、一斉に首を傾げた。その間も、城の奥から女性の声が轟き続けていた。(((嫌っ、駄目っ、ダメええええっ!!))) 「「「「「!!」」」」」 (((これ以上は、無理です、駄目ですっ!!))) 「「「「「――――っ!?」」」」」 声が聞こえる度、侍女達の顔から色が失われた。「一体――」「何が起こっているの?」 侍女達は様子を探ろうと耳を澄ませた。 すると、少女の声に混じって「男性のもの」と思しき低音の美声が聞こえてきた。(((大丈夫だ。もう少し――))) 年
Last Updated : 2025-07-09 Read more